高齢化社会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
高齢化社会(こうれいかしゃかい)とは、人口構造が高齢化することで、指標としては総人口に占める高齢人口(65歳以上)の比率が高まっていくことをいう。高齢人口の増加の一方、年少人口の減少とが同時並行的に進んでおり、2つの現象を合わせて少子高齢化と呼ぶことも多い。
人口の年齢構造を分析する上で、0~14歳を年少人口、15~64歳を生産年齢人口、65歳以上を高齢人口とする3区分が用いられる。
目次 |
[編集] 社会の高齢化についての分類
一般的に、高齢化している社会はその高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)によって以下のように区分・呼称される。
- 高齢化社会 高齢化率7%~14%
- 高齢社会 同14%~21%
- 超高齢社会 同21%~
日本は昭和45年に高齢化社会に、平成6年の時点で高齢社会となった。平成22年には超高齢社会となる見込みである。
これらの用語は国連の報告書等で使用されたのを元に一般的になった。ただし由来と定義は必ずしも定かではない。
[編集] 高齢化のメカニズム
65歳以上が人口の15%以上を占める高齢社会は、すでにヨーロッパでは20年間経験されており、日本だけが特異なのではない[1]。
国・地域の人口構成は、発展途上段階から経済成長とともに、多産多死型→多産少死型→少産少死型と変化し、これを人口転換という。
発展途上段階では、衛生環境が不十分で乳幼児の死亡率が高いこと、単純労働の需要が大きいため初等・中等教育を受けていない子供も労働力として期待されること、福祉環境が貧弱なため老後を子供に頼らなければならないことなどから、希望子ども数が大きい。また育児・教育環境や生活水準に比して予定子ども数も大きい。このとき人口ピラミッドは、先が尖ったきれいなピラミッド型になる。
経済成長は衛生状態の改善と医療水準の向上をもたらすため、乳幼児の死亡が減り、平均寿命が延びる。そのため人口ピラミッドは、ピラミッド型を保ったまま拡大し、人口爆発が生じる。
経済発展による社会の変化が進むと、知的労働の需要が増して子供の労働需要が減退すること、福祉環境の充実により老後の生活を社会が支えるようになることなどから、希望子ども数が減少する。また育児・教育環境や生活水準に比して予定子ども数も小さくなる。一方、平均寿命の延びは鈍化するが、中年以下の死亡率はさらに低下する。このとき年少人口の低位安定と高齢人口の増加により、人口ピラミッドはつりがね型になる。
近代以降、人口爆発を経験した先進諸国は、人口安定的と予想された少産少子社会の実現を目標としてきた。しかし1970年代に急激な出生率低下が生じて以降、出生率人口置換水準(2.08)は回復されず少子化が起きた。年少人口は減少し続け、人口ピラミッドは口がつぼんだ壺型へと変化し、高齢化率が急上昇している。
このように、高齢化は総人口および年少人口が安定または減少する中で、高齢人口が相対的に増加していくことによって生じる。
[編集] 少子高齢化の問題
[編集] 社会保障制度の持続可能性
先進諸国の老人福祉制度は長らく人口安定的な少産少子社会の到来を予測して設計されてきた。そのため一定程度までの高齢化は織り込んできたが、少子化による高齢化率の急上昇は福祉制度の持続可能性を揺るがす問題となっている。
また、高齢化は、一般歳出にしめる社会保障関係費も大きく増大させており、財政赤字の大きな原因となっている。
[編集] 年金制度
少子高齢化により、扶養者数に対する被扶養者数の比率が上昇し、現役世代の年金負担が増加する。少子化により次世代育成負担は減少するが、教育欲の高まりにより一部相殺される。また公的支援が補助的役割にとどまる次世代育成負担を、公的支援が中心的役割を担う老人福祉へ付け替える際には、名目上の可処分所得減少が生じるため、国民の反発が強い。そのため年金負担の増加は抑制的となり、年金給付の減額が必要となる。すると過渡的に年金負担額が高く年金受給額が低い世代が生じ、年金制度への不信感が醸成される。こうしたことから年金の未加入・未払いが増加しており、世代間の扶養体制の維持が不安視される。
負担の抑制と給付の維持を両立するためには、現役世代を増やし引退世代を減らせばよい。そこで給付開始年齢の引き上げ、定年の延長、安定した雇用環境の構築、失業率の改善などが検討・実施されている。
[編集] 医療保険制度
医療保険制度は一般に被扶養世代である年少世代と高齢世代に手厚い保障を行っているが、一般に高齢化による医療費増大は少子化による医療費減少を大きく上回る。
そのため高齢世代の自己負担割合の増加、生活習慣病の予防推進などの医療費削減策が検討・実施され、制度の維持可能性を保持する努力が続けられている。
[編集] 日本の高齢化データ
1935年(昭和10)の高齢化率が4.7%と最低であった。1950~1975年は出生率低下によって、それ以降は、死亡率の改善により高齢化率が上昇。2006年(平成18)9月には20.7%となり、世界に類を見ない水準に到達している。今後も高齢化率は上昇し続け、2025年には30%程度になると予想されている。
- 2006年版、高齢化社会白書(2006年6月2日閣議決定)2005年10月1日現在の統計
- 総務省(2006年9月17日発表)同年9月15日現在の統計
- 65歳以上の高齢者人口 2,560万人、総人口に占める比率(高齢化率)20.04%(前年19.5%)、過去最高。
- 高齢者のうち独り暮らしの割合は、2005年の推計値で男性が9.1%、女性が19.7%。
他の先進国における65歳以上の住民の総人口に占める比率
- 19%台・・・ドイツ、イタリア
- 18%台・・・スペイン
- 17%台・・・スウェーデン、ベルギー、ポルトガル、オーストリア
- 16%台・・・フランス、イギリス、スイス
- 15%台・・・デンマーク、フィンランド
- 14%台・・・ノルウェー、オランダ、ルクセンブルク
- 13%台・・・カナダ、オーストラリア
- 12%台・・・アメリカ合衆国
- 11%台・・・アイルランド、ニュージーランド、アイスランド
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 高齢社会対策基本法(法令データ提供システム)