おにぎり
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おにぎり(御握り)とは、ご飯に味をつけたり、具を入れたりして、三角形、俵形、球状などに握ってまとめた携帯に便利な食べ物。
握り飯、おむすび(御結び)、他 地方や家庭によっていくつもの呼び方がある。→#呼び方
作り置きが可能であり携帯性に優れることから、日本では古くから今に至るまで弁当の主食として重宝されている。現在はコンビニエンスストアやスーパーマーケットでも販売されている。 また、近年 日本の大手コンビニエンスストアが海外進出をすると同時に、世界各国で日本のおにぎりが食べられるようになってきた。
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[編集] 製法
地方や家庭によって多様な方法があると思われるが、最も一般的と考えられる方法を示す。
- ぬるま湯に浸して軽く水をきった手に塩を軽くまぶし、蒸らしたご飯を1個分のおにぎりに見合う量だけ取る。
- まずは外側を軽く固める程度に握り、中央に具材を埋める
- 3,4回に分けて回しながら均一に力をかけて握り、形を整える。柔らかすぎると崩れるが、固く握りすぎると食感が悪くなるので注意。
夏場は手についた細菌が繁殖するおそれもあるため、衛生上の予防策も兼ね、ラップに包んで握るのもよい。また、プラスチック製の「おにぎりの型」が生活雑貨店等で市販されている。これはご飯を詰めるだけで簡単におにぎりの形に仕上がる器具である。ただし、味については、手に塩をつけて握るほうがいいと感じられることが多い。
[編集] おにぎりの形態
おにぎりを構成する主な要素は形、飯、具、包みである。
[編集] 形
形はさまざまなものの可能性が考えられるが、通常よくみられるのは次のようなものである。
[編集] 飯
日本で主食として食べられる米・ジャポニカ米で炊いたご飯は冷えてもでん粉が硬くなりにくいため、他の種と比べておにぎりに向いている。コンビニエンスストアなどで販売されているおにぎりの中には「冷めても美味しい」性質が一段と高い低アミロース米が用いられる事も多いが、家庭で作られる物は、普段食されているうるち米を炊いた物とするのが普通である。
一番多いのは白飯であるが、炊き込み飯、混ぜ込み飯、おこわなど、以下に示すように多くのバリエーションが存在する。
[編集] 飯の種類
[編集] 具
白飯と相性が良く味の濃い物が多い。梅干しや佃煮(鰹節・昆布など)は昔からの定番である。 炊き込み、混ぜ込みご飯のように、ご飯自体に味が付いている場合は、具を包み込まないのが一般的。
具は中央に埋め込まれるのが一般的だが、スパム、ますのすし、マツタケなどのように表面に張り付けるようなタイプもある。
[編集] 具の種類
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[編集] 包み
大抵は海苔であるが、変わった食材で包まれたおにぎりも存在する。長野県では野沢菜、富山県では削り昆布、和歌山県では高菜の漬物など、地域性が出る物や、チキンライスを薄焼き卵で包んだオムライス風おにぎりなどである。
植物の葉には雑菌の繁殖を抑える物もあり、保存性を高める一面もある。
[編集] 包みの種類
[編集] 現在におけるおにぎり
家庭で作られるおにぎりと、コンビニエンスストアなどで販売されるおにぎりに分けられる。
家庭で作られる物は、遠足での昼食など携行食という元来の考えに基づいた用途以外でも、作り置きの昼食といったような形でも日常的に食べられる。お弁当に入れられる事も多い。俗に「爆弾」と呼ばれる、大きな球形に握られ、海苔を巻いた無骨なおにぎりもある。
一方、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで販売されるおにぎりは、その多くは食品製造工場の機械で大量生産されている。個別包装されているものと2個~数個がパック包装されているものとでは形態が異なり、個別包装のものは海苔を内部フィルムで本体であるご飯から隔離し、湿気から保護してある「手巻き海苔」タイプであることが多い。この保護フィルムは食べる時に簡単に手で抜き取れるよう工夫が凝らしてあり、いつでも巻きたての、パリパリとした海苔の食感が楽しめる。ローソンは2004年に「手巻四角型包装」と称する海苔をUの字に曲げただけのものを発売したが、かえって剥きにくいという声もある。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットのお弁当コーナーを支える商品としておにぎりは重要視されており、特にコンビニエンスストアでは各社ともに熾烈なおにぎり新商品開発合戦・顧客獲得合戦を繰り広げている。ローソンで販売されている格安のおにぎりは、その具材の豪華さで消費者たちから定評を得ている。
