こんごう型護衛艦
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こんごう型護衛艦 | ||
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98年度RIMPACに参加した「きりしま」 | ||
概歴 | ||
就役開始 | 1993年3月25日 | |
退役完了 | 就役中 | |
前級 | はたかぜ型護衛艦 | |
次級 | あたご型護衛艦 | |
要目 | ||
艦種 | 護衛艦(ミサイル駆逐艦) | |
排水量 | 基準排水量 | 7,250t |
満載排水量 | 9,485t | |
全長 | 161m | |
全幅 | 21m | |
吃水 | 6.2m | |
深さ | 12m | |
機関 | COGAG 2軸推進 | |
石川島播磨重工業製LM2500ガスタービン 4基 | 100,000ps | |
速力 | 最大30ノット以上 | |
航続距離 | 4500海里(巡航速度:20ノット、予測値) | |
乗員 | 300人 | |
武装 | OTOメララ127mm54口径単装速射砲 | 1門 |
ハープーンSSM4連装発射機 | 2基 | |
68式324mm3連装短魚雷発射管 | 2基 | |
ファランクスCIWS | 2基 | |
Mk41 VLS | 90セル | |
スタンダードミサイル(SM-2MR) | ||
アスロック対潜ロケット | ||
搭載機 | 着艦スペースのみ | |
レーダー | 対空レーダー AN/SPY-1D | |
対水上対空レーダー OPS-28D | ||
ソナー | 艦首バウソナー OQS-102 | |
曳航ソナー OQR-2 | ||
FCS | ミサイル:Mk99/SPG-62 | 3基 |
127mm砲:81式射撃指揮装置2型21 | ||
電子戦 | ESM/ECM:NOLQ-2 | |
チャフ発射機:US Mk 137 | 4基 |
こんごう型護衛艦(-がたごえいかん)は、海上自衛隊が保有するイージス艦。1988年に防空能力の向上を目的として導入が決定した。一番艦こんごうの竣工は1993年。自衛隊が保有する戦闘艦の中では最大の排水量を誇る。こんごう型はあわせて4隻が建造された。海上自衛隊に配備された初のイージス艦で、護衛艦隊隷下の1個護衛隊群に1隻ずつ配備され、艦隊防空の要となっている。
目次 |
[編集] 概要
冷戦当時、アメリカはソ連軍との戦争が勃発した際、攻撃機やミサイルによる飽和攻撃から空母などの戦闘艦群を護衛するために、日本の自衛隊にもイージス艦を保有させ、支援を行わせる事を構想していた。また日本でもシーレーン防衛の重要性が論じられていた。島国である日本は、資源・エネルギーを海外からの輸入に依存しており、海上輸送路の防衛は重要課題となっていた。
1988年(昭和63年度)の防衛計画によりイージス艦の導入が正式に決定する。当初は「7200トン型護衛艦」と呼ばれ建造が始まった。イージスシステムはアメリカから有償軍事援助により購入し搭載される事となったが、日本初のイージス艦という事もあり、アーレイ・バーク級イージス駆逐艦をベースに設計がなされた。
こんごう型の1番艦は1993年に竣工した。しかし、すでにソビエトは崩壊し冷戦は終結していたので、「ここまで高性能の戦闘艦はもはや必要ないのではないか」という意見が一部から申し立てられることになった。またその後、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が顕在化してくると、弾道ミサイル迎撃能力がない本艦の存在に対して、再度否定的な意見が述べられることもあった。 しかし、そもそもイージス艦は艦隊に迫るミサイルや航空機の迎撃を目的に誕生した艦であり、弾道ミサイルの迎撃能力がないのは当然であり、たとえ弾道ミサイル防衛能力がなかったとしても艦隊防空の面から極めて高い有用性のある艦であることは疑いようのない事実である。
現在では高性能なレーダー能力を保有する本艦の潜在能力の高さが認められ、ミサイル防衛での使用を目的として改修が行われている。
[編集] ミサイル防衛
こんごう型は、弾道ミサイル迎撃ミサイルであるスタンダード SM-3を使用したミサイル防衛での使用を目的として、すでに改修が全艦予算化されている。 北朝鮮情勢を鑑み、改修完了予定は平成20年3月、平成19年12月、平成19年9月と前倒しが繰り返されている。平成20年度以降はちょうかい(呉)、みょうこう(舞鶴)、きりしま(横須賀)の順で毎年1隻ずつ改修予定となっている。 ミサイル防衛能力付与とイージスベースライン向上化のための予算の合算は309億円である。現在3隻目まで米軍宛発注ずみで、3隻目の発注額は230億円、所要導入試験委託費は合計20億円である。SM-3の1基の値段は20億円程度である。実用配備数は8発×4隻=32発であるが、導入数は各艦実射試験用1発を合わせた9発×4隻=36発である。
こんごう型イージス艦とSM-3ミサイルを使用したミサイル防衛システムは、現時点では弾道ミサイル防衛のための唯一にして最高の手段である。SM-3ミサイルは空自のPAC3ミサイルとの併用で90%以上の中距離弾道ミサイル迎撃率が確保されたものとして導入された。(実射試験での成績は単一迎撃で22試験中18回迎撃成功)
改修されたこんごうが配備されることで、海上自衛隊で1ユニット、複数のイージス巡洋艦とイージス駆逐艦を配備する在日米海軍で1ユニットと2つ以上のMDイージス艦を日本海海上で常時哨戒させる体制を確立することが出来る様になる。
