自然哲学
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自然哲学(しぜんてつがく)とは、自然の事象や生起についての知識や考察のことである。だが、同時に人間の本性(英・仏nature,独Natur)の分析を含むこともあり、元々はわれわれが一般的に用いる意味での哲学とそれほど差はなかった。自然科学とほぼ同義語として、限定された意味で用いられることの多い「自然哲学」であるが、これは主にルネサンス以降の近代自然科学の確立期から19世紀初頭までの間の諸考察を指すといったほうが良いだろう。
目次 |
[編集] 起源
その由来は西洋哲学の起源であるタレスらミレトス学派の「始めの問い」に求めることができ、以後、優れた観察や分析が行われる。また、ストア派、エピクロス派、アカデメイア派において自然哲学(自然学)は哲学の三部門の一つとして扱われるようになった。
[編集] 中世~近代
中世、アリストテレスの『自然学』的自然観がアルベルトゥス・マグヌスの検証紹介以降にほぼドグマ化したスコラ学の下では、自然哲学は停滞するが、ルネサンス期を経て、ベーコンやデカルトらによって近代科学的方法が確立されると、哲学的諸問題に対する自然哲学の重要性はさらに増した。一方で、それは自然哲学と自然科学とが分離する前触れでもあった。ドイツ観念論における自然哲学は分離しつつあった両者を哲学的原理から統合しようとする試みとして捉えることができる。
[編集] 近代~現代
19世紀以降、近代科学の発展や細分化などに伴い、これまで区別が曖昧であった自然科学と自然哲学の両者は完全に分離して考えられるようになった。現在では自然科学諸分野の知識を包括的・全体的に捉えた(哲学的)考察に限定して用いられることがあるが、「自然哲学」を標榜する哲学者は極めて少ない。
しかし、これは「自然哲学」の消滅や哲学と自然科学とが相反するものであることを示すものではない。現在においても自然科学の成果を踏まえる形での哲学的考察は多くの哲学者によって不断に行われており、現在においても両者の親和性は高い。そうした意味では現在でも自然哲学は生きていると考えられる。
[編集] 関連項目
- アリストテレス
- ストア派
- エピクロス派
- フランシス・ベーコン
- ルネ・デカルト
- ジョルダーノ・ブルーノ
- アイザック・ニュートン
- パラケルスス
- イマヌエル・カント
- フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・シェリング
- ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル
- ゲーテの色彩論
- コペンハーゲン学派
- ヴァイシェーシカ学派
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