必殺仕事人V・激闘編
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必殺仕事人V・激闘編(ひっさつしごとにん ファイブ・げきとうへん)は、必殺シリーズの第25弾として朝日放送と松竹(京都映画撮影所。現・松竹京都映画株式会社)の制作により、1985年11月15日から1986年7月25日にかけてテレビ朝日系列で放映された時代劇。全33回。
「必殺仕事人V」の第2作目であり、「必殺仕事人」シリーズとしては、第6作目に当たる。藤田まこと演じる中村主水シリーズとしては、12作目である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 作品内容
前作『必殺仕事人V』最終回で、中村主水ら仕事人チームは、早変りの梅富(梅沢富美男)の仇を討ちに、将軍家世継ぎ・徳川宗孝一党を始末した。その後、組紐屋の竜(京本政樹)、花屋の政(村上弘明)、加代(鮎川いずみ)は江戸を離れ、西順之助(ひかる一平)は本格的に蘭学医を目指し、長崎へ単身留学した。
それから7年。奉行所による仕事人の取締りは厳しさを増す一方で、多くの仕事人が処刑されていった。そんな中、日本橋室町の仕事人の元締・丁字屋半右衛門(山口幸生)は、処刑される直前、主水に対し放った、「仕事を二度としてはならぬ」との言葉は、裏稼業への復帰を強く躊躇させた。同じころ、竜、政、加代が江戸に戻ってきた。
政は花屋から鍛冶屋へ鞍替えしたが、加代の何でも屋は、不景気の煽りからか収入が下降気味。彼女は、江戸に唯一残った仕事人組織「闇の会」に顔を出し、五十両という大金に魅せられて、北町奉行殺しを請け負ってしまう。主水、竜、政は加代に反発したが、闇の会の傘下として裏稼業への復帰を決意。しかし、この4人だけでは強敵には立ち向かえない。そこで立ち上がったのが、丁字屋の配下の3人の仕事人である。
一人目は粋な遊び人・壱(柴俊夫)。二人目は女形の役者くずれ・弐(梅沢富美男)。三人目は陽気な上方のビードロ職人・参(笑福亭鶴瓶)。
3人のはぐれ仕事人が加わった主水チームは、時折反発しながらも、強力なチームワークで、強敵を倒していく。
[編集] 制作の背景
「必殺シリーズ」第14弾『翔べ! 必殺うらごろし』で、視聴率低迷を招いたため、(当時の)最終作として作られたのが、次作・第15弾『必殺仕事人』であった。『仕事人』の放送途中より巻き起こった、三田村邦彦演ずる飾り職の秀の人気に、歴代シリーズには極めて少なかった若い女性の視聴者層が増加。一時は番組打ち切りの話も浮上した「必殺シリーズ」は、ここに来て、息を吹き返し、それまで低迷していた視聴率は急上昇した。
「必殺シリーズ」は、第17弾『新・必殺仕事人』以降、従来の視聴者層以外に、若い女性視聴者層が以前にも増してより拡大し、かつての一部のマニア受けの作品から、大人から子供まで楽しめる番組へと変貌して行った。
続く次作・第19弾『必殺仕事人III』でもその傾向は変わらず、番組自体は好調であったため、作風を変えるのを制作スタッフは嫌がった。そのためか、次作・第21弾『必殺仕事人IV』では、歴代唯一レギュラーメンバーが変わる事は無かった。
しかし、『仕事人IV』をもって、秀を演じた三田村と、三味線屋の勇次を演じた中条きよしが、揃って降板する事となり、出演者を若返らせる意味を含めて、『必殺仕事人V』では京本政樹と村上弘明が新たに加わった。
『仕事人V』は、それまでの「必殺仕事人シリーズ」と作風は全く変化する事は無く、女性視聴者層からの人気は依然としてあったものの、この頃から時代の変質が起こり、従来の視聴者層からは「かつての"映画的作風を持ったハードな描写"が無い」と、作品自体に不満を抱く様になった。加えて、強力な裏番組が出現したのも、この頃からであり、シリーズは視聴率的に苦戦を強いられる事となった。
