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国鉄153系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国鉄153系電車(こくてつ153けいでんしゃ)は、旧日本国有鉄道(国鉄)が1958年に開発した準急形(のち急行形)電車である。1962年までに計630両が製造された。

その居住性において従来の客車列車を完全に凌駕し、電車による長距離列車運転の優位性を確立する役割の一翼を担うと共に、1960年代以降の国鉄急行形近郊形電車の設計思想の基礎ともなった。

最初に使用された列車にちなみ「東海形電車」の別名でも知られている。当初は91系電車と称したが、1959年の車両称号規定改正に伴い153系電車となった。

目次

[編集] 開発の経緯

日本国有鉄道は1957年東京名古屋準急列車東海」と名古屋~大阪間準急列車「比叡」を、客車列車から電車に転換し、当時の急行列車を凌駕する速度で運転して成功を収めた。

この際、両列車に新製投入された80系300番台車は、在来電車に比して内装の質的向上の努力がなされてはいたものの、基本的には普通列車との汎用車であり、居住性で当時の客車列車(ナハ10系など)を凌駕するまでには至らなかった。例えば、トイレ付随車のみに設置で電動車には無く、三等車(今の普通車に相当する)には洗面所設備も無かった。三等車各車両の車端部には通勤輸送を考慮したロングシート部分があるという具合である。これは長距離列車の接客設備としてはやや不十分であった。

また、80系の非貫通タイプの先頭車両は、増結するさいに、すべての編成に車掌を乗務させる必要があるとして非効率だったため、貫通タイプの車両を開発する必要があった。

また、国鉄は同じく1957年に、中空軸平行カルダン駆動方式などの新技術を導入した通勤形電車101系(当初の名称は90系電車)を開発した。この系列で導入された新技術は、走行性能や居住性の改善に大きく寄与するものであった。

これらの状況を踏まえ、101系の新技術を優等列車へ技術移転することで、従来より居住性や高速性能に優れた準急列車用電車を開発することが目論まれた。その結果が153系である。

[編集] 構造

位置づけとしては「80系電車の近代化形」ではあるが、実際には塗装は80系と同様ではあるものの、車体や機器などは完全に一新されている。

[編集] 車体

80系300番台同様の全金属製セミ・モノコック構造であるが、車体幅を10cm拡大し、車両限界の関係で裾を絞った形状としている。側面は両側の車端部に扉を設け、客室と出入口をデッキで仕切った長距離仕様である。

塗色は80系同様、オレンジと緑の塗分による「湘南色」であるが、前面は80系のような2色塗分でなく前面貫通扉を塗分けずに、高速運転のため警戒色としての役割を持たせたオレンジ1色とされ、非常に強烈な印象を与えた。

以下、本系列で新しく採用された車体構造のうち、特筆すべきものについて記す。

[編集] 前面形状

80系は先頭車が非貫通型であったが、本系列では先頭車の前頭部中央に貫通路を設け、先頭車が編成中間に入った場合も通抜けが可能な設計としている。運転台前面窓は側面まで回り込んだパノラミック・ウインドウとして運転士の視認性を高め、前照灯は屋根上から窓下に移し、左右に大型のものを2個配置した。後年、一部の車両では前面強化工事施工時に、前照灯のシールドビーム化が同時に施工されている。前照灯の下には尾灯を配置し、前照灯と貫通路の間に警笛を置き、左右対称のデザインとした。

さらに貫通路上には照明入りの大型列車種別表示器を設け、ホームで列車待ちをする利用者の利便性を図っている。

この、機能性が高くしかもインパクト絶大な前面デザインは、国鉄技師の星晃が1953年に海外鉄道事情を視察した際に見た、スイスの私鉄電車の影響を受けて考案したものといわれている。「東海型」とも称され、のちに登場する新性能急行形近郊形電車にも受継がれていくこととなる。また、京王5000系など、私鉄車両にも大きな影響を与えた。

[編集] ユニット窓

側窓は二・三等車とも国鉄車両として初めて上段下降下段上昇窓を採用している(のちに登場したサロ152形を除く)。この窓は別名をユニット窓ともいう。

従来の優等列車用車両は1枚窓を上昇させて開閉するのが普通だったが、窓上の車体幕板部に窓を収めるスペースを作らねばならなかった。このため窓部分の製作は組付精度に厳しく配慮する必要があり、手間がかかった。

