オーギュスタ・オルメス
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オ(ー)ギュスタ・オルメス(Augusta Mary Anne Holmès, 1847年12月18日 - 1903年1月28日)は19世紀フランスの女性作曲家の先駆者。母親はアイルランド人。熱烈なワグネリアンだったことや、女性が職業芸術家になることがはしたないとされた当時の風潮から、当初は「ヘルマン・ゼンタ」という偽名で作品を発表した。1871年に正式にフランスに帰化し、姓の綴りもホームズ(Holmes)からオルメス(Holmès)に改めた。主に舞台音楽や声楽曲の作曲家であり、自作の歌曲やオラトリオ、合唱交響曲やオペラに、ワーグナーよろしく手ずから台本を執筆した。現在では忘れられた作曲家の一人であるが、ドビュッシーは音楽評論においてオルメスの訃報をとりあげ、その作品を「健康な音楽である」と評している。またエセル・スマイスは、最晩年のオルメスに表敬訪問を行なっている。
早期から楽才を示したにもかかわらず、当時はパリ音楽院に女性の入学が許可されていなかったことと、音楽学習への母親の強い反対があったことから、母親の没後に、個人教授についてピアノやオルガン、音楽理論を学んだ。フランツ・リストに作品を見せて激励される。1876年からセザール・フランクに作曲を師事する。
カミーユ・サン=サーンスは、音楽雑誌『和声と旋律 Harmonie et Mélodie』において、次のように論じている。「女は子供と同じで、障害物をものともせず、女の意志力はあらゆる障壁をぶち破る。マドモワゼル・オルメスは女性である。それも過激な。」
オルメスの有名な作曲家たちとの関係については、しばしば興味本位に取り上げられることが多い。例えば、サン=サーンスはオルメスの妖艶な女性美に魅入られ、たびたび結婚を申し入れたという逸話がのこっている。彼の交響詩『オンファールの糸車』は女性の抗いがたい魅力を表現している言われるが、オルメスがそのモデルになったのかもしれない。また、フランクについても、オルメスと性的な関係にあったと噂されているが、今のところ確たる証拠は発見されていない。サン=サーンスが初演したフランクの《ピアノ五重奏曲 ヘ短調》は、フランクのオルメスに対する激情が隠されていると言われ、またフランクの遺作となったオルガンのための《3つのコラール》のうち第2番は、オルメスに献呈されている。噂の由来はこのようなところにあるのだろう。
オルメスは結婚しなかったが、妻子持ちの詩人カテュール・マンデスと同棲し、5人の子供をもうけた。オルメスとマンデスはともに熱烈なワグネリアンであり、オルメスがマンデスともうけた娘たちは、同じくワグネリアンのルノアールのモデルをつとめた。オルメスは歌劇《黒い山 La Montagne Noire 》(モンテネグロを舞台とした革命オペラ)の大失敗によって負債を抱えるとともに、これをきっかけにマンデスに捨てられ、最晩年を借金返済と養育のために過ごし、健康を失った。
パリ万博の記念音楽を委嘱され、1889年から、フランス革命100周年記念のカンタータ《勝利のオード Ode Triomphale 》に着手。これは演奏者と合唱を含めて、1200人を要する文字通りの大作であった。2つの交響詩《アイルランド Irlande 》や《ポーランド Pologne 》は、政治的な意図のある標題音楽であるが、フランス新古典主義音楽が隆盛を極める時期まで、フランスのオーケストラにたびたび取り上げられた。最後の交響詩《アンドロメダ》は、20世紀初頭に勃興しつつあった、フェミニズム運動を称揚する意図が含まれている。
オルメスの自筆譜はパリ音楽院に遺贈された。
[編集] 参照項目
- 以下の女性作曲家の生涯や作品についても参照のこと。
- ジャケ・ド・ラ・ゲール
- ファニー・メンデルスゾーン
- クララ・シューマン
- セシル・シャミナード
- エセル・スマイス
- エイミー・ビーチ
- アルマ・マーラー
- ナディア・ブーランジェ
- リリ・ブーランジェ
- ジェルメーヌ・タイユフェール
[編集] 評伝
- 『女性作曲家列伝』(平凡社、1999年03月、ISBN 4-582-84189-9)