交番
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
![]()
交番の例(和田山駅前交番)
|
交番(こうばん、KOBAN、正確にはPolice box)は日本の警察が設置している施設で、市街地の各所に設けられた警察官の詰め所のこと。警察署の下部機構であり、通常は警察署の地域課の警察官が勤務している。
目次 |
[編集] 概要
ある程度の人口があるが予算・人員等の都合により独立の警察署を置かない地域に設置され、各種申請・届出事務が可能なものを特に幹部交番と呼ぶ(通常、交番所長は警部補か巡査部長だが、幹部交番のそれは警部(一部、警視の場合あり。通常、大規模警察署長は警視正、その他の警察署長は警視))。ただし、都道府県警察によっては同様の経緯によって設置された施設を「警察署分庁舎」などと呼んでいる場合もある。
警察署の所在地付近の区域は、警察署の地域課にその区域を管轄する交番としての機能を持たせて、パトロールや巡回連絡などを行っている場合がある。これは「署所在地」と呼ばれ交番の一つとみなされる。但し、都道府県警察や警察署によっては署所在地がない場合もある。
警視庁管轄下の場合は殆どの地域に警察署が設置されている為、幹部交番は殆ど見られない。しかし地方では近年人口の増加してきた地域の普通の交番を幹部交番へ格上げすることもある。また、人口減少による警察署の統廃合によって幹部交番へ格下げになることもある。
通常は2~3人一組で24時間勤務である(仮泊設備もある)。
[編集] 歴史
1874年、東京で誕生した制度。警察内の隠語では「PB」(ぴーびー。Police Boxの略。)と呼ばれ、警察官同士の会話や警察無線での通話などで使われる。近年はアメリカやシンガポールにも交番制度が輸出されており、日本以外でも「コウバン」で通用する(ワイキキにはホノルル市警の「Waikiki Beach koban」がある)。中華人民共和国にも交番が新設されており、派出所と呼ぶ。ただ、中国上海市公安局の交番は概ね日本のそれより規模が大きく、アメリカの警察署(または分署)の規模である。
かつては派出所が正式名称であったが、1994年から正式に交番と呼ばれるようになった。なお、現在も警備派出所として派出所という名称の施設は存在するが、通常の交番とは異なり、要警備諸所(各種公邸など)における警察官の詰め所的な存在である。他には警備派出所の名称が使用さている施設としては、各地空港に空港警備派出所がある。所長の階級は警部か警視で、昇任直後に就任する傾向が強い。最近の傾向としては、市町村合併の影響で警察署統廃合が全国で行なわれており、幹部交番が増加しつつある。幹部交番は廃止された警察署庁舎を使用している。
[編集] 交番の役割
交番と駐在所には、都道府県公安委員会の規則などにより管轄区域が割り当てられており、交番の勤務員は通常はその範囲内の治安維持にあたる。ただし、本署の指示があったときや緊急の場合には管轄区域にかかわらず出動する。また、交番の勤務員は、例えばパトロールカーによるパトロール、留置管理、被疑者の押送、重大な事件の捜査など警察署の他の部署の職務の応援に回ることもある。これを「補勤」(ほきん)という。
市街地の各所に警察官の詰め所を設けることで、周辺地域の治安の維持と住民の利便を図ろうというものである。交替で番をするところであるためこのように呼ばれる。日本の治安が良好な要因のひとつは全国の交番にあるのではないかと他の国からの注目は高い。
原則として、担当警察官の交代勤務により、警察官が24時間常駐している。しかし、警察官が減少しているため、一定時間のみ警察官が滞在する交番や、警察官を配置せずにテレビ電話を置いただけの無人交番も運用されている。この様な問題を抱えている交番を「空き交番」ということがある(後述)。このことで、暴漢から交番に逃れたものの無人で、結局暴行を受けた、などの事件(1985年5月、横浜市南区で、介抱泥棒を取り押さえた大学生コンビが無人の交番で返り討ちに遭い、刺されて1人が死亡した「平野さん事件」、別名「勇気ある大学生殺傷事件」は有名)も発生しており、今後の課題となっている。
