アルバロ・デ・バサン級フリゲート
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アルバロ・デ・バサン級フリゲート(Fragatas Clase Álvaro de Bazán)は、スペイン海軍のフリゲート。F-100級フリゲートとしても知られている。デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲート、ザクセン級フリゲートと共に、三国共同フリゲート(TFC:Trilateral Frigate Cooperation)の一つ。1番艦「アルバロ・デ・バサン」は、2002年9月18日に就役した。4隻が就役中。
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[編集] 概要
イージスシステム搭載艦としてはアメリカ海軍のタイコンデロガ級・アーレイバーク級の両クラス、海上自衛隊のこんごう型に続くこのクラスは、スペイン海軍の艦船、その中でも戦略任務の中核を担う軽空母プリンシペ・デ・アストゥリアスに強力な艦隊防空の傘を提供するために計画された。また、トマホーク巡航ミサイルを搭載する予定であり、その暁にはこのクラス自身もスペインの戦略任務を担うことになる。スペイン海軍にとってプリンシペ・デ・アストゥリアスに次ぐ虎の子的存在である。
[編集] 設計
イージス艦は防空艦としての性能は世界の一級品ではあるが、その建造費もどうしても高くつくものであったから、スペイン海軍はこのクラスの設計にあたって建造費の低減を重視したものと思われる。アーレイバーク級をタイプシップとして基本的な構造を大きく変えず設計されたこんごう型(とそれにつづくあたご型)とは異なり、船型と排水量の縮小を目的にAN/SPY-1Dを搭載する艦橋構造物の構造を一から見直したことや、主機をガスタービン4基によるCOGAGからガスタービンとディーゼル機関2基ずつによるCODAGに改めたこと、ミサイル管制レーダーAN/SPG-62を前後各1基ずつで計2基とし、艦橋の前方に集約されたMk41VLSも48セルのみとしたこと、などがその一例である。
また、このクラスは排水量と建造費の圧縮を図った一方で、CIWSにはMk15ファランクスに代えてスペイン国産のメロカを採用したり、アーレイバーク級フライトI・IIやこんごう型が持っていないヘリコプター格納庫を備え、ヘリ1機を搭載するなど、その設計には独自の工夫が見られる。
このクラスの最終的なシステムインテグレーションはアメリカ海軍とロッキード・マーティンの主導で行われた。ノルウェー海軍のフリチョフ・ナンセン級フリゲートの設計にあたっては、このクラスを基礎としている。
[編集] 兵装
艦首部にMK41VLSを48セルを備え、その中に対空ミサイルのスタンダードSM-2やESSMを装備している。スタンダードを誘導するAN/SPG-62は主マスト前方直下とヘリコプター格納庫上に1基ずつ2基を装備している(タイコンデロガ級は計4基、アーレイバーク級・こんごう型・あたご型は計3基)。
対艦目的にハープーンの4連装発射筒を2基搭載している。対潜目的には魚雷発射管を備えるほか、搭載するSH-60Bも対潜能力の重要な部分である。
搭載砲としては、艦首部に5インチ54口径Mk45Mod2を1基備える。CIWSはスペイン国産のメロカを2基、艦の前方と後方とに持っている。
スペイン国防省はアメリカに対しトマホーク巡航ミサイル60基の購入を申し入れ、アメリカ当局はこの申し入れに対し許可を与えた。スペイン国防省はトマホークをこのクラスへ搭載することにしている。
[編集] 実戦経験
このクラスのネームシップであるアルバロ・デ・バサン(F101)は、2005年の遅くにセオドア・ルーズベルト空母戦闘群の一員となるべくペルシャ湾に派遣されている。アルバロ・デ・バサンはこの海域でイラクの目標に対するアメリカ軍の攻勢作戦に支援を与えていたという話もいくつかあるが、これはスペインの現政権がイラク戦争に対して取っている公的姿勢と相容れないものであり、公式には否定されている。
[編集] 性能諸元
- 建造:スペイン・IZAR造船所
- 全長:147m
- 全幅:18.6m
- 喫水:4.75m
- 満載排水量:5,802t
- 機関:ゼネラル・エレクトリック製LM2500ガスタービン×2基+ディーゼル機関×2基(CODAG方式)
- 推進軸:2軸
- 最高速力:29kt+
- 乗員:240名(うち士官35名)
- 航続距離:5,000海里
- 武装
- ヘリコプター
- シコルスキー SH-60B LAMPS III シーホーク×1機
- 電子兵装
- 対空レーダー ロッキード・マーチン AN/SPY-1D3次元フェーズドアレイ
- 対水上レーダー レイセオン AN/SPS-67(V)4
- 兵装管制 イージスシステム, AN/SPG-62 Mk99イルミネーター×2基, FABA DORINA火器管制レーダー×1基
- 航海レーダー タレス スカウト
- ソナー ENOSA-レイセオン DE 1160LF(I)
- 電子戦装置 一式
- 建造費:3億8500万ユーロ
[編集] 同型艦
- アルバロ・デ・バサン(Álvaro de Bazán, F-101)
- アルミランテ・ファン・デ・ブルボン(Almirante Juan de Borbón, F-102)
- ブラス・デ・レゾ(Blas de Lezo, F-103)
- メンデス・ヌニェス(Méndez Núñez, F-104)
- 建造中(名称未定, F-105)