エルマ・ベルケMP40短機関銃
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MP40 |
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エルマ・ベルケMP40 | |
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種類 | 軍用短機関銃 |
製造国 | ドイツ |
設計・製造 | エルマ・ベルケ社 |
口径 | 9mm |
銃身長 | 251mm |
ライフリング | |
使用弾薬 | 9mmパラベラム弾 |
装弾数 | 32発 |
作動方式 | オープンボルト |
全長 | 630mm(ストック展開時833mm) |
重量 | 4,025g |
発射速度 | 約500発/分 |
銃口初速 | 380m/s |
有効射程 | 100m |
エルマ・ベルケMP40(独:Maschinenpistole 40)は、第二次世界大戦にドイツ軍が使用した短機関銃である。歩兵分隊長や戦車兵が携行した標準的な小火器であった。プレス加工の多用などコスト削減により大量生産されて前線に配備されたMP40は連合国側の脅威となり、その後の連合国側の短機関銃の開発に影響を与えた。
なお、MP40は「シュマイザー」という別名で知られているが、ドイツの有名な銃技師ヒューゴ・シュマイザーは開発に関わっていない(後述参照)。
目次 |
[編集] 開発経緯
第一次世界大戦ではドイツ軍はテオドール・ベルクマン武器製造会社で開発したMP18短機関銃を使用した。MP18短機関銃は大戦を通して使用、ドイツ軍部でもこの短機関銃に膠着した塹壕戦の打破の期待が持たれた。しかしアメリカが連合軍側に参戦により連合軍は増強、1918年に起こったドイツ軍による西部戦線に対する大攻勢も失敗し帝政ドイツ陸軍は敗北した。野戦が中心だった戦場で、しかも物量に劣る状態では短機関銃は全体的に戦局に影響を与えることができなかったのである。このことからドイツ軍部内で短機関銃は「役に立たない兵器」というレッテルを貼られてしまい、大戦後に残ったMP18短機関銃も軍では使用されることはなく再編された警察にすべて引き渡されてしまった。
[編集] エルマ・ベルケMP40の登場
第一次世界大戦後、ハーネル社がMP18短機関銃をベースにセミ・フルオートの切り替えが可能なMP28短機関銃を開発した。このMP28短機関銃は、以降のドイツ短機関銃に多大の影響を与えた。1933年、ドイツではヒトラー内閣が成立し、1930年に起こったスペイン内戦に介入、このときMP28短機関銃はコンドル軍団と呼ばれるドイツ義勇軍により使用され短機関銃の有効性を実証させられた。これは市街戦が多かった同内戦で、多少威力が落ちようと連射性があり、取り回しが容易な短機関銃が容易に扱えたからである。その後、MP28の発展型MP38短機関銃を開発。1938年になって、MP38短機関銃の欠点を修正したエルマ・ベルケMP40短機関銃を開発、1940年に制式採用された。MP40の主な特徴は、MP38の欠点だったオープンボルトに対して安全装置が付加されたこと、素材にアルミニウムを使うことを止め、鋼板プレス加工部品を多用することで機械加工箇所を大幅に減らしコストを下げることに成功したことなどが挙げられる。その後改良を加え、数種類のMP40が生産された。
[編集] バリエーション
- MP38/40
- MP38にMP40/I相当のセーフティー機能を追加、MP40のグリップフレームと在庫の残ったMP38のレシーバーを組み合わせたモデル。
- MP40
- MP40の初期モデル。アルミニウムの使用を止め、鋼板プレス加工部品を多用。そのため機械加工箇所を大幅に減らしコストを下げることができた。
- MP40/I
- マガジンハウジング側面にリブを追加、ボルトを前進状態で停止させるセーフティーを追加。第二次世界大戦中もっとも生産されたモデル。
- MP40-II
- 通常の箱形弾倉を2個横に並べ、続けて撃てるように改良。重量増加のため、ごく少量しか製造されなかった。
- MP40/II
- 伸縮式のリコイルユニットを廃止し、リコイルスプリングを強化。1,000発/分近くまで連射速度が高まった。MP40-IIとは別物。
[編集] その後
戦後MP40は大多数が連合国に押収された。廃棄処分されたものもあるが、ソビエト軍に捕獲された物は親ソビエト諸国に供給された。また、ノルウェーでは1980年代まで戦車兵用のとして配備されていたほど戦後になってもMP40は人気が高かった。
のちにMP40は「シュマイザー」という別名が付いた。シュマイザーの名称はドイツの銃技師、ヒューゴ・シュマイザーから取ったものだが、シュマイザーはMP40の開発には関わっていない。このような間違いが起こった背景には連合軍側がMP18短機関銃の開発に関わったシュマイザーをMP40でも同じように関わったものと勘違いしたためである(第二次大戦中にアメリカで出されたドイツの銃器マニュアル集でもMP40が「シュマイザー」と紹介されている)。
このためMP40はシュマイザーという名前が定着してしまい、現在でも「シュマイザー」と呼ばれる事が多い。ナチス・ドイツ軍が出てくる映画や資料には必ず出てくるほど有名な短機関銃だが実際は「エルマ・ベルケMP40」という名前では知らない場合が多い。
また、この短機関銃の「プレス加工の多用・木製部品不使用により大量生産を容易とする」という設計思想は、アメリカのM3グリースガンやイギリスのステンガン、旧ソ連のPPS短機関銃などに受け継がれた。
[編集] エルマ・ベルケMP40短機関銃の登場するメディア作品
[編集] 映画・テレビ映画
ドイツ軍が登場するほぼ全ての戦争映画に登場する(スペイン製のZ45で代用などという例もあるが)。
- 『戦争のはらわた』
- 『プライベート・ライアン』
- 『史上最大の作戦』
- 『ナバロンの要塞』
- 『荒鷲の要塞』
- 『レマゲン鉄橋』
- 『007 ゴールドフィンガー』
- 『バンド・オブ・ブラザース』
- 『コンバット!』
- 『ダーティハリー』
- 『ワイルド7 ドラマ版』
- 『セーラー服と機関銃 2006年版』
[編集] 小説
[編集] 漫画・アニメ
- 『アニメ版 ルパン三世シリーズ』:峰不二子、敵キャラ等が使用
- 『ルパン三世 カリオストロの城』:シュパーギンPPSh-41短機関銃とともに、カリオストロ伯爵の部下が使用。
[編集] ゲーム
- 『メダル・オブ・オナー シリーズ全般』
- 『Wolfenstein シリーズ全般』
- 『Call of Duty』
- 『バトルフィールド1942』
- 『HIDDEN & DANGEROUS 2』(Windows用ゲーム)