ひょうきん懺悔室
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ひょうきん懺悔室(- ざんげしつ)は、かつてフジテレビで放送されていた『オレたちひょうきん族』のコーナーのひとつ。
ブッチー武者扮する神様がイエス・キリストが十字架に張りつけにされたような格好で安置された懺悔室で、当時フジテレビプロデューサーの横澤彪が黒い衣装に身をまとった神父に扮し(横澤プロデューサーの降板後は2代目プロデューサーとなった三宅恵介が赤い衣装を着た神父役として立っていた)、出演者やスタッフなどが自分のNGを懺悔するコーナー。
このコーナーは『懺悔の部屋』という、六本木でナンパをする大阪の芸人が、その行為をビートたけし扮する神父に自ら告白し懺悔するという趣旨の企画(面白く無いという理由でボツ)がベースとなっている。NGを見せるという発想は映画『キャノンボール2』のエンドロールに流れていたNG集を見た横澤プロデューサーが思いついたもの。
通常はこの『ひょうきん懺悔室』が番組の最後のコーナーで、これが終わるとそのままエンディング曲、提供クレジットが出て番組が終わる、という流れであった。
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[編集] 概要
いくらお笑い番組とは言え、余りのNGの多さに業を煮やしたスタッフが発案して誕生したのがこのコーナーである。
反省が足りないと神様が両手を交差させるように「バツ」のジェスチャーをして水を浴びせられ、逆に反省したと認められれば神様が微笑みながら頭の上で両手で「マル」のジェスチャーをし、紙吹雪が浴びせられる。この番組でNGを出した人すべてが懺悔室の対象であり、放送時間の関係でその中で面白いものだけが放送されたと後に明らかになる。「懺悔! 懺悔!」は当時流行語になった。
時にはNGを誰一人も出さなかった、NGでも面白かったからOKにしたた為NG無しという回もあり、そのときは「今日は懺悔の無い良い一日でした」と言うナレーションの後、反省したと認められた時と同様に紙吹雪が降ってエンディングの流れとなった(たまに懺悔の神様に水を掛けるパターンもあった)。
後述のように懺悔室に送り込まれる対象は拡大して行き、レギュラー出演者の営業(後述の出張懺悔室の一部の回)、ひょうきん族以外の当時フジテレビで放送されていた番組出演者、果てはフジテレビ乗り付けのタクシー運転手、間違えて日本テレビに出演者用の弁当を届けた弁当屋の配達員、収録中の客にまでに広がって行った。
番組終了後、当時の出演者たちが語るには「水ではなく、お湯(ぬるま湯)をかける事」が頻繁で「この件で次の仕事に支障を来たさない為の配慮」であったとも語られていた。後に他のバラエティ番組がパロディでざんげ室を再現した際に島崎俊郎は「本物の水じゃないか! あの、常識の無いひょうきん族でもぬるま湯だったぞ!」と絶叫している(島田紳助も『行列のできる法律相談所』で同様のことを言っている)。しかし中には本物の水(冷水)であったり、インクをかけられることもあった。そのうえ、被った際の貸衣装代は全て自腹で弁償もしくはクリーニングしなければならなかった。
ちなみに判決時のBGMは『宇宙刑事ギャバン』の変身時のBGMが使用されていた。
[編集] 出張懺悔室
視聴者から投稿を受け付け、懺悔室の二人が街中や行楽地など(スキー場に行ったこともある)に出張し、投稿者から名指しされた素人に懺悔させた。なお、その時の神父は横澤ではなく水島びん。後にこれはレギュラー陣が当時担当していた他の番組の収録現場でも行われるようになった。
[編集] 公開懺悔
改編期恒例の特番にて、スタッフが気付かなかったNGを視聴者からの投稿で再検証し、“容疑者”を懺悔の部屋に送り込むもの。神様は特番中ずっと立ちっぱなしで両腕を広げたままであった。また、フジテレビの「ひょうきん族」以外の番組や他局の番組でも同様に放送した。
[編集] ひょうきん懺悔室のエピソード
- 神父の衣装は最初は布製の衣装だったが、濡れて縮むなど管理が大変だったためゴム製の衣装に変更された。
- 1985年に現在フジテレビ会長である日枝久(当時同局編成局長)が懺悔したことがあった。それは、野球中継で度々番組が放送休止になった(当時は8月に巨人が主催ゲームを多く組ませるために、4月から5月の間は巨人のビジターゲームを多めにしているため)事に対しての意趣返しとして、たけし・さんまと共に登場した際「おまちどうさまでした、フジテレビの(編成)局長です!」とたけしが言い放ち、二人から散々な扱いを受けた挙句、日枝は水を浴びせられた。また『ワールドカップバレー』中継で3週休む時もスポーツ局長が水を掛けられるなど、局内の上層部に対しても容赦無い。
