ゲーム批評
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ゲーム批評(ゲームひひょう)は、マイクロマガジン社が1994年から2006年まで発行していた主に家庭用テレビゲームの批評を中心としたゲーム雑誌。
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[編集] 理念
「ゲームを発売後に完全に遊んでから評価する」というコンセプトの元に作られており、コンピュータゲーム関連企業からの広告を受けつけず、雑誌売上げによる収益のみによって雑誌の維持を行っており、評価するゲームも、実際に完成し発売された製品を購入してプレイしてから評価を行うことで、公平中立かつ公正な批評・評価が行えると主張している。
このシステムではこれまで雑誌業界では当たり前となっていた広告収益依存経営という物を排除し、またゲーム会社から貸出される評価版を使わないことで、業界との癒着を断ち切った形で公正な評価を行えるという。
また、ゲーム業界の内部事情・裏事情に関する記事を掲載しており、さながらゲーム業界版「噂の眞相」という面も持ち合わせていた。こうした裏事情関係の記事はゲームラボ(三才ブックス)と並ぶ、もしくはそれ以上の数を誇っている。
[編集] 矛盾と偏り
一方でライター個人の意見が前面に押し出された結果、偏った記事になっている可能性も見逃せない。真に公正な評価とは何か、メーカーの広告を受け入れることが記事にどの程度影響を与えているのかは、検証が必要であろう。
なかには、メーカー糾弾の特集記事を連載することもあった。 ティアリングサーガの問題に際してエンターブレインを強く批難しており、ソフト批評のコーナーにおいても2号連続での比較検証が掲載されている。 ほか、鹿砦社代表・松岡利康を招いてのアルゼ糾弾企画もなされたことがある。
ゲームソフト批評においても、一部のメーカーに対して評価が辛くなる傾向もあり、特にスクウェアのものはほとんど称賛されたことがない。しばしば、「ゲーム批評はスクウェアが嫌い」というイメージを持たれていた。 逆に、任天堂などの一部のメーカーに対して甘いという意見もある。
また、実際に「完全に遊んでから評価する」というのはコンピューターゲームに限定されているようで、かつてテーブルトークRPG(TRPG)の最近の傾向がコラムで取り上げられたときは、実際に遊ばれた形跡はなく、ライターの持つ昔のゲームに関する知識とメーカーへの取材にてらして批判がされるということもあった。(ファイナルファンタジー的なTRPGを目指しているとのメーカーの弁が批判された。)
[編集] コンテンツ
[編集] 記事
毎号ごとのテーマに沿って記事が作成され、それが掲載されている。テーマは1号ごとに2~3個。
広告を廃してメーカー側の意向を受けないスタンスから、他誌とは一線離れた視点での論調が多かった。特に各種ハード戦争期においては、Xboxの販売戦略に疑問符を投げかけたり、PSPの不具合問題を大きく取り上げるなど、他誌が書けない際どい記事を掲載し、それを好む層の獲得に成功している。
近年における「ゲーム=悪」という風潮に対し、特に少年事件が起こるたびに、それに強く異を唱える特集も多かった。ゲーム脳という定義付けや、神奈川県の制定した残酷ゲームの有害図書指定などに否定的な見解を示している。
しかし、ライターの判官贔屓的な意向によって書かれている記事もあり、特定の企業・団体の批判に終始する内容も少なくなかった。 そのためか、暗に「ゲーム誹謗」という蔑称で呼ばれていたといわれる。
また、隔月刊という性質から速報性に欠ける弱点があった。
[編集] ゲームソフト批評
この雑誌の核となる部分。レビュアーは編集部員やライターが行っていた。
メーカーからの試遊版ロムを拒否し、発売されてからプレイするため、速報性は他誌に大きく劣る。その代わりとして、メーカー側が語ってほしい用意されたキーワードを廃して品評することに成功している。
そのため、執筆者の見解がそのまま現れる。手放しの称賛もあれば、不満を顕わにすることもある。時には心無い批判も飛び出している。
ライターのなかには、似た業態の他ゲーム誌(CONTINUE、ゲームラボ等)でもレビューを書いている者が多く、雑誌の購入層も被ることが多い。
[編集] コラム
名越稔洋らの業界著名人から、プロレスラー男色ディーノなどの異色コラムニストまで取り揃えられていた。コラムの寿命はかなりのばらつきがあり、長いものは最初から最後まで(休載含む)、短いものは5回未満で打ち切られている。
基本的には文章中心だが、金子一馬のものなど、漫画のようなコマ割り形式コラムもいくつか存在している。
これらの中でも、がっぷ獅子丸が怪作を紹介する「悪趣味ゲーム紀行」は特に人気が高く、クソゲー・バカゲーブームの一助にもなった。
[編集] 漫画連載
代表的な連載作として、「ゲーれき2001」(はやのん)、読者コーナーにおいての漫画連載(飛龍乱)などがある。初期に連載されていた「ひまわり地獄」(林家志弦)は連載終了後に単行本化している。
それ以外には、前述のように漫画的なコラム・レビューは存在しているものの、純粋な漫画連載は少なかった。 ゲーム雑誌としては稀なケースといえる。
[編集] 休刊(事実上の廃刊)
後にGAME JAPANに掲載された元編集長のインタビューによれば、マイナーゲーム雑誌でありながらも、広告を取らなくても採算は取れていたようである。ゲーム会社の広告を受け入れないスタンスから、裏表紙は無地の中に「ゲームの広告を入れません」という宣言が書かれていただけのシンプルなものであった。
中期頃より「ゲーム業界以外の広告を募集しています」となり、マジック・ザ・ギャザリングなどの広告が載ることが何度かあった。その後、「勇気あるゲームメーカーは存在しますか?」となり、ゲームメーカーからの広告を取ろうとしたが一度も載らず、晩期は自社発売のボードゲームの広告を掲載し続けていた。
通巻67号にしてスタンスを撤回し、ゲーム会社広告を掲載、メーカーに阿った記事も多数掲載されるようになった。この号を境にメーカー側の意向を迎合する色合いが急激に増しており、後に刊行する新雑誌への移行を示していた。
2006年4月3日、69号を最後に休刊(事実上の廃刊)。11年の歴史に終止符が打たれた。
[編集] その後
ゲーム批評の後継雑誌として、67号以降の形態を発展させた新雑誌G-naviを発刊するが、2006年12月発売号(通巻3号)を最後に再び休刊している。これにより、現在マイクロマガジン社のゲーム関連雑誌はGAME SIDEのみとなっている。
[編集] 関連項目
- パソコン批評 - ゲーム批評と同様のコンセプトで発行されたパソコン雑誌