チャーリーとチョコレート工場
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チャーリーとチョコレート工場 | |
監督 | ティム・バートン |
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製作総指揮 | パトリック・マコーミック フェリシティー・ダール マイケル・シーゲル グレアム・パーク ブルース・バーマン |
製作 | ブラッド・グレイ リチャード・D・ザナック |
脚本 | ジョン・オーガスト |
出演者 | フレディ・ハイモア ジョニー・デップ |
音楽 | ダニー・エルフマン |
撮影 | フィリップ・ルースロ A.F.C/A.S.C |
編集 | クリス・レベンゾン A.C.E. |
公開 | 2005年7月15日 アメリカ |
上映時間 | 115分 |
製作国 | アメリカ |
言語 | 英語 |
『チャーリーとチョコレート工場 』(Charlie and the Chocolate Factory) は2005年製作のアメリカ映画である。ティム・バートン監督。ファンタジー・コメディ。
ロアルド・ダールの児童文学小説『チョコレート工場の秘密』(原題は映画と同じ)が原作。同作品の映画化は1971年製作の『夢のチョコレート工場』(メル・スチュワート監督)に次いで2度目。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] あらすじ
ウィリー・ウォンカ製のお菓子は世界中で大人気。しかしその工場の中は一切謎に包まれている。ある日ウォンカは「生産するチョコレートの中に5枚だけ金色のチケットを同封し、それを引き当てた子供は家族を一人同伴で工場を見学する権利が与えられ、さらにそのうちの一人にはすばらしい副賞がつく」という告知を出した。世界中がチケット争奪で大騒ぎとなる中、運良く引き当てたのは、食いしん坊の肥満少年オーガスタス、お金持ちでわがままな少女ベルーカ、いつもガムを噛んで勝つことにこだわる少女バイオレット、テレビ好きで反抗的な少年マイク、そして家は貧しいが家族思いの心優しい少年チャーリー。
彼らはウォンカの招待のもと、工場の中で夢のような不思議な光景を体験していく。ところがその途中で、まるであらかじめ仕組んであったかのようなさまざまなハプニングが起きて、子供たちは一人、また一人と消えていく……果たして、最後まで工場を見て回れる子供はいるのか。ウォンカの「副賞」とは、そして彼の過去とは?
[編集] 登場人物
- ウィリー・ウォンカ
- 工場長。シルクハットに杖・燕尾服・手袋を身に着け、時代遅れのフレーズを連発するエキセントリックな人物。歯医者の家に生まれるが、父親に反発し家を出る。そのあとお菓子工場を建設し「天才ショコラティエ」「チョコの魔術師」とも呼ばれるが、スパイによって極秘のレシピの情報を洩らされたことから、表面上は工場を閉鎖。実際はウンパ・ルンパを従業員として雇い、15年間工場に籠りながら経営を続けていた。しかし、ある日散髪していた時に見つけた白髪から自分の死後の工場の行方を心配し、工場の後継者を探そうと、5人の子供を工場に誘う。最終的にチャーリー・バケットが残ったため、彼に工場を継ぐように言うが、家族を捨てることはできないと断られる。そのあと偶然(?)彼と再会し、一緒に父親の元を尋ねてくれるよう頼む。最終的には父親と和解し、チャーリー一家と共に工場を経営することとなる。ちなみに「キモイから」といってガムを嫌っているが、なぜか工場で生産している(即興で歌を作ったときもチューインガムを嫌った歌を歌う)。屁理屈をこねるマイクを嫌っていたようである。原作に比べ、皮肉屋に描かれている。「両親」という言葉がなぜか言えない。
- 彼のショコラティエとしての能力を印象づけるエピソードとして、ポンデチェリー王子というインドの富豪からの依頼で、「レンガからそれをとめるセメントはおろか壁の絵や絨毯にいたるまで全てチョコレートの宮殿」を作ったことがあるが、当然数日後に溶けてしまったという話が劇中にある。
- チャーリー・バケット
