行列
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数学において、行列(ぎょうれつ、matrix)とは数を矩形(長方形)状に並べたものである。ここでいう数は一般にはある固定された環の元、たとえば整数でもよい。特に、すべての成分が実数の行列を実行列、すべての成分が複素数の行列を複素行列という。
行列の間には次のようにして和と積を定義することができて、正方行列全体はひとつの環をなす。
行列の起源は連立一次方程式の解法である。例えば、加減法とも呼ばれる方程式の解法を定式化したものとして行列の基本変形や、それによるガウスの消去法などのアルゴリズムが挙げられる。これは三角化・対角化や逆行列の計算などに広範に適用できる。
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例
行列 A に対して、a11 などを行列の成分あるいは要素 (element) と呼ぶ。(係数と呼ぶこともある。) 行列の横方向に並んだ要素を行 (row) と呼び、縦方向に並んだ要素を列 (column) と呼ぶ。行列の i 行目、j 列目の要素を特に行列の (i, j) 要素と呼ぶ。 行列に含まれる行の数が m、列の数が n である時に、その行列を m 行 n 列行列や m×n 行列と呼ぶ。行列を構成する行の数と列の数を合わせて型という。したがってm 行 n 列行列のことを (m, n) 型行列などと呼ぶこともある。 要素を環 R に持つ行列のことを R 上の行列という。
行列の i 行目の成分だけを並べたベクトル(第 i 行ベクトル)を ai = ( ai1, ai2, ai3) とすれば、行列 A は、
と表現できるので、行列はベクトルを並べたものと考えることもできる。同様に第 j 列成分のみを並べてできるベクトル(第 j 列ベクトル) bj を並べて
と書くこともできる。
行列の和・差
m 行 n 列の行列同士の和(差)を、各要素同士の和(差)と定める。
和・差の計算例
の時に、A + B と A - B は、
行列の積
行列の積を初めて定義したのはアーサー・ケーリーである。
l × m 行列 A と m × n 行列 B の積は l × n 行列となり、C = AB の (i, j) 成分 cij は、
で与えられる。
n が 1 より大きな時には、n × n 行列 A と B に対して要素同士が可換であっても、一般に AB と BA は等しくならない。
積の計算例
先ほどの例において、AB は、
同様に BA は、
となり、ABとBAが等しくないことが見て取れる。
計算の効率
行列と線型写像
体上の m × n 行列は n 次元数ベクトル空間から m 次元数ベクトル空間への線型写像になっている。逆に有限次元のベクトル空間の間の任意の線型写像は、基底の行き先を見ることで有限のサイズの行列として表すことができる。線型写像としてみると、行列の積は写像の合成になっている。行列の階数は線型写像の像の次元に対応し、転置行列は双対写像に対応している(双対空間を参照)。
もっと一般に、環上の行列を有限生成加群の間の準同型として見ることもできる。
種々の行列
簡単な分類
- 正方行列 - 三角行列 - 対角行列 - スカラー行列 - 単位行列
- 正方行列 - 冪零行列 - 零行列
- 正方行列 - 正則行列 - 逆行列
- 転置行列 - 随伴行列 / 対称行列 - エルミート行列
- ユニタリ行列 - 直交行列