交番は、地域課のパトロール担当の警察官が常駐するところであるだけでなく、緊急事態のときには警察官の出動依頼も可能である。110番通報よりも最寄の交番に電話をかける方が警察官の現場到着が早い場合もある(電話を受けた交番では制服警察官がバイクや自転車で飛んで行く。都道府県により公衆回線から直接かけることができたりできなかったりする)。その他、管轄地域内で起こった事件、事故などの報告などが可能である。また、交番には付近の地図が掲示されているほか、日常的に管轄区域のパトロールを行う警察官は近所の地理に詳しい場合が多いため、交番で道を尋ねる風景はよく見られる(警察内部では「地理案内」と呼ぶ)。また、交通量の多い交差点に面して設置されている交番では、交通の監視の機能をもたせ、スピーカーを通して注意を促したりする場合もある。
この他、交番の職務の中に「巡回連絡」がある。これは、管轄区域内の住宅や事業所などを交番の勤務員が巡回し、住宅であれば世帯主をはじめとする家族構成、勤務先や通学先などを、事業所であれば業種や従業員数などを、それぞれ家人や経営者などから直接聞き取り、交番備え付けの「巡回連絡簿」に記載するというものである。管轄区域内の住民などは絶えず流動しているため、半年~1年ごとに区域内全ての住宅・事業所を巡回することを目安としているが、他の業務との兼ね合いもあり必ずしもこの通り実施されてはいない交番もある。
総務省による警察に対するアンケート調査の結果、『交番にはいつも警察官が常駐していて欲しい、いつもパトロールして欲しい」との相反する要望がある。この国民の要望に応えるため2003年(平成15年)8月から福岡県警察は全国に先駆けて交番、駐在所の再編を行い交番の大型化等を実施して治安の回復など一定の成果をあげている。
[編集] 空き交番
「空き交番」とは交番の施設があるものの、警察官が不在がちな交番をいう。交番は、原則として一当務2人以上の交替制をしくことになっているが、人手不足により夜間無人となるもの、あるいは警察官は常駐するが巡回に出かけた後などに無人になるものなどがある。
警察庁生活安全局地域課の統計によると、2006年4月1日現在の全国の交番数は6,362か所(前年同期比93か所減)、交番勤務員は約48,700人(昨年同期比約1,800人増)である。「空き交番」は全国で268か所あるが、2005年の統計では1,222か所であったのである程度改善されているといえる。
空き交番問題は以前から指摘されていたが、特に市街地や住宅街の交番、また過疎地の駐在所での警察官不足は未だ解消されていない地域がもある。 また、交番所長が置かれない交番も多い。 交番に勤務する警察官は毎日交番勤務についているわけではなく、各警察署各課の応援に出動することもあり(被疑者護送も地域課の任務である) 交番勤務員の人手不足は治安に関係する深刻な問題である。
警察庁としては交番相談員制度を発足させ退官した警察官を対象に再雇用をして交番勤務員を増やす施策も行っているが、空き交番問題や署員不足などの問題は、警察官の人数そのものが少ないことが原因である。
警察は広範囲の職域を抱えている上に警察官の人数が少ないという指摘がなされており、空き交番が多いのはそのしわ寄せのため交番の勤務員が十分に確保できていないことが原因であるといわれている。警視庁・警察本部の本庁では必要な職員数が確保されているが、警察署員は必要数に満たないところも多く、大都市部の警察署でも先ず署員数確保が優先されるので末端の交番までは手が回らないようである。
警察庁発表では現在日本には約26万人の警察官が確保されている。しかし、2005年の警察白書によると、日本の警察官一人当たりの負担人口は520人であり、先進国の中でも負担が大きい。空き交番解消や強化的な警察活動実施の為の警察署員数確保の為には全国的にあと3万人の警察官を増員する必要があるとしている。
市町村によっては、廃止した交番の建物や土地を譲り受けたり有償で借り上げたりして、地元の自治会やボランティアグループなどによる自主的な防犯パトロールのための拠点として整備する事業を行っている場合もある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 警察庁
- 警視庁のしくみ/交番・パトカー/交番(警視庁による、交番制度の解説ページ)
- 埼玉県/市町村総合助成制度(防犯のまちづくり支援事業)(埼玉県における廃止交番活用事業についての事例)
- 巡回連絡実施要領の改正について(通達)(平成11年11月1日警察庁丙地発第19号)(警察庁による巡回連絡に関する通達(PDFファイル))