鋼の錬金術師に登場するホムンクルス
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鋼の錬金術師に登場するホムンクルス(はがねのれんきんじゅつしにとうじょうする-)は、漫画作品及びテレビアニメ『鋼の錬金術師』に登場した人物のうち、エルリック兄弟に敵対するホムンクルス及びそれに属した者に関する一覧である。
各主人公に関してはエドワード・エルリックとアルフォンス・エルリックを、作品の主要な人物に関しては関しては鋼の錬金術師の主要な登場人物を、その他の人物に関しては鋼の錬金術師の登場人物一覧参照。
目次 |
[編集] 創造主 ≪クリエイター≫
[編集] 「父」
ホムンクルス達からの呼び名は統一されていない上(「父上」、「お父様」、「親父殿」、「おとーさま」等)、本名も不明である。ここではあくまでWikipedia内での仮称として「父」と呼称する。
ホムンクルス達の親で、セントラルの地下深くに居城を構える。その容姿はヴァン・ホーエンハイムと瓜二つであり、しかも「父」はホーエンハイムをとても良く知っているらしい。
額にある第三の目から賢者の石を生み出す、擬似・真理の門を作り出す、力の循環や等価交換の原則を無視して錬金術を発動させる、あるいはアメストリス国の錬金術師達の錬金術の発動を不可能にするなど、その能力は強力であり、いまだ未知数。自ら生み出した賢者の石を使ってホムンクルス達を造り、それぞれに自らの魂を基にした七つの大罪に冠する名をつける。
人間の事は虫ケラ程度の存在としか見ていないが、自身の計画に必要な人間にはそれなりの敬意・態度をとる。アメストリス国自体が「父」によって建国されており、その理由も何らかの大きな目的のためと推測される。それゆえ、昔からアメストリス国の要人と関係が深く、現在は最高権力者が他ならぬホムンクルスで、中央の上層部の軍人が全員ホムンクルスに(ひいては「父」に)魂を売っている状態となっている。
[編集] ダンテ
イズミの師匠時の声:杉山佳寿子/ライラ同化時の声:かかずゆみ
アニメオリジナルキャラクター。原作の「父」に近い役割を持つ、いわば「母」である人物。イズミの元師匠。当初は、深い森の奥に屋敷を構えてひっそりと暮らす穏やかな老婦人だったが、実際には賢者の石の力で他人の肉体を乗っ取り、悠久の時を生きてきた女錬金術師。錬成陣なしの錬成や、赤ん坊を使って真理の門を開くなど、錬金術の腕前はかなり高い。物語の進行と共にその本性を表し、弟子のライラの身体を生きたまま乗っ取るなど、その冷徹さ、利己的な業の深さが現れてくる。また、大の人間嫌いで、それによりイズミと袂を分かつ[1]。
肉体の入れ替えに必要な賢者の石を常に確保するため、石の秘密を一般に知られないように守ると同時に、多少の賢者の石の情報を流す、あるいは争いを起こすことで、賢者の石を求めさせ追い求める者に賢者の石を作らせ、それを横取りするという計画を立てていた。そのためにホムンクルス達を使い、各地で工作活動を行っていた。ホムンクルス達は部下にしているというよりも、利用していると言った方が良く、「賢者の石で完全な人間にする」との口実で配下にしていた。それゆえ、部下として信頼していたのはエンヴィーとブラッドレイ(プライド)の二人ぐらいであり、賢者の石を勝手に使おうとしたラースからは手足を奪うなど、まったく信用していなかった。
最終的な目的は「永遠の命」であり、ライラの肉体を奪ったのもそのため。今までの賢者の石を使った方法では、相手と肉体が合わないゆえに起こる拒絶反応に加え、肉体の移動によるダンテ自身の魂の劣化のせいで、生きたまま身体が腐る(ゾンビではない)上、その周期が早まっているなどの欠点もあり、賢者の石だけではなく、真理の門の研究なども行っていた[2]。終盤では、地下都市にてホーエンハイムを真理の向こうの世界に飛ばす、アルとロゼを人質に取ってエドを迎え撃つなどしたが、最期は、自ら理性を奪ったグラトニーに襲われるという、自業自得の最期を迎えたとされている。
かなり歪んだ異常とも言える恋愛観を持っており、かつての同僚だったホーエンハイムを400年以上も恋い慕い、ホーエンハイムがいなくなるとその息子であるエドにも興味を示し、ロゼの肉体を得た暁には彼と恋仲になろうとした等、人間嫌いの割に愛欲にはかなり貪欲であった。そして両性愛者でもあり、新しい肉体と定めたロゼに対しても、只の肉体のストックとは扱わず異様なまでに大切にし、事ある毎に腰に手を回して抱き締めたり、艶かしい視線で撫で回したり顔と顔で頬擦りをしたりと同性愛のような関係を思わせる行動を見せていた[3]。ただし、単に次の自分の肉体になる身体を愛でただけなのか、本当にロゼ自身を愛してたのかどうかははっきりとしなかった。
名前の由来は叙事詩「神曲」を書いた詩人「ダンテ・アリギエーリ」から(神曲の中の煉獄篇はホムンクルスの名前の由来である、七つの大罪を題材としている)。
[編集] 人造人間≪ホムンクルス≫
[編集] 概要
色欲(ラスト)、暴食(グラトニー)、嫉妬(エンヴィー)、強欲(グリード)、怠惰(スロウス)、傲慢(プライド)、憤怒(ラース)と言う各人が七つの大罪から付けられた名と、肉体の一部にウロボロス(尾を噛む蛇の印。始まりと終わりを示す)の印を持つところ、そして黒ずくめの服に背中から基盤のような模様が伸びているのが共通。しかし、原作とアニメでは、その生まれ方、行動原理ともに異なるために、それぞれ分けて説明する。
