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東武5000系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

5000系電車(5000けいでんしゃ)は、1979年昭和54年)から1986年(昭和61年)にかけて7800系の更新により登場した、東武鉄道通勤形電車

首都圏大手私鉄に最後まで残存した、旅客用吊り掛け駆動方式電車である。

東武5050系(壬生駅にて2004年8月8日撮影)
東武5050系(壬生駅にて2004年8月8日撮影)

目次

[編集] 概要

1953年(昭和28年)から1961年(昭和36年)にかけて製造された7800系(162両)に、8000系と同様の20m両開き4扉の車体を新造して載せ替えた車体更新車である。

このグループは一般に「5000系」と総称されるが、正確には先行試作車的な意味合いの強い5000系(2代目)と、2・4両編成の5050系、6両固定編成の5070系に細分化される。車体の形状や客室の設備などは8000系に準じている。但し、5070系の一部の編成は、室内アコモデーションが当時の新車10000系に準じたデザインに変更された。

5000系列と8000系未修繕車・初期修繕車との外見的判別は台車以外では難しいが、車内に入ればモーター車の床には主電動機点検蓋があり、走行時には吊り掛け主電動機独特の駆動音と旧型台車の硬い振動などが感じられるので、車内に入れば判別は容易である。

[編集] 運用路線

登場時は伊勢崎線浅草口や東上線池袋口で運用され、東上線では5000系を組み合わせた10両編成の運用も存在した。しかし、カルダン駆動の他車と比べて起動加速度や高速走行性能などが劣っていた事でダイヤ編成上のネックとなり、1990年平成2年)には10000系列増備に伴い全車両が野田線の配置となった。

1995年(平成7年)頃より、8000系の野田線への転属が進められ、5000系・5050系の大部分は栃木群馬の支線区に転属し、3000系を置き換えた。その後、1997年には新車30000系投入による「玉突き転配」で初の休車が発生している。

野田線には5070系が残ったが、6両編成の為転属先が無く2001年(平成13年)より順次廃車が始まり、2004年(平成16年)10月18日に運用を終了し、形式消滅した。

栃木・群馬の支線区に転属した5000系・5050系も年々機器の部品調達が困難になっている事もあり、8000系1800系通勤転用車などによる置き換えが進み、5000系(2代目)は2003年(平成15年)に形式消滅した。2006年(平成18年)3月18日のダイヤ改正では、伊勢崎線太田伊勢崎間および佐野線桐生線において8000系改造車の800・850系によるワンマン運転が開始され、群馬地区の5050系の運用が終了した。

2007年(平成19年)2月23日南栗橋車両管理区新栃木出張所の5050系 (5160F) が廃車回送され、5000系列は全廃となった。

[編集] 各系列概要

[編集] 5000系(2代目)

1979年(昭和54年)に7800系の車体更新により登場した系列である。更新施工は西新井工場内にある津覇車輌で行われた。試作的な色合いが濃く、4両編成・2両編成各2本の製造で終了している。

4両編成は浅草方から順にモハ5100-サハ5200-モハ5300-クハ5400、2両編成は順にモハ5500-クハ5600と付番された。なお、本系列の登場に際し、従来「5000系」を名乗っていた18m級3扉の車体更新車(1974年製)は3070系と改称された(初代5000系、詳細は3000系の項を参照)。

車体外観および車内設備は8000系と共通で、運転席マスコン・ブレーキ弁を除き共通のレイアウトを使用している。ブレーキ方式は7800系そのままのAMA-RE電磁自動空気ブレーキ鋳鉄製ブレーキシュー、車体装架ブレーキシリンダ仕様であった。冷房は搭載されず、屋根上の通風器(ベンチレーター)とパンタグラフは8000系の冷房化改造に伴い余剰となったものが流用された。

