井の頭恩賜公園
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井の頭恩賜公園(いのかしらおんしこうえん)は、東京都武蔵野市と三鷹市にまたがる都立公園である。1917年開園。石神井池・善福寺池と並び、武蔵野三大湧水池として知られる井の頭池を中心とした公園である。財団法人東京都公園協会が管理をしている。
井の頭恩賜公園のデータ | |
面積 | 383,773.16m² |
含まれる市町村 | 東京都三鷹市、武蔵野市 |
開園の日 | 1917年5月1日 |
公園事務所 | |
所在地 | 〒180-0005 |
武蔵野市御殿山1-18-31 | |
電話番号 | 0422-47-6900 |
公園管理者 | 東京都公園協会 |
公園案内 | 公園案内 |
弁財天 | 井の頭弁財天 |
目次 |
[編集] 地理
井の頭恩賜公園は武蔵野市の南東、三鷹市の北東に接する、約380,000平方メートルに広がる公園である。
公園の中心である井の頭池は北西方向の先が二つに分かれた細長い池の形をしており、東南方向からは井の頭池を源流としている神田川が流れている。神田川に沿って公園がしばらく続いており、並んで走る京王井の頭線の井の頭公園駅がある。また、池の西側には御殿山の雑木林があり、東京都建設局井の頭自然文化園が吉祥寺通りを挟んで存在する。雑木林の南側には玉川上水が東南方向に流れており、そのさらに南に400mトラックと三鷹の森ジブリ美術館のある西園に出る。玉川上水の下流側の脇には小さな広場のある東園がある。
行政区分では、井の頭池、神田川、井の頭公園駅、西・東園は三鷹市であり、井の頭自然文化園と雑木林の御殿山は武蔵野市となる。しかし、井の頭池の北側はすぐ武蔵野市になり、中央線吉祥寺駅の公園口(南口)から井の頭池まで500m弱と近い。吉祥寺駅から井の頭池に行く道の脇には若者向けの商店が発達している。井の頭公園駅からも井の頭池まで近く、こちらは小さな広場や小道を散策できる。
[編集] 自然
春は桜が美しい。井の頭池の中央を渡している七井橋から見る、池に覆い被さるように迫出す桜は格別である。池の西側には梅園もあり、桜の咲く前の季節から華やかになる。梅園の北側に向かった池沿いには湧水口があるが、現在は水量が乏しくなっている。
夏は御殿山の雑木林の葉の緑の色が眩しく、木立の中の空気が清々しい。秋になると様々な樹の紅葉が綺麗であり、落ち葉の積み重なった道を歩くのも楽しい。冬になると井の頭池には、水鳥の渡り鳥が数多く飛来しにぎやかになる。
[編集] 歴史
公園内の井の頭池は湧水が豊かで、園内武蔵野市側の御殿山遺跡から縄文時代の竪穴式住居遺跡も出土しているように、古くから人間の生活に不可欠な水をまかなってきた。
平安時代中期に六孫王経基が伝教大師作の弁財天女像を安置するためこの地に建てた堂が、現在井の頭池西端の島にある弁財天の起源とされる。その後源平合戦の頃、源頼朝が東国平定を祈願し、その大願成就ののちに改築された、と弁財天の縁起には伝わっている。鎌倉時代末期、元弘の乱の際に新田義貞と北条泰家との対戦の兵火で焼失。その後数百年の間放置されていたが、江戸幕府三代将軍徳川家光により再建された。
井の頭と言う名称も家光が名づけ、自ら小刀で弁財天の傍らのこぶしの木にその名を刻んだと言われており、その伝承を記した石碑が現在もその場所に建てられている。
また三鷹の地名に残るように、この一帯の武蔵野は徳川歴代将軍が鷹狩りを楽しんだ鷹場であり、家光が鷹狩りに訪れた際の休息のため、井の頭池を見渡す場所に御殿を造営したことから御殿山の地名が起こった。
江戸時代の始めに神田川が改修されて神田上水が引かれると江戸市民の水がめとなり、また江戸市民の行楽地となって弁財天は信仰を集めた。弁財天境内や向かいの石段、石段を登りきった周辺などに、その当時の商人や歌舞伎役者が寄進した石灯籠、宇賀神像などが残る。なお、明和四年に寄進された石造りの鳥居もあったが、明治初年の神仏分離令の際に撤去され、その後柱石は井の頭池と神田上水の間の水門に転用された。その水門は現在使用されていないものの、池の東端付近に今も残る。
