重複立候補制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
重複立候補制度(ちょうふくりっこうほせいど)は選挙における制度。
[編集] 概説
1996年以降の日本の衆議院議員総選挙における小選挙区比例代表並立制では、立候補する際に所属政党の許可が得られれば、立候補者が「小選挙区選挙」と「比例代表選挙」に重複して立候補することが可能である。ただし、公職選挙法上の政党要件を満たしていない「その他の政治団体」から立候補した場合、重複することはできない。
重複候補は、小選挙区で落選しても比例区で復活当選できる。そのため、均しく1議席が割り当てられている単一の小選挙区を基盤とする議員が、区によって1人であったり2人、3人であったりするという現象が発生している。
1996年の衆院選では、小選挙区において9人の候補者が法定得票数(有効投票総数の6分の1)未満でも復活当選をしており、そのうち2人(保坂展人・深田肇)が供託金没収点(有効投票総数の10分の1)未満でも復活当選をしていたことが制度上の問題点として注目された。このことにより、2000年の衆院選以降では、小選挙区において供託金没収点未満の得票だった候補者の復活当選は認められなくなった。
小選挙区で当選した比例の候補者及び小選挙区において供託金没収点未満の得票だった比例の候補者はその選挙において比例名簿から除外され、下の順位の候補者が繰り上がる。
比例代表の名簿には政党が複数の重複候補者を同一順位にすることがある。この場合、小選挙区における当選者の得票数に対する落選候補者の得票数の割合(惜敗率)を求め、惜敗率の高い候補者から比例名簿の順位が決められていく。
復活当選は小選挙区で落選しているのに、比例で救済される形で復活をするため、ゾンビやゾンビ議員と揶揄される。しかし、比例での当選を先に扱うべきで、不当な批判とする反論もある。まず比例での当選を決めて、その後小選挙区での落選が確定した、という考え方である。
比例で復活当選をした議員は、小選挙区で当選した議員と比べて、政界影響力が弱くみられている。
この制度において各政党にそれぞれの方針が存在する。民主党では全ての重複候補者を比例名簿において同じ順位にし、他の重複候補より比例順位が上の重複候補を認めていない。社民党も重複立候補が多い。自民党は重複立候補が基本であるが、他の重複候補より比例順位が上の重複候補を認めている。公明党は一人も重複候補を認めていない。共産党は重複候補を比例名簿で同一順位にしていない。
比例重複をしていない候補は比例での復活当選の保証がないため、選挙区での当選に向けて有権者に対するアピールができる面がある。一方、大政党の比例名簿上位に登載されている重複候補は復活当選がほぼ確約されているため、選挙区での当選に向けて有権者に対するアピールが弱くなる面がある。
逆に重複立候補のメリットとしては、選挙区と比例区で連動しやすくなる点が挙げられる。また、民主党のように、一律順位で惜敗率勝負にすれば、選挙区当選ができなくとも、惜敗率で復活の望みがあれば、候補者の士気を保つことができる。有権者としても、比例復活の可能性を考慮できることで、死票をある程度救済する結果になっていると言える。反面、同一順位の惜敗率勝負では、誰が復活するか予想しにくい。公明党や共産党がこれを行わないのは、組織の想定した候補を確実に当選させる思惑があると思われる。
[編集] 備考
- 得票率が低い復活当選者
位 | 候補者 | 政党 | 選挙年 | 選挙区 | 得票率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 保坂展人 | 社民党 | 1996年 | 東京22区 | 5.89% |
2 | 深田肇 | 社民党 | 1996年 | 埼玉6区 | 9.18% |
3 | 塩川鉄也 | 共産党 | 2003年 | 埼玉7区 | 10.21% |
4 | 土田龍司 | 自由党 | 2000年 | 神奈川6区 | 10.83% |
5 | 山口富男 | 共産党 | 2003年 | 東京4区 | 10.92% |
- ポスターと比例重複
党首などの党有力候補が比例ブロックと重複すると、当該比例ブロックで候補者の顔を使ったポスターが貼ることができなくなる。
2005年の衆院選では、小泉純一郎自民党総裁が比例の南関東ブロックと小選挙区の重複立候補を検討していた。理由は「比例での自民票上積み」とされる。しかし、重複すると、小泉の顔を使った自民党のポスターが同ブロックの神奈川、千葉、山梨3県で貼れなくなると言う公職選挙法の問題があったため、重複を取りやめた。