登場後は伊勢崎・日光線系統で使用され、5050系登場後は東上線系統に転じ主に6、8連で優等運用についていた。

1985年(昭和60年)には、後から製造された5050系や5070系と性能をあわせる改造が実施された。サービス水準を揃える為冷房化され、電動発電機(MG)も冷房装置への電源供給のため大容量の交流ブラシレス形に換装された。同時に、ブレーキ方式を台車ブレーキに改造し、保安ブレーキ付きHSC電磁直通ブレーキレジン製ブレーキシューとされた。これによって5050系との併結が可能となり、限定運用の制約から解放された。

その他、側面にも行先表示器を新設し、さらに4両編成ではパンタグラフの位置および搭載形式も変更されている。それまではモハ5100・5300形の浅草方に菱型のパンタグラフを各1基搭載していたが、モハ5300形に下枠交差式パンタグラフ2基搭載と変更された。モハ5100形には高圧引き通し線により電気を供給した。東武の通勤形車両の多くは浅草方から2両目にパンタグラフを2基搭載しており、その中で2両目にパンタグラフの無い5000系は異彩を放っていた。

冷房改造後は本線系統・東上線系統(小川町寄居間、越生線)・野田線と転属を重ねた。さらに、野田線への8000系投入に伴い、5101Fを除いて館林検修区に転属した。

1997年(平成9年)より休車が発生し、長い間館林駅構内に留置されていたが、2003年までに全車廃車となり形式消滅した。

[編集] 5050系

1980年(昭和55年)に登場した7800系車体更新車の第2陣である。更新施工は全車アルナ工機(現・アルナ車両)で行われた。4両編成と2両編成それぞれ12本が製造され、4両編成は浅草方から順にクハ5150-モハ5250-モハ5350-クハ5450、2両編成は順にモハ5550-クハ5650と付番されている。

第1次更新車5000系がやや中途半端な性能であった事から、5050系は当初から保安ブレーキ機構装備のHSCブレーキと台車ブレーキシリンダを採用した。また、冷房装置を搭載したため、電動発電機は最初から大型の交流ブラシレス形を搭載した。4両固定編成の5157Fからは側面に行先表示器を備え、後に全車に取り付けられることとなる。

当初は伊勢崎線と東上線に、1983年(昭和58年)頃からは冷房化率向上の為野田線にも配属された。1991年(平成3年)までに全車が野田線に配置されたが、長くは続かず、1996年(平成8年)までに5551Fを除く全車が3000系列を置き換える為栃木・群馬の支線区に転属した。新栃木検修区(現・南栗橋車両管理区新栃木出張所)に転属した2両編成5本(5556F~5560F)は、寒冷な日光線・鬼怒川線での冬期運用を考慮し、6050系同様に霜取り用パンタグラフを増設、砂撒き装置が取り付けられた。

前記したように2007年2月23日に南栗橋車両管理区新栃木出張所に5160Fが北館林荷扱所に廃車回送された為、5050系は全廃となった。なお、2006年12月16日にはさよなら運転が日光線新栃木東武日光間にて5162Fを使用して行われた。


[編集] 5070系

野田線運用最末期の5070系(大宮駅にて2004年9月18日撮影)
野田線運用最末期の5070系(大宮駅にて2004年9月18日撮影)

1983年より5050系の6両固定編成バージョンとして13本が登場した。更新施工はアルナ工機と富士重工業、また一部中間車のみであるが津覇車輌の3社で分担して行われた。浅草方から順にクハ5170-モハ5270-モハ5370-サハ5470-モハ5570-クハ5670と付番されている。

基本仕様は5050系に準じている。5070系からの変更点は、非常通報装置が設置され、その側面表示灯が新設されたこと、前面助士席側の窓に手動ワイパーが新設されたこと、空気圧縮機(CP)は7800系からの流用品ではなく新品のHB-2000CAを採用したことなどである。また、1985年製の5178Fからは、車内のイメージアップが図られ、当時最新鋭の10000系と同仕様の車内アコモデーションとなった。また、側面表示灯がLED化された。

5070系は落成後そのまま野田線に配置されているが、5175F~5177Fは本線で浅草口に乗り入れていた時期もあり、1991年までに全車が野田線に配置された。また5181F~5183Fは最初から新塗装で登場した。本系列は東上線には配置されなかった。

