ナポレオン -獅子の時代-
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ナポレオン-獅子の時代-(なぽれおん-ししのじだい-)とは、長谷川哲也による歴史漫画。その名の通り、ナポレオン・ボナパルトの生涯を扱ったものである。現在、ヤングキングアワーズにて連載中。
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[編集] 概要
2003年2月号から、ヤングキングアワーズにて連載が開始された。当初はアウステルリッツの戦いから物語が始まったが、この戦いの終わりと同時に物語はナポレオンの誕生直前にまで遡り、以後はナポレオンの生涯に沿った物語の展開を見せている。話の都合上、フランス革命の展開をじっくりと描いており、主人公であるナポレオンがほとんど登場せず、事実上、フランス革命を描いた漫画と化していた時期もあった。
非常に個性の濃いキャラクター設定(とはいっても、登場人物のほとんどが実在した人物ではある)と、漫画全体を漂う“男臭い”空気、史実とかけ離れた演出や印象深いセリフなどから、他の漫画には見られない独特の色を醸し出している。『北斗の拳』を思わせるような、非常に濃いタッチの画風も、この漫画の雰囲気作りに一役買っているともいえる(なお、作者の長谷川哲也は、北斗の拳の作者・原哲夫のアシスタント経験者でもある)。掲載紙がメジャーであるとは言いがたいものの、このように様々な面で他の漫画とは異なった個性をもつ本作には、ナポレオンマニア以外にも、熱狂的なファンも多い。
また、同じくナポレオンを扱った漫画として池田理代子の『栄光のナポレオン-エロイカ』があるが、作者ホームページによれば、長谷川は『獅子の時代』を書く上でこれを多少なり参考にしている様だ。とはいえ、少女マンガの代表格である『ベルサイユのばら』続編の『エロイカ』とは、作風が正反対と言っていいほどかけ離れており、あくまで参考にとどめている様である。
[編集] コミックス
2007年2月現在、6巻まで発売中。毎回販促用のオビに有名漫画家のアオリ文がつく事で知られ、過去に安彦良和、平野耕太、小池一夫らもアオリ文句を寄稿している。特典ページとして、軍事研究家の兒玉源次郎による時代背景や人物解説「大陸軍戦報」や、巻末コメントとしての「ビクトル対談」がつく。
韓国版・フランス版も出版されている。
[編集] 登場人物
それぞれ作中のフィクションとしての人物解説であるため、一部史実にそぐわないものもある。詳しくは各人物の項を参照されたい。
- ナポレオン・ボナパルト
- 主人公。アウステルリッツ編では背も低く描かれているが、青年期では比較的スマートに描かれている。出世志向が強いが、軍人としての才には長けている。自身がコルシカ島出身であることにこだわりをもち、フランスへの復讐を目指していたが、パオリとの決別後は自信がコルシカ人であることを捨てる。物語がフランス革命期のパリでの政争にスポットが当てられていたころは、主人公であるにもかかわらず、ほとんど出番がなかった。トゥーロン攻囲戦で功績をあげるが、その後は軍籍を剥奪され、一時本屋で働いていた。その後、ヴァンデミエールの反乱鎮圧に起用され、出世街道に復帰する。
[編集] ボナパルト家・親族
- レティツィア
- ナポレオンの母。男勝りの性格である。熱心なコルシカ独立主義者であり、自由な生き方を好む夫のカルロの変わりに、ボナパルト家を支えている。
- カルロ
- ナポレオンの父。人からは変節漢と呼ばれるが、自由に生きることを好む。ナポレオンが軍人を目指していることにいち早く気付き、彼を士官学校に入学させた。
- ポリーヌ
- ナポレオンの妹。兄に強くあこがれているが、ジュノーから付き慕われている。
- ジョゼフィーヌ
- ナポレオンの妻となる人物。元はバラスの愛人だった。財産を持つ女との結婚を目指すナポレオンの目に留まる。
[編集] フランス革命軍・大陸軍
- ジュノー
- ナポレオンの部下。ボナパルト家がコルシカ島から落ち延びた後に住み着いた家の元主人である様子。ナポレオンの妹・ポリーヌに惚れるが、彼女に「私に会いたかったら男らしくなって」と言われ、以後ナポレオンの隊に加わる。
