紅葉
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紅葉(こうよう、もみじ)は、秋に起こる落葉樹の葉の色が変わる現象。 樹木のモミジ(カエデ)については、カエデを参照。
なお、常緑樹も紅葉するものがあるが、緑の葉と一緒の時期であったり、時期がそろわなかったりするため、目立たない。ホルトノキは、常に少数の葉が赤く色づくのが見分けの目安になっている。また、秋になると草や低木の葉も紅葉し、それを「草紅葉」と総称していうことがある。
厳密には赤色に変わるのを「紅葉(こうよう)」、黄色に変わるのを「黄葉(おうよう)」、褐色に変わるのを「褐葉(かつよう)」と呼ぶが、時期が同じなためか、ともに「紅葉」として扱われる事が多い。複数の現象が同時に進む場合もある。葉がなんのために色づくのかについては、その理由は諸説あり、いまだ明らかになっていない。
紅葉は9月頃から北海道の大雪山を手始めに始まり、徐々に南下する。 紅葉の見頃の推移を桜前線と対比して「紅葉前線」と呼ぶ。 紅葉が始まってから完了するまでは約1ヶ月かかる。 見頃は開始後20~25日程度で、時期は北海道が10月、東北地方が11月、その他の地域は11~12月上旬頃。 山間部はこれよりやや早い。
紅葉や黄葉が進行する条件は、1日の最低気温が8度以下の日が続くと色づき始め、さらに5度以下になると一気に進むとされる。美しい紅葉の条件には「昼夜の気温の差が大きい」「日照時間が長い」「湿気が少なく乾燥している」などの条件が必要。紅葉の名所にはこの条件をよく満たす山岳地帯が多い。
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[編集] 紅葉のメカニズム
普段、葉が緑色に見えるのは、クロロフィルという葉緑素があるからであるが、寒くなり日照時間が短かくなると葉緑素が分解される。また、葉柄の付け根に離層という特殊な水分を通しにくい組織ができ、葉で作られた水溶性のブドウ糖や蔗糖などの糖類やアミノ酸類が葉に蓄積し、その糖から光合成を利用して新たな色素が作られたりする。その過程で葉の色が赤や黄色に変化し、紅葉が起こる。その後、落葉になる。
紅葉、黄葉、褐葉の違いは、それぞれの色素を作り出すまでの葉の中の酵素系の違いと、気温、水湿、紫外線などの自然条件の作用による酵素作用発現の違いが、複雑にからみあって起こる現象とされる。
[編集] 紅葉の原理
葉の赤色は色素「アントシアン」に由来する。アントシアンは春から夏にかけての葉には存在せず、秋に葉に蓄積したブドウ糖や蔗糖と、紫外線の影響で発生する。
[編集] 黄葉の原理
葉の黄色は色素「カロテノイド」による。カロテノイド色素系のキサントフィル類は若葉の頃から葉に含まれるが、春から夏にかけては葉緑素の影響により視認はできない。秋に葉の葉緑素が分解することにより、目につくようになる。なお、キサントフィルも光合成によってできた糖から出発し、多くの化学変化を経てできたものである。
[編集] 褐葉の原理
- 黄葉と同じ原理であるが、タンニン性の物質(主にカテコール系タンニン、クロロゲン酸)や、それが複雑に酸化重合したフロバフェンと総称される褐色物質の蓄積が目立つためとされる。
- 黄葉や褐葉の色素成分は、量の多少はあるがいずれも紅葉する葉にも含まれており、本来は紅葉するものが、アントシアンの生成が少なかったりすると褐葉になることがある。
[編集] 紅葉する木
- 紅葉:カエデ科(ヤマモミジ、ハウチワカエデ)・ニシキギ科(ニシキギ、ツリバナ)・ウルシ科(ツタウルシ、ヤマウルシ、ヌルデ)・ツツジ科(ヤマツツジ、レンゲツツジ、ドウダンツツジ)・ブドウ科(ツタ、ヤマブドウ)・バラ科(ヤマザクラ、ウワミズザクラ、カリン、ナナカマド)・スイカズラ科(ミヤマガマズミ、カンボク)・ウコギ科(タラノキ)・ミズキ科(ミズキ)
- 黄葉:イチョウ科(イチョウ)・カバノキ科(シラカンバ)・ヤナギ科(ヤナギ、ポプラ、ドロノキ)・ニレ科(ハルニレ)・カエデ科(イタヤカエデ)・ニシキギ科(ツルウメモドキ)・ユキノシタ科(ノリウツギ、ゴトウヅル)
- 褐葉:ブナ科(ブナ、ミズナラ、カシワ)・ニレ科(ケヤキ)・トチノキ科(トチノキ)・ズズカケノキ科(スズカケノキ)
[編集] 紅葉にまつわる文化
[編集] 紅葉狩り
日本では、紅葉の季節になると紅葉を見物する行楽、紅葉狩り(もみじがり)に出かける人が多い。紅葉の名所と言われる箇所は(全国的には日光(栃木県)や京都市内等が有名)は行楽客であふれる。紅葉をめでる習慣は平安の頃の風流から始まったとされ、特に京都では多くの落葉樹が植樹されている。また、「草紅葉」の名所としては尾瀬がある。
[編集] 芸術作品
日本において、紅葉は様々な芸術の題材となっている。関連項目の項を参照。
[編集] 主な紅葉の名所
- 青葉公園(北海道千歳市)
- 支笏湖(北海道)
- 八甲田山(青森県)
- 十和田湖(青森県十和田市)
- 八幡平(岩手県)
- 鳴子峡(宮城県鳴子町)
- 蔵王(山形県山形市)
- 日光(栃木県日光市)
- 長瀞渓谷(埼玉県長瀞町)
- 中津峡(埼玉県秩父市)
- 養老渓谷(千葉県市原市)
- 奥多摩(東京都)
- 清津峡(新潟県)
- 上高地(長野県)
- 昇仙峡(山梨県甲府市)
- 河口湖(山梨県)
- 立山(富山県)
- 黒部峡谷(富山県)
- 兼六園(石川県金沢市)
- 九頭竜湖(福井県)
- 香嵐渓(愛知県豊田市)
- 赤目四十八滝(三重県)
- 嵐山(京都府京都市)
- 東山(京都府京都市)
- 大原(京都府京都市)
- 三尾(高雄・栂尾・槙尾の総称)(京都府京都市)
- 永源寺(滋賀県東近江市)
- 湖東三山(滋賀県)
- 談山神社境内(奈良県)
- 大山(鳥取県)
- 神庭の滝(岡山県真庭市)
- 宮島(広島県宮島町)
- 寒霞渓(香川県)
- 金刀比羅宮(香川県琴平町)
- 雲仙(長崎県)
- 菊池渓谷(熊本県)
- 曽木の滝(鹿児島県大口市)
[編集] 関連項目
[編集] 様々な紅葉
南禅寺(京都市) |
秋の奥只見湖と遊覧船 |
御堂筋(大阪市) |