前述したが、5000系と5050系の殆どは後に栃木・群馬の支線区に転属したが、本系列は6両固定編成であり支線区転用が出来ない為、全車が野田線で運用された。

1999年(平成11年)3月のダイヤ改正時に、5101Fと5551F、本系列の5171F~5173Fが休車となり、館林駅構内へ留置された。2001年に5173Fが5000系列最初の廃車となり、内装部品の一部を1800系通勤転用車に供出された他、制御機器などの一部を予備部品として確保した上で解体された。また5172Fは乗務員室ドア・客用ドア(2箇所)が8000系8154Fに転用された。

2002年(平成14年)9月からは、本線に30000系を新製配置して8000系が野田線に転属するという「玉突き転配」による置き換えが進められ、火災事故で休車となっていた5174Fが廃車され、2003年3月までに5175F~5179F、5183Fが廃車となった。5183Fの先頭車2両は店舗用として譲渡されている。

2004年10月19日、野田線の東岩槻春日部複線化完成に伴うダイヤ改正で残っていた3本(5180F~5182F)も廃車となり、5070系は形式消滅した。これに先立ち10月16・17日の2日間に渡り柏駅で運行終了記念の車両展示会・撮影会が開催され多くの沿線利用者や鉄道ファンが詰め掛けた。

[編集] 仕様

ほとんどが7800系からの流用か、それに改造を加えたものである。

  • 定員:Tc1.2(制御車)=150名、他=170名
  • 自重:Tc1=34.5t、Tc2=35.5t、M1・3(電動車)(5050系はM1・2)=41t、M2(5070系のみ)=40.5t、T(付随車)=34.5t
  • 起動加速度:1.6km/h/s
  • 減速度:3.7km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
  • 車両寸法:長さ:20,000mm/横幅:2,850mm/高さ:4,200mm
  • 冷房能力:42000kcal/h/車
  • 運転最高速度:95km/h
  • 設計最高速度:105km/h
  • 出力:142kW×4

[編集] 台車

台車は7800系からの流用品で、主に住友金属工業製の鋳鋼台車を使用している。鋳鋼製ゆえ重いが頑丈な台車である。

殆どは軸箱支持装置がペデスタル支持軸バネ式のFS-10形または日本車輌製造製のNL-1型(一部はゲルリッツ式のFS-106形)である。枕バネについては板バネを用いている。車体更新に際し、軸受けを通常型のローラーベアリングから密封式ベアリングに改造された。但し、5000系(2代目)の台車に関しては、更新当時は通常型のままで冷房改造時に密封式に改造された。

[編集] 電装部品

吊り掛け式の主電動機は、定格出力142kWの日立製作所製のHS-269-CR形もしくは東洋電機製造製のTDK-544形である。定格回転数1,250rpmは、電車用の吊り掛け式直流モーターとしては最高クラスであった。このため、歯車比は4.13で、吊り掛け車としては高い設定になっていた。

制御装置は日立製MMC-H-10形だが、5070系のみ東洋電機製ES-567形を使用している。どちらも自動加速形の多段式電動カム軸制御器で、直並列抵抗制御を行うが、後継車と比べると制御段数は少ない。

[編集] ブレーキ

最初に更新された5000系(2代目)では、7800系同様にAMA-REブレーキ(電磁自動空気ブレーキ)を採用し、鋳鉄製ブレーキシューや、車体装架式ブレーキシリンダも種車そのままだった。しかしこれはコントロールが難しい上反応も遅いため、5050系以降は、電磁直通ブレーキ(HSCブレーキ)として作動迅速化とメンテナンスフリー化を図った。併せてブレーキシリンダは台車装架とし、ブレーキシューも新形車同様のレジン樹脂製として、制動能力を確保した。5000系(2代目)はブレーキ方式が異なるため5050系と併結出来なかったが、後にHSC仕様に改造されて併結可能となった。

[編集] 主な使用線区

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