ヒメハルゼミ
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ヒメハルゼミ | ||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Euterpnosia chibensis | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
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ヒメハルゼミ(姫春蝉・学名Euterpnosia chibensis)は、カメムシ目(半翅目)・ヨコバイ亜目(同翅亜目)・セミ科に分類されるセミの一種。照葉樹林に生息するセミで、"合唱"をすることで知られている。
目次 |
[編集] 特徴
体長は3.5cmほどで、ハルゼミと同じくらいの大きさである。外見も名のとおりハルゼミに似るが、ハルゼミよりも褐色がかった体色をしている。前翅の翅脈上には2つの斑点があり、さらにオスの腹部には小さな突起が左右に突き出ているのも特徴である。頭部の幅が広いが、体は細長い。オスの腹部は共鳴室が発達してほとんど空洞となっており、外観も細長い。いっぽうメスは腹部が短く、腹部の先端に細い産卵管が突き出している。
[編集] 生息地
分布域はほぼ西日本に偏っていて、新潟県と茨城県以西の本州、四国、九州、屋久島、奄美大島、徳之島に分布する。このうち分布北限に近い新潟県糸魚川市、茨城県笠間市、千葉県茂原市の生息地は国の天然記念物に指定されている。沖縄本島とその周辺離島の一部には別亜種オキナワヒメハルゼミssp.okinawana、大東諸島には別亜種ダイトウヒメハルゼミssp.daitoensis、そして八重山諸島の一部には別種イワサキヒメハルゼミE.iwasakii が分布する。
生息域はシイ、カシなどからなる丘陵地や山地の照葉樹林に限られていて、あまり人の手が入っていない森林に集団で生息する。成虫が発生するのは6月下旬から7月下旬頃までで、他のセミより一足早く、短期集中で発生する。
[編集] 鳴き声
オスの鳴き声はアブラゼミの音程を少し高くして強弱を繰り返すような感じで、「ギーオ、ギーオ…」「ウイーン、ウイーン…」などと表現される。しかもこのセミは"合唱"をするのが特徴で、ある1匹が鳴き始めると周囲のセミが次々と鳴き始め、やがて森林の一区画、生息域全体へと鳴き声が広がっていく。森林に生息するため鳴き声を聞く機会は少ないが、発生する時期に生息地の森林に踏み入ると、まさに「森の木々が鳴いている」という表現がふさわしい蝉時雨に見舞われる。
[編集] 保護
開発による照葉樹林の減少により生息地が各地で減少しているが、同時に各地での保護活動もさかんになっている。国の天然記念物指定は前述の3箇所だが、他にも自治体レベルでの絶滅危惧種や天然記念物に指定している所は数多い。大東諸島の亜種ダイトウヒメハルゼミ ssp. daitoensis は絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)に指定されている。