機内食
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機内食(きないしょく)とは、航空機内で航空会社が提供する食事のこと。
狭義には航空会社のサービスとして無料で(航空運賃の一部として)機内で乗客に提供される食事を指すが、機長〔キャプテン〕・副操縦士〔コートパイロット 略称コーパイ〕・客室乗務員〔CA キャビンアテンダント〕が機内で摂る食事も機内食である。
一方、空弁など、当該機体を運航する会社とは無関係に乗客が持ち込んだ食事は機内食とは呼ばれない。
航空自衛隊、海上自衛隊(対潜哨戒機)においても、長期間の飛行の際は機内食が準備される。内容的には、冷凍化されたものを電子レンジで温める方式がとられている。
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[編集] 概要
目的地まで長時間拘束される飛行機内、とりわけ、長時間飛行する長距離国際線での、数少ない楽しみの一つが機内食であろう。通常は空港近辺の工場で製造されて機内に積み込まれ、離陸後に機内にあるギャレーと呼ばれる作業室で加熱後、各席に配膳される。
全体的には距離が長くなるほど、また座席が上級になるほど充実する傾向にある。
[編集] 国内線
日本国内では1951年、国内線の運航再開時にサンドイッチなどを軽食として提供されたのが始まり。その後、朝の便や夕方~夜の長距離便ではサンドイッチやスープなどの軽食が出され、その他の時間は茶菓が出るようになる。
近年では価格競争によるコストダウンのため、全日本空輸の上級座席のみで提供されるが、航空会社ごとに考え方やサービスが異なり、ハイグレード化と簡素化または省略に三極化される。
- 日本航空「クラスJ」:茶菓
- 全日本空輸「スーパーシートプレミアム」:茶菓、時間帯と運行時間によって弁当
- スカイマーク「シグナスクラス」:かつては軽食サービスがあったが2006年2月から茶菓、飲物も廃止。
[編集] 国際線
ごく短距離の路線(福岡~釜山など)を除き、概ね6時間を境に短い便では1回、長い便では2回の機内食が供される。配膳時間は出発地や到着地の時間(時刻)に関係ない場合が多い。近距離便では概ね離陸から1時間以内、遠距離便では1回目は離陸から概ね2時間以内、2回目は到着予定時刻の約2時間前である場合が多い。この辺りの事情を考慮せずに出発直前に食事を多く摂ると機内食が十分食べられなくなったり、機内食を十分食べた事で到着地での食事のリズムを壊し体調に影響が出る場合もあるので、飛行機を利用する前後の食事時間や摂取する量についても予め考慮しておくと良い。なお、ほとんどの国際線では宗教などの理由から特別食の用意があり、事前に申し込めば特別食が出される。
この他に機内食として出される食事以外にも、随時ビスケットなど軽食のサービスや、夜行便等では夜食としてパンやサンドイッチ、日本への発着便ではおにぎりやカップ麺などの軽食を用意している会社もある。
基本的には相手国の業者と契約して復路便の分を手配してもらうが、日本発の韓国・中国・台湾・香港・フィリピン・グアム線のような近距離路線なら復路の分もまとめて載せることもある。
[編集] 業者
機内食を調理する業者は概ね航空会社が出資する関連会社が多いが、一方で外食企業が機内食事業を手がける場合もあり、近年は料理のグレードアップの際に、有名レストランやホテルがメニューを監修することもある。
海外における国内線では、有料で販売するケースがある。また、格安航空会社の多くが、国際線でも有料販売をしている。
[編集] メニュー
一般に航空会社の本国の料理が出されることが多い。(前述の復路など現地で調達する場合、現地料理の色合いが出る場合がある。)また座席等級によって食事の内容が異なる。
[編集] エコノミークラスの一般的な構成
1人前をトレーに載せて配膳する。
- 主菜(メインディッシュ:加熱して提供される。ご飯を含む場合もある)
- 通常は2種類のメニューを搭載する。
- 副菜(サラダ等、野菜中心のことが多い。これ以外にも、例えば日本線の場合は、そばや寿司等が、韓国発着便はキムチがそれぞれ提供されることもある。)
- パン
- デザートまたは果物
- 飲み物(一部中東の航空会社を除き酒も選択可)欧米便では炭酸水がそのまま出されることもある。
酒は上級席種では無料であるが、エコノミークラスでは酒の種類によっては有料となることもある。エールフランスはエコノミークラスでもシャンパンが無料で提供されている。 主菜は、例えば肉と魚、鶏と牛など2種類の料理の中から選択できるが、先着順のため一方しか残っていないことも多い。
[編集] ファーストクラス、ビジネスクラスの一般的な構成
コースメニューとなっており、いずれも3~4種類から選択できる。配膳は料理ごとに行われ、各席で食器に盛りつける。近距離路線ではボックスミール(弁当)になることもある。長距離路線ではサンドイッチ、ピザ、アイスクリーム、ラーメン等の間食が用意されていることが多い。
- 食前酒
- カナッペ
- 前菜・オードブル
- スープ
- サラダ
- 主菜
- 副菜
- パン