- 原作
- 「父」から生み出される賢者の石を核とする。その際、石はそれぞれに七つの大罪を冠した「父」の魂という面を持ち、生み出されたホムンクルスは、その与えられた名(業)に関係する性格、行動原理を持つ。また賢者の石内の魂の数だけ命がある。
- 生まれてから既に完成した人格、豊富な知識を備え、創造主への愛情として基本的に「父」のために行動する。ただし、グリードのように、与えられた業に忠実であるがために離反するものもいる。
- ホムンクルスの製造方法は、グラトニーのように「父」の体から直接生み出されることもあれば、ラースや二代目グリードのように、生身の人間に賢者の石を注入することで生み出す場合もある。こういった人間ベースのホムンクルスは、優れた身体能力や各々の特殊能力は問題なく有しているが、人間同様に成長・老化していき、特にラースに関しては老化による身体能力の衰えがみられる。またホムンクルスの特徴の一つである基盤模様はなく、魂(命)も一つしか残らないため、一度死ぬと蘇生する事はできない。
- アニメ
- 人体錬成の失敗によって生み出された、人の形を成していない“出来損ない”に、賢者の石の未完成品「紅い石(アニメのみの名称)」を食べさせることにより、人間と同じ形を持たせた者達一般のこと。ゆえに、それぞれのホムンクルス達には、それぞれベースとなった人間とその死体(遺品)が存在し、それが弱点となる(ただし、ラースの場合はイズミが錬成した子供を門の向こう側へ送ってしまったため、遺品は存在しない)。しかし、必ずしも生前の人間と完全な同一人物という訳ではなく、ラストやスロウスは人格が異なっている。それゆえに自分達の中に残った、ベースとなった人物の生前の記憶に苦しみ続けた。
- 七つの大罪に基づく名は、ダンテが適当に割り振っただけという面が強く、ホムンクルス達自体には基本的に関係がない。原作と比べると、それぞれの名の性格よりも、ほぼ全員冷酷さの方が出ている。
- 基本的に「完全な人間になりたい」という欲求のために行動する(エンヴィー・プライド・グリードを除く)。アニメ版は、彼らの感情をダンテが利用し、自身の「賢者の石を手に入れる」という目的の駒として利用している。
- すべてダンテが製造したというわけではなく、他人が作ったホムンクルスに「紅い石」を与えることで仲間に引き込んでいる場合が多い。エンヴィー(製作者:ホーエンハイム)・ラスト(スカーの兄)、スロウス(エドとアル)・ラース(イズミ)が典型的な例である。
[編集] ラスト
「色欲」の名を持つ人造人間。妖艶な美女の外見を持ち、胸元にウロボロスの紋章を持つ。指先を伸縮自在の鋭利な刃に変えることができ、自在に操りすべてを貫くその強度から「最強の矛」と呼ばれるほどの凶器となる。腕を組む癖がある。身体能力は高いものの、戦闘能力自体はホムンクルスの中では低い方。「色欲」である割には原作アニメ共に男性を誘惑したりする素振りがあまりなかった[4]。年長である事を少し気にしてるのか、おまけ4コマではエンヴィーに冗談半分(ちょっかい)で「おばはん」呼ばわりされてキレていた(彼女の方が年下であるアニメ版では言われない)。
原作では2番目に作り出された。「父」の片腕として計画遂行の行動隊長的役割を担っており、エルリック兄弟を尾行したり、「ソラリス」の偽名を使ってハボックと接触しマスタング一派を探ろうとする等、舞台の表と裏とで暗躍した。そして正体を現し、第三研究所でマスタングと対決。一度は勝利したかに見えたが、彼の凄まじい執念の前に敗北。謎の言葉を残し消滅していった。彼女の死と共に、核である賢者の石がエネルギーを使い果たし消滅したため、2代目が生まれる確率は極めて低いと思われる。
- アニメ版の原作との差異
- 声:佐藤ゆうこ。
- アニメ版でのベースは、傷の男の兄の恋人。彼が恋人を蘇らせようと行った人体錬成から生まれた。失った人間を蘇らせようとする者、戦乱に喘ぐ故郷を石の力で救おうとする者など、さまざまな人間達に賢者の石を追わせ、実際に石を錬成できるレベルの者を探していた[5]。性格は基本的には(原作同様)冷酷だが、ホムンクルスの中では一番人間臭い一面を見せ、賢者の石の力で完全な人間になりたいと強く願っている。立場と境遇が似ているせいか、スロウスに対して友情にも似た親近感を持っていた。
- 終盤にて生前の記憶の一部を取り戻し、創造主であるダンテの奴隷同然の扱いに我慢できなくなり、遂にダンテと決別してエルリック兄弟の側に寝返る。同時にスロウスとも人間になりたい理由の相違[6] から袂を分かち、彼女の封印に手を貸した。それに激怒したラースも封印しようとしたが、封印の錬成陣に引っかかってしまい、ラースの錬金術により賢者の石を吐き出され、封印されてしまった。今際の際の彼女は、自らが欲していたのは“人間としての死”だったことを自覚し、やっと呪縛から解放されたかのような穏やかで安らかな表情を浮かべていた。最後まで悪の女性幹部的なキャラとして最後を迎えた原作とは違い、ホムンクルスの悲劇性を象徴した悲しい女性であったと言える。
