緊急警報放送
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緊急警報放送(きんきゅうけいほうほうそう)とは、待機状態にある受信機を自動的に作動させるため、放送局が緊急警報信号を前置して行う放送である。災害の発生の予防や被害の軽減に役立たせることを目的としている。
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[編集] 概要
[編集] アナログ放送での緊急警報放送
緊急警報放送は、1985年9月から実施しているアナログ放送用の音声とデジタル放送用の緊急警報放送識別子を放送している。デジタル放送では従来の音声信号を併用する場合もある。 アナログ放送は、デジタル信号であるが、1024Hzの音声信号で「1」を、640Hzの音声信号で「0」を示すよう変調しており、専用の受信機がなくても警報信号音を直接耳で識別することができる。
[編集] デジタル放送での緊急警報放送
デジタル放送の緊急警報放送は多チャンネル放送で行われると言われている。デジタル放送では多重する信号の中に緊急警報放送識別子が存在する。受信機が緊急警報放送識別子を受信すると自動的に災害時の報道を行っているチャンネルに切り替わると言われるが民放からNHKへ切り替える動作を行うという公式な資料はない。また電源断の待機中に動作する受信機は発売されていない。緊急警報放送を受信すると警告文を表示するとも言われているが、取扱説明書に明記するメーカーは少なく、過度の期待は禁物である(アナログ式専用受信機を用いてNHK総合やNHK第一放送で受信待機することを推奨する)。
なおデジタル放送の緊急警報信号は、局によってはピロピロという音がない場合もある。尚、青森放送テレビではアナログ放送でのみ緊急警報放送の試験信号発射を実施し、デジタル放送では実施していない。
[編集] 受信機の消費電力の問題
緊急警報放送によって受信機を待機状態から受信状態に移行させるには、対応した受信機を用いる必要がある。 待機状態を実現するためには、受信部と解析部を常時通電しておくことが必要であることから、電力消費は多いと思わているが、アナログ式受信機は電化製品や映像機器の待機電力よりも低消費電力である。 アナログ式専用受信機は0.3ワット(年間電気使用料は1キロワット当たり22円換算で約58円)、アナログ式ラジオ兼用機は1ワット(年間電気使用量193円)である。対応機種は各社から計10種類程度は発売されたが殆ど普及しなかった。(現在入手可能な市販品は存在しない パナソニックRF-U99-Kが2004年で生産を打切り市場在庫のみ)
デジタル式はアナログ式とは比較にならないほど消費電力が高く(アナログ式0.3ワット、デジタル式15ワットと仮定すると約50倍)、専用機や常時待機するデジタルチューナは発売されていない。 デジタルチューナには全機種に標準で緊急警報放送を識別する装置が内蔵されていると言われるが、取扱説明書に明記しないメーカーや機種が大半であり非常時に動作する保証は無い。 また、民放(日本テレビを除く)はアナログ放送で実施していた試験放送も行わないので、強制的にNHKへ切り替わると言われる緊急警報放送の実施に関して疑問が残る。 電源を切りにしたスタンバイ状態で常時待機して動作する製品は発売されていない。また、専用機も発売されていない。 携帯電話に超低消費電力の簡易解析装置を内蔵させて、常時受信待機させる計画と実験が行われているが、実用化されていない。
[編集] 緊急警報信号の種類
緊急警報放送には第1種開始信号、第2種開始信号、終了信号の3種ある。
- 第1種信号は東海地震の警戒宣言が発表、各自治体(都道府県、並びに市区町村)の知事・長から避難指示(命令)が発動された場合などに送信される(第1種、第2種ともに約10秒間鳴らされる)。
- 第2種信号は津波警報が発表された時のみ送信される。第1種信号は強制的に動作するが、第2種信号は受信側で動作させない設定が可能である(特に海岸や川の河口からはるかに離れている地域や内陸の地域)。
