エアフィックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エアフィックス(英記:Airfix)とは、1939年創業のプラスチック・モデルを製造・販売するイギリスのメーカー。
欧州向けの塗料を製造・販売しているハンブロール社傘下の企業として、主に飛行機・車・艦船模型を製造・販売する。
目次 |
[編集] 概要
[編集] エアフィックス創業
1939年に、ハンガリー人のNicholas Koveがイギリスで創業。社名の由来は、当時の玩具カタログのメーカーリストで最初に掲載されるアルファベット順のAから考案し選ばれた。玩具メーカーとしての活動はゴム風船などの玩具製造を行う。その後第二次世界大戦による影響で、企業活動は低迷し細々と継続していたが戦後(1949年)に農機具製造メーカー・ファーガソン社から「トラクター」販売の販促品として、同社製のトラクターを縮尺した玩具の製造依頼を受け、当時新たに開発された新素材・「酢酸セルロース」製(プラスチックの一種)で製造し納入。後に金型製造コストの償却のため、イギリス国内の小売店で組み立て方式の玩具としても販売された。この時の製造ノウハウは後のプラモデル製造・販売に繋がることになる。
[編集] プラモデル黄金期
1955年に、当時のアメリカのプラモデル製造メーカー「オーロラ社」から発売されていた1/48スピットファイアMk.Vを参考に縮尺した、1/72スケールモデルを製造し発売する。このモデルから現在市販されているポリスチレンを材料としたプラスチックモデル(以下プラモデル)で発売された。1950年代から60年代に掛けて戦記映画やTVドラマなどの映像化作品が世界的に人気があり、登場する兵器アイテムなどが、リアルな縮尺・1/72,1/48スケールでの商品化が活発に行われ、適度なディフォルメ・彫刻が施されたプラモデルは注目され、エアフィックスは兵器の戦車・航空機・艦船模型を積極的にモデル化を行って、世界各地へのホビー玩具市場へ輸出し、莫大な利益を得る。
エアフィックスはラインアップの更なる充実を図るため、ビンテージカー、帆船模型、オートバイ、鉄道模型など多彩な種類の製品化・アイテムの拡充を行った。絵物語風に描かれたボックスアートも、収集欲を持たせる魅力のあるイラストで、当時の日本のプラモデルメーカーが商品化する際にも多大なる影響を与えた。1971年にはイギリスの輸出産業に貢献した企業として、クイーンズ賞を受賞する栄誉を受ける。
1970年中期から、エアフィックスは他の玩具メーカーの買収など行いプラモデルからトイ玩具、フィギュアモデルなど総合的な玩具製造・販売メーカーとしてイギリスでNo.1の企業となった。模型愛好者向けに模型誌・「エアフィックスマガジン」創刊に携わり、プラモデルを玩具的扱いから時間を掛けて楽しむ工作・趣味の一つとして提案し普及に貢献した。
同時期に大型スケールモデルのキット化にも着手し1/24スピットファイアなど、金型の射出成型機の高性能化により、精密さを増したミュージアムアイテムに匹敵する大スケールキットは、エアフィックスの設計・製品化技術が円熟期の商品。この時期、世界的にもアメリカのレベル社、モノグラム社や、イタリアのイタレリ社などの大手模型メーカーに並ぶホビー業界のリーディングカンパニーとなった。日本のタミヤ社長・田宮俊作は、模型販売の収益を自社設備の更新・最新機器導入に投資し、更なる精密な模型作りを実施し近い将来に追いつき追い越す指標としたことを自著で述べている。
[編集] 衰退期から破綻
1980年代に入り、子供達の趣味の多様化によるテレビゲームなどの新しい分野の玩具市場の急成長で、従来のトイ玩具部門の経営悪化となり、堅調な販売が続いていたプラモデル部門での収益を上げてはいたが、会社の規模が拡大していた玩具部門の多額の赤字が経営を圧迫し1981年1月に破産した。
