ジベレリン
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ジベレリン(ギベレリン、英語 gibberellin、ドイツ語 Gibberelline、略称 GA)はある種の植物ホルモンの総称である。生長軸の方向への細胞伸長を促進させたり、種子の発芽促進や休眠打破の促進、老化の抑制に関わっている。また、オーキシンの作用を高めることも分かっている。
これまでに136種類が確認されており(現在も発見が続いている)、ジベレリン A1 (GA1) からジベレリン A136 (GA136) と命名されている。農薬として用いる場合は特にジベレリン A3 (C19H22O6) をジベレリンと称することがあり、「ジベレリン」もしくは「ジベラ」として販売されている。生産量、消費量ともジベレリンのうち、A3 が最大である。
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[編集] 発見の歴史
- 1898年 馬鹿苗病にはカビの一種が寄生していることがわかった。
- 1926年 台湾総督府農事試験場の黒澤英一により、イネの馬鹿苗病の原因毒素(ジベレリン)が発見された。
- 1931年 馬鹿苗病の病原菌は Gibberella fujikuroi と命名された。
- 1935年 藪田貞治郎が Gibberella fujikuroi 培養液から単離し、ジベレリンと命名した。
- 1938年 藪田・住木諭介によりジベレリンが結晶化された。
- 1951年 マメ科植物の未熟種子エーテル抽出物にジベレリン活性を検出した。
- 1959年 ジベレリンの構造が決定した。
[編集] 生理作用
- 伸長成長の促進 - 微小管の配列を変化させることによる。
- 休眠打破・発芽促進 - 農作物に広く利用されている。
- 花芽形成・開花促進 - 花弁類の開花促進に利用されている。
- 単為結実促進 - 胚発生がないまま子房の肥大を誘導する。
- アミラーゼの誘導 - 種子発芽時において胚乳のデンプンを分解する。
[編集] ジベレリン処理
ジベレリンは、農薬として散布等をし、種無しブドウの生産、果実の落下防止、成長促進などに用いられることが多い。こうした操作をジベレリン処理という。「ジベ処理」と略することも多い。
[編集] ブドウに対する処理
種無しブドウを生産するために行う。具体的には、粉末状のジベレリン A3 を必要量水に溶かしジベレリン水溶液を作る。それをカップ状の容器に入れ、ブドウの房をカップの中の水溶液につける。この処理はブドウの房ひとつひとつに対して手作業で行わなければならず、かなり手間のかかる作業である。
[編集] 樹木に対する処理
スギやヒノキに水溶液を散布、またはペースト状にしたジベレリンを樹幹や枝に埋め込み、着花を促進させる。採種園で行われることがある。