153系で採用されたユニット窓は、当時の西ドイツ国鉄の客車の方式を参考にしたものである。四角い2段式の窓枠内で、上段は下に、下段は上に開く方式である。開口部の枠内で完結しているため、幕板に窓袋を作る必要がない。ユニット窓を車内側から組付けて縁部をコーキングするだけで組付が完了し、生産性・整備性が著しく向上した。

ユニット窓は開けても窓が車体内に全く入り込まないので、窓の開口面積は全開時でも窓全体の半分になってしまうが、従来の車両よりも窓自体の面積を大幅に拡大することでカバーしている。非常の際は窓から脱出できるだけの開口幅を十分に確保している。

[編集] 車内設備

車体両端に独立したデッキを設けている点は80系同様である。しかし、80系では普通列車での使用を想定していたため客室内にロングシートがあったのに対して、本系列は基本的に準急列車など特別料金を収受する列車に使用することを想定したこともあり、座席はロングシートをなくして全席クロスシートとした。三等車(現在の普通車)は対面型固定クロスシート(ボックスシート)である。クロスシートは80系300番台車と比較して横幅が広くなり、窓側には肘掛が新設された。二等車(1960年から一等車、1969年からグリーン車)についてはサロ153形とサロ152形で設備が大幅に異なる。詳細は下記の各形式概説を参照。

客室幅が拡大されており、全車両に扇風機が設置されている。なお本系列の製造当時は昼行客車特急列車ですら一等車・食堂車を除き冷房装置がない時代であり、準急用である本系列には冷房装置は設置されず、急行用として製造された後期の車両もビュフェ以外はすべて非冷房であった。なお1969年から普通車の冷房改造が施工されるも、老朽化の進行により全車両には及ばなかった。

また、サハシ153形を除く各車両にトイレ・洗面所が設けられた。設置場所も10系客車にならい、デッキを挟んで客室と反対側に配置し、臭気が車内に侵入するのを防止した。

このように、153系は名目上「準急形」ではあるが、当時の急行用客車と同等以上の設備水準に達するものであった。当初から急行列車への使用を視野に入れていたとも取れる。実際、本系列の後に量産された165系455系などの新性能急行形電車も、車体形状や車内設備は本系列と基本的に同一である。

[編集] 走行機器

基本的な制御システムは101系電車のそれを踏襲している。すなわち、CS12形電動カム軸多段制御器によって、2両分8個のMT46形主電動機(出力100kW)を制御する1C8M形MM'ユニット方式である。また、ブレーキも101系同様のSELD形(電空併用電磁直通ブレーキ)となっている。しかし、主電動機の歯車比については、1:4.21という高速型の設定となり、営業運転時の最高速度110km/h、設計最高速度130km/hに対応している。だがMT46形主電動機は急勾配における登坂能力が十分ではなく、MT比1:1の12両編成では151系電車同様山陽本線瀬野八区間では、上り方面の列車で補助機関車を編成後部に連結して運転した。

台車は枕バネを空気バネとしたDT24形(付随台車はTR59形)である。101系のコイルバネ台車DT21形の枕バネをベローズ形空気バネに置換えた構造で、151系のDT23形と類似する。当時としては最先端の台車であり、乗心地の改善に著しい効果を上げた。以後急行形電車の台車は、修学旅行用の155系・159系を除いてすべて空気バネ台車が用いられることになった。

[編集] 各形式概説

以下の形式がある。カッコ内は1959年の車両称号規程改正以前の形式である。

[編集] モハ153形(モハ91形・奇数)

主制御器や主抵抗器などを有する三等電動車(M)。定員84名。モハ152形の同番号車とユニットを組む。153系はMT比1:1の編成となるので、モハ153形・モハ152形それぞれに5kVAの電動発電機(MG)を搭載している。1961年度製の66~は妻面の窓を片方廃止して、主電動機冷却風取入口を妻面に設けた。23号までが旧番号を持つ(91001~91045・奇数)。

[編集] モハ152形(モハ91形・偶数)

パンタグラフや空気圧縮機を有する三等電動車(M')。定員84名。モハ153形の同番号車とユニットを組む。モハ153形とあわせて161ユニットが製造された。1961年度製の66~は妻面の窓を片方廃止して、主電動機冷却風取入口を妻面に設けた。23号までが旧番号を持つ(91002~91046・偶数)

[編集] クハ153形(クハ96形)

三等制御車(Tc)。本系列で唯一の先頭車である。定員76名。密着連結器の両側に電気連結栓を備えており、奇数(※)向・偶数(※)向の区別なく使用できるが、冷房改造車は冷房電源の引き通しの関係で奇数番号は奇数向、偶数番号は偶数向に固定されている。冷房改造車は冷房電源用の110kVA MGを搭載する。0番台が80両製造された後、1961年以降は踏切事故時の乗務員の安全性を高めるため運転台の位置を300mm高くした500番台が57両製造された。22号までが旧番号を持つ(96001~96022)。

