国鉄417系電車

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国鉄417系電車（こくてつ417けいでんしゃ）は、1978年（昭和53年）に日本国有鉄道（国鉄）が設計・製造した、交直流近郊形電車の形式である。

地方都市圏の交流電化区間で使用する近郊形電車の標準型となるべく登場したが、国鉄財政悪化の深刻化に伴い、仙台地区に1978年（昭和53年）8月3日に先行投入された3両編成5本（15両）のみの製造にとどまった。1987年（昭和62年）の国鉄分割民営化後は、全車が東日本旅客鉄道（JR東日本）に承継された。

[編集] 製造の目的

客車列車が主体だった地方都市圏の電車化を推進するために製造された。当時、投入が進められていた415系電車などの近郊形電車は乗降口にステップがないため、プラットホームの高さの低い駅が多くある地方の路線での運用が難しかった。そのため昭和40年代までは電化の際にホームをかさ上げして電車の入線に対応した例もあった。

昭和50年代以降、基本的に大都市圏向けに設計されていた従来の近郊形電車に代わり、ホーム高さの低い駅での旅客の乗降を可能とするなど、地方の輸送事情に適合した新形式の電車が要求された。そこで開発されたのが417系電車である。

[編集] 構造

[編集] 車体

車体側面は乗降口をやや中央に寄せたデッキ無しの片側2扉（両開き）構造である。近郊形電車での片側2扉構造は本系列以後では117系電車の例もあるが、117系電車が快速列車として運用される前提で製造されたのに対して、417系電車は地方都市での普通列車に使用される前提で採用された片側2扉構造であり、設計思想は1977年から製造されていたキハ47形気動車に近い。

前面は153系電車以来、国鉄の急行・近郊形で受継がれているパノラミックウインドウの貫通形である。運転台の構造は115系電車1000番台車に準じており、前照灯はシールドビーム2灯が前面窓下に設けられ、タイフォン（警笛）は耐雪構造の中折れ式シャッター付きである。下部に設置された排障器（スカート）は、寒冷地での使用に対応した大型のものが設置された。

積雪寒冷地を走行するため、扉は半自動ドアへ切替が可能である。当初は手動開閉式であったが1996年に押ボタン式に改造された。これにより、通年半自動扱となる。ドアボタンを押すとブザーが鳴る。電動車の客室車端部には雪切室が設置されている。

車体塗装については、登場当初、赤茶色（赤13号）の地にクリーム色4号の太帯を正面窓下に入れた交流・直流両用近郊形電車の標準色であった。国鉄分割民営化の3年ほど後、1990年頃に現在のクリーム10号（アイボリー）の地に緑14号帯という配色に変更された。

末尾5の編成は、車両側面の行先表示器が、国鉄分割民営化前後の1年程度、試験的にLED表示に変更された。

[編集] 台車・機器

台車には特急・急行用と同等の空気バネ台車DT32F・TR69J形が採用されている。寒冷地走行を考慮して機器類の耐寒・耐雪構造は大幅に強化されており、主電動機の冷却は強制通風方式である。

連続急勾配区間の走行に備えて、勾配抑速ブレーキを装備している。

当時、国鉄は電車に汎用性を追求していたことから、北海道以外では、基本的に交流区間であっても交直両用電車を投入する方針としており、417系電車も直流1,500Vと交流20,000V・50Hzおよび60Hzの3つの電源方式に対応する車両として設計された。しかし、実際には交流50Hz電源区間でのみ運用され続け、のちに交直流切替スイッチが交流側に固定されたため、現在では直流区間に乗入れる事が出来なくなっている。なお、直流区間を走った実績は、日立製作所で落成直後の公式試運転で山陽本線を走行した時と、山陽本線・東海道本線を自力回送された時のみにとどまっている。また交流60Hz区間での走行実績は、落成直後の九州での公式試運転のみである。

[編集] 車内設備

座席は固定式クロスシートとロングシートの組合せである。クロスシート部の間隔は、それまでの近郊形車両の標準であった1,420mmから1,490mmへと70mm拡大され、居住性が向上した。この寸法は、同時期製造の113系1500・2000番台・115系1000・2000番台・415系100番台・キハ40系気動車でも採用され、以後の標準となった。

また、寒冷地での運用が考慮され、乗降口の脇にはガラス製の風防が設置された。

冷房装置は、当初は準備工事のみであったが、国鉄分割民営化後の1988年から集中式のAU75G形が改造で取付けられた。

[編集] 車両形式

クモハ417形（Mc）
モハ416形（M'）
クハ416形（Tc'）

下り側（東北本線・常磐線基準）からMc-M'-Tc'の3両編成である。

[編集] 製造

仙台地区に3両編成5本の計15両が投入されたが、国鉄の財政悪化に伴う計画変更により、その後増備される事はなかった。これは車両の新規製造抑制であり、重装備の新造車である本系列も影響を受けて増備困難になったものである。

車体構造は急行形電車の車体更新車である413系・717系電車や交流専用の新製車である713系電車にも受継がれたが、1980年代後半以降、地方都市圏の電車化に必要な車両を余剰となった581系・583系寝台電車の改造（419系・715系電車）および急行形電車の転用で賄ったため、このスタイルの近郊形電車はあまり多く製造されることなく終わった。