随伴現象説
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随伴現象説(ずいはんげんしょうせつ、Epiphenomenalism)とは、心の哲学において、物質と意識の間の因果関係について述べた形而上学的な立場のひとつで、『意識やクオリアは物質の状態に付随しているだけの現象にすぎず、物質にたいして何の因果的作用ももたない』というもの。すなわち、意識は脳の活動に付随するだけの副産物のようなものにすぎず、因果的に無力な存在だと考える立場のこと。
随伴現象説を唱える論者は、その前提事項として、物質と意識を 何らかの意味で別の存在であると捉える二元論の立場を取っている。随伴現象説と対立する立場に相互作用説がある。
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[編集] 理解
随伴現象説の考え方を説明する場合、例え話として、『工場と煙』の話が使われることが多い。ここではその例え話について説明する。まず煙突をもったある工場について考えてほしい。このとき工場の稼動状況と、煙はどんな関係にあるだろうか?
工場で生産を始めると煙突からは煙が昇り、生産を止めてしまえば煙も止まるだろう。 つまり煙の状態は工場の生産状況によって決まる。
しかしこれと逆のことはあるだろうか?つまり煙が出てきた事が原因となって突然 工場が生産を始めたり、煙がなくなったことが原因となって生産が勝手に止まるなどということがあるだろうか。こうした事は普通起きないだろう。
つまりこの時、原因と結果のつながりは 工場から煙への一方向だけであり、煙から工場に対しては何の因果的作用もない。以上の関係をまとめると次のようになる。
- 煙の状態は工場の生産状況によって決まるが、煙は工場の生産状況に対して何の影響も及ぼさない。
随伴現象説は物質と意識に関して、これと同様の関係を主張する。つまり工場=物質、煙=意識、として上の文章を書き換えると、
- 意識の状態は脳の物理的な状態によって決まるが、意識は脳の物理的な状態に対して何の影響も及ぼさない。
これが随伴現象説の主張である。
[編集] 利点
随伴現象説は、物理世界は物理世界だけで因果的に閉じていると考える(専門的にいうならば随伴現象説は物理領域の因果的閉鎖性を前提としている)ため、物理学との相性はおおむね良い。随伴現象説を採用するならば、今の物理学を改変したり・否定したりする必要は特になく、物理学と戦う必要性が基本的にない。そのため科学的な素養を持っている人々からは受け入れやすい考え方となっており、例えば歴史的にはハクスレー、現代ならばチャーマーズや茂木健一郎などが随伴現象説の立場をとっている。ただ随伴現象説は二元論を前提としているため、物理現象が全てで、それと異なる心的な存在などない、と考える唯物論の立場とは相性が悪い。
[編集] 問題点
随伴現象説に関する問題点としては、次の二つがよく知られている。 ひとつめは次のようなものである。
- 意識が物理現象にたいして何の影響も及ぼさないなら、そんな意識などあってもなくても、どちらでも良いのではないか?
この考え方を如実に表したのが、哲学的ゾンビの話である。
もうひとつの問題点は
- 意識が物理状態に対して何の影響も及ぼさないなら、なぜ私達は意識やクオリアについて、語れているのか?
というものである。私達が意識について語るとき、話しての口が動き、空気が振動し、聞き手の鼓膜が揺さぶられる。これらは全て物理現象である。いったい意識が物理現象に対して何の影響も及ぼさないというなら、私達が意識やクオリアについて「語れている」のはなぜなのだろうか。この問題は現象報告のパラドックスと呼ばれている。
[編集] 外部リンク
英語の文章
- 「Epiphenomenalism」 - スタンフォード哲学百科事典にある随伴現象説についての項目
[編集] 参考文献
- スティーブン・プリースト 『心と身体の哲学』勁草書房 5-6ページ 1999年 ISBN 4-326-15341-5
- トマス・ヘンリー・ハクスリー (1874) "On the Hypothesis that Animals are Automata, and its History", The Fortnightly Review, n.s.16:555-580. Reprinted in Method and Results: Essays by Thomas H. Huxley (New York: D. Appleton and Company, 1898).
[編集] 関連項目
心の哲学のトピックス | |
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概念 | 意識 - クオリア - 心身問題 - ハード・プロブレム - 付随性 - 因果的閉鎖性 - 自由意志 - 素朴心理学 - 消去主義 |
現行モデル | 同一説- 機能主義 - 相互作用説 - 随伴現象説 - 並行説 |
古典的モデル | 唯物論 - 唯心論 - 汎心論 - 機械論 - 生気論 - 一元論 - 二元論 - 多元論 - モナドロジー |
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人物(日本国外) | デイヴィッド・チャーマーズ - ジョン・サール - ダニエル・デネット - フランシス・クリック&クリストフ・コッホ -ジェラルド・イーデルマン&ジュリオ・トノーニ |
人物(日本) | 信原幸弘 - 柴田正良 - 河野哲也 - 西脇与作 / 前野隆司 - 茂木健一郎 - 郡司ペギオ幸夫 |
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