沸騰水型原子炉
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沸騰水型原子炉(ふっとうすいがたげんしろ、Boiling Water Reactor, BWR)は、核分裂反応によって生じた熱エネルギーで軽水を沸騰させ、高温・高圧の蒸気として取り出す原子炉であり、発電炉として広く用いられている。炉心で取り出された汽水混合流の蒸気は汽水分離器、蒸気乾燥機を経てタービン発電機に送られ電力を生ずる。日本国内で運転可能な原子炉の中では、最も多いタイプの原子炉である。
発電に利用された蒸気は放射能を帯びている為、蒸気を回収し再循環させるだけでなく、タービン建屋(たてや)など、これに関わる全ての系を堅牢に遮蔽することで、放射線が外部に漏れることを防いでいる。 外部からの核分裂反応の制御は主に制御棒や、冷却材流量の増減で行われ、冷却材喪失事故時には非常用炉心冷却装置 (ECCS) を動作させる。
※このように、冷却材に軽水を使用している原子炉を軽水炉と呼ぶ。
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[編集] BWRの自己制御性
BWRにおいて、何らかの原因で核分裂反応が増大すると、それに伴なって発生する熱エネルギーも増大する。BWRの冷却材は原子炉内で沸騰しているので、増大する熱エネルギーに比例して冷却材中の蒸気の泡(ボイド)の量も増えてゆく。これは結果として冷却材の密度を低下させるが、軽水炉の冷却材は減速材でもあるため、冷却材の密度が減ると減速される中性子が少なくなり、そのため核分裂反応が減少していく。逆に核分裂反応が減少すると熱エネルギーが減って蒸気泡が減り、減速される中性子量が増えていくため、核分裂反応が増えていく。このような現象は負の反応度フィードバックといい、BWR固有の自己制御性であり、核分裂反応の極端な増減を自ら抑えている。
BWRでは、この自己制御性を利用して原子炉出力の短期的な制御を行っている。すなわち原子炉出力を上げたい時は冷却材再循環ポンプの出力を上げる。すると原子炉内を循環する冷却材の流量が増え、運び出される熱量が多くなる結果として蒸気泡の量が少なくなり、原子炉出力が上昇する。逆に原子炉出力を下げたい時は再循環ポンプの出力を下げると蒸気泡が多くなって原子炉出力が低下する。
ちなみに、負荷が増えると原子炉の温度が下がり、泡が減るため核分裂が増加するので、負荷追従運転が可能であるが、社会問題となっているため行われていない。
また、BWRの自己制御性には、理論上連鎖的に出力が急上昇する、正の反応度フィードバックが発生する可能性があると指摘されることがある。これは何らかの理由により炉内の圧力が上昇すると、ボイドがつぶれるため減速材の密度が増加し、減速される中性子が増加するため核分裂反応が増加する、というものである。しかし、実際には原子炉は最大出力で主蒸気隔離弁を急閉しても暴走出力が生じることがないため(つぶれるボイドの量の熱力学的な計算、またボイドの消滅による印加反応度変化量とその印加時間の長さなどから説明できる[1])である。また、主蒸気配管にはこの圧力上昇を防ぐため逃し安全弁が数多く取り付けられている。
[編集] BWRの構成要素
[編集] 改良
日本は大型化を目指すためBWRを改良して「改良型沸騰軽水冷却水炉」 (Advanced BWR) を製作した。
アメリカ、ドイツは単純化を目指すためBWRを改良して「単純型沸騰軽水冷却水炉」 (Simplified BWR) を設計した。
[編集] 日本の改良点
- インターナルポンプ
- 改良型制御棒駆動(水圧駆動→水圧+電動駆動)
- 主蒸気流量制限器
- 非常用炉心冷却装置(ECCS)
- 鉄筋コンクリート製原子炉格納容器
- タービンの大型化
- 湿分分離加熱器
- デジタル技術及び新型中央制御盤
- 燃料に全てMOX燃料が使用できる
[編集] 米国の改良点
- 静的安全設計
- システム・機器の単純化
- 短い建設工期
- 自然循環炉心(再循環ポンプからもとに戻す)
[編集] 日本の成果
[編集] 日本にあるABWR
- 柏崎刈羽原子力発電所(6,7号機)
- 浜岡原子力発電所(5号機)
- 志賀原子力発電所(2号機)
[編集] 日本からの輸出
[編集] 関連記事
[編集] 外部リンク
[編集] 参考文献
- ^ 日刊工業新聞社『原子炉の暴走 ―SL-1からチェルノブイリまで―』(石川迪夫 著) ISBN4-526-03845-8