沖縄県や北海道など、一部の地域では、コンビニでおにぎりを購入すると、店員から「温めますか?」と聞かれることがある。
また、おにぎりに特化したファーストフード的な販売店・外食店も存在する。
[編集] 呼び方
地方や家庭によって呼び方が異なる場合がある。
広島市を中心とする地方では一般家庭でも、外食産業でもむすびと呼ぶ傾向にあるが、無論おにぎりでも通じる。握りまま(青森県)、おにんこ(栃木県)といった方言もある。おむすびというのは、もとは御所の女房言葉であった。日本でおにぎりと言えば三角に握ったものというイメージが強く、「おにぎり型」というように三角形をした物のことを指す代名詞としてよく例えられる。
-おにぎりとおむすびの違い-
おにぎりとおむすびは語源、形状ともに異なる。 おにぎりとは、形を問わず飯を握って作ったものだ。 しかしおむすびとは三角でなければならない。 古事記に登場する三柱の神:天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、神産巣日神(かみむすびのかみ)、は天と地が分かれて初めて現れた神様の名前である。この高御産巣日神と神産巣日神に共通の「むすび(産巣日)」という言葉だ。この「むすび」とは天地万物を生み出す神霊、またはその霊妙なあ力を意味している。 そして当時の日本人は山を神格化し、その神の力を授かるために米を山型(神の形)をかたどって食べたものがいわゆる「おむすび」の始まりだと云われている。
[編集] 日本における歴史
弥生時代後期の遺蹟であるチャノバタケ遺蹟(石川県鹿西町、現・中能登町)から、1987年12月におにぎりと思われる米粒の塊が炭化したものが出土している。この炭化米からは、人間の指によって握られた痕跡が残されている。また、北金目塚越遺蹟(神奈川県平塚市)からもおにぎり状に固まった炭化米が発見されている。
おにぎりの直接の起源は、平安時代の「頓食(とんじき)」という食べ物だと考えられている。この頃のおにぎりは楕円形をしていて、かなり大型(1合半)で、使われているのは蒸したもち米であった。
鎌倉時代の末期ごろからはうるち米が使われるようになった。おにぎりといえば海苔だが、板海苔が「浅草海苔」などの名で一般にも普及したのは元禄のころよりで、栄養もあり、手にごはんがくっつかない便利さもあいまっておにぎりと海苔の関係ができた。
[編集] 竹の皮
かつては竹の皮におにぎりを包むのが一般的であった。竹の皮は殺菌作用や適度な通気性があるため、ラップやアルミ箔よりも保存性に優れている。しかし、大量の安定供給や価格、ひいては入手性といった利便性で劣ったため、近年ではあまり用いられなくなった。
[編集] 外国におけるおにぎりの形態
日本と同じ米作地帯である中国、台湾、韓国などでもおにぎりは作られる。しかし台湾を除き、いずれの国も国民の間では「飯はあたたかい状態で食べるもの」という意識が強く、おにぎりというものに対し「下賎な者が食べる物」「やむを得ない場合の携行食」というイメージが強く根付いており、中国では「飯団子(表記は前述した“飯糰”)」、韓国では「こぶし飯」などと呼び、日常的に食べられることはまずなかった。中国福建省には「草包飯(ツァオバオファン、cǎobāofàn)」というおにぎりの一種があるが、これはご飯の中に肉、ソーセージ、シイタケなどを具として入れ、これらを編んだ草の袋に詰め込んで携行するというもので、やはり日本人がイメージするものとはかなりの開きがある。
台湾では駅弁や寿司なども含め日本の食文化が広く知られていることもあり、おにぎりに対して下賎なイメージは然程ない。現地で売られているおにぎりは日本のものとは異なり、もち米で作られている場合がある。具材も甘めの豚肉でんぶや揚げパンなど、日本のものとは少々趣が異なる。最近では四角状で通常の1.5倍程度の大きいものが人気がある。
日系企業のコンビニエンスストアが台湾や上海などに上陸し普及するようになると、現地で日本式のおにぎりが人気を博す。これを受けて、日本の米に近い品種の米を使ったおにぎりが現地工場で製造され販売されるようになった。韓国でもコンビニエンスストアの三角のおにぎりの人気が出てきている。
一方、ハワイや沖縄では、スパム(ランチョンミート)を具としたおにぎりが「スパムむすび」「ポーク玉子おにぎり(おにポー)」などという名で販売されている。オーストラリアなどでも、おにぎりがファーストフードのメニューとして扱われているというケースもある。
[編集] 関連項目
- 国道標識
- 日本では「おにぎり」と言えば三角形の物のイメージが強く、国道の番号を示す標識の代名詞になっている。
- 漢字Talk 7.1の愛称が「おにぎり」だった。決定には糸井重里が関与した。