ユーロ
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ユーロ(ISO 4217によるコードはEUR)は、欧州連合27カ国中13カ国が公式に採用している単一通貨である(2007年1月1日現在)。基本通貨単位はユーロであり、そのほかに補助通貨単位としてセントがある。1ユーロは100ユーロ・セントに相当する。
ユーロには、紙幣と硬貨がある。硬貨の基本的なデザインは各国共通だが、裏面は各国が独自にデザインをしている(ユーロ硬貨を参照)。なお、ユーロ導入によりそれまでの各国の通貨(フランス・フランなど)は現在は通用しない。ユーロ紙幣は各国共通。ユーロ紙幣を参照。
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[編集] 名称
ユーロとセントはそれぞれ € 、¢ がその記号であるが、¢ はあまり使われず、たとえば 12¢ よりも €0.12 を使う傾向にある。
Euro と書いて英語ではユーロ、フランス語・オランダ語ではウロ、イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・フィンランド語ではエウロ、ドイツ語ではオイロ、ギリシア語・ロシア語ではエヴロと発音する。日本語では、現地の発音にかかわらずユーロと表記される。各言語で複数形を取るかどうかは言語により、また言語によっては状況による。たとえば通常イタリア語では語尾の母音交代で複数を表す(1エウロ、2エウリ、3エウリ・・・となるはずである)が、実際には語形変化しない。
また当初は、ユーロの前身である欧州通貨単位の呼称「エキュ」(ECU, 英語:European Currency Unit の略語)を引き続き使用することが有力視されていた。これは中世フランスで使用されたécu貨幣と類似した呼称であり、フランスによって支持されていた。しかし、それに対抗するために、ドイツが「フランケン」という名称を提唱したため、驚いたフランスは自国の主張を引っ込め、無難な「ユーロ」に落ち着いた。
[編集] 概要
ユーロは、欧州中央銀行と各国の中央銀行から構成される、ヨーロッパ中央銀行システムが管理している。構成メンバのうち、ヨーロッパ中央銀行だけが金融政策を策定することができる。各国の中央銀行は、紙幣や硬貨の印刷、鋳造、流通を行い、決済システムを運営する。1ユーロは約157.75円である(2007年1月2日23:46現在)。長期的に見て過去5年はユーロ高が進行する傾向にあった。
ユーロを導入するには、インフレ率、長期金利、財政収支、政府累積債務について、欧州連合、及び欧州中央銀行、ヨーロッパ中央銀行システムの定める基準をクリアしなければならない。この条件を一定以上クリアした段階で、将来的にユーロを導入できる準備が整ったとされヨーロッパ為替相場メカニズム(ERM)が導入される。現在のERMは第二世代のものでERM-IIと呼称される。ERM-II導入により、各国の独自通貨は対ユーロ相場において、一定の幅以内での為替変動に抑えられる。
[編集] 歴史
- 1992年 欧州連合条約(いわゆるマーストリヒト条約)内でユーロの導入が定められる。
- 1999年 ユーロが銀行間取り引きなどの通貨として導入される。
- 2002年 ユーロ紙幣、硬貨が導入される。
- 2005年 ユーロ紙幣の複製は不可能と考えられていたが、精巧なユーロ紙幣の偽札が出回りだし、ユーロ貨幣の信用を根底から覆される危機にある。
- 2007年1月1日 スロベニアにユーロ導入
[編集] 参加国
2007年1月1日現在、公式にユーロに参加しているのは、オーストリア、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スペインの13カ国である。これらの国々は、しばしばユーロ圏と称される。
将来的にユーロ導入を目指す国は、前段階としてERM-IIを導入する事になる。2007年1月1日現在で、ERM-IIを導入しているのは、デンマーク、スロバキア、リトアニア、ラトビア、エストニア、マルタ、キプロスである。
EU加盟国ではイギリスとスウェーデン、デンマークは2006年現在もユーロを使用せず、自国のイギリス・ポンド、スウェーデン・クローナ、デンマーク・クローネを用いている。この三国には、ユーロ導入に対して保留権が認められている。
これ以外のポーランド、チェコ、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアは将来的に無条件でユーロを導入する義務を負っている。これらの国はERM-II導入には至っていない。但し、ブルガリア・レフはユーロ導入以前からドイツマルクとの固定相場制を採用しており、ユーロ導入後もユーロとの間で為替レートは固定されている。
モナコ、サンマリノ、バチカンは、ユーロのメンバーとして公式に参加していないが、ユーロを通貨として使用している。これらの国々は、ユーロを使用するにあたり、EU参加国(モナコはフランス、その他はイタリア)と条約を結んでおり、欧州議会の承認も得ている。
アンドラは、以前はフランスとスペインの通貨を採用していた。現在はフランス、スペインと条約を結んで、通貨としてユーロを使用している。
モンテネグロとセルビアのコソボ自治州では、かつてドイツマルクを通貨として使用していたが、現在ではユーロを使用している。
ユーロとの相場が固定されている通貨には上記のブルガリア・レフの他カーボベルデ・エスクード(カーボベルデ)、兌換マルク(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、CFAフラン(アフリカ14カ国)、CFPフラン(フランス海外領土)がある。いずれもユーロ創設以前にユーロ参加国の通貨との固定相場を設定していた通貨である。
[編集] 旧通貨との換算レート
ユーロ採用前の各通貨における1ユーロあたりの換算レートは以下の通り。
国 | 換算レート | 通貨 |
---|---|---|
ベルギー | 40.3399 | ベルギー・フラン |
ドイツ | 1.95583 | ドイツマルク |
ギリシャ | 340.750 | ドラクマ |
スペイン | 166.386 | ペセタ |
フランス | 6.55957 | フランス・フラン |
アイルランド | 0.787564 | アイルランド・ポンド |
イタリア | 1936.27 | イタリア・リラ |
ルクセンブルグ | 40.3399 | ルクセンブルグ・フラン |
オランダ | 2.20371 | ギルダー |
オーストリア | 13.7603 | オーストリア・シリング |
ポルトガル | 200.482 | ポルトガル・エスクード |
フィンランド | 5.94573 | フィンランド・マルッカ |
スロベニア | 239.640 | トラール |
[編集] 為替レート
[編集] 関連項目
アイルランドのユーロ硬貨
イタリアのユーロ硬貨
オーストリアのユーロ硬貨
オランダのユーロ硬貨
ギリシャのユーロ硬貨
スペインのユーロ硬貨
ドイツのユーロ硬貨
フィンランドのユーロ硬貨
フランスのユーロ硬貨
ベルギーのユーロ硬貨
ポルトガルのユーロ硬貨
ルクセンブルクのユーロ硬貨
スロベニアのユーロ硬貨
[編集] 外部リンク
- ユーロと経済通貨同盟 - 駐日欧州委員会代表部 (EUによるユーロの日本語解説ページ)
- Euro banknotes & coins - European Central Bank (欧州中央銀行によるユーロ紙幣とユーロ硬貨についての詳細情報ページ)
- 5 Euro Coins