キックボード
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キックボードとは、踏み板に乗り片足で地面を蹴ることによって駆動する乗物または玩具のことである。スクートやローラーボードないしスケーターなどとも呼ばれる。
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[編集] 概要
この乗り物は、一般的なものはハンドルと前後2つまたは3つの車輪をもち、後輪につけられた金属板製の踏みブレーキから構成されており、踏み板が地面に近い位置にある。ブレーキは単純な構造で、踏む事により、直接車輪表面との摩擦により制動するが、制動力は弱いために急停車するには両足を地面につけた方が早く停まれる。車輪は台車やインラインローラースケートなどに使われているような硬質なゴムまたはプラスチック巻き金属車輪で、衝撃吸収性はほとんど考慮されていないが、それを含めて乗りこなす事を楽しむ乗り物である。
乗り方としては、立ったまま片足を踏み板にのせてハンドルを両手でつかみ、あいた片方の足で地面を蹴って進み、速度が乗ったら両足を踏み板に乗せて滑走を楽しむ。曲がる際は重心移動や足をついての方向転換によって行われる。ブレーキを踏んで減速、適度に速度が落ちたところで足を地面について停車する。
フレームは主に軽量なアルミニウムで構成され、ハンドル部分は踏み板側に折り畳む事ができた。もとはK2の登録商標であるが、この類の乗り物の名称として現在では一般的に普及している。
前後に直列して並んだ車輪のため、バランスを取って乗る必要こそあるものの、誰でも自転車以上に簡単に乗れて、地面を勢い良く蹴ることでスピードもそれなりに出ることから、遊びやアウトドアの一つとしての用途のほか、自転車などよりも小回りが利き場所を取らないことや、乗り降りが瞬時にできることから、手軽な移動手段としても好まれた。
1990年代末より2000年頃に掛けて、小学生高学年~中学生を中心に爆発的に流行したため、しばしばこれで移動する者や公共施設や店舗敷地内で乗りまわして楽しむ者も出た。また電車を利用して通勤するサラリーマンにも、駅から会社・または駅から自宅の移動に折り畳んで持ち歩ける事から好んで利用する者もいた。台車代わりに倉庫などでの荷物運搬用に用いられることもあるという。
これ以前にはローラースケートが流行した時期があったが、ローラースケートが履いたり脱いだりが煩わしく、またそれなりの練習を必要とすることや、専用の施設外では利用が禁止された事もあって、ローラースケートのうちのインラインスケート(ローラーブレードとも)が注目を集めた時期の後に、この簡単に利用できて爽快感のある乗物が人気を博した。
また流行後期には電動機やエンジンを搭載した製品も登場、日本国外からも輸入されている。ただ、この動力付きキックボードは日本国内での利用に制限がある(後述)。
[編集] 社会問題
これらが爆発的に流行した当時、一般の道路や公共施設内で乗りまわす者も相当数いたが、スピードが出易い上に独特のブレーキ構造から減速が遅れて衝突する事故も多くあったため、人通りが多く事故が懸念される場所や、施設の破損や汚損が問題視された場所で使用しないよう注意を呼びかける掲示やアナウンスが行われた。
また公道で乗って歩行者や自動車と衝突や接触するといった事故が後を絶たなかったほか、車輪径が小さい事から側溝の上の金属網部分で車輪を取られてバランスを崩し転倒・死亡した事故も報じられ、教師やPTAなどが危険性を訴えて、積極的に公園以外での使用を止めるように訴えた。特に2000年7月の小学生転倒死亡事故報道の折には、買い与えた保護者自身が子供にキックボード利用を禁じたとする話も聞かれる。
- なおこの事故では、スリルを求めた小学生が下りの坂道で利用、スピードが乗ったところで側溝上の金網に車輪を取られて転倒したとされている。
しかしこの乗り物は車輪の性質やクッション性の問題により段差に弱く、アスファルトやコンクリートで舗装された道路などでないと安定して走行できないこともあって、土の露出した凹凸のある公園内では走らせ難かったり、ほとんどスピードが出なかったりという問題もある。このため交通公園のような自転車やローラースケートの練習に適した施設が近所に無い地域では、乗れる場所もかなり限定されてしまう。こうしてブームが去るのと相まって、2000年代中ごろまでには利用者はほとんどいなくなってしまった。
[編集] 動力付きキックボード
日本では、ガソリンエンジンや電動機などの動力を搭載しているものは、原付自転車と同じ扱いとなってしまい、道路交通法に基づく登録をして、ナンバープレートの交付などを受けない限り日本の公道上で走行することはできないし、原付免許の携帯も必要である。またそのほかにも公道乗用に際して乗車用のヘルメット装着が必要である。
欧米や韓国などでは自転車と同じ扱い(免許・保安部品不要)であるため、これらの地域で発売されているものには原付自転車と同等の保安部品が取りつけがたい製品も多い。しかしそのような製品は2002年に前後して相当数が国内に輸入され、過去にはこれを知らずに乗っていた者が逮捕されたり、あるいは販売業者が検挙されたりもしている(→Response2002年11月8日)。
この問題では、公道ではない専用の施設内や私有地内で乗る場合は免許も保安部品も必要ないので、そのような保安部品が付けがたくナンバープレート交付が望めない製品は、私有地内など公道以外でのみ利用する方が良いだろう。ただ、一部では電動キックボードが自転車に次ぐ環境に優しい乗り物であると位置付けて、地域おこしの一環で構造改革特別区域による公道走行の規制緩和を求める議論も見られる(徳島県上勝町など)。
なお電動キックボードの場合は、その多くが自転車と同じようなリムブレーキやドラムブレーキを採用しているほか、街中での移動に即して、地面の凹凸に対応できるよう中空で直径の大きい車輪が使われており、前出のキックボードの構造による事故を起こし易い問題は解消されているものがほとんどである。
- 電動スクーターの項目も参照されたし。
[編集] 関連項目
- スケートボード
- ローラースルーGOGO
- キックボードに先だって、1970年代中頃に流行った3輪立ち乗り乗用玩具。後ろのベダルを蹴るとチェーン駆動で前に進んだが、地面を足で蹴って進んでも良かった。
- 電動スクーター
- 2006年現在、モーター付き電動キックボードの交通法規区分は電動スクーターである。