(※)東海道本線基準で、東京側が奇数、神戸側が偶数。

[編集] サハ153形(サハ97形)

三等付随車(T)。車体はモハ153形と同一である。定員86名。最初に製造されたのは電動空気圧縮機(CP)を備えた、のちの100番台(T')で、6両が旧番号(97001~97006)を持っている。1959年の改番によりサハ153-1~6(初代)となり、同年4両(7~10)が追加製造されたが、1960年にCPを持たない0番台(2代)とMGとCPを備えた200番台が製造されるに及び、100番台(101~110)に改番された。1959年2次製造分の111は当初から100番台で落成しており、1960年及び1961年に112~116が増備されて、100番台は計16両となった。

0番台(2代)は、1960年から製造されたMGもCPも持たないT車で、翌年にかけて11両(1~11 1~6は2代目)が製造された。

200番台は、1960年から製造されたMGとCPの両方を備えるT"車で、1962年までに21両(201~221)が製造された。電源・空気容量確保のため、153系編成のほか、1972年3月1982年11月までの間、165系使用の身延線急行「富士川」に組込まれたりもした。

なお、番号変更はされていないが、大垣電車区、神領電車区配置の一部のサハ153形(0番台、100番台)は、冷房用電源として110kVAMGを搭載していた。

[編集] サロ153形(サロ95形)

二等付随車(Ts)。定員60名。1958年から1962年にかけて、0番台が59両、湘南準急付属編成用にMG・CP付きの200番台が3両(うち1両は0番台からの改造)、ステンレス車体の試作車である900番台が2両製造された。1~10および901・902が旧番号を持つ(95001~95010, 95901・95902)。

本形式は二等車ではあるが、座席は急行列車に連結されているリクライニングシート装備の特別二等車(特ロ)よりもグレードの低い、「並ロ」クラスの回転クロスシートを設置しており、本系列が本来、普通列車・準急列車用の「湘南電車」80系の後継車であったことの証左でもある。当時準急列車には特別二等車の連結がなく、従来からの「並二」(一般形二等車、「並ロ」ともいう)は広いピッチの固定クロスシートか転換クロスシートが標準であったため、これに水準を合わせたものである。

1961年には、急行列車への本格的使用のためリクライニングシート装備の一等車サロ152形が登場したことから、翌1962年に製造が打ち切られた。これ以降、153系急行列車の一等車にはサロ152形が充当されるようになる。準急列車の一等車には引き続きサロ153形が充当された。

その後、準急列車の一等車のリクライニングシート化にともない1966年から1968年にかけてサロ153形は全車近郊形電車である111・113系のサロ110形に改造され、153系グループの中で最後まで残り、1992年まで使用された。

900番台は1958年に試作されたセミステンレス(外板のみステンレス鋼を使用)製車両で、無塗装の銀色車体であったが、汚れが目立つことを理由に、後年は他車同様に塗装されている。

[編集] サロ152形

急行「なにわ」の電車化と、それと共通運用を組む事になった「せっつ」のグレードアップに伴い、1961年から1962年に30両が製造された一等車(Ts)である。定員48名。初製造が形式称号規程改正の後であり、旧形式はない。急行用のため座席は「特ロ」クラスのリクライニングシートで、窓は2連形のバランサ付き1段下降窓となっており、以降の急行形一等車の基本形となった。編成中間に連結されるので、回送などの際の便宜を図り、簡易運転台が設けられている。非冷房時代は簡易運転台側の引通しが両わたりとなっており、簡易運転台を向い合せて連結して運転されたが、冷房化で方向が統一されている。

優等列車の冷房化計画により、1964年からAU12形冷房装置と電源用20kVA MGを搭載した冷房改造が行われるが、新幹線開業にともなう在来線優等列車の減少、サロ165形の増備などにより改造は30両のうち15両を施工した段階で中止された。

1967年に3両(15・17・19)が湘南急行付属編成用にMG・CPを取付けて200番台(201~203)となったが、1969年1970年に、新たにCP取付改造された1両(30)とともにCP取付車を表す100番台(101~104)に改番された。なおサロ152形100番台は、1975年3月まで、通常はサハ153形200番台が入る付属編成の12号車に組み込まれて、急行「伊豆」で伊豆箱根鉄道修善寺まで運用された。

