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X1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Disambiguationこの項目ではシャープのパソコンについて説明しています。その他の「X1」についてはX-1をご覧ください。

X1 (エックスワン) は、シャープが製造していたパソコンの名称である。型名はCZ-800シリーズ。富士通のFM-7、NECのPC-8801と並んで8ビット御三家と呼ばれた。

なお松下電器の発売していたノートPC「CF-X1」シリーズとは全く関係がない。

目次

[編集] X1シリーズ

X1の初代機は、1982年11月に発売された。

X1の発売当時、同社のパソコンにはMZシリーズがあったが、X1はMZ-80系を設計していた部品事業部やミニコン、オフコンを設計していた部門ではなく、テレビ事業部(栃木県矢板市)が企画した製品である。そのため、当時の常識的なパソコンとは一線を画するものとなった。

「パソコンテレビ」と銘打ち、専用のディスプレイと組み合わせることで、テレビ画面とパソコン画面の重ね合わせ(スーパーインポーズ)を実現、また、パソコンからテレビのチャンネルや音量を操作できるなど、AV機能に優れていた。 また、赤・白・銀の3色から選べる本体色のカラーバリエーション、AV機器のようなスタイリッシュなデザインなどが同時期の他のパソコンと比較して異彩を放っていた。

CPUにはZ80A(クロック4MHz)を採用し、640×200ドット・8色のグラフィック機能 (X1マニアタイプのみVRAMはオプション)、PCG機能、3重和音8オクターブのPSG機能とジョイスティック端子などを持ち、Z80Aの割り込みは強力なモード2を使用していた。(ただし内部割込みはキー入力のみでタイマ割り込みなどはなかった。)

またサブCPUとして8049を搭載し、キーボード内の8048との通信やデータレコーダの制御などに使用していた。(その構造上キーマトリクスの取得ができないため、キーボードの同時押しは不可)

性能的には同時代のZ80マシンとして特に突出した構成では無かったが、PCG機能を利用することでテキストVRAMベースでキャラクターを表現することができ、これを応用したゲームにおいて強みを発揮した。

X1シリーズの特徴として、VRAMZ80CPUの仕様を逆手にとってI/O空間にマッピングされているため、メインメモリ空間のバンク切り替えを用いることなく、常に64KBのメインメモリ空間と48KBのVRAM空間にアクセス可能であった。 (この実装はSONYSMC-777などでも用いられ、上記のメリットが享受可能であった半面、Z80の仕様外の仕様とでも言うべきものを逆手にとった実装でもあるため、直交性の低い当時のCISC CPUではI/O空間へのアドレス指定に煩雑な面が存在したり、またメモリ空間と比較してステート数が多いといったデメリットも存在した)

ハードウェアは同社のMZシリーズ同様、ROM BASICを持たないクリーンコンピュータ設計となっており、BASICは起動時にカセットテープから読み込む必要があったが、本体内蔵のデータレコーダの速度は2700ボーで、他社製品の2~3倍という非常に高速なものであった。CRTCは汎用のHD46505というICを使用していた。

クリーンコンピュータ設計ゆえの特徴として2種類のリセットボタン(IPL/NMI)がある。IPLは文字通り、システムを完全に初期化しIPLを呼び出す一般的なリセットであるが、NMI (Non Maskable Interrupt) リセットは、ハードウェア割り込みをかけて特定のアドレスへジャンプするもので、オンメモリシステムの先頭に移動することでホットリセットを行うことを意図して付けられている。しかし、ジャンプ先アドレスは固定されており、市販のソフトウェアでNMIリセットを行うと意図しない動作を起こすことがある。これを逆手に取り、ゲームにおいて故意にNMIリセットのジャンプ先に裏技となるものを仕込んでおくものも見られた。

添付のBASICは、シャープとハドソンの共同開発による Hu-BASIC (CZ-8CB01,RB01,FB01 Ver 1.0) で、当時の水準では柔軟な記述を許容する扱いやすいものであったが、描画ルーチンの最適化が甘かったためグラフィック描画が遅く、またテープから起動する必要があったことと相まって「X1は遅い」という誤解を招くこととなった。(オプションのROMとして搭載する事も可能であり、またFD版も存在した)

一方、X1Fとともに登場した NEW BASIC (Ver 2.0) は、X1turbo開発時に得たノウハウをフィードバックし、グラフィック描画性能を大幅に向上させ、漢字も扱いやすくなっていた。 そして、クリーンコンピュータ設計ゆえに、この新しいBASICは初代X1までさかのぼって使用が可能であり、これをもって「Xシリーズは5年間その基本設計を変えない(互換性を維持し、製品を販売する)」とする販売姿勢の証左とされた。