[編集] アーレイバーク級からの変更点
こんごう型はアメリカが保有するアーレイバーク級イージス駆逐艦をベースとして開発されたため基本的な能力としては同様であるが、いくつかの変更が加えられている。まず艦型がヘリ甲板が1段下がっている長船首楼型からヘリ甲板まで平坦に続く平甲板型に変更された。艦橋は群司令用の設備が入っているため、2甲板分高く、それに併せて艦橋周辺のアンテナ類の配置も変更された。 そのため全長も長くなり、排水量も増加している。艦橋構造物はタイコンデロガ級に匹敵するほど大型の物となっている。 主砲はMk45からOTOメララ製127mm砲になり、主砲管制用に国産の射撃指揮装置FCS-2-21を艦橋上部に装備する。マストも異なっており、ラティスマストと呼ばれるトラス構造のものになっている。 また、こんごう型の対潜関連のソナー等の一部機材は日本独自開発の装備である。
なお、アメリカのイージス艦には対地攻撃用のトマホーク巡航ミサイルが搭載されているが、海上自衛隊のこんごう型はVLSにスタンダードミサイルとアスロックのみを搭載している。(ちなみにトマホークは本型VLSにはサイズの問題上収まらない)
また、現時点でのこんごう型のイージスシステムは、3番艦までがベースライン4(米軍呼称ベースラインJ1・ベースライン4はイージス巡洋艦とイージス駆逐艦用の2種類がある幅の広い呼称)、ちょうかいのみベースライン5である。
[編集] インド洋派遣
テロ対策特別措置法による後方支援の一環として、インド洋への派遣が行われている。リンク機能の装備状況から初期に派遣された汎用護衛艦からイージス艦の派遣を重ねて要請されながら「イージス艦はあまりにも高性能であるため派遣をするべきではない」「インド洋へのローテーションを行うと日本周辺でのイージス艦が居ない状況が起きる」などの意見があったため、政府は遅れて2002年末に派遣を追加決定した。
派遣の理由としては
- 司令部機能を持つ護衛艦のローテーションが組みやすくなる。
- 高い情報処理能力を持つため安全性を確保しやすい。
- 居住性がよいため乗員の負担が軽減できる。
などをあげている。ただし、こんごう型にはヘリコプター搭載能力がない(後部甲板に着艦は可能だが、格納庫がない)ため、イージス艦を派遣すると派遣部隊としての哨戒ヘリ数が減少することになり、ヘリコプター運用には神経をすり減らす綱渡り運用を強いられたようである。
[編集] 改型
平成14年度計画艦としてヘリコプター搭載能力のある「改こんごう型」が計画され、これはあたご型護衛艦として1番艦のDDG-177「あたご」が竣工済み、2番艦のDDG-178「あしがら」が三菱重工長崎造船所で現在艤装中である。
[編集] 同型艦
[編集] DDG-173 こんごう
- 建造:三菱重工業長崎造船所
- 竣工:1993年3月25日
- 所属:第2護衛隊群第62護衛隊
- 母港:佐世保
- 艦名の由来:奈良県・大阪府の金剛山から。
- 同一名称艦:金剛。3代目にあたるが、その設計がいつも外国由来で、しかもその国が全て違う(初代フランス、2代目イギリス、3代目アメリカ合衆国)と言う日本の艦艇において非常に珍しい存在。
[編集] DDG-174 きりしま
[編集] DDG-175 みょうこう
[編集] DDG-176 ちょうかい
[編集] 登場作品
- 川の深さは :《こんごう》登場。「鮫」のコードネームを持ち、北朝鮮の瀬取り船を撃沈に向かう。
- 亡国のイージス :映画版で、《みょうこう》が護衛艦《いそかぜ》として登場。
- ガメラ3 :劇中ニュースの資料VTRで登場。
- 新世紀エヴァンゲリオン :国連海軍艦艇で登場。
- ソリトンの悪魔 :アニメ映画。
- ジパング :架空の護衛艦《みらい》が登場。ヘリコプターの格納庫を有する。
- 宣戦布告 :原作の小説では《みょうこう》が登場したが、映画では諸事情で海自の協力が得られず、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦が《みょうこう》の代役に。
- エースコンバット5:PS2用のゲーム。同型艦が、後部甲板にアスロックランチャーを搭載した敵艦役で登場。
- 戦闘妖精・雪風 :日本海軍所属艦で同型艦が登場。南極に派遣された空母の護衛の任務についていた。
- 鋼鉄の咆哮 :2以降、完成艦キットとしてプレイヤーが使用可能。また敵艦としても登場する。
- 勇者王ガオガイガー 横須賀に寄港していた《きりしま》が瞳原種に融合される。
- RaidersSphereSecond:同人ゲーム。日本海軍所属艦で20世紀末に建造された旧式のイージス艦として登場。Merchant of Frontier社工作員により強奪される。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
護衛艦の型式一覧
DDH ヘリコプター護衛艦 |
13500トン型 しらね型 はるな型 |
DDG ミサイル護衛艦 |
あたご型 こんごう型 はたかぜ型 たちかぜ型 あまつかぜ |
DD 護衛艦 |
5000トン型 たかなみ型 むらさめ型 あさぎり型 はつゆき型 あきづき型 はるかぜ型 ありあけ型 あさかぜ型 |
DDA 多目的護衛艦 |
たかつき型 むらさめ型_(初代) |
DDK 対潜護衛艦 |
みねぐも型 やまぐも型 あやなみ型 |
DE 護衛艦 |
あぶくま型 ゆうばり型 いしかり ちくご型 いすず型 わかば いかづち型 あけぼの あさひ型 |
PF 護衛艦 |
くす型 |