- この「ラスト」以前にも、別の「先代のラスト」が存在していた(詳細は不明)。ちなみに、一部のセリフや状況に原作のグリードのものが流用されている。
[編集] グラトニー
「暴食」の名を持つ人造人間。舌にウロボロスの紋章を持つ。
体型は坊主で丸顔に丸い巨体という肥満体[7]。能力は材質、質量問わずどんな物質でも食べてしまうことであり、その能力とホムンクルスの不死性、そして巨体を生かした猪突猛進な攻撃を行う。
性格はのんびり屋かつマイペースであり、無邪気な子供そのもの。自分の食欲に忠実で「食べていい?」が口癖。この際に中断・禁止されても、大抵守らず食べてしまう。それ以外に関しては、攻撃などをする際に仲間の許可を待つといった受動的な面が目立ち、「自分の意志」という面で欠如が見られる。特にラストを慕っており、原作・アニメ共にラストが倒された後はかなり落ち込んでいる。
原作・アニメ共に、その誕生はそれぞれの創造主の確固たる目的を持って作られているという点で、他のホムンクルス達とは一線を画す。先の意志の欠如もこの辺りが関係していると推測される。
原作では6番目に作り出された人造人間。「父」が真理の扉を作ろうとした結果、失敗して誕生した「擬似・真理の扉」である。グラトニーが自分の容積以上の物を食べることができる理由がまさにこれであり、食べられたモノはすべてこの空間へと送られる。感情が高ぶると口調が一変し、腹が割れて口と繋がり肋骨を牙と見立てたような縦向きの大きな口が現れる。その中心には目があり、真理の扉が開いた時に似ている。この口によって棒放射状に対象を飲み込んでしまうということが可能(ただし、リンと戦った時にエンヴィーが「飲んでいいよ」という許可を出そうとしていたことから、感情が高ぶることが飲み込みを行うための条件というわけではない)。攻撃スタイルが災いし死にすぎた結果、石の再生力を使い果たして回復不能に陥り、現在「父」に賢者の石を取り出されて一時的に死亡した状態になっている。
- アニメ版の原作との差異
- 声:高戸靖広。
- アニメ版ではベースは不明。ダンテによって、賢者の石や赤い石の結晶化のために作り出された。ラストと共に行動することが多く、彼女の死を知った後は悲嘆に暮れ、賢者の石となったアルを純粋な賢者の石へと結晶化するために飲み込ませようとするダンテの思惑通りに行動しないことから、ダンテによって理性を消し去られ、単なる食欲だけの存在となって暴走する。最終回で暴走した状態でダンテと共にエレベーターの中へと消えた[8]。
[編集] エンヴィー
「嫉妬」の名を持つ人造人間。左脚の太腿にウロボロスの紋章を持つ。敵ではあるが、人気投票ではホムンクルスの中では唯一10位以内にはいっていたりと、人気は高いようである。
自由自在に外見を変化させる能力で、色々な人物や、或いは犬や馬といった動物に化けることができる。普段の容姿は長髪で中性的な顔立ちだが、それも変身した姿である。また、身体の一部の武器に変えたりと戦闘にも対応できるが、機械のような複雑過ぎるもの[9]や変身した対象の能力まではコピーできないのが弱点。
ヒューズ殺害の際に演出、エドやマルコーを余裕でからかったりと、度々出てくる人を心底見下した態度に現れているように、性格はひょうきんで皮肉屋だが、本性はホムンクルス一残虐であり、陰険かつ残忍。また、一旦キレると手がつけられない。それに関連し、ラストは「仲間内で一番えげつない」と評する。マルコーが傷の男による偽造工作で生きていることを勘付いたりと、ただの殺人狂ではない小賢しい面もある。「父」に対しては忠実に従っているが、プライドに対して畏怖にも似た感情を見せていたり、ラースや2代目グリードといった人間ベースのホムンクルスをかなり見下していたりと、仲間内でもやや孤立気味。その反面、よく仕事を共にするラストとグラトニーに対しては仲間意識のような、好意を持っている面も見せる[10]。
自らの能力を活かして穏健派の将校に化け、イシュヴァールの内乱のきっかけとなった発砲事件を起こしたり、ラストによって始末されたコーネロに化け、リオールの暴動を引き起こしたりしたりと、彼らの目的のための戦争を引き起こす、重要な役割を持つ悪役らしいキーパーソンの存在として活躍している。ちなみに、人間に対して『極悪非道』であることは原作とアニメで共通しているが、殺戮を起こす理由は異なる。だが、人間に対しての私怨がある事も共通している模様。
原作では4番目に作り出された人造人間。本来の姿は人間の姿とは大きくかけ離れた怪物の姿である[11]。人間よりも遥かに巨大であるため、当然ながら体重もかなりあるが、人間サイズに変身しても「質量が減る」訳ではないため、見た目に反して常人の数十~数百倍もの体重を持つ。リン達と交戦した際に「エンヴィーの着地した地点だけ鉄骨がひん曲がったり地面にめり込んだりしていた」点を発見され、そこから「本来の姿はもっと巨大なのではないか」と看破される。他のホムンクルスとは違い、エネルギーとなるクセルクセス人の魂が賢者の石に凝縮されているだけではなく、身体中から生えている[12]。本来の姿に戻った後は変身能力を使わずグラトニー並みの力任せの攻撃を続け、エドと一時休戦をして心理の扉を潜る際もそのままの姿だった事から、一度この姿に戻ったあとは暫くの間他の姿に変身できないと推測され、この点もこの姿になりたがらない要因の一つと思われる。
