ガンダムセンチュリー
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「ガンダムセンチュリー」・・・正確には「月刊OUT9月号増刊 宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY」は、1981年9月27日に発行(奥付に記載されたデータであり、実際はそれより一月近く早く書店に並んでいる)されたアニメ関連のムックである。アニメ本編で語られない各種設定を外部スタッフによって詳しく作り上げ解説したもので、その完成度の高さと説得力で非公式設定ながらファンに認知され、また後には本編の新作にその設定が反映されたという点で画期的と評価されている。
目次 |
[編集] 経緯
1980年代初め、アニメ「機動戦士ガンダム」が一大ブームとなり、いろいろな出版社から多数の関連書籍が発行された。しかし、その大半の内容はアニメ本編を解説・紹介したものであり、単なる副読本の域を出るものではなかった。「ガンダム」はそれ以前のロボットアニメとは一線を画すリアリティをもった軍用兵器として描写されてはいたが、当時の制作環境による表現上の制約もあり、特にこの作品に興味の無い者にとっては、従来の派手な色彩のスーパーロボットと何ら変らぬ認識のされ方であったのも事実である。その一方、コアなアニメファンたちの中には映像作品中で語られなかった部分を自ら考証する「設定遊び」を行う者もいた。
アニメ・SF関係の企画集団である「スタジオぬえ」のスタッフを含むメンバーを中心としたサークル「SFセントラルアーツ」の同人誌「Gun Site」もその一つであり、アニメ本編で具体的な説明のなかったSF考証や兵器解説・戦史を大変詳しく描いていた。これは後に、「ぬえ」のメンバーでもあり、ガンダム本編に脚本家として参加していた松崎健一と、サブカルチャー誌的傾向のあったアニメ誌・「月刊OUT」の当時の編集長・大徳哲雄により商業誌に発展、設定考証の他、スタッフインタビューや座談会、現実のスペースコロニー計画やモビルスーツ的な機械の記事を加え再編集され、「ガンダムセンチュリー」として刊行された。
このムックの最大の特徴は、アニメ本編に使われたフィルムの画像やセル画が一枚たりとも掲載されておらず、全て新作イラストが使われているところであった。(アニメスタッフによるエッセイのペ-ジにのみ、アニメの原画が掲載されている。)また当時のガンダム関連書籍と異なり、表紙にモビルスーツもキャラクターも描かれておらず、横文字のタイトルロゴとジュラルミンにリベットを打った航空機の外装風のバックというのも斬新であった。もっとも、これにより年少者にはガンダム関連の書籍であることすら認識されず、当時1800円という価格もあって売れ行きは良くなかった。それにより一度回収され、新品のカバーに付け替えられた後再発行されたが、今度はタイトルロゴが印刷されていない(タイトルだけはオフセットではない別の方法で後から印字されており、硬い物でこすると削れてしまう)というミスにより直ちに再回収されるアクシデントも発生した。このため、ロゴ無しの本誌はレアであるため特に高価なプレミア価格となっている。
[編集] 作品世界への影響
本誌により創作されたガンダム世界における専門用語や裏設定は実に多い。「エネルギーCAP」「Iフィールド」「ミノフスキークラフト」「フィールドモーター」といったミノフスキー物理学関連用語や、「ブリティッシュ作戦」「流体内パルスシステム」「AMBACシステム」といった単語、ザクのバリエーション、ゲルググとギャンが競作の関係にあったこと、アッガイにザクのジェネレーターが使われていること、そしてZIONIC(現在ではZEONICと綴る)などの兵器メーカーなどの裏設定がある。(それを搭載するためにムサイの形状が決定されたとする巨大な降下カプセル・HLVはHRSLとして本誌で初登場しているが、これはそれ以前にワールドフォトプレス社の「メカニックマガジン」誌に掲載された記事でガンダム世界とは関係なく・・・ただし記事内の仮想戦記の人名はガンダムキャラからきていたが・・・発表されており、イラストを担当したのも同じ宮武一貴であった。)
またこれらの設定はアニメ本編の製作会社であるサンライズの公認をとっていなかったが、後にスポンサーとなるバンダイのプラモデル、「MSV」の副読本でも多くが(『ガンダムセンチュリー』のスタッフに無断で)流用され発展、ガンプラマニアたちにとっての共通認識(これは一般のアニメファン、特に女子の知るところではなかったのだが)となった。当時のファンたちが成長し製作者側となった現代、これら非公式設定の幾つかは新作のアニメやゲームに使用され、事実上の公式設定となってしまった。これはファンによる「お遊び」が、本編に影響を及ぼした画期的な出来事であったといえる。(同様の現象は『スター・ウォーズ』でも起きており、スピンオフ小説やコミックの設定が新3部作に取り入れられた。)
もっとも、こういった経緯を知らない若い世代のファンの多くには公式・非公式の設定の区別がつかず、同列に語られる傾向があるのも事実である。実際、「アニメに登場するメカ」に関して記述されるべきこのウェブ百科事典で、まるで実在する機体であるかのように記述(しかも雑多な非公式設定の寄せ集めであったり、記述者が勝手に創作したものも多い)を行うという、ガンダムセンチュリーのような「設定遊び本」でやるべき事と混同した、Wikipediaの基本理念を逸脱、勘違いした行為は後を絶たない。
みのり書房はその後、いわゆる「リアルロボット物」の副読本として1983年に「マクロス・パーフェクト・メモリー」(超時空要塞マクロス)、1985年に「ボトムズ・オデッセイ」(装甲騎兵ボトムズ)を発行している。ガンダムセンチュリーと同傾向のムックであるが、特に「マクロス」ではスタジオぬえにより番組開始前から詳細な公式設定が作られていたこともあり、本編のストーリー紹介やアニメの設定書や企画書、準備稿、オリジナル小説なども収録されていた。これら三冊のムックはオタク第一世代のリアルロボ好きにとってバイブルとでも言うべき存在であり、現在では全てプレミア価格となっている。
[編集] 復刻版
本誌は高い資料価値と希少性から、1990年代には万単位のプレミア価格が付き、10万を超える価格で取引されることもあった。そのため最も入手が困難なムックとして知られるようになり、ボロボロなものでも貴重な資料として1997年に日本橋に開店したガンダム専門店「GUNDAM's」で展示されていた。
そんな状況も2000年3月に樹想社から「GUNDAM CENTURY RENEWAL VERSION」として定価4200円で復刻されることで解消した(ISBN 4877770283)。誤植の訂正ならびに科学単位の一部が変更されている(ミリバールからヘクトパスカルなど)以外は旧版と同じ内容である。
みのり書房が倒産しているため、復刻にあたっては旧版を複製する方式を取られた。旧版の3倍近い価格となったのはそのためである。
[編集] 製作スタッフ
- 企画 松崎健一/スタジオぬえ(宮武一貴・河森正治)/大徳哲雄
- チーフディレクター 松崎健一
- ビジュアルスーパーヴァイザー 宮武一貴
- 編集 永瀬唯 大徳哲雄(みのり書房)
- 設定解析 河森正治
- 制作進行デスク 森田繁
- 制作進行 山田星人 石津泰志
- 協力 Gun Site
[編集] 外部リンク
- 『機動戦士ガンダム公式百科事典』オフィシャルサイト - 設定遊びから始まった、ガンダム専門用語に関する関係者の思い出と見解
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