CROSS†CHANNEL
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CROSS†CHANNEL (Windows) CROSS†CHANNEL ~To all people~ (PS2) |
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対応機種 | Windows98/2000/Me/XP プレイステーション2 |
発売元 | FlyingShine(Windows) KID(PS2) |
発売日 | 2003年9月26日(Windows) 2004年3月18日(PS2版) |
ジャンル | 学園青春アドベンチャー |
レイティング | 18禁(PC版) CERO18歳以上(PS2版) |
キャラクター名設定 | 不可 |
エンディング数 | 1 |
セーブファイル数 | 100(Windows) 32+クイック32(PS2) |
画面サイズ | 640×480(Windows) |
BGMフォーマット | OGG Vorbis 499kbps (Windows) |
キャラクターボイス | あり |
CGモード | あり |
音楽モード | あり |
回想モード | あり(PS2は?) |
メッセージスキップ | あり |
オートモード | あり |
『CROSS†CHANNEL』(クロスチャンネル)は、2003年9月26日に発売されたFlyingShine制作のアダルトゲーム。
目次 |
[編集] 概要
群青学院(下記「あらすじ」参照)の放送部を舞台とした学園モノ。公式ページの印象とは裏腹に、シナリオライターである田中ロミオが得意とする、哲学的な内容と読み手を選ぶニッチなギャグを含む文章が特徴。クリア後もストーリー上の謎が数多く残り、その解釈について非常に考えさせられる作品となっている。
2004年3月18日にはCEROレーティング18歳以上対象のプレイステーション2版『CROSS†CHANNEL ~To all people~』がKIDより発売されている。また、2006年5月18日にKIDより2800セレクションとして廉価版が発売された(追加要素なし)。CEROによるレーティング設定は以前の18歳以上対象に相当する「D」。プレイステーション2版であるため、当然直接的な性描写は行われていないが、シナリオの改変はオリジナル版と同じ田中ロミオの手によって行われている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
国家が実施する試験で「適応係数」が高いと判定された生徒を集めて「隔離」する群青学院。主人公の黒須太一は放送部に所属し、そこで得た仲間たちとの楽しい時を送っていた。
しかし、ともに時間を過ごす中、それぞれ心に歪みを抱えたメンバーたちの間には亀裂が生まれ、あるときを境にそれは決定的な破綻となり、「放送部」は断絶してしまう。
太一が起死回生を賭けて望んだ合宿も失敗に終わり、心中がバラバラの状態で街に帰還する放送部メンバー。しかし、そんな彼らを迎えたのは、生物の存在が消え、常軌を逸して静かになった街だった。
「世界で八人だけの人類」になるという異常な状況下で、それぞれの歪みを顕にし始める部活メンバー。バラバラの心中はそのまま彼らを迷走させ、もはや部活などできる状態ではなく、唯一部長の宮澄見里だけが夏休みの課題であるラジオ放送用のアンテナを組み立てる活動を行っている状態であった。
そんなある日、ひょんなことから町はずれの祠にあった「ノート」を発見した太一は、人類の存在しないこの世界が1週間単位でループしていることを知る。
閉じた世界とループする一週間の中、太一は仲間たちとふれあい、衝突し、そして和解していく。
その果てで彼は、自分自身と向き合い、ひとつの決断を下す。
[編集] 登場人物
声優の表示は(PC版/PS2版)
- 黒須太一(くろす たいち)