- アニメ版の原作との差異
- 声:山口眞弓。
- アニメ版では、ベースはホーエンハイムとダンテの息子となっている。かつて水銀中毒により死亡したのを、ホーエンハイムが人体錬成した結果として誕生した。しかし、この後はダンテの前から去り、それを捨てられたと思い込んだようで、ホーエンハイムがいなくなった後に悲惨な環境で生きた経験を持つからか、原作版以上に極悪人。本来の姿(=生前の姿)は、ホーエンハイム(若々しい姿であればエド)にそっくりである。
- 他のホムンクルス達と決定的に違うのは、生前の母親でもあるダンテの目的をすべて察しており、「人間になること」よりも「人間を苦しめること」に重きを置き、「人間がすべて滅んだ時にやっと忘れることができる。どうして僕が生まれたかと言う事を(要約)」と述べている。そのためラスト等の前では、仲間思いの面を演じていた。また、生前の記憶を完全に受け継いでおり、苦悩したラストやスロウスとは違い、逆に憎しみの糧とした。同じ父・ホーエンハイムから生まれた[13]エルリック兄弟を激しく恨み、終盤近くで人間(特にエルリック兄弟)への憎悪を向けた本性を表し、クライマックスでは一度エドを殺害。その後、アルがエドを人体錬成しようと試みた結果現れた門の向こうにホーエンハイムがいることを知り、ホーエンハイムに会うためにリヴァイアサンに変身し、現実世界へと消え去った。
[編集] グリード
「強欲」の名を持つ人造人間。左手の甲にウロボロスの紋章を持つ。
体内の炭素の結合度を自在に変化させ、皮膚をダイヤモンド並に硬化させる『最強の盾』と呼ばれる能力を持つ。この盾は硬いという特性上、防御だけでなく攻撃にも転用可能。全身を覆うこともできるが、その際にちょっとブ男になる[14]という理由で、本人はあまりこの姿になりたがらない。この姿の時には絶対の防御力を誇るが、「硬化と再生を同時に行うことができない」「全身を硬化させるのに時間がかかる」などが弱点。炭素を操ると言う仕掛けがばれて以降、エドには硬化するそばから炭素結合を操作され防御を破られてしまい、キング・ブラッドレイとの戦闘ではそもそも硬化による防御が間に合わないなど、最強の盾と言う割に他にも弱点も多い(確かに硬化してしまえば殆どの物理攻撃が通用しないのだが)。普段の姿と盾を全身に覆った姿の、どちらが真の姿なのかは定かではない[15]。
原作版では3番目に造られたホムンクルス。ラストとは双子のような関係。「ありえないなんて事はありえない」が口癖。己の業である強欲を満たせないとして、100年ほど前に「父」の元から離反。その後は、軍部の実験で合成獣となった元兵士達を主とした世間のはみ出し者達を集めて、ダブリスの「デビルズネスト」を根城に自由奔放に生きていた。しかし、ブラッドレイ率いる軍部のデビルズネスト殲滅戦にて壊滅させられた。部下がブラッドレイに倒された際、彼(グリード)は「世の中の全てのものが俺(グリード)の所有物だから(駒でも)見捨てねぇ」と怒鳴りつける[16]が、この発言でブラッドレイをさらに激怒させた。
デビルズネスト殲滅戦にてブラッドレイに敗退し、「父」の元へ連れて行かれる。再び「父」の下で働かないかと言われたが、己の業が満たされないことから拒否。賢者の石に精製し直され「父」の体内に戻された。その後グリードの席は空席となっていたが、ホムンクルス達のアジトに侵入したリンに「強欲」の賢者の石を注入。ラース同様の人間ベースのホムンクルスとして再び復活した。
二代目グリードは初代グリードと魂は同一であるが、初代の記憶を持ち越してはおらず、今のところ初代とは違い「父」への忠誠心は失っていない。「完全なグリード」という存在とは言えず、リンの意識も残っている。そしてグリードはリンの志に僅かながら共感したり、リンはグリードに体の中から頼み事をしたりと、今のところ二人は妙に気が合っており、奇妙な友情めいたものが生まれている[17]。
- アニメ版の原作との差異
- 声:諏訪部順一。
- アニメ版ではベースはかつてダンテに恋心を抱いていた人間(素性は不明)。見た目や能力などの設定は原作と同じ。実験体としてダンテの人体錬成により誕生。ダンテとしては愛情を餌にコントロールしようとするも思い通りにならず、結果、封印される。その後、140年の封印を経て脱走し、原作同様に合成獣になった元兵士達を部下として行動する。最期は、ダンテの下に赴くも罠にはまって体内の赤い石(=生命源)を吐き出され、弱ったところをダンテを殺したと勘違いしたエドによって倒される。その際、心のどこかで死を欲していたのか、ホムンクルスの弱点をほのめかして息絶えた。
[編集] ラース
「憤怒」の名を持つ人造人間。原作とアニメでは、正体がまったく違う。
原作では7番目に造られたホムンクルス。キング・ブラッドレイの正体。左目の眼球にウロボロスの紋章を持つ。
