不足賃
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不足賃(ふそくちん)とは、列車降車時において不足している運賃のことで、鉄道運賃の用語である。乗車券に表示された駅より先の駅まで乗り越しして不足している運賃を支払うことを精算という。
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[編集] 定義
例えば、300円の乗車券を購入して電車に乗り、目的地の駅で降車する。降車した駅までの運賃がもし500円であれば200円が不足しているわけであるから降車駅で支払わなければならない。この不足分の200円が不足賃となる。この取扱いを「区間変更」という。なお、定期券や区間式の乗車券・回数券の乗り越しの場合は、末端駅・分岐駅からの運賃が生じる。この取り扱いは、鉄道事業者により異なる。
不足賃は駅改札口の係員に支払う場合もあるし、自動精算機が設置されている駅であれば自動精算機で支払うこともできる。
[編集] 自動精算機の普及
多客時には駅改札口は不足賃を精算する客で混雑し、改札口の通行に支障をきたしている駅が多くある。そのため各鉄道事業者では自動精算機を積極的に導入し、混雑の緩和に努めている。
[編集] 自動改札機での精算
主に都市圏の駅において、残額が不足賃以上あるプリペイドカードで精算する場合、一部の自動改札機で精算できることがある。この場合2枚投入が可能になっている必要がある。乗車駅から使用した乗車券類や古いプリペイドカード等と精算に使用するプリペイドカードを投入すれば、精算に使用するプリペイドカードは不足する運賃のみ差し引かれる。また、2枚投入可能な自動改札機については、1枚投入しかできない改札機が混在する場合は識別が可能になっていることが多い。
[編集] 過去の事例
不足賃の場合、旅客が「乗り越しした乗車券」(原券)と「不足賃」を改札窓口に出すことになるが、それを悪用した改札係員による横領事件が過去に発覚している。手口としては、受け取った乗車券を自宅へ持ち帰り処分し、現金を横領するのである。使用済みの乗車券がなければ、不足賃の正確な額がわからなくなってしまうのである。また、不足賃を職場の飲食代に流用してしまったという事例も過去に発覚している。そういった行為は隠語で「チンタ」や「チンタロウ」と呼ばれることもあった(チン=不足賃の「賃」)。「チンタで夜の宴会」ということもあった。一方で、定期乗車券による乗り越しの場合は乗車券を回収できないため原券そのものが存在しない。
そのため、各鉄道事業者では、自動精算機の増設、窓口精算の場合はすぐ窓口処理機に入力する、各駅別に不足賃取扱い額のデータを作成し不自然な金額の変動がないかチェックする等の対策を取っており、現在では不正横領の事例はほとんど聞かなくなっている。
また、出札・改札口では酔客による暴力事件等が発生することがあるので防犯のため監視カメラを設置していることが多いが、内部監査のため時々その画像をチェックすることもあるといわれる。下車客から現金を受け取ったら速やかに所定の場所に現金を収納し必要なデータ入力等をしなければならない。その作業手順が守られているかを監査するのである。
[編集] 他社線からの乗り越し
[編集] 連絡乗車券が購入出来ない場合
他社線からの乗車券の運賃が不足している場合がある。また一例として、甲府駅から東葉勝田台駅まで東日本旅客鉄道(JR東日本)中央本線・東京地下鉄東西線・東葉高速線経由で乗車する場合を考える。甲府駅では目的地までの乗車券は買うことができない。よって、途中までの乗車券を購入してあとは降車駅で精算する必要がある。その場合、支払った不足運賃は事業者同士で精算し、多くは乗り越しの比率(どこの駅から何件乗り越しがあったかをおよそ1年に1回程度調査し、決定される)で割り振られる。
ただし近年では、駅務機器の性能の向上に伴い、従来よりも多くの情報を処理できるように改良されているので、機器による対応が可能な場合は1件毎に厳密な事業者間の精算を行う場合も多くなっている。
[編集] 接続駅までの運賃と異なる場合
券面の表示額が接続駅までの運賃と異なる場合でも、基本的には1社での乗り越しの場合と変わらない。超過していればその分は乗り継ぎ先の運賃に充当され、足りない分のみを徴収する。逆に足りない場合は接続駅までの不足賃と乗り継ぎ先からの運賃を併せて徴収する。極端な話ではあるが、直通運転の拠点駅である場合、乗らない方の事業者の乗車券を購入すると、その全額を乗車した事業者線の運賃として充当できる(例:綾瀬駅から210円のJR乗車券を購入して東京地下鉄の230円区間まで乗車した場合でも、精算額は20円)。
ただし、下車時に自動精算機を利用する必要があるほか、事業者によって対応が異なるので注意が必要。
[編集] 利用者への呼びかけ
乗り越し精算によって不足賃を払う客が多いと改札が混雑する。そのため前述のとおり自動精算機の増設にも力をいれているが、そのほかにも下記のような対策が取られている。
- 運賃表を見やすく
- 運賃表が見づらい(文字が小さくて見えない、運賃表が複雑なためわかりにくい等)のため、「取り敢えず最低運賃の乗車券を購入し下車時に精算する」という利用者も少なくない。そのため運賃表を見やすいものに交換する等の対策がとられている。
- カードの利用推進
- 運賃表を見てそのつど乗車券を購入する必要がないストアードフェアカードを発売する事業者も多い。神戸・大阪・京都を中心とした関西圏内の多数の事業者間を融通する先駆けとなったスルッとKANSAIを始め、JR・私鉄・公営各社局のカード、首都圏の鉄道事業者によるパスネットなどがある。
[編集] 運賃箱
前述のように係員による不正横領が発生したことがあるため、駅によっては路線バスの運賃箱のような収納箱を改札に設置し、係員が手で受け取った運賃(現金)を入れるようにしているところもある。しかし、混雑時には取り扱いに難があり、使用を止めてしまったところも多い。