- 主人公。祖父母が寝たきりながらも4人とも健在(年齢を足すと381歳)で、さらに父親が薄給のちに失業したことで限りなく貧しい家の育ちだが、家族思いの優しい少年。ウィリー・ウォンカにあこがれ、父親の工場のパーツでチョコレート工場の模型を作っていた。毎年誕生日にだけチョコレートをもらえるが、そのたった一枚を家族みんなに分けてあげる一幕も見られる。拾ったお金で買った3本目のウォンカバー(1本目=誕生日プレゼントと、ジョーおじいちゃんのへそくりで買った2本目は外れ)に、たまたまゴールデンチケットが入っていたため、工場に招待される。工場内でさまざまなハプニングを乗り越え最後に残った子供であるため、ウォンカから工場を継ぐよう言われる。しかし、その条件が「家族を捨てること」だったため一度は拒否。その後街で靴磨きをしていたところウォンカと再会、最終的にはウォンカがその父親と和解する手助けをし、その後工場を継いだ。その際チョコレートの滝の部屋に彼の家がそのまま移設され、彼の家族も同居できるようになった。
- バケット氏
- チャーリーの父親。バケット家唯一の働き手で歯磨き粉工場で働いていたが、工場の近代化(合理化)により解雇される(原作ではこのあと雪かきの仕事で食いつなぐことになっているが、映画では割愛)。のちに工場に復帰し、導入された新型機械の修理工となったために収入が格段に増える。最後はウォンカを家族の一員として温かく迎えた。
- バケット夫人
- チャーリーの母親。普段は4人の老人の介護と家事とで手一杯なので、働きに出ることもできない。原作続編に拠れば腰痛や関節痛に悩まされているようである。なお、食事中に仕事の話は厳禁とのルールを定めた。
- ジョーおじいちゃん
- チャーリー・バケットの同行者であり、(原作に拠ればチャーリーの父方の)祖父。昔ウォンカの工場で働いていた過去を持つ。チャーリーの祖父母のなかで最高齢の96歳(原作準拠)。ほとんどベッドで寝たきりだったが、チャーリーがゴールデンチケットを当てたと知った途端に元気になる。
- ジョゼフィーンおばあちゃん
- チャーリーの父方の祖母。原作では90歳を越えていることになっている(続編「ガラスのエレベーター宇宙にとびだす」では78歳ということになっており、若返りの薬を飲みすぎたため)。
- ジョージおじいちゃん
- チャーリーの母方の祖父(原作準拠。映画ではバケット氏に「父さん」と呼ばれているので父方の可能性も)。頑固者で現実主義者だが、家計を考えてゴールデンチケットを換金しようとするチャーリーを諌める一面もある。ジョゼフィーン同様、原作と続編とで年齢設定が異なっている。
- ジョージーナおばあちゃん
- チャーリーの母方の祖母(原作準拠)。映画ではやや認知症が始まっているように描かれている。ジョゼフィーンやジョージと同じく年齢設定が異なる。
- ウンパ・ルンパ
- ルンパランドという国に住む小柄な人々(原作初版ではピグミーの一種と明言されていたが、後に人種問題を考慮して修正)。ジャングルに住む動物から身を守るため、木の上で生活している。普段はマズい緑色のイモムシを食べている。彼らの間ではカカオ豆は貴重品であり、年に3~4粒取れればいい方であるようである。そんな彼らにウィリー・ウォンカは給料をカカオ豆で支払う交渉をし従業員とする(原作と違いきちんと労働契約を結んでいる)。現在は囚人服のような白黒の縞模様の服の上から、セクションによって色が異なるレザーのつなぎを着ている。歌と踊りを好み、即興(?)で歌を作るが、皆には「練習されてあったみたい」と言われる。旧作の西洋のわらべ歌風の歌と違い、今作の彼らの歌は現代的なミュージックで歌われ、作品の見せ場になっている。彼らの間では、腕を交差させて胸につけることは「同意」を示すジェスチャーのようであるが、これはティム・バートンが愛好するカルト映画『プラン9・フロム・アウタースペース』からのオマージュである(登場する宇宙人が同様のジェスチャーをする)。ひとりだけウォンカの命令に従いながらもこのジェスチャーをしなかった者がいる。なお、映画ではすべてのウンパ・ルンパをひとりの役者が演じており、男女を問わず皆同じ顔をしている。
- オーガスタス・グループ