他のホムンクルス達とは違い、人間の体に賢者の石を注入され、その高エネルギーに耐えた末に誕生した人間ベースのホムンクルス。ホムンクルス達曰く「最後の詰め」に用意された切札的存在。ホムンクルスとしての能力は、銃の弾道も見切る動体視力を持った『最強の目』。そこにホムンクルスの身体能力を生かした素早い動作で敵を剣でなぎ倒していく。油断したグリードに隙を与えずに倒すなど、その戦闘能力はホムンクルスの中でも群を抜く。表向きは人間ということもあり、人柱(=優秀な錬金術師)を集めるために国家錬金術師制度を設けるなど、他のホムンクルス達とは違った役割を果たしている。
人物像についてはキング・ブラッドレイの項を参照。
- アニメ版の原作との差異
- 声:水樹奈々。
- アニメ版ではオリジナルキャラクター。右足の裏にウロボロスの紋章を持つ。ベースはイズミの子供。人体錬成によって生まれた後は、「門」の向こうへと送られ、その中で成長していた。別の物質と融合することで、その能力を自在に扱うことのできる能力を持ち、門の中でエドが持って行かれた手足を発見しそれと融合、それにより人の形を手に入れ門から脱出。当初は純真無垢な子供そのものであったが、エンヴィーから紅い石を与えられ真実を知ってからは凶暴な性格へと変化した。
- 本来、ホムンクルスは錬金術を使えないのだが、ラースのみエドの手足と融合したために唯一錬金術が扱え、自らの融合能力と併用して高い戦闘能力を獲得。また、イズミはラースを錬成する際、赤子の遺体そのものを代価として使用したため、遺骨などの物としての弱点は存在しないが、赤ん坊の泣き声を聞くとトラウマが呼び起こされるのか錯乱する。与えられなかった母性を求めるかのようにスロウスを「ママ」と慕っていたが、スロウスはエドによって封印されてしまい、深い孤独感に陥れられる。賢者の石で生き返らせようとダンテに懇願するが怒りを買わせ、ダンテに門を開けられ(エドの)手足を奪い取られ、結果として錬金術を使えなくさせられた。また、スロウス封印の際にそれに手を貸したラストに激怒し、錬金術をもって封印した。
- 「紅い石」を与えられたとはいえ、ベースとなる人としての姿はエドの手足によるものであったためか、手足を奪われた後も再生することはなかった。それゆえ最終回では、ウィンリィがエドのために造った機械鎧を付けてもらった。
[編集] スロウス
「怠惰」の名を持つ人造人間。ラース同様、原作とアニメでは、正体がまったく違う。
原作では5番目に造られたホムンクルス。右肩の後ろにウロボロスの紋章を持つ。原作では筋骨逞しい体型の大男。ホムンクルスの特徴の一つである基盤模様が顔の右半分にまで伸びており、隻眼になっている。
性格はとにかくものぐさで、口調さえも片言。口癖は「めんどーくせぇ」。だが、彼もエンヴィー、グラトニー同様プライドの命令には(レイブン越しでも)逆らえないらしい。100年以上前から、アメストリス地下で穴(もしくはトンネル)を掘る役割を任されているが、サボり癖ゆえに未だ完了に至っていない。その最中に地下施設から真冬のブリッグズ要塞に迷い込み、オリヴィエらの手により、揮発性の高い燃料をかけられた上で外に追い出され、凍結されていたがレイブンの手によって復活し、仕事を再開した。
現段階では真の能力は不明だが、単体で巨大かつ長距離なトンネルを掘り進むほどの怪力と、大量の砲弾を受けても傷自体がつかない強靭さを誇る。しかし動きはかなり鈍重で、グリードからは「のろま野郎」呼ばわりされていた。
- アニメ版の原作との差異
- 声:鷹森淑乃。
- アニメ版ではオリジナルキャラクター。左の乳房にウロボロスの紋章を持つ。ベースはエルリック兄弟の母・トリシャ。表向きは大総統秘書官ジュリエット・ダグラス大尉。
- ホムンクルスとしての能力は身体の液状化。それにより、いかなる場所にも侵入でき、また戦闘時には自由に伸ばして敵を絡め取ったり、遠心力をかけることにより敵を粉砕するなどといった武器にもなる。また、直接攻撃を無効化できる。
- 性格はトリシャとは正反対に冷淡で、表情をまったく変えないがラスト同様に人間になりたいと強く望んでおり、そのためにダンテの命令には忠実だった。人格そのものはトリシャとは異なる[18]が、トリシャの記憶が一部残っており、そのために自分が死んでいる事を自覚しかけていた。そのために、人間になろうとしているホムンクルスである自分と、既に死んでしまっているトリシャという二つの人格のジレンマを感じて苦悩し、エド達を倒すことでトリシャとしての自分を否定しようとした。
- 賢者の石となったアルを捕獲しようとエドと交戦。自分がトリシャに似ている事を逆に利用する狡猾な面も見せ、有利な戦いを展開するも、弱点であるトリシャの遺骨を取り込んだラースと融合されて動けなくなり、身体の全成分を揮発性の高いエタノールに再構築された。そして、最期はトリシャとしての言葉を残し蒸発したが、人格がトリシャに戻ったのか、それともトリシャの人格の言葉を代弁しただけなのかは不明。結果として、5年というホムンクルスとしてはかなり短い生涯であった。
[編集] プライド
「傲慢」の名を持つ人造人間。スロウス同様、原作とアニメでは、正体がまったく違う。
原作ではホムンクルスのリーダー格。表面上はブラッドレイ(ラース)の息子、セリムとして振る舞っている。常に慇懃な丁寧語で喋り、グラトニーなどの「弟」をかなり見下している節がある。自らの影を自在に操り、その影に入ったものを消滅させると言う桁違いの能力を持っている。[19]その能力でブリッグズの地下道に入った兵士達を次々と行方不明にさせた。頭に血が上っていたエンヴィーを黙らせたり、ものぐさなスロウスも彼の言葉に逆らえなかったりしているなどのことから、「父」に次いで絶対的な権限を持っていると推測される。[20]
