日本マランツ
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日本マランツ株式会社(にほんマランツかぶしきがいしゃ)は、かつて存在した音響機器・映像機器・通信機器メーカーである。2005年4月1日に株式会社ディーアンドエムホールディングスと合併し、消滅。同日を以て、マランツブランドの製品の企画・開発は同社に、販売は同社の子会社で同日新たに設立された株式会社マランツコンシューマーマーケティングに引き継がれた。
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[編集] 概要
- 前身であるスタンダード通信工業の創業品目はポータブルラジオで、弱い電波を確実にキャッチする受信感度の良さと超小型トランジスタラジオ『マイクロニック・ルビー』に代表される小型化において高い技術力を発揮していた。その社風はSTANDARDのブランドと共に日本マランツ・通信機事業部としてアマチュア無線機事業に引き継がれ、長年に渡りハンディ型やモービル型のトランシーバーで数々の名機を送り出した。
- スーパースコープ社と提携したことで、当時アメリカ最高峰ブランドであったマランツ製品の設計生産に参加するするようになり、ほどなく本国をも凌ぐハイエンド製品を日本独自に企画開発するようになる。また、この時期はSUPERSCOPE、unixなどのブランドでラジカセやモジュラーステレオなどのゼネラルオーディオ機器も生産していたが、対米輸出を強く意識した製品企画やデザインは日本の家電市場においてはやや浮いた存在であった。
- CD登場直前のフィリップスに売却され、世界最先端のデジタルオーディオ技術に触れる。フィリップス製CDプレーヤーの生産も担当する一方、自社のCDプレーヤーには最新のフィリップス製部品が数多く搭載され、日本のオーディオ誌などでは国内トップメーカーのCDプレーヤーと常に肩を並べる存在となる。また、製品の音決めを行う際に用いるスピーカーもアメリカ製品から欧州製品へ移行、現在は自ら輸入代理店業務を行うB&W社のスピーカーを採用している。
- フィリップスの影響は音作り以外にも及び、特にプロダクトデザインの分野では1989年頃から欧州製品を思わせるスマートなデザインの製品群を続々と発表。1990年代中盤からは高さを抑えたスリムな筐体を国内メーカーでいち早く取り入れ、他の日本メーカーにも影響を与えた。
- フィリップスグループから独立した現在は、映像機器やAVアンプへの取り組みを強化する一方、本業のオーディオ機器においても専業メーカーとしてのこだわりを随所に感じさせる製品作りで旧来のオーディオファンを唸らせている。
- 主な生産品目はステレオアンプ、SACDプレーヤー、CDプレーヤー、CD-Rレコーダー、MDデッキ、テープデッキ、DVDプレーヤー、ホームシアターシステム、プラズマディスプレイ、DLPプロジェクター、スピーカー、業務用カラオケ機器、設備音響機器、映像監視システム、業務用ワイヤレス機器など。
- オーディオ機器は据え置き型が中心で、ポータブルは製造されなかった。
- イギリスB&W社製スピーカー、アメリカaudioquest社製接続ケーブルの日本国内での輸入代理店業務を行っている。
- 30年以上に渡り「STANDARD」の商標でアマチュア無線機・業務用無線機等の製造販売を始めとする通信機事業を行っていたが、デノン(旧デンオン)社との経営統合と前後してこれらの事業、関連資産のほとんどを旧八重洲無線(現バーテックススタンダード)との合弁である株式会社スタンダードに売却・譲渡し、通信機器分野からは事実上撤退している。
[編集] unixブランド
日本における電気機器分野で「unix」の商標をラジカセ等の家庭用機器にて使用していた。その関係で、OSとしてのUNIXという商標は日本では利用できない時代があった。現在「unix」の商標はカラオケ用を主とする業務用音響機器に用途を絞って使用している。
[編集] 略歴
- 1953年(昭和28年) - スタンダード無線工業株式会社、東京都世田谷区に設立、ポータブルラジオ受信機の製造販売開始
- 1959年(昭和34年) - テープレコーダーの製造販売開始
- 1961年(昭和36年) - 神奈川県相模原市に移転
- 1962年(昭和37年) - 株式の額面変更を目的にスタンダード工業株式会社に吸収合併。東証第二部に上場
- 1968年(昭和43年) - アメリカのスーパースコープ社と提携し「marantz」ブランド製品の設計・生産及び国内販売業務開始
- 1971年(昭和46年) - 第三者割当増資実施、全額を引き受けたスーパースコープ社が持株比率50%となり同社の傘下となる
- 1975年(昭和50年) - スタンダード工業株式会社が日本マランツ株式会社に商号変更 無線機器部門は「通信機事業部」となる
- 1980年(昭和55年) - スーパースコープ社がオランダのフィリップス社に所有株全てを譲渡し、フィリップスグループの一員となる
- 1982年(昭和57年) - CDプレーヤーの製造販売開始
- 1998年(平成10年) - DVDプレーヤーの製造販売開始
- 1999年(平成11年) - SACDプレーヤーの製造販売開始
- 2001年(平成13年) - フィリップス社から「marantz」ブランドの商標権及び欧米の販売会社、所有株式の一部などを買収、フィリップスの持株比率は50.5%から49%となりフィリップスグループから独立
- 2002年(平成14年) - 株式会社デノンと株式移転し、株式会社ディーアンドエムホールディングスを設立。
- 2005年(平成17年) - 株式会社ディーアンドエムホールディングスと合併し、消滅。民生機の販売会社、株式会社マランツコンシューマーマーケティングが分離。
[編集] 代表的な製品
[編集] 音響機器
- ラジオ
- SR-F31 (1957年)
- SR-G430 マイクロニック・ルビー (1964年)
- プリメインアンプ
- Model 1250 (1976年)
- PM-94 (1985年)
- PM-99SE NM (1993年)
- PM-15 (1993年)
- PM-17 (1997年)
- PM-11S1 (2004年)
- プリアンプ
- Sc-7 (1978年)
- SC1000 (1981年)
- DAC-1 (1988年)
- SC-7S1 (2002年)
- パワーアンプ
- SM1000 (1979年)
- MA-7 (1987年)
- SM-5 (1994年)
- Project T-1 (1995年)
- MA-9S1 (2002年)
- CDプレーヤー
- CD-63 (1982年)
- CD-34 (1985年)
- CD-94 Limited (1987年)
- CD-15 (1992年)
- CD-23Da (1998年)
[編集] 無線機器
- ハンディトランシーバー
- SR-C145 (1971年)
- C110 (1982年)
- C411・511(「ポケクロ」) (1985年)
- C520 (1991年)
- C510 (1996年)
- モービルトランシーバー
- SR-C806M (1969年)
- SR-C140 (1973年)
- C8800 (1978年)
- C8900 (1982年)
- C5000 (1985年)
- C5900 (1994年)
- C5750 (1998年)
- ポータブルトランシーバー
- C88 (1979年)
- C78 (1980年)
- C58 (1981年)