井の頭池と一帯の林は、幕府御用林として保護されてきたが、明治維新後東京府が買収。1889年に宮内省(現在の宮内庁)御用林となり、1913年には帝室御料地から東京市に下賜。1917年5月1日に恩賜公園として一般公開にいたった。
[編集] スポット
園内は、神田川の水源、井の頭池がかなりの面積を占めボート場がある。また池の南側を玉川上水が流れており、上水の南側の「西園」には三鷹の森ジブリ美術館が設置。吉祥寺通り(公園通り)を挟んだ西側(こちらも公園内)を含む園の西北部は井の頭自然文化園(有料 一般400円 - 2005年6月現在)となっており、動物園、北村西望彫刻館(長崎市の平和公園にある平和祈念像の原形などを収蔵)、日本庭園などがある。公園内ではないが、玉川上水沿いの近所には山本有三記念館もある。
また、公園近辺に商店や飲食店も多く立ち並んでいる。特に創業80年を数えるいせや総本店や、井の頭公園にほど近いいせや公園店は、その独特の風情から公園の行き帰りに立ち寄る人や、またサラリーマンや学生なども多く、公園周辺の人気店舗の一つになっている。なお、いせや総本店は老朽化のため2006年9月25日に閉店、10月からは改築工事に入り(工事中は仮店舗にて営業を継続)、2008年から新ビル内で営業する予定。
[編集] 問題点
マナーが悪くなっている。来園者ではゴミの問題、夜騒ぐ若者、落書き。近隣住人では、ペットのノーリードや糞の放置など。近年では、公園敷地内の「駐輪禁止」の立て札の周りに連日大量の自転車が駐輪されており、あたかもそこが駐輪場であるかのような様相をなしている。
なお、ゴミ問題を解決しようと、2000年頃より来園者にゴミを持ち帰ってもらうよう公園内のゴミ箱を撤去し現在は園内にゴミ箱や吸殻入れは設置されていないのだが、園内に投げ捨てられるゴミやタバコの吸殻は一向に減る気配が無い。花見のシーズンには臨時のゴミ集積所が設置されるが、それ以外の場所にもゴミが山積みになっている事が多い。その上、ここ数年は、花見をした際のシートなどをその場に放置して帰る客や、池にゴミを放り込むなどの迷惑行為も横行している。
井の頭恩賜公園の管理をしている東京都並びに都西部公園緑地事務所では、本来公園内での露店による販売行為を禁止している。公園の各所にその旨を伝える張り紙を付けた赤いコーンが置かれていたが、にもかかわらずその横で堂々と露店を構える人々が後を絶たなかった。これらの取締りを強化すると共に、2007年より大道芸などのパフォーマーを含めた公園内での活動を一定のルール下で認可するため、井の頭公園アートマーケッツという登録制を導入した(次の項目参照)。
また、水質汚染も深刻である。鯉や野鳥類のエサとしてポテトチップスなどの菓子類やパンの切れ端を池に投げ入れる等マナーの悪い来園者が多数いることが一つの原因に挙げられる。井の頭池近隣地域における地域開発のための地下掘削工事が、井の頭池に流れ込むはずの湧水の元となる地下水脈を分断し続けている可能性も指摘され、これも池の水質汚染の大きな原因となっていると考えられる。以前は公園内の売店が鯉のエサとして麩を大量販売していたが、現在は緑地事務所の呼びかけにより販売を辞めている。
これらの問題を解決すべく、近隣の小学校ではポスターを貼ってマナーを守るよう呼びかけたり、全校でゴミ拾いをするなどを行なっている。また現在では公園緑地事務所から橋の欄干などに、生物への健康面からエサを投げ込まないよう呼びかけるメッセージも貼られている。
多くの野鳥の繁殖地にもなっているが、中でもカラスの生息数が多く周辺地域へ行きゴミを漁るなどの問題も発生している。
[編集] 井の頭公園アートマーケッツ
井の頭公園アートマーケッツは公園利用の適正化と露店出展や屋外パフォーマンスのルールを明文化したもので、全国でも画期的な導入となる。一定のルールを設け、井の頭公園をアート発信の場所とし魅力ある公園作りを行なおうという試みである。
