東武6050系電車
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6050系電車(6050けいでんしゃ)は、1985年(昭和60年)に車体更新によって登場した、東武鉄道の電車。
東武伊勢崎線・日光線の快速・区間快速と一部の区間急行・普通列車で運用される。
本稿では6050系の改造種車となった6000系電車、野岩鉄道・会津鉄道が所有する同型車(野岩鉄道6050系100番台・会津鉄道6050系200番台)についても記述する。
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[編集] 6050系
[編集] 概要
1985年、6000系の車体更新によって2両編成(モハ6150形(Mc)+ クハ6250形(Tc))22本が登場した。この車体更新中の運用車両が不足することから1編成(61101F)が新造され、後に野岩鉄道に譲渡された。その後1988年には完全新造車が7編成増備され、2006年現在は合計29編成が在籍する。
当初は6000系に不燃化等の改造を行い、長大トンネルが多い会津鬼怒川線で使用する予定だったとされる。しかし、6000系は非冷房車であり車両設備も陳腐化していたことから、大規模改造よりも車体新造による更新を行う方が得策と判断された。
1996年(平成8年)には、増解結時の省力化を図る目的で、自動連結器から電気連結器付き密着連結器に交換が行われた。その後、2001年3月28日のダイヤ改正より日光線普通列車でも運用されることとなり、一部の編成に霜取り用パンタグラフが搭載された。
[編集] 外観
- 塗色はジャスミンホワイトを基調に赤(パープルルビーレッド)とオレンジ(サニーコーラルオレンジ)のラインを配している。
- 後にこの車両塗色は、塗り分けこそ異なるが、100系「スペーシア」・300・350系にも採用され、日光方面優等系車両のイメージカラーとなる。
- 前面は大型ガラスを使用した三面折妻構造である。
- 客室側窓は一枚下降式を採用している。
- 両開き式ドアを前後2ヶ所に備える。
[編集] 車内設備
- 座席配置はドア間固定クロスシート、車端・戸袋部ロングシートのセミクロスシートとした。
- ボックスシートは座席間隔(シートピッチ)が6000系の1480mmから1525mmに拡大された。また、折り畳み式テーブルを設置している。
- 分割運転時の誤乗防止のため、車内妻面に行先表示器を設置している。
- 長距離運用が前提のため、クハ6250形にトイレを設置している。但し、トイレをバリアフリー対応化するにあたっては、現行のトイレの前後寸法が戸袋と細長い小窓程度しかない為、200系のようなドア移設工事などを避ける事は不可能に近い。
- 車内保温の為のドアカット機能はあるが、西武鉄道4000系のような開閉ボタン機能は装備していない。
[編集] 仕様
- 製造初年:1985年10月(更新)
- 車体構造:普通鋼製
- 自重:Mc(電動車)=40t Tc(制御車)=34t
- 定員:Tc=145人 Mc=150人
- 車体長:20,000mm
- 車体幅:2,878mm
- 車体高:4,200mm
- 構成:MT比1M1T(2両編成)
- 制御装置:電動カム軸式多段制御器(抵抗・弱界磁制御、4M永久直列、抑速ブレーキ付)MMC-HTB-10L(日立製作所製)
- ブレーキ方式:発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(HSC-D)
- 駆動装置:可撓継手式中空軸平行カルダン
- 主電動機:直流直巻補極補償巻線付電動機 TM-63(130kW×4)
- 歯車比5.31
- 最高速度:110km/h
- 起動加速度:2.5km/h/s
- 減速度:3.7km/h/s(常用)4.5km/h/s(非常)
- 冷房能力:31500kcal/h/車両
- 電動空気圧縮機(CP):DH-25M×2
- 電動発電機(MG):ブラシレス式MG
- 台車:TRS-63M/TRS-63T(更新車)・TRS-882M/TRS-882T(新製車)
- 製造(6173F~61201F)・更新(6151F~6172F)メーカー:アルナ工機(現・アルナ車両)・東急車輛製造・富士重工業
- 配置:南栗橋車両管理区新栃木出張所(旧・新栃木検修区)
[編集] 完全新造車の製造
6050系の完全新造車は、前述したが1985年に6050系100番台1編成(61101F)が製造された事に始まる。1986年には61102Fが新造され、野岩鉄道開業にあわせて2編成とも譲渡された。
新造車と更新車の大きな相違点は、台車がS形ミンデン台車(台車型式TRS-882M/TRS-882T(住友金属工業型式FS529/029))に変更されたことである。
1988年には、8000系使用の臨時快速列車を置き換えるため、また会津鉄道会津田島電化開業に備えるため、完全新造車が7本(および野岩鉄道車1本)製造された。会津鬼怒川線開業直後の利用者が予想以上に多かったため、8000系使用の臨時列車が運行されていたが、ロングシートやトイレの設備がないため不評であり、ひいては会津鬼怒川線のイメージにも影響することが懸念され、6050系の追加投入となった。