- マルモン
- トゥーロン攻囲戦以降、ナポレオンの副官となる。上官を選ぶ兵士であり、ナポレオン着任以前は上官をわざと危険な場所へ赴かせたり、狙撃したりしていた。ナポレオンに忠実であり、彼が投獄された際も脱獄の準備をしていた。
- デュゴミエ
- トゥーロンに派遣された革命軍の将軍。たたき上げの人物で、戦略眼や部下の人心掌握に長けている。ナポレオンの軍事的才能を認め、彼の作戦を採用する。登場年代の当時は50代中盤であるにもかかわらず、非常に老齢な人物として描かれている。
- マッセナ
- トゥーロンに派遣された援軍の指揮官でデュゴミエの部下。金に目がない人物であり、幼いころはマッセナ団というギャングの棟梁をしていた。トゥーロン攻囲戦では敵の金庫を襲うべくラルティック要塞を襲撃する。
- スーシェ
- トゥーロン編でわずかに登場。部下から非常に慕われている。彼にスポットを当てた「スーシェ外伝 月牛」では、故郷のリヨンを攻撃する際の彼が描かれている。
- ミュラ
- ヴァンデミエール編から登場。おしゃれで派手好きな色男で、恋愛には自信をもっている。一度ナポレオンが店員を勤める本屋に客として訪れたが、ヴァンデミエールの反乱で彼と再会し、立場が逆となる。以後、ナポレオンの副官の様に彼に付き添う。
- ジャン・マシュ・フィリベール・セリュリエ
- 単身最前線で敵の矢面に立ち味方を奮起させるなど、革命後の新時代においても、旧貴族本来の気高さや騎士道を守り通す老将軍。士気を高める為兵士達に略奪を奨励するナポレオンの方針に不服だが従っている。
[編集] フランス革命指導者
[編集] ジャコバン派
- ロベスピエール
- 革命の勃発~恐怖政治期までの期間における、最強の人物。ジャコバン派の領袖。また、特定の人物ではなく、市民と革命を愛するが故に童貞である。エベール派・ダントン派を粛清した後、さらに恐怖政治を加速させるが、他の議員の反感を買い、テルミドールのクーデタで失脚、処刑される。
- サン・ジュストに「私は」「童貞だ」と打ち明けるシーンは、作中屈指の名場面でもある。
- サン・ジュスト
- ロベスピエールの側近。軍人としてのナポレオンを評価する人物であり、彼の昇進を助けている。テルミドールのクーデタでは逃げ延び、後にタリアンを暗殺。続いてバラスの暗殺を謀るが、ナポレオンによって阻止されて死亡する。
- 史実ではナポレオンを高く評価していたのはロベスピエールの弟・オーギュスタンであり、キャラクターのモデルとしてオーギュスタンがサン・ジュストに統合されている可能性がある。
- クートン
- ロベスピエールの側近。足が麻痺しているため、常に車椅子に乗っている。公会に反旗を翻したリヨンに派遣されるが、処罰が甘いとしてフーシェに取って代わられる。テルミドールのクーデタの際は大砲や爆弾を装備した車椅子で兵士と戦い、最後はバラスを巻き込んで自爆した。
- ダントン
- ジャコバン右派。恐怖政治の停止を求めるが、ロベスピエール一派によって逮捕に追い込まれる。裁判では豪胆な演説で市民を味方につけるが、結局同派のデムーランと共にギロチン送りとなる。
- 怪力で、さらには愛妻家として描かれており、夜中に妻の死体を掘り起こして抱きしめるシーンがある。
- マラー
- ジャコバン派議員で、元医者。皮膚病を煩っており、常に痒みに苦しんでいる。薬湯での治療中、シャルロット・コルデーによって暗殺される。
- フーキエ・タンヴィル
- 革命裁判所検察官。デムーランの縁戚。慈悲のない裁きで多くの市民から恐れられる。テルミドールのクーデタ後にジャコバン派が没落すると、自身も裁判にかけられ、処刑される。
[編集] テルミドール派
- ポール・バラス
- 国民公会議員。トゥーロンに派遣され、反乱関係者を多く処刑するが、そのことをロベスピエールに追及されるのをおそれ、フーシェと共にテルミドールのクーデタを画策する。クーデタ後は政府の中心となり、ヴァンデミエールの反乱鎮圧にナポレオンを起用するなど、彼の庇護者となる。ジョゼフィーヌの愛人でもあるが、彼女をナポレオンに譲ったのも彼。
- ナイフ投げが得意であること以外は、作中で特に秀でた能力は見受けられない。場違いな権力者として描かれており、作者も「バラスはボロクソに書いても心が痛まない」と言っている。
