データレコーダ
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データレコーダは、以下の2つの意味で用いられる。
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[編集] 計測分野でのデータレコーダ
計測分野で、各種センサなどで収集したデータをリアルタイムで比較的長時間にわたって記録する装置。データロガー ( Data Logger )と称することもある。
記録メディアとしては主にテープを用いるが、かつてフロッピーディスクを用いた製品もあった。音声波形そのものにバイアスを重畳して記録するアナログオーディオテープレコーダーと異なり、直流成分まで記録する必要があること及び波形再現性が求められることから、記録方式としては周波数変調ないしはPCM(デジタル記録)が用いられる。かつてはオープンリール式のデータレコーダが用いられたが、近年ではカートリッジ方式テープ、たとえばDAT、Hi8(DTRSの応用)、ストリーミングテープ(AITなど)を用いる。記録メディアが交換できない代わりに高速に記録できるハードディスクを利用するもの[1]もある。
デジタル方式のデータレコーダはマルチプレクサによって様々なチャンネル数のデータを並列に取りこむことができる。日本ではソニーとティアックが販売していた(ティアックは現在でも販売している)。
過去にはエルカセットを利用した製品もあった。また、アナログ通信回線のノイズ解析などにはカセットデンスケなども使用した。
[編集] コンパクトカセットを用いる補助記憶装置
コンパクトカセットをメディアとして用いる補助記憶装置には大きく分けて二通りがある。
なお、CMT(Cassette Magnetic Tape:カセット磁気テープ)と呼ばれていた。
[編集] 専用デジタル記録方式のもの
1970年代後半頃の大型コンピュータに採用され、ファームウェアやプログラムの入出力装置として用いられた。音楽用のコンパクトカセットとは違い、カセットの上部に5mm四方程度の切り込みがあった。デジタル信号をベースバンドで記録する方式で、テープドライブは制御コマンドにより記録・再生・早送り・巻き戻し・初期化などを行えた。また、ホストとの接続はCPUバスにバッファを介して直接繋げる方式であった。1980年代に入り、8インチフロッピーディスクドライブが普及し、その役目を終えることとなる。
テープドライブとしてはティアック社のMT-6やMT-2が知られ、後には当時のパーソナルコンピュータの周辺機器として電源とともに筐体におさめた製品(ティアック・PROLINE-100)が発売された。MT-2はパナファコム社のC-15という16ビットCPU(L-16)を用いたパーソナルコンピュータ(1978年発売)の標準外部記録装置であった。
[編集] オーディオカセットレコーダーを用いるもの
1980年代頃のパーソナルコンピュータ(パソコン)にはハードディスクドライブはもとより、フロッピーディスクドライブも高価なためほとんど付属していなかった(ツインドライブで、ユニットはパソコン本体より高価だった)。このため、プログラムやデータはオーディオ用のカセットテープを使って保存していた。これは、FSKなどの変調方式でオーディオ周波数帯の信号に変調して記録するもので、代表的な記録方式にKCS(カンサスシティスタンダード)があり1200Hz/2400HzのFSK方式で300bpsの記録ができた。NECのPC-8000シリーズなどではキャリア周波数はそのままでシンボル長のみ短縮した600bpsでの記録を標準としていた。シャープのX1シリーズは変調にPWM方式を用いた非常に高速なデータレコーダを使用しており、そのボーレートは2,700ボーであった。
データの保存は普通のテープレコーダでも行えるが、データレコーダはデータの保存に特化した機能を備えている。例えば、スピーカー用と別に、データ出力専用のボリュームが付いていたりする。
記録には10分程度の短時間のノーマルテープが用いられていた。1本の長時間テープにさまざまなデータを記録するより短時間テープを何本も使い分ける方が利便性が高かったこと、長時間テープに比べて耐久性に優れていること、帯磁と消磁の繰り返しに向くこと、当時のRAM容量では長時間の記録は必要なかったことなどが理由。
多くのマイクロソフト製のBASIC(主にNECのN-BASIC系など)では、データレコーダへのプログラムのセーブコマンドCSAVE、データレコードからのロードコマンドCLOADが用意されている。CLOADのオプションスイッチ「?」で、記録の際のエラー確認作業「ベリファイ」が行なえる。なおNECのN88-BASICや富士通のF-BASIC系では、CSAVE・CLOADの代わりに通常のSAVE・LOADコマンドにデバイス名「CASx:」(xは数字)を指定してセーブ・ロードを行う。シャープのX1およびMZ-80B/2000シリーズのデータレコーダの制御は機械式ボタンではなく電気信号による「フルロジック」方式であったため、コンピュータ側からレコーダの動作を制御することができた。このためHu-BASICにはカセット制御用のコマンドが用意されている。またAPSS(自動ファイル先頭検索)操作も制御できたため、データレコーダでありながらランダムアクセスに近い使い方も可能であった。
ファミリーベーシックのプログラム保存にも使われていた。ファミリーコンピュータ本体にはカセットテープインタフェースがなく、エディットモードのあるゲームで作ったものを保存する場合にもキーボードを介してデータレコーダを接続する必要があった。