ACOS
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ACOS(エーコス)は日本電気 (NEC) が製造し、販売しているメインフレームおよび、そのためのオペレーティングシステムのこと。ACOSは Advanced Comprehensive Operating System の略と言われている。
1974年5月にACOSシリーズ77 として、システム200,300,400,500の4機種が発売された。
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[編集] 背景
1950年代のパラメトロンコンピュータやFONTAC(富士通/沖/NEC共同コンピュータ)の流れの中、1960年代半ばに始まる通産省主体の大型プロジェクト超高性能電子計算機開発計画において、IBMなどの海外のコンピュータベンダに寄らない日本独自のコンピュータシステムを構築すべく、NEC/日立製作所/富士通/東芝/沖電気/松下電器/三菱電機などに通産省の元でコンピュータシステムの開発を進めさせた。松下などは、コンピュータはまだ商売にならないと判断し、早々と撤退を行ったが、それ以外のベンダはコンピュータの開発に鎬を削っていく事になる。
その後、日本では1973年に米国からの圧力などでコンピュータの輸入自由化が決定された。通商産業省は、当時の国内コンピュータメーカーの体力ではIBMを初めとする海外メーカーに日本市場を席巻され打撃を受けるとして、当時6社あったコンピュータ業界の再編に乗り出した。富士通と日立、三菱電機と沖電気、それに東芝とNECの3グループにまとめ、技術研究組合を作らせて5年間にわたって補助金を支給し、各社に「IBM対抗機」の開発に当たらせた。
当時NECがハネウェル社から、東芝がジェネラル・エレクトリック社 (GE) から、それぞれ技術供与を受けてコンピュータを開発していた。ところが、1971年にGEはコンピュータ事業から撤退して事業をハネウェルに売却し、ハネウェルは統合したコンピュータ部門をハネウェル・インフォメーション・システムズ社 (HIS) として独立させた。このため、同社と提携するNECと東芝がグループを組むことになった。
両社は共同開発にあたり、小型機・中型機をNECで、また大型機を東芝で、それぞれ開発を分担した。このため当初は中型機用として開発されたACOS-4と大型機用のACOS-6はかなり異なるアーキテクチャのシステムとなった。
なお、ACOS-2は、ACOS-4のサブセット的なOSを搭載した小型機として発売すべく、開発されたシステムである。
[編集] ハードウェア
[編集] ACOSシリーズ(販売終了)
- ACOS-2系:小型機
- システム200(1974年5月):ACOS-4系との互換性を維持しつつLSIなどを使用して小型化。
- システム250(1979年2月):機能分散プロセッサ構成。LSIを全面採用して価格性能比を向上させ、ベストセラーとなった。
- システム410(1983年4月)
- システム3300(1987年7月)
- ACOS-4系:ハネウェルの技術による32bit・バイトマシン。中型機からスタートして次第に大型機・超大型機に発展。
- システム300、400(1974年5月):マルチタスク、セグメント方式の導入。
- システム500(1975年6月):上位機。Bull(当時、ハネウェルの子会社)との共同開発が中止され、発売が遅れた。
- システム350、450、550(1979年10月):システム300、400、500の後継。マルチプロセッサ、ページング方式。
- システム430(1984年2月):システム350の後継
- システム610、630(1985年4月):システム450、550の後継
- システム750:BullへOEM供給
- システム910(1987年1月):システム750の後継
- システム800-III
- システム950
- システム1500(1985年2月):当時、世界最高速。
- システム3400(1988年7月):システム430の後継
- システム3600(1990年2月):システム610、630の後継
- システム3800(1990年7月):当時、世界最高速。
- ACOS-6系:GEの技術による36bit・ワードマシン。大型~超大型機
- システム600、700(1974年11月):TOSBAC-5600互換でアーキテクチャを強化。仮想記憶方式。キャッシュメモリを使用したマルチプロセッサ。
- システム650:システム600の後継
- システム800、900(1976年):プロセッサの二重化。900ではさらに浮動小数点演算を強化。当初、ハネウェルとの共同開発だったが、設計方針の違いから日本電気独自で開発。なお、東芝は1978年に汎用機事業から撤退。
- システム850:システム800の後継
- システム1000(1980年9月):当時、世界最高速。また、初めて日本電気からハネウェルへOEM供給した(ただし、契約が締結された翌年にハネウェルはコンピュータ事業から撤退)。
- システム2000(1986年2月):当時、世界最高速。液冷方式を採用。
- システム830(1987年1月):システム650の後継
- システム930(1987年1月):システム850の後継
- システム3700
- システム3900
[編集] パラレルACOSシリーズ(現行機種)
- i-PX7300シリーズ: インテルXeonプロセッサによるACOS-2系対応の小型機
- i-PX7600シリーズ: 独自CMOSプロセッサによるACOS-4系OS対応の中型機
- i-PX7800シリーズ: 独自CMOSプロセッサによるACOS-4系OS対応の大型機
- i-PX9000シリーズ: インテル Itanium 2プロセッサによるACOS-4系OS対応の中小規模向け機から大型機
- PX-7900シリーズ: 独自CMOSプロセッサによるACOS-6系OS対応の大型機
[編集] IPF版ACOS
2004年8月に発表されたNECのサーバ戦略によれば、ACOS-4系のCPUを独自CMOSプロセッサ(NOAHシリーズ)からIPF(インテルのItaniumプロセッサファミリ)に転換し、従来版ACOS-4のバイナリをエミュレーションにより、またItaniumネイティブのACOS-4のほか、Windows、Linux、HP-UXを実行できるシリーズを2004年度に発表した。これにより従来のACOSソフトウェア資産を生かしつつ現代の業界標準のソフトウェアに徐々に移行可能であるとしている。なお、このサーバー戦略を実現する機種として、i-PX9000シリーズを2004年10月07日に発表している。
[編集] OS
初期の版を発売後、版を重ねるにつれて名称の変更や派生版を生じている。
詳細は各OSの記事を参照。
[編集] その他
以前は日電東芝情報システム(通称 NTIS)も販売していたが、東芝が提携を解消したため(会社名は広く知れ渡っているNTISを活かす形でNECトータルインテグレーションサービス株式会社に変更)、現在は日本電気のみが販売を行なっている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ACOS Club
- 日本電気から発表されたi-PX9000シリーズ(Sモデル/Aモデル)のプレスリリース(2004年10月07日付)
- 日本電気から発表されたi-PX9000シリーズ(SXモデル)のプレスリリース(2005年12月06日付)
カテゴリ: オペレーティングシステム | 日本電気