- チーズ
- ポートワイン
- デザート
- コーヒーまたは紅茶
- チョコレート
- 飲み物はアルコールを含めて無料である。ただし、中東など宗教上の理由でアルコールが提供されない場合もある。ファーストクラスではドン・ペリニョン、クリュッグ等の超高級シャンパンを用意している航空会社もある。
[編集] 朝食
ランチやディナーと異なり、あっさりした軽めのものが多い。国際線では主に到着前の2回目の食事で提供される。また、「朝」に当たらない時間帯の軽食を「リフレッシュメント」と呼ぶこともある。
[編集] 特別食
あまり知られていないが、ほとんどの航空会社では、医学的・宗教的理由によって通常の機内食を食べられない乗客のために、特別食(スペシャルミール:Special meal)を用意している。
特別食の具体例としては以下のようなものがある。
- ベジタリアン・ミール - 菜食主義者向け。肉・魚を使用しない。
- ムスリム・ミール(イスラム食) - イスラム教徒向け。豚肉・酒を使用しない。
- ヒンドゥー・ミール - ヒンドゥー教徒向け。牛・豚肉を使用しない。
- コーシャ・ミール - ユダヤ教徒向け。事前に教義に則った祈祷済み。
- 低塩食 - 調味用の塩を使用しない。
- 低カロリー食 - 油脂・砂糖を使用しない。
- チャイルド・ミール - 子供向け。量がやや少なく、子供に好まれる味付け。
特別食はどの機体にも常備しているわけではなく、大抵は事前に予約を要する。ただし、航空会社や目的地によっては乗客の需要が異なるため、2種類ある通常食の一方がベジタリアン・ミールだったり、ムスリム・ミールのみだったりすることもある。
特別食は、信条や信仰宗教とは無関係に申し込みできる。豚肉アレルギーを持つ人がユナイテッド航空の利用に際し、イスラム食を申し込んだケースがある。[1] [2] 食物アレルギーなどがある場合、宗教食の申し込みを検討すると良い。
[編集] 乗務員向け
万が一食中毒が起こった時に乗務員が全員発症することのないよう、客室乗務員の一部は乗客と異なる食事を摂る。また、同様の理由から機長(もしくはPIC)と副操縦士(もしくはSIC)はそれぞれ食材・調味料など全く異なるものを食べる。(機内食による食中毒の事例)集団で食中毒になった場合トイレが少ないので大変なことになる。
食事の等級はエコノミークラス程度である。ただし、客室乗務員の食事は、ファーストクラス、ビジネスクラスで余った食事を食べることもある。
[編集] 貨物機の場合
貨物機にも小規模ながら機内食の設備があり、遠距離便を中心にエコノミークラス相当の食事が用意されるが、客室乗務員がいないため手の空いている乗務員(主に航空機関士か副操縦士)が用意する。貨物の関係で乗務員以外の人が貨物機に添乗する場合はその人の分も手配されるが、乗務員の飲酒を防ぐため飲み物に酒類は含まれない。
[編集] その他の特徴
[編集] 調理
主菜は半加工品。冷蔵状態で搭載され、配膳の直前に加熱調理される。加熱方法はオーブンで数個ずつ加熱する方法と、各トレイに加熱板を備えて主菜だけを一斉に加熱する方法とがある。
[編集] 配膳
客室乗務員がカートに載せて通路から各席の可動式テーブルに配膳する。機体の前後やワイドボディ機の主翼付近(ギャレーのある位置)から順番に回るため、順番が早い方が希望の食事を選べる可能性が高い。
[編集] 食器
エコノミークラスではプラスチック、またはアルミニウムの容器が多い。ビジネスクラス以上は陶磁器製の食器が使われる。
ナイフ、フォークなどはプラスチック製。ハイジャックの武器となるのを防ぐためとも言われるが、基本的にビジネスクラス以上では金属製のカトラリーが用いられ、航空会社によってはエコノミーでも金属製を用いる
[編集] 機内食工場とフードローダー
機内食工場は多くが2階建てになっていて、1階は空のカートを回収して食器を洗浄、2階は調理・配膳とトラックへの積み込み口になっている。空港近隣の機内食工場から航空機へ機内食を盛りつけたしたカートを輸送するトラックをフードローダー(Food Loader)と呼び、工場での積載時と航空機への積み降ろしのときに荷台が機体の高さまで持ち上がる。なお航空機へ機内食を積み込むときはローダーの前から行う。
[編集] 主要企業・業界団体
- 国際トラベルケータリング協会(ITCA)(英語サイト)
- 国際機内食サービス協会(IFSA)(英語サイト)
- ティエフケー(TFK:日本航空系列)
- エーエヌエーケータリングサービス(ANAC:全日本空輸系列)
- 関西インフライトケータリング(KIC:ロイヤルホールディングス系列、関西国際空港)
- ジャルロイヤルケータリング(JRC:ティエフケーとロイヤルホールディングスの合弁、成田国際空港)
- 朝日エアポートサービス(朝日新聞グループ、朝日ビルディング系)
[編集] 外部リンク
- 機内食・ドットコム~機上の晩餐~ 機内食紹介サイト。
- エアライングルメ 同上。
- JAL国際線機内サービス 機内食の検索が可能。
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