ホムンクルスの中では最も初めに作られたので「始まりのホムンクルス」ともいう。ラースの能力を評価しており、彼の反逆とも取れる発言に少し危惧したこともあったが、あくまで軽口と見て「父」には報告しなかった。また、作中から国家錬金術師の最終選定は彼とラースによって選定されている物と推測される。
- アニメ版の原作との差異
- 声:柴田秀勝。
- アニメ版におけるキング・ブラッドレイの正体。一応はこちらも、ホムンクルスの中ではリーダー格。ベースは不明。能力などの設定は原作のラースと同じだが、原作とは年をとるメカニズムが違い、ホムンクルスは見た目を変えられるという設定から、己の見た目を変えることで年を取ったように見せていた。またマスタング戦において正体を現した際、背中から基盤模様が伸びたことが確認されている。ダンテの最高傑作であり、最も忠実な部下として、効率良く人間の命を集めて賢者の石を得るために軍部を支配。賢者の石から軍部を遠ざけ、その一方で数々の戦争や内乱を起こすといったホムンクルス達の中でもかなり大きな役割を持っていた。
- 養子のセリムに弱点である自らの頭蓋骨を託すが、何も知らないセリムはそれをマスタングと戦闘中に持ってきてしまう。激怒した彼は息子を絞め殺してしまうが、時既に遅くマスタングに頭蓋骨を奪われ動けなくなったところを、命が尽きるまで焼き尽くされて滅ぼされた[21]。
[編集] 関係者
[編集] 研究所実験体
- スライサー(ナンバー48)
- 元第五研究所死刑囚(兄の声:大滝進矢/弟の声:坂口候一)。
- 日本刀に似た刀を使う二人一組の殺人鬼で、鎧の頭部に兄の、胴部に弟の魂が封じられている。実は20代の故人で、「おっさん」ではない。エドを圧倒する鋭い太刀筋の持ち主。エドとの戦い敗れた後、主犯格をバラす寸前、ラストとエンヴィーに口封じのため、始末されてしまう。余談だが兄は猫派、弟は犬派らしい(おまけ4コマより)。兄弟がケンカになった際には、弟の一方的な暴行になってしまう。
- アニメ版の原作との差異
- アニメ版での弟はエドから人間と認めてもらえた嬉しさから自分で血印を破壊し自害、兄は真相に近づいた所でラストにエドヘの見せしめとして抹殺された。
- バリー・ザ・チョッパー(ナンバー66)
- 元第五研究所死刑囚(声:伊藤健太郎)。
- 中央で23人を殺した狂気の殺人肉屋。人間を切り刻むことに快感を覚えている。死刑を免れる代わりに鎧に魂を封じられ元第五研究所のガードマンとなっていた。アルと戦った際、彼の心にエドに対する疑惑を吹き込む。その後研究所を逃走。偶然襲おうとしたホークアイ中尉の強さに惚れこみ彼女を「姐さん」と慕い、マスタング大佐に匿われる。その後、「行動の自由を手に入れるためにはホムンクルス達を壊滅してもらうのが一番」と考えマスタング達に協力する。しかし合成獣の魂を入れ込まれた本来の肉体によって発見され、彼がマスタングらに手を貸したことに腹を立てたラストによって鎧の身体を切り刻まれ、むき出しになった血印を自分の魂の開放を望む肉体に壊されるという哀れな最期を遂げた。実は既婚者であり、最初に殺した相手は妻である[22]。
- 余談だが、『方法序説』の命題「我思う、ゆえに我あり」をもじった持論(「我殺す、ゆえに我あり」)を語っている。
- アニメ版の原作との差異
- アニメ版では逮捕前の生身(生前)の姿でも登場。生前(三年前)は妻を殺した事を機に凶悪殺人鬼になっており、犠牲者のみならずエドとウィンリィも襲った。その事件もまたアニメ版エドのトラウマの一つである。エド・アル・スカーとの戦闘の結果、仲間であったウィルソンの錬金術の暴走に巻き込まれ、鎧の身体がバラバラになった後、スカーに踏みつけられ消滅した。
[編集] グリードの部下
- ドルチェット
- 犬と人間で造られた合成獣(声:松本保典)。
- 元軍人。犬との合成獣のため、性格は楽観的で忠誠心が強い。犬の能力として鼻が利き、足が素早い。武器は刀。決して弱くないが、戦った相手がエルリック兄弟やイズミというように極めて相手が悪く、負ける場面が多かった。デビルズネスト殲滅戦にて最期はブラッドレイに殺される。
- アニメ版の原作との差異
- アニメ版では軍人としての経歴はロアやマーテルと共に特殊工作部隊に所属していたことになっていた。34話にて三人(グリード・マーテル・アル)を追ってきたラストとグラトニーから彼らを逃がすために立ち向かい殺害された。
- ロア
- 牛(バッファロー)と人間で造られた合成獣(声:うえだゆうじ)。
- 元軍人で、イシュヴァール戦争時に一兵卒として参加しており、原作の第15巻でその姿を時折確認できる。アームストロング少佐とは面識がある。牛に近い怪人体[23]に変身できる。武器は大きなハンマー。肉弾戦を得意とするが足はそれほど速くない(ドルチェット曰く「鈍牛」)。デビルズネスト殲滅戦ではアームストロング少佐と互角に戦うが、最期はブラッドレイによって殺される。
- アニメ版の原作との差異
