同軸ケーブル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
同軸ケーブル(どうじくケーブル)は、不平衡な電気信号を伝送するための特性インピーダンスが規定された電線の一種。用途は様々であるが、主にテレビ受像機や無線機とアンテナの接続や、計測機器の接続、音声、映像信号の伝送に用いられる。
外部への電磁波の漏れが少ないこと、ある程度の折り曲げが可能であるなどが特徴である。直流から極超短波まで幅広い周波数範囲の伝送ができる。
同軸ケーブルの接続には専用のコネクタを用いる。使用する周波数帯やインピーダンス特性により、BNC型・N型・M型・F型などいくつかのタイプがある。オーディオ機器など低周波用としてはRCAプラグ・ジャックも用いられる。
目次 |
[編集] 構造
円形をした内部導体(写真の1)を、絶縁体(同2)、その周囲を外部導体(同3)、そして最後にシース(保護被覆、同4)で覆っている。ケーブルを切断した断面が、軸を同じくした円筒を入れ子にしたような形状に見えることから「同軸ケーブル」という名称がついた。 絶縁体にはポリエチレンを用いたものが最も一般的である。外部導体は、編組線(へんそせん)と呼ばれる細い銅線を編んだものが多い。精密測定や極超短波以上の周波数で減衰を少なくしたい場合には、外部導体に金属箔を用いたケーブルを使用する場合もある。
[編集] 特性インピーダンス
特性インピーダンスは、50Ω(主に無線機等の電力の伝送用)と75Ω(主にテレビ受像機等の信号伝送用)が一般的である。
同軸ケーブルの絶縁体には当初空気が用いられた。この場合、最適な(損失が少ない)導体径比(外部導体内径/内部導体外径)にすると、特性インピーダンスが約75Ωとなる。近年では絶縁体にポリエチレンが主に用いられるが、この場合に導体径比を最適にすると約50Ωとなる。このことから、一般的なインピーダンスが75Ωおよび50Ωが主流となったと言われている(諸説あり、実際のところは不明である)。
[編集] 特殊な構造の同軸ケーブル
このような同軸ケーブルと比べて、構造的に特殊なケーブルとして漏洩(ろうえい)同軸ケーブル〔LCX(Leaky Coaxial cable)〕がある。 漏洩同軸ケーブルは、上で述べたように電気信号を伝送するという目的に加えて、ふ設したケーブルの周囲に電波を輻射する(アンテナとしての役割がある)という目的で使用される。代表的な例として、トンネル内のFM放送や列車無線などのアンテナとして利用される。
UHF帯やSHF帯では扱う波長が短く、また編組線では伝送損失が大きいため、機器内の接続には外部導体を小径の銅パイプとした「セミリジッドケーブル」と呼ばれる同軸線を用いる。使用時に自由に曲げることは出来ないが、特性は良好である。
また高電力の通信用・放送用送信機の出力用には、銅パイプやアルミパイプを用い、空気を絶縁体とした同軸管(直径数10mm~150mm)を使用する。
[編集] 代表的な同軸ケーブル
- インピーダンス50Ω
- 3D-2V、5D-2V、8D-2V:無線機のアンテナ給電線に使われる。
- 5D-FB、8D-FB、10D-FB:無線機のアンテナ給電線に使われる。絶縁体に発泡ポリエチレンを用い、外部導体はアルミ箔と編組線を重ねたものが使われており、低損失である。
- インピーダンス75Ω
- 3C-2V、5C-2V:テレビ受像機のアンテナ給電線に使われる。
[編集] メーカー
以下は、同軸ケーブルの主要な製造および販売会社である。記載されている販売会社の一部は他社からのOEM供給を受けているケースがある。
- フジクラ:アマチュア無線家の間では、同軸ケーブルのブランドとして定着している。
- 四国電線
- 昭和電線電纜
- 住友電気工業
- 三菱電線工業
- 日立電線
- 宮崎電線工業
- OCC:旧社名は日本大洋海底電線(日海、NIKKAI)
- 日本アンテナ(同軸ケーブルは製造していない)
- マスプロ電工(OEM)
- DXアンテナ
- 松下電器産業
- カナレ電気
- モガミ電線
- 潤工社:マイクロ波・ミリ波用同軸ケーブル
- Andrew(米国)
- ベルデン
- コムスコープ社(米国)