- また、当時のフジテレビ夕方のニュース番組である『FNNスーパータイム』でメインキャスターを務めていた逸見政孝アナ(当時)も、「放送中、CM明けに気付かず“やすめ”のポーズをしていた」ということで、懺悔の部屋に送り込まれた(『スーパータイム』は立ってニュースを伝える番組だったためにそのことがバレてしまった)。逸見はその直後の『FNNスーパータイム』において、CM前に、半ば確信犯的に笑いながら“やすめ”のポーズをしたこともあった。
- バツを見越して傘を用意した者がいたり(結果は失敗)、また、水を避ける用意をして成功した者がいた。(山田邦子など)しかし、避けた直後に二杯目の水を浴びせられた。
- 明石家さんまは一度ネクタイをつけて登場したことがあったが、それは横澤のネクタイで、ネクタイを触りながら「さぁ、(お湯)かけれるものならかけてみぃ!」と脅したところ、見事マルを得たことがあった。
- 島田紳助が公開懺悔の部屋に送り込まれた際、水をぶっかけられる事を覚悟していたのか、銭湯に入るノリで予めシャンプーを頭にかけ、水を浴びた直後に洗髪していたり、1985年に「阪神が優勝したらラーメン100杯おごる」と公約したが、「金がないから懺悔で勘弁してください!」と水を被った。また、半ば言いがかりを付けて島崎俊郎を道連れにしたり、全裸で登場し水をかぶった後に神様を押しのけて祭壇に登り、「映せるもんなら映してみい」と両手を広げ(つまりモロ出し)て立った事がある(ボカシ入りで映された)
- 片岡鶴太郎はシャレでわざと「マイケル・ジャクソン」を「ジャイケル・マクソン(毎日放送の番組とは無関係)」と言ったら本当に懺悔の部屋に送り込まれた。また、どさくさに紛れて女性出演者の胸を触っていた事を公開懺悔で何度も指摘され、その度に水を浴びせられていた。
- ぼんちおさむは「ひょうきんベストテン」にて森田健作になり切り過ぎたり、よくモノマネしていた細川たかしが『紅白歌合戦』で歌詞をトチった事が理由となるなど、本人のNGでも何でもない理由で懺悔室に送り込まれる事があった。
- 山田邦子や今くるよは自分の付き人を身代わりにさせた。
- 太平サブローは出演するたび、お詫びに新作モノマネをして許しを請うも、全て失敗していた。
- 長野智子(当時フジテレビアナウンサー)は、水を被るのを嫌がって逃げようとしたところ、はいていたジャージを下着ごとつかまれ、生尻をさらされてしまった。
- 神父役であった横澤が、「迷える子羊達よ、入りなさい」と言うところを、とちって「入りたさい」と言ってしまい、結局そのまま横澤本人が懺悔させられ水をかぶった事がある。
- また、横澤が信号無視をして横断歩道を渡るシーンがレギュラー放送時に放送された。これを受けて、スペシャルで横澤が懺悔をする事になった。神様(ブッチー武者)がマルを出したため、激怒したたけしが神様に水を浴びせ、「えこひいきすんじゃねーよ! バカヤロー!」と罵声まで浴びせた。
- スペシャルでスタッフが懺悔をする際、水の入ったバケツにたけしがスタッフの靴を入れていたことが何度かあった。そして、水をかぶった際、その靴がスタッフにまともに当たってしまった事があった。結果、次のスペシャルでたけしが懺悔をし、水を浴びるハメに。
- 紙吹雪を降らせる役のスタッフが誤って袋に入ったままの紙吹雪を落としてしまい、懺悔させられたことがある。結果はマルであったが、落ちてきたのは紙吹雪の詰まった大量のビニール袋であった。
- デーブ・スペクターは台詞が英語なので、間違えても間を作らずに適当に誤魔化せばNGを免れると思っていた。
- ヒロミは最終回にたけしの身代わりで罰ゲームを受けた。
- ある芸人が「ひょうきんベストテン」でNGを出し水をかけられ、島田紳助と共に連れて来たある女性アーティストのコーラスの人に手を出し、再び懺悔をし2度も水をかけられたことがあった。
- 『ドラえもん』の道具の中にこのひょうきん懺悔室をモチーフにしたと考えられる「ざんげぼう」がある(『ドラえもんプラス』第5巻に収録)
- ブッチー武者が○を出すか×を出すかは、屋根裏からスタッフがサインを出して知らせていたが、ある日武者は「×」のサインが出ていたのに間違えて「○」を出したところ水をかぶってしまい子羊役の芸人が激怒。その報復として、芸人が神様役となり、武者が懺悔をさせられた(勿論結果は「×」で、武者も水をかぶった)。
- 田中角栄がロッキード事件で退陣し、次の衆議院選挙に「みそぎ」といって出馬したとき、選挙投票日の前日(土曜日)の番組に、田中角栄のそっくりさん(葬儀店経営)を出してコントを流した。素人でもあるそっくりさんがNGをしたため、懺悔室に入ることになり。武者は「×」を出して、彼に水を掛けた。するとこのそっくりさんは、水をかぶったまま拭おうともせず、扇子を胸元から出し(田中の物まね)仰ぎながらすぐ「さあ、これでみそぎは終わった。」(注:みそぎは滝に打たれる神道系の修行である)として悠然と立ち去ったというのがあった。時節柄仕込んだといってかなりの話題となった。横澤もリスクも背負っていたと考える。