多くのプラモデル金型と「エアフィックス」の商標はMPC社に買収され、模型の金型はフランスに渡った。その後、再び経営危機に陥ったMPC社から1986年にイギリスの模型用塗料メーカー、ハンブロール社に再度買収された後、同社の傘下企業として新たな活動を始める。会社の規模は以前に比べて縮小したが、過去の莫大な金型の資産が残っているエアフィックス社は、現代風にアレンジしたボックスアート箱で多くの商品の再生産、新規金型での開発も再開した。
子供達が作るプラモデル玩具から、大人の趣味として購買層は移り変わり、少年期に親しんだプラモデルを引き続き大人が楽しむものとして、より工作や塗装技術を工夫したモデラー層が購入を続けて、欧米や日本のホビー市場で一定の規模で販売シェアを維持し、引き続きプラモデルは売れ続けている。
[編集] ハンブロール社の終焉
2006年8月31日、ハンブロール社が経営悪化のため破綻し、全従業員41人が解雇されたことがマスメディアに発表された。解雇された従業員の中より31人で、親会社のハンブロール社残務処理・管理を始めたことも続けて発表となる。9月2日には、イギリスの鉄道模型メーカーのホーンビー社(Hornby)[1]がエアフィックス社の買収に関心がある件でロイター通信にコメントが発表された。イギリスに過去存在した老舗メーカーフロッグ社のように消滅か、他社へ買収され「エアフィックス」ブランドは再び再興されるのか、欧米・日本のモデラーが注視している。
[編集] ホーンビー社による買収
2006年11月10日、ホーンビー社は、エアフィックスおよびハンブロールの資産を260万ポンドで取得する契約を交わしたことを発表、今後は両ブランドの製品が同社を通じて製造・販売されることが予測されるが、12月12日現在、具体的なプランは発表されておらず、エアフィックスのウェブサイトも事実上放置されている。
[編集] 主力商品
[編集] スケールモデル
- 1/24,1/48,1/72,1/144,1/300飛行機シリーズ
- エアフィックスを象徴する航空機スケールモデル。1960年代から70年代に数多くのアイテムが商品化され、世界中に輸出された商品。現在のレベルで見ると甘いモールド、パーツの合いの悪さなど見劣りする部分があるが、それを凌駕するスタイル・ディフォルメの再現性の良さなどで、手を加えて改造して楽しむ上級者ユーザーには人気がある。魅力あるボックスアートが使われたエアフィックス初期の製品は、イギリスでのコレクターズアイテムとしての人気も高く、世界各地に多くの収集家が存在する。
- 1/76ミリタリーAFVシリーズ(現在は1/72スケール表記で発売されている)
- イギリス国内のミュージアムに現存する実物を参考とした、第二次世界大戦に活躍していた戦車・装甲車や、フィギュア・ジオラマセットなど多彩なシリーズをコレクションに最適な1/76シリーズでモデル化した。日本の住宅事情にも合ったミニサイズの模型として日本でも人気となり、ミリタリーモデルがブームとなった1970年代には、日東科学、フジミ模型、ハセガワなどの日本メーカーから追随してミニスケールAFVが発売された。
- 1/12,1/24,1/25,1/32,1/43カーモデルシリーズ
- 1/400-600-1200 艦船模型シリーズ
[編集] キャラクターモデル
- イギリス映画007・初期のシリーズに登場したジャイロヘリコプターや、ジェリー・アンダーソン作品のスペース1999に登場したメカ・アイテムが商品化された。
[編集] 日本企業との提携
- 永大産業 1969年に提携して航空機モデルなどを輸入し、日本版パッケージで販売。
- トミー 1976年~1980年に提携。日本版プリスターパッケージ版やボックス版を販売。
- ツクダホビー 1988年にAFV関連モデルを輸入し、日本版パッケージで販売。
- GSIクレオス 2006年現在、輸入パッケージのまま販売。
[編集] 関連項目
- GSIクレオス 日本でのエアフィックス輸入代理店。
[編集] 参考文献
- 日本プラモデル興亡史 -わたしの模型人生- 井田博 著、文春ネスコ発行 ISBN 4890361871
- 田宮俊作『田宮模型の仕事』文庫本 ISBN 4167257033
[編集] 外部リンク
出典・関連外部リンク