雪の峠・剣の舞
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『雪の峠、剣の舞』(ゆきのとうげ・つるぎのまい)は、岩明均による日本を舞台とした歴史漫画2編からなる中編集。収録作品は、江戸時代初期の久保田藩のお家騒動を題材とした『雪の峠』と、戦国時代の剣豪・上泉信綱の門下の疋田文五郎を主役とした『剣の舞』である。
『雪の峠』は1999年に「モーニング新マグナム増刊」(講談社刊)にて連載され、『剣の舞』は2000年に「ヤングチャンピオン」(秋田書店刊)にて連載された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 『雪の峠』あらすじ
戦国末期、常陸国を領土としていた大大名・佐竹家は、関ヶ原の戦いで西軍の石田三成方についたため、敗戦後、当時の僻地である出羽国に追いやられてしまった。そこで新しい城の築城に取り掛かることになったが、その築城場所を決める際、当主の佐竹義宣は渋江内膳ら若い家臣の意見を優先し、高齢の重臣たちを蔑ろにする素振りを見せる。それに反発した高齢の重臣たちは、大軍略家と名高い梶原美濃守を立て、自分たちの居場所を守るために対抗案を出すが……。
[編集] 『雪の峠』主な登場人物
- 渋江内膳(しぶえ ないぜん)
- 佐竹家近習頭。当主・義宣の腹心として、築城場所に『窪田』を推す。合理的な思考の持ち主でかなりの切れ者だが、ケンカが嫌いでのんびりした性格。まだ年若い上に、元々は素性の知れない食いつめ者であるため、家柄を重んじる重臣たちからは快く思われていない(ただし史実の渋江内膳の出自ははっきりとしており、作中のこの設定はフィクションである)。
- 梶原美濃守(かじわら みののかみ)
- 佐竹家重臣。穏やかながらも隙のない物腰の老臣で、頭は切れる。川井たちに頼られ、旧世代の代表として『金沢』案を推す(のち先代の挙げた『横手』案に切り替えるが、あくまで渋江内膳の案に反対するのが目的であった)。しかし、行きがかり上、川井の誘いに乗ってしまい、佐竹義宣・渋江内膳の主従との「喧嘩」に加担はしたものの、合理的思考の持ち主であり、関ヶ原の戦いの際の義宣の判断を、全面的ではないにせよ内心で支持していた。若い頃に上杉謙信に目をかけられたことがあり、家臣たちにその頃の逸話を何度となく話したことがある。
- 佐竹義宣(さたけ よしのぶ)
- 佐竹家当主。進歩的な考え方の君主で、内膳ら新世代の事実上のリーダーでもある。関ヶ原の戦いの時、自身の一存で西軍につくことを決めたため、川井ら重臣たちには未だに根に持たれている。
- 川井伊勢守(かわい いせのかみ)
- 佐竹家家老。旧世代サイドの代表的な人物で、自分たちを軽視して次々と物事を決めてゆく義宣・内膳らが気に入らない。特に関ヶ原の戦いでの義宣の「判断ミス」を批判し、それがために渋江内膳の築城プランに感情的に反発し、梶原美濃守を巻き込んで対案を主張する。力で全てが決まった戦国の世を「古き良き時代」として懐かしみ、今は時代が変わってしまったことを嘆いている。
- 佐竹義重(さたけ よししげ)
- 佐竹家先代。かつては鬼と呼ばれた猛将だったが、今ではすっかり丸くなり、義宣の新政を黙って見守っている。義宣をかばうために『横手』案を出すが、それを逆に美濃守に利用されてしまう。
[編集] 『剣の舞』あらすじ
時は戦国の世。農家の娘ハルナは、戦のどさくさでならず者の武士たちに家を襲われ、乱暴された上に家族を皆殺しにされてしまう。ハルナは盗み出した碁石金を元手にして、天下一と名高い上泉伊勢守の道場に弟子入りし、武士への復讐のために剣術を習おうとする。そこで伊勢守の門弟であった疋田文五郎は、伊勢守が考案したばかりの『撓(しない、竹刀)』を手に、ハルナに剣を指導することになったが……。
[編集] 『剣の舞』主な登場人物
- 疋田文五郎(ひきた ぶんごろう)
- 上泉伊勢守の甥。若くして相当な腕の剣の遣い手で、師でもある伊勢守から「もはや天下一かもしれぬ」と言われるほどの実力を持つ。最初はハルナに剣を教えるのを面倒がっていたが、徐々に打ち解けてゆく。
- ハルナ
- 農家の娘。小幡上総介の手勢の武士に家を襲われ、家族を皆殺しにされる。その後碁石金を奪って逃走し、『甘楽春之介』という名で男装して上泉道場に押しかけ、文五郎に剣を教わる(ただしすぐに正体はバレた)。楽観的な性格でお調子者。家族の仇である『逆さ鳥居』たちに復讐を誓う。架空の人物。
- 神後宗治(じんご むねはる)
- 上泉伊勢守の弟子。大勢いる伊勢守の門弟の中でも、文五郎と並ぶ存在。
- 与吉(よきち)
- ハルナと同郷の若者。ハルナを追いかけて、上泉道場のある箕輪にやって来る。
- 十郎左(じゅうろうざ)
- 数人の仲間とともにハルナの家を襲い、家族を皆殺しにした男。小幡上総介の手勢の一人。着用している兜の飾りが逆さにした鳥居に似ていたため、ハルナには『逆さ鳥居』と呼ばれる。下卑た性格のスケベオヤジ。架空の人物。