そこで、制作スタッフは、次作・第24弾『必殺橋掛人』に、歴代シリーズで数々の悪役を演じて来た津川雅彦を主役に起用。従来のソフト路線よりも、巧みな役者の重厚な演技から来る、堅実なドラマの作風を再認識する事となる。そして次の仕事人シリーズ第6作は、最高傑作と呼ばれている第10弾『新・必殺仕置人』の作風を取り入れて、離れて行った従来の視聴者層を取り戻す試みが行われた。
その際に、『新・必殺仕置人』以来の一大殺し屋組織の復活(「闇の会」)を掲げ、新機軸として表の顔を持たず、元締も奉行所に捕われ、処刑されたため、仕事を取ろうとしても取る事の出来ない「はぐれ仕事人」たちが主水グループの助っ人として、仕事に挑むといった従来のシリーズには無かった設定が、ファンを興奮させた。
はぐれ仕事人には、まずシリーズ初登場として、柴俊夫が、壱役を好演。歴代シリーズでも久々の、素手で悪人を殺す怪力の殺し屋を演じた。当初強化策として、本作に『新・仕置人』にて敵との抗争により死亡した念仏の鉄(山崎努)を復帰させる案もあったのだが、山崎本人から断られたため、新たにキャラクターを創った上で、柴に決定したという経緯がある。柴の熱演は、鉄の復帰立ち消えの影を消去る程の威力を発揮し、現在でも復活を望む声は、後を絶たない。
次に、前作『仕事人V』第26話から最終回で、仕事人・早変わりの梅富(ただし、劇中では、梅富と呼ばれた描写は無い)役でゲスト出演した、梅沢富美男が弐役を演じ、梅富のモチーフほぼそのままに、妖艶かつ華麗な踊りを披露、正体不明の殺し屋として、劇中を彩った。
最後に、劇場用映画・第2作「必殺!ブラウン館の怪物たち」で、悪の仕事人・丑寅の角助役でゲスト出演し、当時関西地区では絶大な人気を得ていた人気落語家であったお笑い芸人の笑福亭鶴瓶が、 参役として、梅沢とともに、初のレギュラー出演を果たした。ただ梅沢・鶴瓶両人とも、スケジュール調整の問題が生じ、出演回数が激減したのは、非常に惜しまれる所である。
本作の他のレギュラー出演者たちの強化策としては、まず組紐屋の竜の紐のマイナーチェンジが施され、次に、前作で花屋を表稼業としていた政は、故・工藤栄一監督の勧めで、鍛冶屋に転職という事になり、同時に、第2弾『必殺仕置人』の棺桶の錠(故・沖雅也)が使用していた物と同形態の、木製の手槍に変化した。そして、中村主水も、それまでの作品で披露した、剣の突き技から一転。居合の早業で、悪人を斬り倒す剣技の復活は、初期~中期の主水を切望し続けた多くのファンを喜ばせた。
こうして完成した本作であったが、制作スタッフの当初の目論見とは異なり、数々の強化策は一部のファンからは支持を得られたものの、視聴率は安定しつつも低迷を続け、上昇する事は無かった。そのためか、途中からハード路線からソフト路線に、再び移行してしまう形となった。
本作は良くも悪くも、制作スタッフの試行錯誤が伺える作品となり、この様な結果に終わってしまったのは残念というファンの声は多い。
[編集] 闇の会の落札システムと、その掟について
本作に登場した、江戸の一大殺し屋組織「闇の会」は、シリーズ第10作目『新・必殺仕置人』に登場する「寅の会」以来の巨大組織として出現した。
「寅の会」同様、殺しの(依頼による)競り-「値引き競り(逆オークション)制度」を行うシステムと、仕事料を依頼人から貰ったとしても必ず会を通し、依頼を競り落とした上で仕事をする。期日(次の会の開催日)までに、必ず仕事を遂行しなくてはならないという厳しい掟に変わりは無いが、相違点としては、仕事の依頼(頼み)人の顔と素性をアジトの小窓から確認し、その恨みの声を傘下の仕事人たちが、直に聞くという点がある。
また、仕事料が安く、出席者の仕事人たちが誰も落札しない場合は、問答無用で差し戻されるといった点も「寅の会」とは違っている。そして、仕事を落札した仕事人が、場合によっては依頼人の素性を探る様元締が命令するという、変わった所もあった。