- ジョゼフ・フーシェ
- 国民公会議員で、陰謀の天才。リヨンでの反乱関係者虐殺をとがめられるのを恐れ、バラスやタリアンをけしかけてロベスピエールに対するクーデタを画策する。クーデタ後はバラスの探偵となり、ナポレオンにも接近する。
- タリアン
- 国民公会議員。牢獄に入れられた妻を助けるために、ロベスピエールを告発しクーデタのきっかけを作る。しかしその後は没落し、妻にも見捨てられてしまう。飲みふけっていたところでサン・ジュストによって暗殺されてしまう。
- タリアン夫人
- ジョゼフィーヌと共に牢獄に入れられていた、タリアンの妻。釈放後は社交界の華として人々の注目を集め、落ちぶれた夫のタリアンのことは見捨ててバラスの愛人となる。
[編集] 敵対国の人物
- アレクサンドル1世
- ロシア皇帝。アウステルリッツ編に登場。ナポレオンを倒して英雄となることを夢見ている。クトゥーゾフは「婆さんの代から仕えている」宿将なので、一応遠慮しているらしいが、明らかに嫌っている。
- クトゥーゾフ
- ロシアの軍人。アウステルリッツ編に登場。老練な用兵家として描かれており、ウルムの戦い後に指揮した退却戦は、ナポレオンをして「教本に載せたいような見事な離隔」と言わしめた。アレクサンドルや若い将軍たちには軽んじられているが、ナポレオンには警戒されている。アウステルリッツ戦前夜、ナポレオンの暗殺を謀って刺客を送り込んだが、失敗に終わっている。
- バグラチオン
- ロシアの軍人。アウステルリッツ編に登場。かなり短気な人物として描かれており、使者として訪れたビクトルの挑発(ナポレオンからの伝言を伝えただけだが)に激昂し、ビクトルを半殺しにしている。勇敢な司令官ではあるが、アウステルリッツではアレクサンドル同様ナポレオンの能力を見誤っており、敗走途中クトゥーゾフから「お前は奴には勝てん」と叱咤された。
- ブクスホーデン
- ロシアの軍人。アウステルリッツ編に登場。ナポレオンの罠にはまり、ダヴーとスルトに包囲された上、本隊から見捨てられてしまう。史実では辛くも危機を脱したが、本作では至近距離から砲撃をまともに受けて派手な最後を遂げている。
[編集] その他
- パスカル・パオリ
- コルシカ独立運動のリーダー。若いころ、ナポレオンの母であるレティッツィアに恋していた様であり、ナポレオンにも自身を「父親だと思ってくれていい」と言っている。革命勃発後はボナパルト家をコルシカ島から追放する。ナポレオンによれば、軍隊の指揮は下手くそで、負けても仕方がないとのこと。
- ブーリエンヌ
- ナポレオンの幼年学校時代の友人。後に再会して、彼の秘書となる。
- ビクトル
- 本編オリジナルの人物。アウステルリッツ編から登場し、物語の各所で絶妙な役回りを演じているが、損な役であることが多い。処刑人サンソンの手伝いとして雇われたり、トゥーロンでは派遣議員のふりをして敵を陽動する役目などを負った。
- マルキ・ド・サド
- 奇抜な小説を書く文筆家。バスティーユ牢獄に収監されていた際は、さまざまなデマを広げて革命のきっかけを作った。後にサン・ジュストから猟奇的な小説の執筆を求められ、『悪徳の栄え』を出版。
- サンソン
- 死刑執行人。恐怖政治下、数多くの人の処刑を実行するが、本人は心優しい人物。国王を尊敬している。
[編集] 史実との相違
- 作中、ロベスピエールは童貞としてのキャラクターが定着しているが、そのような確証があるわけではない。ただし、ロベスピエールの女性関係に関する私的な研究は存在し、それによると「女性関係なし」という結論とのこと。
- 漫画ではテルミドールのクーデタの際、クートンは自爆し、サン・ジュストは逃げ延びているが、史実では二人とも逮捕され、ロベスピエールと共にギロチン送りとなっている。
- サン・ジュストによって暗殺されたタリアンだが、史実ではそのようなことはなかった。生き延びた彼は、ナポレオンのエジプト遠征の際、調査団の経済学担当として参加している。
- ヴァンデミエールの反乱の際、ナポレオンは大砲に銃弾や釘を詰めて打ち出しているが、実際は普通の砲弾を用いて反乱を鎮圧している。