- 終了信号は、第1種開始信号や第2種開始信号が送信された場合、すみやかに送信される。(概ね10分以内 信号音は2秒間で4回鳴らされる)
- 試験信号は、終了信号と同一であるが、開始信号を送信することなく終了信号のみが送信された場合を意味する。試験信号は受信機が正常に動作するかどうかを確認する信号である(事実上、緊急警報放送の定期放送ともされている)。
[編集] 緊急警報放送の実際
NHKでは、毎月1日(1月に限り4日)の昼 (11:59 - 12:00) にデジタル総合テレビ、総合テレビ、ラジオ第1、FM放送でいずれも各放送局別で、北海道地方は平日は各局別で土日はすべて札幌からの放送である。デジタル総合テレビのワンセグでも名古屋放送局など一部地域で試験信号放送を送出している。(関東地方などは「NHK 総合テレビジョン」と書かれた静止画に差し替え)。また民放各放送局でも一部試験放送(夜中か早朝)を行っている。民放のデジタル放送で、アナログと同時に試験放送を行う在京キー局は、日本テレビとTBSだけであるが地上デジタル側に可聴音(ピロピロ)は重畳しない。関西の準キー局では、朝日放送がデジタル放送でも毎月末の日曜深夜に行っている(アナログと共通)。なお、緊急警報放送システムが運用されている民放局は少ないのが現状である
デジタル放送対応チューナーは、緊急警報放送の試験信号を受信しても受信した旨の警告文を表示したり、お知らせ項目に記録を残さない。緊急警報放送の本番信号(地震や津波)を受信しても、待機から自動的に起動したり、視聴中に特定のチャンネルに切り替える旨の告知文を表示させるかどうかは各メーカーの判断(仕様)に委ねられているので購入した機器が必ず動作するなどと過度の期待は持たない方が良い。(アナログ式専用受信機は試験放送を確認すると確認音と一定時間確認ランプの点灯で報知するので確認できるが、デジタルチューナにこの確認機能は実装されていない) 外部リンクの「NHK放送受信相談室:緊急警報放送」に(※信号受信によって自動的に起動します)と書かれているがデジタルテレビ等の受信機すべてが動作するわけではないので再確認する必要がある。
NHKで緊急警報放送の本放送が行われる場合はテレビ・ラジオ全チャンネルを使って情報が伝達される(衛星放送含む。この場合テレビの副音声とラジオ第2放送は英語放送となる 別名八波全中 NHKワールドのテレビ・ラジオの放送も含まれる)。 しかし、試験放送を行う民放各局でも津波警報が発表されても第2種開始信号等の緊急警報信号を送出することは事実上無いので手動で放送局を設定できる機種を持っている場合は、NHKに合わせておく事が大切である。
[編集] 過去に適用された事例
※特記無しの場合津波警報発表による
- 1987年3月18日 宮崎県沖地震 最初の緊急警報放送実施
- 1989年11月2日 岩手県沖地震
- 1993年1月15日 釧路沖地震(津波は発生しなかった)
- 1993年7月12日 13日北海道南西沖地震
- 1994年10月4日 北海道東方沖地震
- 1994年12月28日 平成6年三陸はるか沖地震
- 1995年1月17日 阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)
- (災害発生に伴う兵庫県知事からの要請と言われるが、NHKにこのときの送出記録は残っていない。しかし関西圏の視聴者は緊急警報放送があった事を確認している。)
- 1995年10月19日 奄美大島近海の地震
- 1996年2月17日 ニューギニア島沖地震
- 1996年10月19日 日向灘地震
- 1998年5月4日 石垣島南方の地震
- 2002年3月26日 石垣島近海の地震
- 2002年3月31日 台湾付近の地震
- 2003年9月26日 平成15年十勝沖地震
- 2004年9月6日 東海道沖震源地震
- 2006年11月15日 千島列島での地震 千島列島沖地震 (2006年)
- 2007年1月13日 北西太平洋での地震 千島列島沖地震 (2007年)