なお、「闇の会」の劇中における殺しの競りは、ほぼ一貫して主水グループの加代が出席して、仕事を競り落とすといった緊張感の無い物であり、加代以外の仕事人が競り落としたのは、第10話のみであり、それも結局は、敵に一瞬にして返り討ちに合い、仕事に失敗してしまうといった力の無さも、会の出席者(の仕事人たち)には目立った。その結果、最終的に「闇の会」は外道仕事人の強襲に逢い、崩壊の末路を辿った。
ただし、「闇の会」の名称とシステム、その物は、後のスペシャル『大暴れ仕事人! 横浜異人屋敷の決闘』『勢ぞろい仕事人! 春雨じゃ、悪人退治』『仕事人VSオール江戸警察』でも登場している。
[編集] はぐれ仕事人について
歴代の各作品に例の無い設定で、ファンのみならず、視聴者を驚愕させたのが、本作に登場する「はぐれ仕事人」である。はぐれ仕事人とは、表稼業を持たず、常に神出鬼没、かつ正体不明の3人の殺し屋(壱、弐、参)たちの事である。
元々は、江戸の仕事人の大元締・丁字屋半右衛門の配下であったが、丁字屋は奉行所に捕らえられ死罪となり、処刑される。頼るべき元締を失い、江戸の一大殺し屋組合「闇の会」の出席も適わず、自分たちでは仕事を得る事が出来ない3人は、主水グループの加代、竜、政にそれぞれ接触。同時に、主水にも接触した3人は、「二つが一つとなって列をなす」と言い、主水たちの助っ人を買って出る。主水としては、正体不明で信用できないが、仕事人としては腕の立つ3人を、グループの「助っ人」と認め、一緒に仕事に挑む。
はぐれ仕事人は、主水たちに負けず劣らず、それぞれが個性派揃いである。
リーダー格の壱は、正体不明の粋な遊び人で、仕事で得た大金は全て「酒と女」に使うといった、かつての念仏の鉄(『必殺仕置人』、『新・必殺仕置人』)を彷彿させる人物として描かれた。
自らを「役者崩れ」と称する弐は、主に女形や演劇一座の座長に扮する、妖艶な佇まいを見せる色男。
明るく陽気な上方出身の参は、長崎生まれの玩具・ビードロを売り歩く、通称・ポッペン屋を表稼業にする(推測の域を出ないが、表稼業は偽装の可能性もある)。
彼らは主水グループの文字通り「助っ人」であるため、正式なメンバーでは無い。あくまでも、若い竜や政、そして何も考えずに「闇の会」から、難度の高い、殺しの依頼を落札して来る加代たちだけでは手に余る場合、主水たちの前に姿を現す。そのため、毎回、仕事料の中から「助っ人料」として、法外な金額を貰っていくので、主水たちとしては、頭を痛めつつも、頼りになる援軍となって行くのである。
また、仕事料の大半を懐に収めたり(弐-第3話、壱-第4、5話他)、主水を除け者にして、自分たち(壱、参)と、竜・政・加代たちで仕事をしようとしたりといった、したたかさを発揮したりもした(第9話。最終的には、主水も仕事に参加する)。
なお、作品途中にて、弐と参はあまり姿を見せなくなり、江戸に一人残った壱が、レギュラー的に活躍する様になる。主水も、仕事の相手が自分たちでは手に負えない、と加代に「壱につなぎをとれ」と頼むシーンが多く描かれた。
劇場用映画「必殺!III 裏か表か」では、壱が登場。また、第20話を最後に、明確な退場編の無かった参も登場したが、 逆に第33話(最終回)で、久々の登場を果たした弐は、全く登場しなかった。そして、「裏か表か」では、竜、壱、参が衝撃的な死を遂げてしまうのであった。
ちなみに、最終回では、壱と弐の本名が明らかにされている(参の本名は結局、不明のままであった)。
[編集] 殺し技
- 中村主水…太刀・脇差で、悪人を斬る、刺す。
- 本作では、他のメンバー同様、アップテンポのBGMの殺しのテーマに乗せて、殺しを行った(第1~4、6~16話)。第5話では、スローバラードを使用している。
- 途中より『仕事人』~『仕事人V』同様、スローバラードのBGMによるテーマに乗せて、殺しを行うパターンに戻った(第17、18、20、22、24~27、29~33話)。
