表語文字
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表語文字(ひょうごもじ、英: logogram)は、一つ一つの文字で言語の一つ一つの語や形態素を表す文字体系のことをいう。漢字は、1音節が1形態素となる中国語の形態素それぞれを1文字ずつで表記するので、体系的な表語文字の代表的なものである。
表語文字に対し、一つ一つの文字が音素や音節を表し、意味に対応しない文字体系を表音文字という。表語文字が原則として単独の文字で意味をなすのに対し、表音文字は特定の順序につながって語の発音を表すことで意味をなす。形式的に言い替えると、表語文字は言語の二重分節のうち、1次分節のレベルで言語を表記するものであると言える。
いっぽう、アラビア数字のように、それぞれの文字が表す意味は明確だが言語の発音との結びつきが弱いと考えられる文字体系を表意文字と呼ぶ。
表語文字の多くは象形文字に起源を持つ。象形文字がもっぱら具体的な事物を表す記号のみを持つ文字体系であるのに対して、表語文字は、言語の語や形態素のほとんどすべてを表すことができる。このようなことが可能になったのは、別の意味を持つ文字を組み合わせてより複雑な意味を持つ文字を作り出す手法 (会意と言うことがある) や、語の発音を表す記号 (声符) と意味範疇を表す記号 (義符) を組み合わせて新たな文字をつくり出す手法 (形声と言うことがある) を発達させたためである。
同じ表語文字の文字体系でも、言語によって用いられる文字の数や種類が異なる。これは、各々の時代、地域の各々の言語の実状にあうよう、各々の言語で独自に文字の取捨選択や拡張がされるためである。漢字のように多くの言語で用いられている文字体系の場合、ひとつの言語で用いられる文字の数に比べ、文字体系に属する文字を全て集めた数はかなり多い。