X1シリーズは、モデルチェンジを重ねつつも、基本仕様はオプションの標準装備化を進めた程度でほとんど変化がなく、オプションを追加しさえすれば、初代機のX1でも長期間現役機として使用することができたが、実際には初代発売の2年後(1984年11月)に上位規格のX1turboが発売され、86年頃には新規発売されるソフトウェア、とくにゲームにおいてはturboシリーズが前提になる等、実際の市場動向としては、初代のX1(あるいはX1シリーズ)を拡張し続けても5年間現役で居られたという訳ではなく、コンシューマゲーム機のように5年間単一プラットフォームとして機能していた訳では無い。

[編集] X1シリーズの系譜

  • X1 (CZ-800C/1982年11月)
    X1の初代機。X1C / D の発売時に「マニアタイプ」という愛称が付けられた。本体色はローズレッド、スノーホワイト、メタリックシルバーの3色。価格は155,000円。
  • X1C (CZ-801C/1983年10月)
    本体・キーボード一体型で、プロッタプリンタが内蔵可能。拡張I/Oポートは廃されている。愛称「アクティブタイプ」。本体色はローズレッド、シルバーメタリックの2色。価格119,800円。
  • X1D (CZ-802C/1983年10月)
    3インチFDD1基を搭載した機種。しかし、X1専用データレコーダーを接続することができず、テープ版ソフトウェアの使用に支障を来すこととなった。愛称「プロフェッショナルタイプ」。本体色はローズレッド、シルバーメタリックの2色。価格198,000円。
  • X1Cs (CZ-803C/1984年6月)
    X1Cのプロッタプリンタ用スペースに拡張用I/Oポートを2基内蔵したもの。本体色はローズレッド、シルバーメタリックの2色。価格119,800円。
  • X1Ck (CZ-804C/1984年6月)
    X1Csに漢字ROMを搭載したもの。価格139,800円。
  • X1F (1985年7月)
    turbo開発時のノウハウをフィードバックした NEW BASIC を搭載。これ以降、漢字ROMは標準装備化される。本体色はローズレッド、オフィスグレーの2色。
    • model20(CZ-812C) : 5インチ(2D)FDD×1基内蔵。価格139,800円。
    • model10(CZ-811C) : データレコーダー内蔵。価格89,800円。
  • X1G (1986年7月)
    縦置き可能な筐体を採用。本体色はブラックとオフィスグレーの2色。
    • model30(CZ-822C) : 5インチ(2D)FDD×2基内蔵。価格118,000円
    • model10(CZ-820C) : データレコーダー内蔵。価格69,800円。
  • X1 twin (CZ-830C/1987年12月)
    「X1シリーズ5年目の回答」。HEシステム (いわゆるPCエンジン) を内蔵。5インチ(2D)FDD×1基搭載。本体色はブラックのみ。価格99,800円。X1シリーズの最終機種となる。

[編集] X1turboシリーズ

X1turbo (エックスワン ターボ) は、X1の上位機種として1984年10月に発売された。

X1シリーズとソフトウェア・ハードウェアともモード切替を必要としない完全上位互換を維持しながら、640×400ドット・8色のグラフィック機能を搭載した(モニタへの出力はデジタルRGBのまま)。また、漢字をグラフィックではなくテキストとして扱える漢字VRAMを搭載、40×25行の高速漢字表示を実現し、当時の16ビットパソコンにも比肩しうる性能を発揮した。垂直400ライン表示が追加されたことで水平同期周波数は従来の16kHzから24kHzとなり、24kHz動作時は専用モニタに「ハイレゾモード」ランプが点灯する。また、200ライン表示時も16kHz/24kHz両方のモードが使用可能となった。

X1シリーズはクリーン設計の基、本体にBIOSを持たず、起動時にIPLによって読み込まれるようになっていた。シャープはIPLによって読み込まれるBIOSをIOCSと呼んでいたが、X1turboシリーズではBIOS ROMを搭載し、呼称もBIOSに改められた。IOCSとBIOSに完全な互換性はなく、BIOSコールを使用するアプリケーションはX1turboシリーズ専用となる。

キーボード横にスライドスイッチが設けられ、「A/Bモード」切り替えが追加された。Aモードでは従来互換で、Bモードはカナ入力がJIS配列から50音配列となる。マニュアルに記載されているのはこれだけであるが、Bモードでは、従来不可能であった同時キー入力が可能となっている。

他にも、X1シリーズの弱点だった、PCGなどへのフォントデータへのアクセスが垂直帰線期間にしかできなかったのを、水平帰線期間にもできるようにしたり、サイクルスチール導入でVRAMアクセス速度が向上したり、タイマなどの割り込み要因を増やしたり、DMAを追加してCPU処理とVRAMやFDDへのアクセスが並行して出来るようにされていた。

また、X1turboにはZ80ファミリのCTCDMA・SIOが揃って搭載されていた。

その一方で、上位機種でありながら、X1自体の性能が比較的優れたものであったことから、turbo専用のソフトウェアがなかなか出揃わないというジレンマも抱えることとなった。結局X1twinに至るまでノーマルX1シリーズとX1turbo (turboZ) シリーズは併売されたが、末期になるとturbo専用が中心となったにも関わらずノーマルX1が併売されるという新たなジレンマとなった。