本形式は、2次にわたってサロ153形と同様、全車が113系への編入改造を受け、サロ112形となった。最初は1967年から1968年にかけて15両(2~12・14・16・18・20)が非冷房のまま転用された(番号は種車のまま)。残った15両(1・13・21~30・201~203)はサロ152形時代に冷房取付は行なわれたが、1969年及び1975年に全車が転用された。その後はサロ163形・サロ165形が編成に組み込まれることとなった。

下降窓のため雨水の侵入による車体下部の腐食が激しく、1979年までに廃車された。

[編集] サハシ153形

サロ152形と同時に製造された二等・ビュフェ合造車である。30両(1~30)が製造された。二等定員36名。初製造が形式称号規程改正の後であり、旧形式はない。床下には自車電源用の40kVA MGとCPを搭載する。中央部にデッキがあり、デッキを挟んで一方の部屋が二等室、もう一方の部屋がビュフェとなっている。当形式にはトイレ・洗面所は設置されていない。車体側面は普通室部分がユニット窓で、ビュフェ部分はカウンター側が明り取り用の小窓と搬入用の扉が設けられ、通路側は固定窓であった。また、ビュフェ内は新製当初からAU12形冷房装置が搭載されている。

ビュフェではすしが販売され、冷蔵ケースや電気酒燗器など、当時としては最新の供食設備が採用された。(なにわいこま伊吹比叡

1961年12月には、23番に新開発の電子レンジが搭載されて、営業列車でテストが行われた。結果は良好で、451系・455系・165系・新幹線のビュフェに採用されている。

1965年及び1968年に5両が165系(サハシ165形50番台)に、1968年には10両が169系(サハシ169形)に改造されたほか、2両が教習車(クヤ153形、クヤ165形)となっている。残りの13両は、1976年に廃車され消滅した。

なお、22番が廃車後、山陽本線本郷駅に休憩所として留置されていた。

[編集] 163系(サロ163形)

サロ163形1964年に製作された1等車の形式である。153系の1等車冷房化を目的としたもので、153系が全車廃車となる1983年まで編成に組み入れて使用された。このうち一両は113系用のサロ112形に改造された後、1978年に廃車となっている。

もともと163系は、平坦線区向けの急行形電車の系列となる計画であった。すなわち、抑速ブレーキを省略した上で、モーター出力を165系と同じ120kWに向上した車両形式を予定していたものである。しかし、この計画は未成に終わり、本形式のみの製造に留まった。

163系における系列としての詳細は165系の記事を参照のこと。

[編集] 改造

[編集] 他系列への改造

[編集] 113系への改造

113系に編入改造を受けたものとしては、以下の各形式がある。

  • サロ153形→サロ110形(0番台・900番台)
  • サロ152形→サロ112形(0番台)

詳細は国鉄113系電車の項を参照のこと。

[編集] 165系・169系への改造

165系・169系に編入改造を受けたものとしては、以下の各形式がある。

  • クハ153形→クハ164形
  • サハシ153形→サハシ165形(50番台)
  • サハシ153形→サハシ169形

詳細は国鉄165系電車の項を参照のこと。

[編集] 事業用車への改造

余剰となったサハシ153形を改造し、2形式の事業用車が製作された。

[編集] クヤ153形

1975年、大阪鉄道管理局の教習用車両として吹田工場でサハシ153-11を改造した車両である。両端部に運転室が設置され、前面は103系低運転台車に準じた非貫通形となった。客室だった部屋は運転実習室として運転シミュレータが設置され、ビュフェだった部屋は座学講習用の講義室となった。屋根にはPS13形パンタグラフが設置された。塗装は新性能直流事業用車の標準塗色である青15号の地色に前面下半を黄色5号の警戒色とし、側面上端と下端に黄色5号の帯を配した色となった。

1987年2月15日付をもって廃車となった。

[編集] クヤ165形

1974年、名古屋鉄道管理局の165系電車教習用車両として浜松工場でサハシ153-15を改造した車両である。クヤ153形と同様、客室を運転実習室としているが、ビュフェにはCS15形主制御器など電気関係の電車用床下機器(除主電動機・MG・CP)が架台に設置され、各機器の作動状況が一目で分かる様になっている。このほか回路のパネルなどを設置している。運転台もクヤ153形同様両端に新設したが、前面は切妻形状ではあるもののクハ153形500番台などの高運転台の新性能急行形・近郊形電車に近い前面形状となった(非貫通)。運転室内レイアウトは165系に準じている。塗装はクヤ153形と同一。パンタグラフは沿線に低断面トンネルがあることから、それに対応したPS23形である。