- 本編の主人公。自称エロ大王。突拍子もない行動で周囲を振り回す。白髪と猫のような目が特徴の美少年だが、自分の顔に深いコンプレックスがある(具体的には自分の顔を醜いと思っている)。『血』が苦手。適応係数80オーバー。太一がコンプレックスを抱く猫のような目は、ストーリーが進むにつれ物語の核心に関連するキーとして重大な意味をもってくる。明朗で、ある意味面白みのある人間であるが、内に異常ともとれる凶暴性を秘めている。本人もそれを自覚しており、「心の平穏」を保てるよう、始終努めている。また「キレイなもの」(自立しているもの)に歪んだ愛着を抱き、それが堕落したり、価値を失うことに落胆や怒り、興奮を覚える美的感覚を持ち合わせる。その人格は多面的であり、複雑であり、理解は困難である。
- 山辺美希(やまのべ みき) 声優:榎津まお/野中カオリ
- 波がかった髪と貧乳が特徴な、太一のセクハラにも動じない明るい後輩。親友の佐倉霧と二人でFlowers(お花ちゃんたち)と呼ばれる。ケンカしがちな太一と霧に気を揉んでいる。作中で自身の適応係数は40そこそこであると発言している。本編中(美希の専用ルート「INVISIBLE MURDER INVISIBLE TEARS」)、自身が「他人の痛み」が分からない人間であり、また保身のためには部活メンバー(親友の霧でさえ)も捨て駒にする、常軌を逸した「自己愛」の強い人物だと告白している。ただし、太一や曜子、桜庭のような「一人で生きられる人間」ではなく、他者を犠牲にするたび精神をすり減らすなどの面があり、それがため本人の思惑とは無関係に屋上から転落しそうになった霧を助けるといった場面もある。ある意味、太一に次ぐ多面的な人物である。尚、彼女の専用ルート「INVISIBLE MURDER INVISIBLE TEARS」は、作中プレイヤーに明示されるルート(一週間)としては、部活メンバーの半分以上が死亡する本作で1、2を争う最悪の結末を迎えるシナリオである。
- 佐倉霧(さくら きり) 声優:中瀬ひな/沢野冷果
- 中性的な後輩。潔癖症でいい加減な性格の主人公が許せない。攻撃的。美希とは親友。エンディングにおいて霧が群青学院から他校に転校するのに対し、美希は変わらず群青学院に残ったことから察するに適応係数は(群青学院の生徒としては)低いと考えられる。繊細であり傷つきやすい。また、異常なまでに他者の心の機微に敏感であり、そんな彼女にとって世界(社会)は悪意に満ちたものであり、常に精神の安定を欠いている節がある。そのため信頼できる他者に依存する傾向が強い。過去においては従兄弟の豊に、現在においては親友の美希に依存している。一時期は豊の紹介で太一とも親交を深めていたが、豊を太一に殺された(あくまで疑惑であったが、太一の言動からそれを察した)ことと、豊の死亡によって不安定になった彼女を見て太一が暴走したにより、太一に憎悪と警戒心を抱いていた。前述した精神的脆さに加えて「人類の絶滅」という常識から乖離した状況によって強いストレスに晒され著しく精神的な安定を欠き、唯一の精神的支柱である美希を守ろうとほかの部活メンバーとの交流を絶って独立しようとしたり、太一を殺害しようと計画を練ったり、太一と接する美希に太一との交流をやめさせようとする等の狂的な行動に走り始める。
- 宮澄見里(みやすみ みさと)声優:鳩野比奈/及川ひとみ
- 放送部部長。巨乳とメガネが特徴。通称みみ先輩(何故か「みみみ」と呼ぶと怒る)。島友貴の姉だが、友貴は違う名字を名乗っている。適応係数は30を超えている。太一を放送部に誘った人物。温厚で面倒見もよく生真面目な人物だが、それとは関係なしに「規則」を遵守することに縛られた性質の持ち主。守られない規則ばかりが横行する世界は彼女にとっては容認できないものであり、その世界を修正するために自分を傷つけるという、他者に対して屈折した攻撃を行う(これが要因で彼女の家庭は二度崩壊している)。ループする一週間では、もっとも平静を保っている様にみえるが、逆説的に、それが彼女の深刻な異質さをあらわしている(人がいなくなってもなお、部活をし続けるというのはよくよく考えれば異常な行動だろう)。放送部では一番包容力がある人物。太一の異常な凶暴性を目の当たりにしても「普通」であろうとする太一を理解し、許容している。
- 桐原冬子(きりはら とうこ)声優:楠鈴音/鳴海エリカ
