霧島山
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霧島山(きりしまやま)は、宮崎県と鹿児島県の県境に広がる火山群の総称。霧島連峰あるいは霧島火山群とも呼ばれ、ランクBの活火山に指定されている。日本百名山の一つ。最高峰は韓国岳。北海道の大雪山と同様に、霧島山という固有の山はない。周辺には高千穂河原、えびの高原、霧島温泉郷などを控え、一帯は霧島屋久国立公園に指定されている。高地にはミヤマキリシマの群生地がある。
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[編集] 地質学上の霧島山
約30万年前に大噴火を起こした加久藤(かくとう)カルデラの南縁付近に誕生した後カルデラ火山である。まず古期霧島火山が形成され、その上に新期霧島火山が重なるように形成された。
- 古期霧島火山:(約30万年前から約15万年前に形成)
- 栗野岳(標高1094m): 霧島山の西端にあり最も古く、岩石の風化が進んでいる。複数の火山から成っている。
- 湯ノ谷岳
- 烏帽子岳(標高988m)
- 獅子戸岳
- 矢岳(標高1132m)
- 新期霧島火山:(約10万年前以降に形成)
- 白鳥山(標高1363m): 流動性の高い溶岩の噴出によってできた楯状火山。
- 白紫池: 白鳥山の火口湖。
- 蝦野岳: 白鳥山の上に生じた寄生火山。
- 龍王岳
- 二子石
- 大浪池(山の標高1412m、水面の標高1239m): 火口湖。噴出物はイワオコシ軽石と呼ばれている。
- 夷守岳(標高1344m): 噴出物はアワオコシ軽石と呼ばれている。
- 大幡山
- 韓国岳(標高1700m)
- 甑岳(標高1301m)
- 飯盛山(標高846m): 流下した溶岩が山麓に溶岩台地を形成している。
- 六観音御池: マグマ水蒸気爆発による噴火口に水がたまった火口湖。
- 中岳(標高1332m)
- 琵琶池
- 大幡池(山の標高1306m、水面の標高1230m): マグマ水蒸気爆発による噴火口に水がたまった火口湖。
- 不動池: 火口湖。
- 小池
- 高千穂峰(標高1574m)
- 御池(水面の標高305m): マグマ水蒸気爆発による噴火口に水がたまった火口湖。
- 御鉢
- 新燃岳(標高1421m)
- 硫黄山: 1768年(明和5年)の噴火によって形成された。かつて硫黄の鉱山があった。
[編集] 主な噴火記録
霧島山全体としての火山活動は現在も継続中である。有史以後も数多くの噴火記録があり、最近の活動は特に御鉢と新燃岳に集中している。
- 742年(天平14年): 御鉢。
- 788年(延暦7年): 御鉢。
- 1716年(享保元年)-1717年: 新燃岳周囲数カ所から噴火。死者5名、焼失家屋多数。
- 1768年(明和5年): 韓国岳の北西側山腹から溶岩が流出し硫黄山を形成。
- 1889年(明治22年): 御鉢。
- 1895年(明治28年)7月16日-1900年2月: 御鉢で数日から数ヶ月おきに繰り返し噴石及び火山灰の噴出。
- 1913年(大正2年)11月8日、12月9日、1914年1月8日: 御鉢で噴石及び火山灰の噴出。
- 1959年(昭和34年)2月17日: 新燃岳で噴石と降灰を伴う噴火。周辺の農作物に被害。
- 1991年(平成3年)12月-1992年2月: 新燃岳で火山灰の噴出を伴う小規模な噴火。
新燃岳では現在も噴気が観察されている。
[編集] 歴史上の霧島山
古代においては天孫降臨説話の舞台として、中世においては修験道の霊山として、近世から現代においては温泉保養地としての歴史を有している。
- 10世紀中頃: 性空上人の霧島山修行。
- 1714年(正徳4年): 霧島山南西部で硫黄谷温泉が発見される。
- 1929年(昭和4年): 林田熊一が林田温泉を開発。
- 1934年(昭和9年)3月16日: 日本で最初の国立公園に指定された。当時の名称は「霧島国立公園」。
高千穂峰の山頂には、アマテラスの孫ニニギが降臨(天孫降臨)に際して逆さに突きたてたという天の逆鉾が立てられている。坂本龍馬・おりょう夫婦の新婚旅行の地としても知られる。
[編集] その他
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 石黒耀 『死都日本』(小説)。
- えびの市郷土史編さん委員会編 『えびの市史 上巻』 宮崎県えびの市、1994年。
- 高橋正樹、小林哲夫編 『フィールドガイド 日本の火山 5 九州の火山』 築地書館、1999年、ISBN 4-8067-1165-9。
- 牧園町郷土誌編さん委員会編 『牧園町郷土誌』 川畑義照(牧園町長)、1991年。