クヤ153形同様、1987年2月3日付をもって廃車となり、引き続き大垣電車区で保管されていたが、現在は佐久間レールパークに保存されている。

[編集] 運用

[編集] 昭和30年代

1958年11月に準急列車「東海」「比叡」に使われていた80系電車を置換える計画であったが、所要車両の製造が間に合わず、初日に153系で運転が開始されたのは「東海」1往復のみであった。しかし車両の完成が進むにつれて「東海」は1959年4月に置換が完了。続いて「比叡」も同年4月から置換が始まり6月に全列車が153系化された。続いて1959年6月に湘南準急1960年10月には大阪~宇野間準急「鷲羽」に進出し、ダイヤ改正のたびに運転本数を増やしていった。また、1961年10月ダイヤ改正では上野長岡間準急「ゆきぐに」の1往復にも投入された。

一方、1960年6月に国鉄初の定期運行の電車急行列車として運行を開始した東京~大阪間の急行列車「せっつ」を端緒に、東海道急行山陽急行など急行列車へ活躍の場を延ばす。そのうち特筆すべきものは、東京~広島間894.8kmを走り、急行形車両を使用した列車としては最長距離のものとなった「宮島」(1962年6月~1964年9月)である。

[編集] 異常時特急運用

東海道新幹線の開通以前に東京~大阪間に運行されていた特急「こだま」「つばめ」に使われていた151系電車が故障した際、151系は予備車が非常に少ないことからやむを得ず153系電車に差替えて運行することが何度か行われた。

「こだま」「つばめ」に153系を使用する際は、特発のために時間の余裕のない場合は無理だが、極力151系に使用していた五角形のヘッドマークに似せて作った専用ヘッドマークを前面に取付けて運行した。

しかし当然ながら外観も接客設備も「東海形」と呼ばれた153系そのものであり、これを使用した「こだま」は利用客から「こだま」をもじった「かえだま」(替え玉)、または「にせだま」(偽「こだま」)と呼ばれた。

なお151系電車と153系電車の性能格差は小さく、153系を「こだま」に使用した場合でも定時運行は可能であった。但し、1964年4月25日5月6日に運転された代走「こだま」はサハシ153形を1両外して電動車の比率を上げた6M5Tの11両編成での運転であった。

[編集] 昭和40~50年代以降

東海道新幹線の開通を受け、1968年10月1日ダイヤ改正(ヨン・サン・トオ改正)までに東京~大阪間の昼行急行が全廃されたため、153系は名古屋~大阪間の急行「比叡」及び大阪以西の東海道本線・山陽本線の急行「鷲羽」「関門→ながと」「山陽」「安芸」などで主に使用されるようになる。また1966年3月の料金制度改定により走行距離100km以上の準急列車は急行列車に格上げされたため、田町電車区に配属された車両はサロ153形の連結を廃止して同車は近郊形に転用され、大垣電車区配属の車両は引続き急行「東海」に使われた。同改正では東京~大阪間夜行客車普通列車に代わって設定された東京~大垣間夜行快速列車(通称「大垣夜行」)にも使用されるようになっている。

その後、勾配線区に対応した165系の増備(1970年で終了)や山陽新幹線の延長開業により山陽本線の急行列車からも退き、快速列車普通列車などのローカル運用が増えていった。1972年3月15日には一部の編成が薄灰色地に薄青帯の塗装に塗り替えられ、関西地区の「新快速」に投入されている。また山陽本線広島以西では、急行列車が廃止された事にともなう快速列車網の整備の為、6両編成で快速列車に使用された他、普通列車に使用されたものもあった。また1970年代後半から153系を使用していた他の急行列車・長距離列車も運用に余裕の出てきた165系に置換えられ、廃車も始まった。

1980年代に入ると老朽化が目立つようになり、急速に廃車が進んだ。新快速運用は1980年1月22日から順次117系に置換えられ、急行「伊豆」は1981年185系に置換えのうえ特急「踊り子」に格上げされた。最後に残った広島~下関間の下関運転所の普通列車運用は1982年115系2000番台・3000番台に置換え。幕張電車区の車両は房総地区急行全面廃止にともない廃車。大垣電車区の車両は1982年の117系投入、松本運転所、神領電車区からの165系の余剰車転入により153系は全面的に運用から撤退し廃車となった。ただし大垣電車区の車両はダイヤ改正が置換えの絶対条件ではなく、転属車の準備完了を待ったため、実際は1983年3月まで運用されていた。

[編集] 関連項目

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