- 太一のクラスメイト。名家(武家)の娘で意地っ張り。適応係数46。過去太一とは恋人関係であり、太一に捨てられてからは当然というべきか仲が悪い。プライドが高く、群青学院にたかがペーパーテスト(適応試験)で転入させられたことに納得がいかず、未だに憤っている。それがため周囲に馴染もうとせず、太一に声をかけられるまで孤立していた。「孤独」を許容できるプライドの高いお嬢様であるが、一度依存した相手には際限なく依存し、また独占しようとする。他者に依存するという点のみでは霧と似たようなタイプであるが、彼女の依存には「自己」が含まれておらず、独占を保つためには自身を支えるプライドさえかなぐり捨てる。過去太一が冬子をふった時にはそれが頂点に達した形で現れ、自分の体を傷つけて重傷を負うことによって太一の気を引こうとした。平素と異常のギャップが作中もっとも出た人物。平素において、太一と微笑ましいやりとりをするシーンが大半を占めるだけに、そのギャップが否応にも引き立つ。
- 支倉曜子(はせくら ようこ) 声優:児玉さとみ/児玉さとみ
- 万能人間。忍者のように気配を消すことができ、神出鬼没。あまり周囲には関心がないが、太一には気を許し、また恋心を抱いている。が、なぜか太一は相手にしない。太一とは幼少の頃から関係があり、その点だけを言うならば幼馴染といえる存在。頭がきれ、格闘術に長け、鋭い第六感をもつ常人を超越した人物。一方で表情に乏しく声も平板で、かろうじて行動から感情を感じとれる。完成された「自己」を持つが故に他者とのコミュニケーション能力に問題がある。機械的だが、エゴイスト。太一の存在を第一とし、行動の中心には常に太一をすえて行動する。そのため、本編中で太一を殺害しようと計画を練る霧を無感情に殺そうとしたこともあった。作中では唯一、太一が積極的に接触しようとしない人物。そのため登場回数こそ少ないが、太一の心象的な原風景に影響を与え、後の人格形成にも決定的な影響を与えた人物として物語上重要なポジションにある。
- 七香(ななか) 声優:理多/平井理子
- 謎のセーラー服少女。予兆もなく自転車に乗って登場する度に太一にぶつかってくる。太一の心象を汲み、時にギャグを飛ばし、時に慰め、時に導きと他の登場人物とは一線を画す存在感を持つ。それとなく太一の行動に影響を与え続け、彼女の導きに沿って太一はループする一週間で自分が何をすべきかを理解し、決断していく。一貫して太一の平穏を願い、彼の行動にアンチテーゼを唱えこそすれ逆らうことはなかった。ちなみに、太一の人生に大幅なマイナス要素を与えてしまった曜子にははっきりとした嫌悪感を表している。彼女の存在(その正体も含め)に関しては終盤で触れられているが、それをふまえても彼女の存在には謎が多く、ほぼブラックボックスと化しているといっていい。
- 島友貴(しま ともき) 声優:牛久京也/山口勝平
- 太一の友人。宮澄見里の弟。姉に対して嫌悪と愛情の入り混じった複雑な感情を持っている。部活メンバーの中ではまともな人間の部類(太一の回想中で18%との発言あり)。恋人がいるが童貞。群青学院入学前はバスケ部に所属していたが、姉の見里が原因で足に障がいを負い、精神ではなく身体の障害者枠により群青学院に入学。コンピューター関連に強く、部活では機材のセッティングを担当する。ループする一週間では「生命維持活動部」なるものをたちあげ食料の調達、配給をしていたが、それが見里と同種の逃避行動であるとは気づいていない。複雑な感情をもつ見里の動向には関心があったようで、彼女のことを伺っているところをたびたび太一に目撃されている。まともな人間ゆえ、見里の性質を理解こそすれ嫌悪感をぬぐえなかった。見里が要因である2度の家庭崩壊を機に「裏切られた」という思いが強くなり、それがループする一週間では見里の最後の精神的支柱である部活の妨害、ひいてはアンテナを破壊するという行為につながっていく。
- 桜庭浩(さくらば ひろし)声優:十文字隼人/山崎たくみ