週末や休日になれば、露店や大道芸、弾き語り等のパフォーマーが集まり、井の頭公園の魅力の一つとして知られていたが、それらの行為は都市公園法違反の無許可占有である上、中には薬物など違法である物品を販売する者もおり、井の頭公園に隣接し直轄管理している都西部公園緑地事務所には、近隣住民から騒音や治安の悪化、通行の支障になるなどの苦情も多く寄せられていた。
そこで井の頭恩賜公園100年実行委員会が主体となり、これらの苦情、都市公園法との調和を図った上、「水と緑の再生」、「公園を核とする街の賑わいの創出」を柱に、地域の活性化を図ることを目的とし、2007年1月13日より井の頭公園内で実施を開始した。都西部公園緑地事務所が、井の頭公園アートマーケッツ事務局の任を担う。
出展希望者は事前申し込みや審査を経て、「12,000円の年間登録料を全額前払いで支払う」必要があり、井の頭恩賜公園100年実行委員会は、登録料はすべてマーケットの運営のためだけに使用するとしている。
年間約102日間、土日祝日の朝9~10時頃から夕方まで開催され、桜の開花時期は開催が休止される。なお、フリーマーケットではないため、物品の販売は手作りの品に限られ、リサイクル品や食品の販売は禁じられている。
井の頭公園アートマーケッツは全国的にも前例の無い試みである為、未だこの試みは改善すべき問題を多く抱えている。
東京都は、この井の頭公園アートマーケッツとは別に、平行してヘブンアーティストというライセンス制度も行なっているが、ヘブンアーティストはオーディション等の審査を経て合格すれば、一年中活動できる上、登録料等は完全無料であり、尚且つ都内数十箇所での活動が可能となっている。アートマーケッツではヘブンアーティストのライセンスの有無に関係なく登録できるが、運営の対象にアーティストも含まれているのにも関わらず、アートマーケッツとヘブンアーティストの登録条件に格差があり、一部のアーティストから不満が出ている。
さらに、現在1開催日の活動枠定数は展示販売が100、パフォーマンスは10となっているが、パフォーマンスの登録者数は既に限定枠を大きく超えており、開催日に定数以上のアーティストが出展希望した場合、抽選で活動の順番や時間を決めなければならない。そうなると登録した全てのアーティストが理想的な環境でパフォーマンスをすることはのぞめない。
井の頭公園アートマーケッツ導入以前に比べて混雑は緩和されたものの、アンプ等を使用したり、指定された活動地域や時間帯以外にゲリラ的に活動をするパフォーマーも依然存在しており、騒音問題は解決していない。
また、これはあくまで都西部公園緑地事務所が独自の判断で開始した試みであり、東京都は依然として露店の出展は違法と認識していることから、一部からは露店による違法占拠行為を公園の管理側が認める前例を作ってしまったと言う意見も出ている。その上、地域住民の中には、露店を完全に公園内から締め出すべきという意見もいまだ根強い。
[編集] 都市伝説
都内などではしばしば「カップルで井の頭池のボートに乗ると、そのカップルは別れてしまう」という「破局スポット」との噂が流布されている。井の頭池には弁財天が祀られており、女の神である弁財天が仲のよいカップルに嫉妬するためというのが噂の出所らしく、その起源はかなり古い。もちろん東京ディズニーランド等の他の破局スポットと同様に、都市伝説としての域を出ない。
また、ゴミ箱が設置されていない理由として、過去に起きた殺人事件と関連があるかのように言われる事があるが、それも都市伝説の域を出ない。
なお、いかなるカップルもいずれは何等かの形で離別する事になるので(死別も含む)、「井の頭池のボートに乗ったカップルは別れてしまう」という命題は、論理学的にも集合論的にも真である。
[編集] 最寄り駅
[編集] 外部リンク
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