- ドイツの肉屋の息子。チャーリーの祖父に「最初の当選者はきっとブタみたいな奴」と予想されたが、まさにその通りの肥満児。チョコレートが大好物で毎日食べており、チケットを手に入れる(つまり、チャーリーと違って毎日チョコレートを買ってもらえる子供である)。その際、チョコと一緒にチケットを一部噛み切ってしまった。同じく太めの母親と同行。自分の食べるチョコを物欲しそうに見るチャーリーに「自分で買えよ」と意地悪を言う。欲張ってチョコレートの滝に落ち、泳げないのでチョコのパイプに吸い上げられてしまう。最後はチョコまみれになって工場から出てくる(原作ではパイプを無理矢理通されたため細長くなってしまうが、映画では太ったまま)。
- 彼を風刺するウンパ・ルンパは、南米調の歌で赤いつなぎを着ている。DVDにCGによるメイキング映像が収録されている。
- バイオレット・ボーレガード
- ステージママの母親の影響で、賞獲りに執念を燃やす少女(原作ではただのガム中毒少女)。登場時、道着を着て空手らしき武術をしていた。ガム噛みの記録更新のため常にガムを噛んでいる。今までのトロフィー獲得数は263個。ガム派でチョコを買ったのはチケットのため。同行者の母親とペアルックが多い。誰とでも腕を組みたがる。かなりの自信家で「絶対に自分が賞を手に入れる」と豪語し、貧乏なチャーリーを「負け犬」呼ばわり。ウォンカの制止を振り切って試作品の「フルコースが味わえてお腹もいっぱいになるガム」を食べ、「世界で初めてガム食を味わった子供だ」との母親の喜びもつかの間、試作品の副作用で体がブルーベリーのように膨らんでしまった。そのあと体の中のジュースを絞り出され、髪の毛まで真っ青のゴム状(?)の体になってしまう。副賞を手に入れられなかった娘に対して母親は冷淡だが、本人は今の体が満更でもないようだ。
- 彼女を風刺するウンパ・ルンパはディスコファンクロック調の歌で、黒いつなぎを着ている。
- この黒いつなぎは、DVDのメニューに使用されている。
- ベルーカ・ソルト
- ナッツ工場の社長令嬢。金持ちの父親に甘やかされて育ったのかかなりのわがままで、何でもかんでもすぐ欲しがる。自分でチョコを買ったわけではなく、父親が大量にウォンカバーを買占め、工場の従業員に探させたことでチケットを得た。チャーリーの祖父に「ブタよりたちが悪い」と言われる。娘に甘い父親と同行。バイオレットと“親友”になろうとするが、実際には互いにライバル意識むき出しで、ガム事件のときにはほくそえんでいた。ナッツ選別用のリスをペットに欲しがり、ウォンカに売り物ではないと言われると自分で手に入れようとするが、リス達に父親と共にダストシュートに投げ込まれ、最後はゴミまみれになって工場から出てくる。それでも最後までわがままは直らなかった。
- 彼女を風刺するウンパ・ルンパは、サイケデリックなスローバラードを歌い黄色いつなぎを着ている。
- マイク・ティービー
- 高校地理教師の息子。自分の知識が絶対に正しいと思いそれを決して曲げない、典型的な秀才・天才気取り(原作では狂信的なテレビっ子)。しかしチョコの売れ行きや株価等の計算のみで、1回でチケットを当てたというのだから、やはり頭脳明晰ではあるようだ。彼はチョコレートが大嫌いであり、買ったチョコレートは口を付けてすらおらず、単にチケットを計算で当てる事だけが目的だったと思われる。彼の話はハイテク世代でついていけないと言う父親と同行。ウォンカの言う事にいちいち口を挟み、チョコレート転送機の人体実験を勝手に行って小人になってしまい、最終的に飴伸ばし機でペラペラの紙のような体になってしまった(原作では太らせチョコで幅を取り戻している)。
- 彼を風刺するウンパ・ルンパは、QueenやBeatlesをモチーフとした歌で、ウォンカが彼のことを嫌っていたからか、歌の歌詞の中傷の程度は4人の中で一番酷い(「元に戻れなかったらいい気味」と言っている)。テレビの中も舞台にするだけに衣装もさまざま。基本は白いつなぎである。
- ドクター・ウィルバー・ウォンカ
[編集] 映画版の特色
[編集] 原作との相違、旧版との相違について
原作からの改変が多かった旧版に比べ、新版の映画は原作をより忠実に再現した上で、映画オリジナルであるウォンカのエピソードが盛り込まれている。ウォンカは幼少時代、歯科医である厳しい性格の父親に半ば虐待されてトラウマになっているため、現在も"parents"(両親)という言葉が口にできず、またフラッシュバックをしばしば起こすアダルトチルドレンとして描かれている。総じて、イデオロギーとしての家族が強調されている。 じわじわと飢えていく様子が描かれる原作に比べると、家計の貧窮が克明に描かれていない。
