康生
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康生(こうせい ピン音: Kāng Shēng、1898年~1975年12月16日)は中華人民共和国の政治家。元の名は張叔平、或いは張紹卿、趙容。山東省諸城(現在の山東省濰坊市 / 濰坊市)出身。裕福な地主の家庭に生まれ、中国共産党中央副主席にまで出世した、文化大革命の重要人物の一人。長期間、中国共産党情報機関の責任者であり、大量の冤罪を作り上げ、中国のジェルジンスキー或いはベリヤと呼ばれる。妻は曹較欧。子供はいなかった。
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[編集] 概要
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主な出来事 人物 理念 統治機構 |
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1924年上海大学に入学し、1925年中国共産党に入党、地下工作を行うので趙容と仮名を名乗った。1931年中国共産党中央組織部長になり、周恩来、陳雲、潘漢年らの指導の下、中共中央特科(中共中央特科)における情報工作の責任者となった。 1933年、モスクワに駐在し中国共産党駐コミンテルン代表団の責任者となり王明と親しい間柄になった。合わせて、ロシア語名、中国語の音訳で康生と名乗った。1934年康生は中共中央政治局委員に選出された。スターリン粛清の期間、王明などの指示の下、康生は中国共産党ソ連留学生をトロツキストとして攻撃し、彼等を迫害した。
1937年帰国後、延安に行き、新たに成立した中国共産党中央社会部を指揮することとなった。1942年延安整風の期間、緊急措置をとり、拷問による自白を証拠として、多くの党員をスパイ、裏切り者、内通者として赤色テロを行った。
1946年~49年の国共内戦の間、康生は中国共産党中央華東局副書記、山東省委員会書記、山東省人民政府主席になった。山東省などを解放した。
1950年に一旦、長期休養に入ったがその後、1956年9月、中国共産党第八期一中全会で中央政治局候補委員、中央委員に選ばれた。1958年中央文教小組副組長、教育工作委員会副主任に任ぜられ、『毛沢東選集』第4巻の編集を受け持った。 1960年、オブザーバーとしてワルシャワ条約機構締結国政治協商会議に参加し、フルシチョフの考えに反発、毛沢東の信任を得た。 1962年王稼祥、習仲勲批判が起こった。9月、八中全会で中央書記処書記に補充された。1966年、文化大革命が発動された。康生は中央文化革命小組顧問を担当し、中央政治局常務委員になった。1968年中国共産党の情報機関である、中国共産党中央調査部(中共中央調査部)の指導権を獲得、党内闘争の中、死刑執行人として恐れられ、無数の冤罪をでっちあげ、多くの共産党員や幹部を迫害した[1][2]。中には1万人にも及ぶ内蒙古人民党事件(内人党事件(内人党事件))や雲南省委書記趙建民スパイ事件等も含まれる。
康生はまた、中国政府の外交方針に影響を与えた。中国共産党の指導者がシハヌークを反西洋、反帝国主義の指導者として育成する一方、康生はクメール・ルージュのリーダーであるポル・ポトを東南アジアにおける真の革命のリーダーとして支持した。結果として、ポル・ポトは中国の支援を受けることになった。
権力の頂点に立った時、康生の党内序列は毛沢東、林彪、周恩来の次の第4位であった。林彪失脚後1973年副主席に就任した。彼の毛沢東への最後の貢献は毛沢東思想から逸脱した右派への攻撃であり、これは周恩来、鄧小平を標的としたものであった。
1975年12月16日、癌で死去。康生が死んだ時の党内の序列は毛沢東、周恩来、王洪文の次の第4位であった。 1980年10月16日中国共産党は、康生を林彪江青集団の一員として永久に除名した。
[編集] 趣味
康生は文物、とりわけ、硯や本のコレクターであった。文化大革命時、略奪した34000冊に及ぶ図書と5500個に及ぶ文物をやり口を変え「保護」し、合わせて「康生」の個人印を押した。文革終了後、康生コレクションは北京の景山で公開、展覧されている。
[編集] 脚注
- ^ 天児[2004]pp.187-188「この(=筆者注、1966年5月4日から26日にかけて開催された)党中央政治局拡大会議以降、中央文革小組が直接間接に指示を発し、大学など教育機関、文化部門を中心に「造反」が起こった。北京大学では聶元梓ら七名で陸平学長を激しく批判する大字報が貼り出され、清華大学付属中学(高校に相当)で最初の紅衛兵が組織され」たのであった。
- ^ 高[2003](上村訳[2007] 上巻pp.214-215)によると、文革が発動されたばかりの頃、康生は天津南開大学の紅衛兵にいわゆる「六一人叛徒グループ事件」と劉少奇本人の歴史問題の調査を始めるよう陰で指示していた。結果として劉少奇、安子文、薄一波といった劉少奇グループの失脚に成功した。
[編集] 参考文献
- 天児慧[2004]『中国の歴史 11巻 巨龍の胎動 毛沢東vs鄧小平』 講談社 ISBN 4-06-274061-3
- 高文謙[2003]『晩年周恩来』美国明镜出版社 (上村幸治 訳[2007]『周恩来秘録』 文芸春秋 上巻 ISBN 978-4-16-368750-6、下巻 ISBN 978-4-16-367860-5)
カテゴリ: 中華人民共和国の政治家 | 共産主義 | 1898年生 | 1975年没