- 太一の友人。あだ名はラバ。味覚、金銭感覚など、常人に理解し得ない独自の感覚の持ち主。適応係数は一般人レベル(15%)で、自ら希望して群青学院に入学した。依存的な側面を持つ者が多い部活メンバーの中では珍しく、本編中まったくといっていいほど他者に依存しない人物である。人間的にも問題らしい問題(他者に直接害を及ぼすもの)も見受けられず(放浪癖や奇矯な言動、過去同性の太一に告白したことがあるというのを除いて)、作中においてはいたってまともな人物である。ためか、人間関係において問題を抱える登場人物たちの葛藤を描いた作中においてはいささか影が薄く、登場する回数も少ない。おそらく、ループする一週間においては、放浪していたか、一人で行動することが多かったようである。他者の心情を感覚的に察する鋭さを持っており、太一の心情を正確に理解していたふしがある(また友貴がアンテナを破壊したときには、アンテナを壊したのは友貴だと看破するが、それが友貴の心情を理解していたからなのか、友貴がアンテナを破壊するところを目撃したからかは不明)。作中、ほかの部活メンバーと唯一衝突しない人物であり、また積極的に他者と接触することがない。これは、衝突でこそあるが他者との接触を望む太一とは対極の在り方である。
- 堂島遊紗(どうじま ゆさ) 声優:鵜乃瀬朱香/東風たまこ
- メガネっ娘。太一の近所に住む後輩で、太一になついている。可愛らしい女の子。脇役。母親は群青学院の学食に勤務しているパワフルで豪快なおばちゃん。作中では太一の回想にのみ登場。物語開始時点で、太一との交流は絶えていたと思われる。過去いじめを受けてたようで、それに関連する行為に精神的に脆い。ふとしたことで凶暴性をむき出しにした太一に襲われ、精神に強いショックを受けてしまう。その後の彼女の消息は明示されていない。
- 新川豊(しんかわ ゆたか) 声優:間寺司/堀川りょう
- 転校生。転校してきてすぐに主人公と意気投合した。とある理由で足が悪い。記憶喪失。明朗かつ温厚な性格で、太一も認める「いい奴」。作中では既に故人で、太一の回想にのみ登場する。従兄妹の霧は可愛くないというが、太一曰く可愛い人物。太一と初めて会ったとき「ていうかはじめて会った気しねー」と述べた通り、太一とは過去関係がある。が、結果的にその関係と、運命のいたずらとも言うべき再会が残酷な結末を招いてしまう。
[編集] 音楽
本作の音楽のいくつかは、基本となるテーマ曲を元にそれらの変奏で成り立っている。これは映画音楽では常套手段であるが、ゲームミュージックとしては割と珍しい部類に入る。(Funczion SOUNDSのBB氏によれば、韓国映画「イルマーレ」の手法を参考にしたとのことである)全曲は基本的に長七度や長九度和音を基調としたニューエイジミュージックの作風で統一している。また、エンディングにたどり着くまで(ヴォカリーズである23曲目を除き)声楽を伴う曲が一切無いのも特徴である。いずれもループを途切れなく再生できる。
[編集] 曲名一覧
- Crisscross
- School days
- Diarize
- Way to home
- Blithe spirit
- Happy-go-lucky
- Sign of fear
- Fear and syspicion
- Traumatic
- Tight skirt
- Slapstick
- Tender grace
- Fragile
- Lose control
- Starry heavens
- Fated
- Urge
- Silence
- Overreaction
- Deep inside
- Crystal-clear
- Message
- Signal
- Daylight
- Airwaves
このうち1を元とする変奏は5,15,24。21を元とする変奏は22,23,エンディングテーマ。なお、25は本編では使用されておらず、販促用デモムービーに使用された曲である。また、EDテーマ「CROSSING」は音楽鑑賞モードには登録されない。
[編集] スタッフ
- シナリオ:田中ロミオ
- 原画:松竜
- 音楽:Funczion SOUNDS
- EDテーマ:CROSSING
- 作詞:田中ロミオ
- 作曲:Funczion
- 歌:Marica
- EDテーマ:CROSSING