マイクがバイオハザードなどを思わせる暴力性の強いテレビゲームを遊んでいたり、工場で働くウンパ・ルンパがレザーの衣装やインカムを身につけ、様々なジャンルの音楽で歌い踊ったりと現代的な脚色を施している。
[編集] 他の映画や有名バンドのパロディ、様々なジョーク
特にマイク・ティービーの場面で顕著であるが、2001年宇宙の旅やサタデー・ナイト・フィーバー、鳥、サイコといった、有名映画のパロディや、QueenやBeatlesなどを連想させる、曲調や画面づくりなど、ウンパルンパが歌を歌いはじめるシーンをはじめとして様々場所で、様々な映像作品のエッセンスが取り入れられている。
また、原作にも点在するブラックなジョークが、ティム・バートンの趣味的に引き出した形で劇中にもちりばめられている。
劇中、発送先として、日本の地名の「東京」が出てくる。そのため、日本の電気店の名前などが直接出てくる。また、チョコレート争奪の場面に日本人らしき子供が出てくるが、全員日系人と中国人である。
[編集] イギリス文化の系譜
工場内で5人の子どもが、ひとり、またひとりと消えていくさまは、『マザーグース』の「10人のインディアン」や、それを受けて書かれたアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を思わせる。また、最後に残ったチャーリーは、確かに家族思いのいい子ではあるが、基本的には、でしゃばらずに大人しくしていたのが幸いしたのであって、これはChildren Should Be Seen and Not Heard 「子どもは見られるべきものであって、聞かれるべきものではない」というイギリス・ヴィクトリア朝時代の厳格なしつけの系譜を引いていると言える。
[編集] アロマトリックス
一部の映画館では、芳香を放つ装置「アロマトリックス」を設置し、上映中にチョコレートの香りを放つ演出で、観客もさながらチョコレート工場の中にいるかのような臨場感が体験できた。
[編集] ウォンカバー
劇中に登場したチョコレートのウォンカバーは実際に売られている(無論、ゴールデンチケットは同封されていない)。 この映画の製作に全面協力したNestle社がイギリス版、アメリカ版、オーストラリア版を販売している。 それぞれの国によって包装が違う。
Nestle社は以前から原作者ロアルド・ダール氏よりウォンカバーの商標を独占貸与され、1998年頃からアメリカで「ウォンカバー」を販売している。 映画の製作にあたり、Nestle社は総額500万ポンドのタイアップキャンペーンの実施している。同時に映画のパッケージを模したデザインの「ウォンカ・チョコレートバー」を発売した。
それぞれスティック型と板チョコ型の2種類が作られ、特にオーストラリア版の板チョコ型は190グラムと大きく、映画の中でオーガスタスやチャーリーが手にしたウォンカバーと彷佛とさせる大きさになっている。
[編集] キャスト
- ウィリー・ウォンカ: ジョニー・デップ(日本語版:藤原啓治)
- チャーリー・バケット:フレディ・ハイモア(池田恭祐)
- ジョーおじいちゃん:デイビット・ケリー(清川元夢)
- バケット夫人:ヘレナ・ボナム=カーター(山像かおり)
- バケット氏: ノア・テイラー(小幡真裕)
- ボーレガード夫人:ミッシー・パイル(石塚理恵)
- ソルト氏:ジェームズ・フォックス
- ティービー氏:アダム・ゴドリー
- グループ夫人:フランツィスカ・トローグナー(さとうあい)
- ウンパ・ルンパ:ディープ・ロイ(石塚理恵)
- ドクター・ウォンカ:クリストファー・リー(家弓家正)
- バイオレット・ボーレガード:アナソフィア・ロブ
- ベルーカ・ソルト:ジュリア・ウィンター
- マイク・ティービー:ジョーダン・フライ
- オーガスタス・グループ:フィリップ・ウィーグラッツ
- ジョージナおばあちゃん:リズ・スミス
- ジョゼフィーンおばあちゃん:アイリーン・エッセル
- ジョージおじいちゃん:ディビット・モリス(永井一郎)
[編集] 外部リンク
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