その後、1990年には同年10月12日の会津田島電化開業用として会津鉄道車6050系200番台1編成(61201F)が製造された。これは会津鉄道が所有する唯一の電車である。
野岩鉄道・会津鉄道所属の6050系列は、書類上東武鉄道からの譲受とされている。これは自社発注だと、東武と同形であっても図面提出等で手続きが煩雑になるのに対し、譲受だと手続きが簡単になるためとされる。
- 製造年度
- 61101F=1985年
- 61102F=1986年
- 6173~6179F、61103F=1988年(会津鬼怒川線地区及び宇都宮線快速急行投入用)
- 61201F=1990年(会津田島電化開業用)
[編集] 運用
野岩鉄道・会津鉄道の所有車両も運用上の区別はされておらず、3社の車両が南栗橋車両管理区新栃木出張所に配置され、完全共通運用されている。
2006年現在は、東武伊勢崎線・日光線・鬼怒川線・野岩鉄道会津鬼怒川線・会津鉄道会津線を直通する快速・区間快速を中心に充当されており、下今市で東武日光/会津田島方面列車の連結・切り離し作業が頻繁に見られる。その他に、早朝・深夜の区間急行や、日光線(栃木~東武日光間)・鬼怒川線・宇都宮線の普通列車の一部、下今市で特急に連絡する特急連絡列車にも使用される。
- 1991年7月21日のダイヤ改正までは、座席指定制の優等列車である快速急行「だいや」・「おじか」・「しもつけ」にも使用されていたが、300・350系に置き換えられた。また2001年までは尾瀬夜行等の夜行列車に使用されたが、現在は300系での運用となり、6050系の定期の有料列車運用はない。
- 2001年3月28日のダイヤ改正で、旧型車置き換えと運用合理化のため、それまで6050系が主体であった団体列車に300系・350系が充当されることになった。代わりに、6050系が日光線栃木~東武日光間普通列車や、東武宇都宮線の普通列車の一部に充当され、5050系を置き換えている。
- 2005年3月のダイヤ改正までは新藤原-会津田島間の区間列車も存在したが、ダイヤ改正後は早朝を除くほとんどの列車が浅草~会津田島間の直通快速列車となった。
- 2006年3月18日のダイヤ改正からは、区間快速(浅草~東武動物公園間快速運転、東武動物公園以北各駅停車)が新設された。これに伴い、種別表示器の「快速」表記は白地に赤から白地に青に変更され、「区間快速」の表記はは青地に白抜きとされた。また、ダイヤ改正による伊勢崎・日光線の種別名称変更に伴い、送り込み輸送の種別が準急から区間急行へ変更された.
[編集] 6000系
[編集] 概要
1964年に東武日光線系統快速列車に用いられていた5310系・5450系・5800系・3210形(後に3000系に更新)の置き換えのために製造された。
当時、競合する日本国有鉄道(国鉄)日光線で準急形電車(国鉄80系または国鉄153系)を使用した料金不要の快速列車の運転が計画されており、これに対して戦前製の3210系が主力の準快速列車は大きく見劣りしたため、国鉄準急形に匹敵する居住性をもった車両が投入されることとなった。
基本性能は、1963年に製造を開始した8000系ベースの車体・台車に、1961年に製造を開始した2000系の制御装置に抑速ブレーキを追加したタイプを組み合わせた形となっている。そのため、性能的には1720系「DRC」の制御装置を載せた8000系といったところである。
車内設備は片開き2つドアとし、座席配置はドア間固定クロスシート、車端・戸袋部ロングシートのセミクロスシートとした。クロスシートについては、背部分は腰より上部に座布団がなくデコラ板張りとなっていた。また、長距離運転に配慮してトイレが設けられた他、日光・鬼怒川方面への分割・併合を行うことから誤乗防止として車体側面に行先表示器が設置されており、車内の貫通路上には『日光線』『鬼怒川線』と表記され、かつ色分けもされていた札を差し込める枠も設けられていた。冷房装置は製造当時の鉄道車両の趨勢から設けていない。
1960年に先行して登場した1720系「DRC」は6両固定編成とされたが、快速列車については日光・鬼怒川方面へ分割・併合を行うため、モハ6100(Mc)+クハ6200(Tc)の2両編成とし、これを組み合わせ最大6両編成で運行される事となった。
6000系は快速列車の他に、5700系が使用されていた日光線急行列車(後の快速急行)でも運用され、この体制は6050系化された以降も続いた。
変わったところでは新造直後に秩父鉄道経由で東上線に乗り入れ、池袋駅まで入線したことがあった。これは、池袋-東武日光間で定員制のイベント列車として運転されたものである。
[編集] 廃車後の保管・保存
6050系への更新に伴い、不要となった旧6000系の車体は杉戸工場に隣接する倉庫で解体された。
また、浅草寄り先頭車2両が保存を前提に保管され、うち1両は倉庫の片隅(東武動物公園駅北側踏切付近)に7800系と共々雨ざらし状態で置かれていたが、結局、解体されてしまった。
他には、クハ6222が群馬県邑楽郡大泉町の割烹「停車場」でワラ1形貨車と共に店舗として使われていた。その後閉店したが、車両はそのまま残る。