高齢者福祉
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高齢者福祉(こうれいしゃふくし)とは、社会福祉制度の一分野で、特に高齢者を対象とするサービスのことを指し、老人福祉とも呼ばれる。広義では高齢者の所得保障や医療保障などを含む。日本では、人口の高齢化が世界に類を見ないスピードで上昇し、高齢化率14%以上の高齢社会から、数年後21%以上の超高齢社会の域に達する見込みであり、サービス受給者は増加の一途をたどっている。
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[編集] 概要
高齢化はサービスを必要とする人口の増加と、サービスの担い手であり税・保険料負担の大きい若年世代の人口の相対的減少を意味し、増加する一途の費用をどこに求めるかが課題となっている。
2000年度から介護保険制度が発足した、これにより介護サービスの充実のため、老人介護を公的社会保険で行うこととなった。
この背景には、核家族化により要介護老人を嫁ひとりが世話をしなければいけない状況や、独居高齢者で介護する親族が近隣にいないなど、家族や親族の介護力が低下し、寝たきり老人発生の一因ともなっていたこと。 介護力の低下と福祉サービスの量の貧困は、自宅で介護できない高齢者を介護目的で医療機関に入院させる社会的入院の原因となり、医療費の増加や高齢者の自立を遠ざける結果となっていたことがある。
高齢者虐待は、21世紀になってようやく対策が取られ始めているが、リフォーム詐欺など認知症老人への「消費者詐欺」が2005年に大きく社会問題化するようになった。認知症老人の消費者詐欺を予防する対策として、成年後見制度があり、全国的に地域福祉権利擁護事業が行われているが、サービスを使いやすくするための工夫や従事者の増員が求められている。
[編集] 高齢者福祉の歴史的な流れ
第2次世界大戦後の高齢者福祉は右肩上がりの経済成長のもと、所謂「ばらまき福祉」であった。老人福祉法を根拠に老人医療費は無料であったり、年間5万円の公的年金というものも存在した。しかし、オイルショックによる経済成長のかげり、予想を遥かに上回る高齢化社会の進展によって、このようなばらまき福祉は財政上維持できなくなった。こういった状況をふまえて1982年に老人保健法が制定され、医療事業や保険事業を有料化し、老人保健法に該当しない場合のみ老人福祉法による手厚い福祉が受けられるという体制に切り替えた。つまり福祉から社会保険制度に切り替えたのである。しかし、高齢化社会の進展は更に進み、福祉の適用範囲を減らしたにも関わらずまたもや財政上破綻をし、従来老人福祉法、老人保健法の管轄であった介護部門を別の財源で行うことにした。これが介護保険法である。このように高齢者福祉は戦後のばらまき福祉から徐々に国民に負担を強いる体制へと変化している。こういった歴史的な背景から、高齢者福祉では、まず老人保健法と介護保険法が適用され、生活保護を受けているなどやむをえない事由があるときのみ老人福祉法が適用されるという形式となっている。なお、老人保健法廃止後は老人保健法の医療事業は高齢者の医療の確保に関する法律へ、それ以外の保健事業は健康増進法に引き継がれる予定である。
[編集] 主な高齢者福祉
- 老人保健施設
- 主として病院退院後家庭への復帰を目指す中間施設として制度化された。略して「老健」といわれる。
- 所得保障制度
- 健康高齢者の活動
- 老人クラブ・シルバー人材センター
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
[編集] 参考文献
- 高橋茂樹他『STEP公衆衛生第5版』海馬書房、2002-10-22、ISBN 4-907704-20-8