X1turboはPCとしての基本性能を飛躍的に向上させてはいるが、ホビーマシンに重視されるオーディオ・ビジュアルの面での進化が他機種に比べ少なかった。具体的には、X1turbo登場後、ライバル機がモデルチェンジを重ねつつFM音源搭載による音響表現の強化やアナログRGB搭載による多色表示化を進める中で、X1シリーズにおいてこれらが標準で搭載されるのはX1turboZ発売まで待たなければならなかった。これは、X1が発売当初からホビー指向で、オーディオ・ビジュアル面での基本性能が初めからある程度高かったことに甘んじた結果と言えるが、このことが、ホビー指向を強化してきた他機種に水をあけられる要因の一つとなっている。

また、初代X1から最後のX1turboZIIIに至るまでCPUクロックを全く向上させなかったことも、相対的にX1シリーズの弱体化を招いたことは否定できない。

1985年11月に登場したX1turbo IIにはX1発売3周年の特別限定色として黒色が設定されたが、これが大人気となり、この機種以降は黒色がX1/turboシリーズの標準色となった。

[編集] X1turboシリーズの系譜

  • X1turbo (1984年10月)
    X1turboの初代機。本体色はローズレッドとオフィスグレーの2色。
    • model30(CZ-852C) : 5インチ(2D)FDD×2基内蔵。価格278,000円。
    • model20(CZ-851C) : 5インチ(2D)FDD×1基内蔵。価格248,000円。
    • model10(CZ-850C) : データレコーダー内蔵。価格168,000円。
      • model10はmodel20/30に比べて各種インターフェース、グラフィックRAMなどが削減されている。FDDインターフェースまで撤去されていた。
  • X1turbo model40 (CZ-862C/1985年7月)
    X1turbo model30からテレビ制御関係の機能を削除してコストダウンを図ったビジネス仕様機。本体色はオフィスグレーのみ。価格258,000円。
  • X1turbo II (CZ-856C/1985年11月)
    X1turbo model30と同仕様の廉価モデル。本体色は限定色のブラックとオフィスグレーの2色。価格178,000円。
  • X1turbo III (CZ-870C/1986年11月)
    turbo IIのFDDを2HD/2D両対応に変更したモデル。JIS第2水準漢字ROM搭載。本体色はブラックとオフィスグレーの2色。価格168,000円。

[編集] X1turboZシリーズ

1986年12月には、X68000発表と同時にX1turboZ (エックスワン ターボ ゼット) が登場。わずか1カ月前に登場した turbo III にAV機能を強化したX1の最上位シリーズで、4096色同時表示可能なグラフィック機能とアナログRGBパレット(コネクタはD-Sub15ピン)、ステレオ8チャンネルのFM音源(YM2151/OPM、PSGはYM2149に変更)、ハードウェアスクロール、ビデオキャプチャやモザイク機能などを追加した。BASICも専用のZ-BASICが用意された。

これ以降turboシリーズはturboZシリーズに集約されることとなった。

turboZシリーズによって標準搭載されたFM音源やアナログRGBは後出しである分いくつかの点で競合する他機種より優れてはいたが、こうしたAV機能の進化が他機種に即座に追随できなかったこと、また、他機種より優れていたが故に互換性が低かったことは結果としてソフトウェア移植の障害となったり、移植されてもそれらの機能が十分活用されないことにもなった。FM音源は一部ゲームなどでステレオ化移植などがされていたが、アナログRGBに関しては対応ソフトはほとんどない。ただし、1987年後半ぐらいから一部のゲームがこっそりと対応している(パッケージやマニュアルに記載されていないがZシリーズで実行するとアナログパレットを使用してアナログ化している)。

また、X1がturboZとなり、いかに機能改善を図ろうとも、X68000の圧倒的性能の前には存在感が霞んでしまったのも事実であり、X1turboZ専用ソフトはほとんど発売されないまま、X1シリーズの流れはX68000シリーズへ継承されていった。

[編集] X1turboZシリーズの系譜

  • X1turboZ (CZ-880C/1986年12月)
    turboZ初代機。本体色はブラックとオフィスグレーの2色。価格218,000円。
  • X1turboZ II (CZ-881C/1987年12月)
    turboZに拡張RAM 64KBを追加した機種。本体色はブラックのみ。価格178,000円。
  • X1turboZ III (CZ-888C/1988年12月)
    X1/turbo/turboZ全シリーズ通じての最終機種。turboZ IIから専用データレコーダ端子が廃されている。本体色はブラックのみ。価格169,800円。

[編集] その他

シャープ系パソコンの専門情報誌として、ソフトバンク(当時の社名は株式会社日本ソフトバンク)より発売されていたOh!MZ誌は、シャープの主力パソコン製品がMZシリーズからXシリーズへ移行したのに伴い、1987年12月号よりOh!Xと誌名変更された。

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