- アニメ版では軍人としての経歴はドルチェットやマーテルと共に特殊工作部隊に所属していたことになっていた。イシュヴァール戦の回想編では戦闘に参加している姿が見受けられる。ドルチェットと一緒にラスト・グラトニーと戦い死亡。また、怪人体への変化が角と声のみに変更され服を脱ぐ描写がなかった。
- マーテル
- 蛇と人間で造られた合成獣(声:笠原留美)。
- 元軍人でグリードの部下の中では唯一の女性。蛇の能力として身体の関節を自由にはずす事ができ、それを生かしてアルの鎧の中に潜り込んだ(以後アルの監視の役目を負う)。武器はナイフ。デビルズネスト殲滅戦にて最期はアルの鎧に入ったままブラッドレイに殺される。皮肉にも、彼女の血液がアルの「血印」に触れることでアルは「真理」での記憶を一部取り戻した。
- アニメ版の原作との差異
- アニメ版ではデビルズネスト殲滅戦では生き残り、しばらくエルリック兄弟と行動を共にする。裏切ったキンブリーや仲間を殺害したブラッドレイへの復讐のために行動するも、原作同様アルの鎧の中でブラッドレイになす術なく刺殺されてしまった。その際、マーテルはアルに「大総統…あの男は…ホムンクルス」と伝え、兄弟やマスタングらが大総統の正体を知るきっかけを作った。軍人としての経歴はドルチェットやロアと共に特殊工作部隊に所属していたことになっていた。
- ビドー
- トカゲと人間で造られた合成獣(声:大川透)。
- トカゲとの合成獣という体を生かして垂直な壁を登ることができる。作中では魂の錬成を確認するためにエルリック兄弟を挑発した。デビルズネスト殲滅戦で唯一生き残る。その後はどうしているのか不明。
- アニメ版の原作との差異
- アニメ版ではキンブリーと行動していたが、爆弾に作り変えられそうになったため、絶交した。デビルズネスト殲滅作戦で射殺される。
- ウルチ
- グリードの部下。
- ワニと人間で造られた合成獣。元軍人で女好き。イズミに鼻の下を伸ばして襲い掛かるが、シグに殴り倒される。デビルズネスト殲滅作戦で射殺される。
[編集] ライラ
声:かかずゆみ
アニメオリジナルキャラクター。錬金術師の少女で、おかっぱ頭が特徴。 初登場時はユースウェルでヨキ中尉に仕えていた。国家・軍部に尽くし[24] 国家錬金術師になろうとしていたがエドと戦い、敗北してからは純粋に大衆のための国家錬金術師になろうと見つめ直し、ダンテのところへ弟子入りする。ダンテの元では前には見せなかった無邪気な笑顔を見せる等充実した日々を送っていたようだが、師であるダンテに裏切られた挙句、生きたまま身体を乗っ取られ(殺された訳ではなく、体のみは生きている)夢は途絶えてしまった[25]。その容姿・境遇・悲しい結末も相まってか、一部では(ダンテに乗っ取られた以後も問わず)アニメオリジナルキャラの中では高い人気を得ている。
劇場版では、フリッツ・ラングの撮影所でお茶を出す女優として登場。このときの彼女はエドに対して無愛想であった。
[編集] ロゼ・トーマス
声:桑島法子
レト教の信者。アニメ版ではダンテと(いろんな意味で)深い関係の人物なので、ここに分類。
東方辺境の町娘。昨年恋人[26]を亡くし落胆していたが、恋人を復活させてくれるというレト教を信じていた。しかし、エド達によってコーネロの教えが嘘である事を知らされ失望する。エドに諭された後、どうなったのか不明。巻末のおまけ四コマでは国外に渡り、騎馬民族を率いて覇道を極めた事になっている。
名前の由来は、作者荒川弘が「酒屋のチラシ」で決めたと語っていることからロゼワインと考えられる。
- アニメ版の原作との差異
- アニメ版では準レギュラー(キャラ紹介として準レギュラーと紹介されていた)として出ていた 。イシュヴァール人の女性という設定[27]。リオール内乱の時一度軍部へ連れて行かれた際に暴行され[28]、戻ってきた時には父親が誰かも分からない子を儲け、一時は言葉を失っていた[29]。その後リオールの町を錬成陣に賢者の石を造ろうと企てるスカーにカリスマ的人物に仕立て上げられ、人々に「聖母」として慕われる。リオール消滅後、ダンテにより男に虐げられた心の隙間につけ込まれて洗脳される[30]。しかも、そのダンテの狙いはロゼの身体を乗っ取る事であり、計画通り身体を乗っ取られそうになったが、エドが殺されると言う目の前で起こった惨劇のショックで正気を取り戻し、賢者の石が消滅したために乗っ取られることはなかった[31]。後日談ではウィンリィ達の家に居候している。子供も成長していた。劇場版では復興したリオールの町に戻っている。
[編集] アニメとの差異考察
原作とアニメで設定が最も異なっているのはこのホムンクルスについての条項である。原作におけるホムンクルスは連載中の現在判明していることだけを取り上げると、創造主たる『父』なる存在から正確に七つの原罪を賢者の石として抽出し、過去にも現在にも存在しない全く独立した「オリジナル人造人間」を創造し、それぞれの名称においても抽出した原罪を正確に付名している。この場合の彼らは、自らのアイデンティティを迷う事無く創造主たる『父』に置き、ホムンクルスとして一般の人間に対して優越意識を持つ。アニメ版のラストが終盤にてダンテ側を裏切った一方、原作版のラストはロイ・マスタング相手に最期までホムンクルス陣営の尖兵として死闘を繰り広げたのもこの相違から来るものである。
