精巣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
精巣(せいそう、英語 Testicle、Testis)とは、動物の雄がもつ生殖器の1つ。雄性配偶子(精子)を産生する器官のこと。哺乳類などの精巣は睾丸(こうがん)とも呼ばれ、左右1対ある。俗称は、金玉(きんたま)、玉(たま、en:Balls(ボール))、ゴールデンボール、ふぐり、 など。また 魚類の精巣は、白子(しらこ)と呼ばれ、魚の種類によっては食用にする。
脊椎動物の精巣は精子を作り出す他に、ホルモンであるアンドロゲンを分泌する内分泌器官でもある。
一般に男性の「急所」とされる部分であり男性特有の肉体的弱点でもある。
目次 |
[編集] 構造と機能
[編集] 精巣と陰嚢
ヒトの精巣は、長径4~5 cm程度の卵型をしており、下腹部にある陰嚢(いんのう)と呼ばれる皮膚が袋状に垂れ下がった部位の中におさまっている。精巣の隣には精巣上体(副睾丸)があり精巣で作られた精子はまずここに運ばれる。精巣上体には精索(せいさく)というヒモ状の構造がつながっており、精巣へ出入りする動脈、静脈、神経、および精子が通る精管(せいかん)がその中を通っている。精索は、鼠径部をとおって腹の中へとつながる。精巣と精索全体は、陰嚢の中で精巣挙筋という腹筋の一部が変わった筋肉につつまれ、ぶらさがっている。精巣挙筋が収縮すると、精巣は腹部の方へと引き上げられる。
[編集] 精子
精巣の中には、精子を作る場である精細管(せいさいかん)と呼ばれる直径数百μmの管が蛇行しながらびっしりと詰まっており、その管の内側で精子の元になる精祖細胞(精原細胞)が減数分裂を経て、精子になる過程(精子発生、あるいは精子形成)が起こっている。出来上がった精子は、管の中を流れていき、精巣の端に集められ、精巣の隣の精巣上体へと運び出され、そこで成熟し、射精を待つ。精子発生は、体温よりも温度が低くないとうまく進まないことが知られている。精巣が陰嚢の中にあり、体外にぶら下がっているという構造は、精巣の温度を体温より低く保つのに役立っている。
[編集] アンドロゲン
アンドロゲンを分泌する細胞は、精巣内で、精細管の隙間に多数存在する、ライディッヒの間質細胞(ライディッヒ細胞)である。ここには血管が豊富で、分泌されたアンドロゲンは血流に乗って全身へと運ばれる。ライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲンは、ほとんどがテストステロンである。
[編集] 精巣の疾患
- 男性不妊症 - 様々な原因で精子の産生がうまくいかず、女性が妊娠するに至らない症状。
- 精巣がん - 精巣に悪性の腫瘍ができる疾患で、若年者にも多い。
- 停留精巣 - 片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態。腫瘍化することが多い。
[編集] 精巣の利用
[編集] 食材
魚類の精巣は、食材として用いられる。一般にクリーミーな口どけやまったりとした独特の味わいを楽しむ。白子が特にうまいとされる魚は、フグ類(トラフグなど)、タラ類(マダラ、スケトウダラなど)などである。ヒラメなどの精巣は、取り出して別途調理する事は多くないが、体内に残したまま、煮たり、焼いたりして食用にされる。
ウシなどの精巣はタマあるいはホーデン(ドイツ語由来)と呼ばれる食材である。焼き肉などに用いる。雌や去勢された雄には精巣がないので、流通量は少ない。
精巣には、タンパク質の一種であるヌクレオプロテインやプロタミン、核酸の一種であるデオキシリボ核酸(DNA)が豊富に含まれるため、俗に食べると精が付くと言われるが、実際に疲労回復、免疫力向上、記憶の改善、新陳代謝の促進、老化防止、美容などの効果があるという研究報告がある。
[編集] 工業原料
サケ類(シロザケなど)やニシン類の白子は、食用としての利用度が低いが、デオキシリボ核酸(DNA)やプロタミンを豊富に含み、比較的大量に得られるため、酵素処理などによって、これらの成分を抽出することが行われている。プロタミンは食品保存料として用いられている。サケのDNAは調味料、強化剤などの食品用途、医薬用途の他、創傷被覆材などの医療用途、分離膜、フィルター材などの工業用途も開発が行われている。
[編集] 関連項目
生殖器系 - edit |
---|
女性 - 子宮頚部 | 陰核 | 陰核包皮 | 卵管 | バルトリン腺 | Gスポット | 処女膜 | 陰唇 | 乳腺 | 卵巣 | スキーン腺 | 尿道 | 子宮 | 膣 | 女性器 |
男性 - 尿道 | 精巣 | 陰嚢 | 精索 | 精巣上体 | 精細管 | セルトリ細胞 | 精巣網 | 精巣輸入管 | 輸精管 | 精嚢 | 射精管 | 陰茎 | 海綿体 | 亀頭 | 陰茎ワナ靭帯 | 包皮 | 陰茎小帯 | 前立腺 | 尿道球腺 |