ナフタレン
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ナフタレン | |
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IUPAC名 | ナフタレン |
別名 | ナフタリン |
分子式 | C10H8 |
分子量 | 128.18 g/mol |
CAS登録番号 | [91-20-3] |
形状 | 白色結晶 |
密度と相 | 1.16 g/cm3, 固体 |
相対蒸気密度 | 4.4(空気 = 1) |
融点 | 80 °C |
沸点 | 218 °C (昇華性あり) |
SMILES | C1(C=CC=C2)=C2C=CC=C1 |
出典 | 国際化学物質安全性カード |
ナフタレン(ナフタリン、naphthalene)は、2個のベンゼン環が1辺を共有した構造を持つ多環芳香族炭化水素である。無色で昇華性を持つ白色結晶である。アセン類として最も単純な化合物。異性体として、7員環と5員環からなるアズレンがある。 ナフタリンの2004年度日本国内生産量は 198,031 t、工業消費量は 91,740 t である。
目次 |
[編集] 命名法
ナフタレンの置換基としての名称はナフチル基 (naphthyl group) という。
[編集] 置換位置接頭辞
ナフタレンはモノ置換体が2種類、ジ置換体は10種類の異性体が存在し、そのうち2種、9種については置換位置を示す接頭辞がつけられている。接頭辞はナフタレンまたはそのヘテロ置換複素環化合物で使用されることがあるが、IUPAC命名法では接頭辞ではなく位置番号を使う方法が推奨されている。
- モノ置換体(一置換体)
接頭辞 | 読み | 位置番号 |
---|---|---|
α- | アルファ | 1 or 4 or 5 or 8位 |
β- | ベータ | 2 or 3 or 6 or 7位 |
- ジ置換体(二置換体)
接頭辞 | 読み | 位置番号 |
---|---|---|
o- | オルト | 1,2位 |
m- | メタ | 1,3位 |
p- | パラ | 1,4位 |
ana- | アナ | 1,5位 |
ε- | エピ | 1,6位 |
kata- | カタ | 1,7位 |
peri- | ペリ | 1,8位 |
pros- | プロス | 2,3位 |
amphi- | アンフィ | 2,6位 |
- 註)2,7位ジ置換体には接頭辞が無い。
[編集] 性質
ナフタレンはベンゼンよりもはるかに求電子置換反応を受けやすく、得られる化合物には染料の中間体として重要なものが多い。求電子反応の位置選択性は反応によって異なるが、α位の置換は速度論的に、β位の置換は熱力学的に有利とされる。
ナフタレンはパラジクロロベンゼンと同様に、防虫剤として利用される。
[編集] 主な化学反応
ナフタレンを適切な条件で酸化するとナフトキノンを生成する。
[編集] 安全性
ナフタレンにさらされると、赤血球が障害を受け破壊される。赤血球の再生は可能だが、子供が誤ってナフタレンを含んだ防虫剤や防臭剤を口に入れた場合に問題になりやすい。極端な疲労感、食欲不振、不眠、チアノーゼといった症状が現れる。大量のナフタレンに暴露されると、吐き気、嘔吐、下痢、血尿、黄疸を引き起こす。
アメリカ合衆国では、国家毒性プログラム (NTP) がラットとマウスを用いたナフタレンの毒性試験を実施、1992年と2000年に結果が公表された。試験期間は2年間。最大濃度30ppm(純度99%以上)のナフタレン蒸気に1週間に5日、1日6時間暴露したところ、オスのマウスに対して10ppm未満では発がん性を示す証拠は得られなかった。性別とは無関係に10ppmと30ppmでマウスに肺胞腺腫と気管支腺腫の増加が見られた。ラットでは性別とは無関係に呼吸器の腺腫と 嗅神経の上皮性神経芽細胞腫の発生率が増加した。いずれのケースにおいても、がんに起因しない呼吸器の炎症が高頻度かつ広範囲の濃度で見られた(参考文献1)。
国際癌研究機構 (IARC) は、2002年にナフタレンをヒトに対する発癌性の疑いがある物質(Group2B)として位置づけた(参考文献2)。同機構ではナフタレンに対する急性暴露は、ヒト、ラット、ウサギ、マウスにおいて白内障の原因となること、成体以外では経口暴露、吸入暴露、胎児期の間接暴露により、溶血性貧血が起こることを指摘している。
可燃性物質であり、日本では消防法により危険物第2類(可燃性固体)に指定されている。
[編集] ナフタレン系化合物
- テトラリン
- デカリン
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 日本国 経済産業省・化学工業統計月報
- 1 NTP Technical Reports 410 and 500, available from NTP: Long-Term Abstracts & Reports. Accessed on March 6, 2005.
- 2 Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Some Traditional Herbal Medicines, Some Mycotoxins, Naphthalene and Styrene, Vol. 82 (2002) (p. 367). Accessed on March 9, 2005.