有人宇宙飛行
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有人宇宙飛行(ゆうじんうちゅうひこう)とは宇宙船に人が乗り宇宙を飛行する事である。宇宙飛行を行うために特に訓練された者を宇宙飛行士と呼び、そうでない者が宇宙飛行を行う場合、特に宇宙旅行と呼ぶ。
宇宙ロケットに人間が乗り込むことには、依然安全上の大きなリスクがあり、実際に宇宙開発においては惑星探査などその多くをロボットが担っているが、人間が行わなくてはならない活動も少なくない。宇宙船内での高度な実験、宇宙ステーションの建設などを行うことは、すなわち宇宙開発の主導権を握ることを意味する。現在建設中の国際宇宙ステーションでは有人飛行実績の高いロシアとアメリカが、主導的な立場を担っている。
有人宇宙飛行は国威発揚の側面が強く、成功しているのはアメリカ合衆国、ロシア連邦(初飛行時はソビエト連邦)とロシアの技術を導入した中華人民共和国の3カ国だが、人命の損失などそのリスクの高さに比べ、得られる利益が少ないことが日本や欧州の後続がなかった理由だ。
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[編集] アメリカの有人宇宙飛行の歴史
[編集] マーキュリー計画
マーキュリー計画とは、1956年~1963年に行われたアメリカ初の有人宇宙飛行計画。アメリカ初の宇宙飛行士として7人が選ばれ、オリジナル7と呼ばれた(実際に宇宙に行ったのは6人)。 この計画の成功により、当時ソ連より大幅に後れをとっていたアメリカの巻き返しが始まる。
[編集] ジェミニ計画
ジェミニ計画とは、当時のアメリカ大統領であるジョン・F・ケネディが1961年5月15日におこなった『この10年期の末までに人間を月に着陸させ無事に帰還させるべきだと信じる。』とする演説を受け、これを実行するためアポロ計画の下積みとして実施された計画であり、この計画で育まれた技術はアポロ計画に活用された。
[編集] アポロ計画
アポロ計画とは、人類を月へ送る計画である。人類を月へ送るための機材を打ち上げるには、それまで打ち上げロケットとして使っていた、大陸間弾道ミサイルを改良した物では不足であった。アメリカは新ロケットであるサターンV型ロケットを開発し、その先端にアポロ宇宙船を取り付け打ち上げた。 そして1969年7月16日、アポロ11号から切り離された月着陸船が月面に着陸。人類は月の地面を踏んだ。 人類を月に送った事は人類の新たなる一歩を意味し、アメリカとソ連との宇宙開発競争でアメリカに劇的な勝利をもたらした。
[編集] スペースシャトル計画
スペースシャトル計画とは、サターンやソユーズのような使い捨てロケットでは高コスト化が進む宇宙開発において非効率であるとして、繰り返し使える打ち上げロケットを建造する計画である。1972年に計画が開始され、1981年にスペースシャトル第一号であるコロンビアが打ち上げられた。シャトル・オービタの全長は37メートル、外部燃料タンクの全長は47メートルである。
[編集] ソ連の有人宇宙飛行の歴史
[編集] ボストーク宇宙船
ボストークは人類が初めて有人宇宙飛行をした際に登場した宇宙船。人類で初めて宇宙に出た人物はユーリ・ガガーリンであり、宇宙から帰還した後の会見で『地球は青かった。』という発言は有名である。この有人宇宙飛行の成功によりソ連は宇宙開発においてアメリカを引き離す事になる。
[編集] ボスホート宇宙船
ボスホートはアメリカのジェミニ計画に対抗する目的で作られた宇宙船である。世界初のEVA(宇宙遊泳)を実現した。
[編集] ソユーズ宇宙船
ソユーズはアメリカのアポロ計画に対抗する計画であり、月着陸を目指していたが、アメリカの追い上げが激しく、1969年のアポロ11号によって、ついにアメリカに先を越されてしまう。 これによりソ連は月到達を諦めてサリュート、ミールなどの宇宙ステーション建設を目標にした。このソユーズ宇宙船は現在も使われており、国際宇宙ステーションではアメリカのスペースシャトルの運行が停止した時に役立っている。
[編集] ブラン計画
ブラーンはソ連が開発した有人宇宙往還機で、ソ連版スペースシャトルとも呼ばれる。打ち上げには超大型ロケットブースター「エネルギア」を使用し、自らは姿勢制御クラスター程度しかつまない。多額の開発費に行き詰まり、ソ連崩壊によって計画は凍結した。
[編集] 中国の宇宙船
[編集] 神舟計画
中華人民共和国では1992年から神舟計画を開始、2003年に神舟5号が、宇宙飛行士一人を乗せた有人宇宙飛行に成功した。2005年には神舟6号で、宇宙飛行士二人を乗せて2度目の有人宇宙飛行に成功した。
[編集] 今後の展望
ソビエト連邦の崩壊や世界経済が悪化した為、採算の取れない有人宇宙飛行への予算が大きく削減された。そのため一国の力では宇宙開発は不可能となり、世界で協力しながら宇宙開発を進めなければならなくなった。現在、主要先進国を中心に国際宇宙ステーションが建設されており、宇宙平和への実現を伺わせる。
アメリカを代表する宇宙船であるスペースシャトルやロシアの代表的な宇宙船であるソユーズ等が現在の宇宙開発を支えている。各国も新たなる空間である宇宙を目指しているが、アメリカやロシアの宇宙船の技術にはかなわないのが実情である。 それを言い換えればアメリカやロシアの宇宙船が止まれば、宇宙開発は急速に後退する事を意味している。 事実、2003年にアメリカのスペースシャトル・コロンビアが大気圏内への再突入中に空中分解を起こした。アメリカ政府は直ちにスペースシャトルの運行を停止したため、宇宙開発に大きな遅れが生じている。ロシア政府は深刻な資金不足から、国際宇宙ステーションの維持に必要なソユーズの定期便の乗客定員の一部を、宇宙旅行のために事実上販売した。