一方でアニメのホムンクルスの場合、上記の通り、錬金術師達が様々な状況において失った人の復活を願って人体練成を行い、そこから生まれた"人の形をしていない"肉体に命の集積体である赤い石を投与したものであるが、ホムンクルスの総括者たるダンテはあくまで最終段階の赤い石の投与のみを担い、出来上がったホムンクルスと「人間にしてやる」という約束を取り交わし、賢者の石探しに使役していたに過ぎない。従ってこの場合のホムンクルスは言わば「複製体としての人造人間」であり、核となる人物像は過去に実在し、それぞれの名称は人間の原罪と呼ばれる7つの人間の性質から、各個人の性格に最も近いものを付名したに過ぎない。
アニメにおいて実際その約束を期待していたのはラストとスロウスのみであったが、彼女らの場合、やはり終盤において コピー体としてのアイデンティティに苦悩している描写があった。この場合、まず統括者であるダンテに対する忠誠心がどこから発していたのか、限定的であるとはいえ練成対象となった人物の記憶を持ちながらも自身のアイデンティティをその対象の人物と同一化しなかった(ホムンクルスではあるが、イシュヴァラの女やエルリック兄弟の母親としての生を得ることをしなかった)理由は何か、自分は人間でない、ホムンクルスなのだという猛烈な差異意識の自己認識があったのはホムンクルス生来から由来する認識なのか等、様々な疑問も残る。
以上のことから、原作版から派生したアニメ版のこの作品では、ホムンクルスについての内容を大幅に変更することによって、「人体練成と失った人に対する生きている人々の思い」を焦点として明示できる形となっており、その悲劇性を取り扱い、登場人物達のこれらに対する認識の仕方、及び行動、苦悩、そして結末の意義などを原作と異なる形で引き出すことに成功していると言える。
[編集] 注釈
- ^ 森の奥で暮らしているのもそれが理由。
- ^ 周期が早まったせいで賢者の石を必要とする期間が短くなったという面もある。
- ^ 本編では修正されていたが、49話の予告ではロゼを見てうっとりと頬を赤らめている。
- ^ これは掲載している雑誌ガンガンが少年誌であった為だが、アニメ版ではウィンリィやロゼ、ダンテとの比較でファンからネタにされている。
- ^ それらの戦争や悲劇も、石を作らせるべくダンテによって故意に引き起こされたものだった。
- ^ スロウスは今の自分のまま人間になりたかったが、ラストは昔の自分を取り戻したかった。
- ^ 容姿のモデルは「スノーマン」。
- ^ ダンテを食い殺したような演出となっているが、それによって「ダンテが死亡した」とは明示されていない。
- ^ アニメでエドに変身した際には機械鎧もコピーしていたが、見た目だけと思われる。
- ^ ラストに対して憎まれ口を言っていたが、ラストが消滅したことを知った時は動揺し、ラストを助けなかったラースに激怒していた。
- ^ 八本足の黒ヤモリが巨大化したような姿。右目は黒い目に赤い瞳で、左目には小さな目が8つもある。
- ^ 本人にとってはこの姿がコンプレックスとなっており、「不細工」或いは「ゲテモノ」と呼ばれるとキレてしまう。
- ^ 血縁上の繋がりは全くないとされる。仮に血縁関係があるとすれば異母兄弟。
- ^ スパイダーマンのベノムのような容姿。
- ^ 但し、リンと初めて対峙した時は盾を全身で覆った姿であった。
- ^ この発言も後にリンと共感する事になる要因の一つである。
- ^ 生来の自由を求める気質故か、リンに感化されてか融合して以降は、大総統府の屋上で物思いに更けているシーンが多い。
- ^ 顔立ちもトリシャよりも大人びて、髪型も違う。
- ^ ただし、セリムの肉体と影のどちらが本体なのかは現時点では不明。
- ^ エンヴィーの態度からしても、「長男」に対しての敬意よりも彼の能力に対しての恐怖で縛り付けている可能性が高い。
- ^ このシーンは、原作のラストの最期を流用したと思われる。
- ^ 妻はラストに似ていたらしいが、素性は不明。
- ^ 「角が生える」「髪が逆立つ」「爪が伸びる」等といった変態。
- ^ と、言うよりはヨキに言葉巧みに騙されて、彼のボディーガードのように利用されていた。
- ^ ライラの魂は乗っ取られた瞬間消滅したか、ダンテの魂と同化したと思われる。薄幸の少女と呼ぶべき存在だった。
- ^ アニメ版ではケインという名の青年、但しフュリー曹長ではない。
- ^ ただし瞳の色は違うため、混血と思われる。
- ^ この際、一番最初に暴力を振るったのはハクロ少将であった。
- ^ 原作者はアニメ雑誌において、この展開に対し難色を示している。
- ^ 洗脳されていたときは虚ろな目をしていたが、記憶がないと言う訳ではなく、ダンテには自分から擦り寄るなど完全に彼女に気を許し、恋人のような関係になっていた。
- ^ 但し、正気を取り戻して以後もダンテを拒む様子はあまりなく、ロゼの方はダンテの事は憎からず思ってたようである。
[編集] 関連項目
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