- 第19、21、23、28話では、再びアップテンポの殺しのテーマで、殺しをしている。
- 『仕事人』第77話以来、久々の床下突きを、弐の誘導により披露(第3話)。
- 悪人が新年の挨拶をという事で、お辞儀している所を、脇差しで背中を串刺しにするという豪快な技を披露したり(第7話)、『仕事人V』同様、刀の柄に仕込んだ刃を、悪人の急所に突き刺す変則技を、囚人護送の際に、堂々と披露したりもした(第13話)。
- 組紐屋の竜…前作『必殺仕事人V』同様、組紐を使うが、本作は、先端に小さな三角錐の分銅を付けた、草色の組紐を、悪人の首筋目掛けて投げ、三角錐を支点に突き刺し、二点からの力で瞬時に絞殺する技に変更。ただ後には従前どおり、高い位置から組紐を投げ、腕力で吊り上げて殺す形も見せている。
- 鍛冶屋の政…シリーズ2作目『必殺仕置人』の棺桶の錠が使用した物と、同形態の木製の手槍に変更。悪人の首筋を突き刺す。
- 壱…素手で悪人の首を掴み、喉笛を砕き、へし折る。殺しの際は全くの無表情。
- 弐…針を仕込んだ扇子で、悪人の首筋を斬る、刺す。
- 参…鋭利な先端を持ったポッペン(ガラス製の玩具、ビードロ)を、悪人の額や眉間に突き刺す。ビードロは割れ、先端部が相手の急所に突き刺さる。余談だが、当初は弁当屋で箸を突き刺す技が検討されたが、鶴瓶と親交の深いさだまさしからのアイデアにより、ポッペンに変わったという。
[編集] キャスト
- 闇の会元締 …(第1~10話)森秀人、(第11~18話)東悦次、(第19~33話)須永克彦
※第2話より「元締」と表記。
- 元締の声 … 須永克彦
- 影 … 加治春雄
- 参 … 笑福亭鶴瓶(第1、2、7、9、20話)
- 弐 … 梅沢富美男(第1~3、5、8、33話)
- 壱 … 柴俊夫(第3、7、8話除く)
※第1話のみ「壱(十一(とっぴん))」と表記。これは第一話で、壱が奉行所の小者「十一」という名で、主水に接触したからである。
- ナレーション
[編集] 主題歌
- 「女は海」
- 作詞・作曲:京本政樹 編曲:京本政樹、大谷和夫 歌:鮎川いずみ
- 発売:CBSソニー(現・ソニーミュージックエンタテインメント)
- 挿入歌(第19~33話)
[編集] 放映リスト
- 殺しの番号壱弐参 - もちろんこの副題は『007は殺しの番号』のパロディだが、必殺シリーズのライバル作『長崎犯科帳』にもよく似た副題の回が存在する。
- 大仕事! 大名殺し
- 大難関! 大奥女ボス殺し
- 顔と態度で損した親分の一生
- りつの家出で泣いたのは主水
- 加代、丸坊主になる
- 主水、正月もまたイジメられる
- 初夢千両殺し
- せん、むこ殿をイビる
- 主水雀の丸焼きを食べる
- 加代、何でも屋婆さんに驚く - 初井言榮が「何でも屋婆さん」役でゲスト出演。
- 頼み人は津軽のあやつり人形
- 主水の上司人質になる
- せんとりつ不倫する
- 主水、卵ひな人形をこわす
- 主水、クモ男を取り逃がす
- 江戸の空にハレー彗星が飛ぶ
- 主水、お嬢様に振り回される
- 主水、羊かんをノドにつめる
- 主水、健康診断にひっかかる - 参がこの話で退場。
- せんとりつ、酔って暴れる
- せん、女ひとり旅する
- 組紐屋の竜、襲われる
- 主水、上方の元締と決闘する
- 主水、紫陽花の下に金を隠す
- 主水、殺しに遅刻する
- 主水、トカゲの尻尾切りに怒る
- 何でも屋の加代、求婚される
- 主水、まっ青に染められる
- 主水、年上妻にあこがれる
- 加代、究極の美男に惚れる
- 鍛冶屋の政、水中で闘う - 内藤剛志が政の幼なじみでもある外道仕事人・ムササビの健役でゲスト出演。
- 主水、裏ワザで勝負する
[編集] 関連項目
テレビ朝日系 金曜22時台(当時はABCの制作枠) | ||
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