エル・アラメインの戦い
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エル・アラメインの戦いとは第二次世界大戦時にエジプト国境に迫った枢軸軍と連合軍の戦いである。第一次会戦は1942年7月1日から31日。第二次会戦は同年10月23日から11月3日に行われた。
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[編集] 戦いの背景
ガザラの戦いでトブルク前面の陣地線(ガザラライン)を突破したドイツ軍は、1942年6月18日にはトブルク要塞を包囲した。しかし、ガザラでドイツ軍装甲師団はかなり消耗しており、次に控えるエジプト侵攻を考えると、戦車部隊での突破は難しかった。そこで航空戦力の支援の元、歩兵と砲兵による攻撃を主体とした。十分な安全が確保された後、戦車隊を突入させた。英軍に反撃の余力は無く、20日朝に始まった戦闘は21日朝には終結した。
これが英軍に与えた打撃は大きく、英軍はエジプト領内奥部のエル・アラメインに最終決戦陣地を敷いた。エル・アラメインを突破されエジプトまでもが征服されると、中東の産油地帯はドイツ軍に蹂躙され、同時期にソ連南部コーカサス地方を攻撃していたドイツ軍A軍集団に挟撃され、ソ連の油田まで占領されてしまう恐れがあった。
[編集] 前哨戦、アラム・ハルファの戦い
アメリカからの武器貸与法(en)の戦車を大量に陸揚げするなど、物量に勝る英軍は植民地徴収兵(オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカ・インドなど)に、エル・アラメイン前面から南へ向けて堅固なボックス陣地(Cf.ガザラの戦い)をしかせた。 それに対し、ドイツアフリカ軍団ほかドイツ・イタリア枢軸軍の司令官エルヴィン・ロンメルは、英軍陣地ラインはイタリア軍と歩兵に任せ主力の第15、21装甲師団をはるか南から長躯迂回させ地中海側から英軍を包囲しようと8月31日進撃を開始する。
しかし、英第7機甲師団の前衛の突破に手間取る間に、北から英第8機甲師団の一部が、東からは第7機甲師団の主力が圧迫してきた。そこでロンメルは当初の計画をあきらめ、第21装甲師団が防御しつつ第15装甲師団には、さらに迂回してアラム・ハルファ高地に陣取る英軍本陣を突こうとした。しかし補給不足の中、必死に進軍する第15装甲師団の前に現れたのは敵本陣ではなかった。英第22戦車旅団が立ちふさがり、ドイツ装甲師団は敗走した。
しかし、この戦いで英軍は枢軸軍を多少押し戻しただけで、決定的な勝利とは言えなかった。
[編集] 第二次エル・アラメイン会戦
英軍はM4中戦車300両を陸揚げするなど、兵員数・戦車数で枢軸軍の二倍以上の数を集めたが、勝利を確実にするため大規模なカモフラージュ作戦を行った。南方から攻めるように見せかけて実際には北側から攻めることを秘匿するためと、攻撃開始時期が差し迫っていないと思わせるために、偽補給品集積所をはるか南方後方に設置。戦車・大砲は張りぼてを置く一方、本物はトラックに偽装。偽水道パイプラインを南方に延伸した。
10月23日、騙されたドイツ軍はロンメルが持病の治療のために帰国したままで奇襲を受け、代理指揮官のシュツンメ将軍が戦死する。ロンメルは急いで北アフリカに戻ったが、あらかじめ敷いてあった地雷原や構築した陣地も英軍指揮官バーナード・モントゴメリーの巧みな戦術で突破され、11月4日にロンメルは総退却命令を出し連戦連勝を誇ったドイツアフリカ軍団にとって初めての大敗北となった。
以後枢軸軍は次々と防衛線を突破され、アルジェリア、モロッコへの連合軍の上陸作戦(トーチ作戦)の成功により翌年にはチュニジアに追い詰められ、北アフリカから姿を消す。大勝利の知らせを聞いたイギリス首相チャーチルは、「これは終わりではない、終わりの始まりですらない、が、おそらく、始まりの終わりであろう。」と語った。後に「エル・アラメインの前に勝利無く、エル・アラメインの後に敗北無し」と言われる、歴史の転換点となった。
[編集] この戦いを舞台とした作品
- 『撃墜王アフリカの星』(1957年、西ドイツ映画):メッサーシュミットBf109のパイロットとして、北アフリカで英軍機150機以上を撃墜した、実在の撃墜王ハンス・ヨアヒム・マルセイユ空軍大尉の生涯を描いた映画。実在のマルセイユ大尉は、1942年9月事故により22歳の若さで亡くなっている。
- 『トブルク戦線』(1966年、アメリカ映画)
- 『砂漠の鬼将軍』(1951年、アメリカ映画。原題は"The Desert Fox"でエルヴィン・ロンメルの北アフリカでのあだ名「砂漠の狐」そのままである。捕虜となりロンメルと会ったことがあるデズモント・ヤング准将の著作をベースとしている):原題通りロンメルの半生を描いた作品で、終戦から10年も経っていない元敵国の映画にしては中立的な立場に立っている。ヒトラー暗殺に加わるなど、映画らしく事実と異なる誇張も多いが、娯楽作品としては一流である。
- 『炎の戦線エル・アラメイン』(2003年、イタリア映画)
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