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セミ - Wikipedia

セミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

セミ

  1. 昆虫の一種・セミ(蝉)は本項目で記述する。
  2. セミ (semi) は、本来ラテン語で「半分」の意味であり、英語などで「半ば」「準~」などを意味する接頭辞として使われる。セミファイナル(準決勝)、セミヌード、自動車のセミオートマチックトランスミッションなど。
Disambiguation
このページは曖昧さ回避のためのページです。一つの言葉や名前が二つ以上の意味や物に用いられている場合の水先案内のために、異なる用法を一覧にしてあります。お探しの用語に一番近い記事を選んで下さい。このページへリンクしているページを見つけたら、リンクを適切な項目に張り替えて下さい。

セミ

エゾハルゼミのオス Terpnosia nigricosta
分類
界: 動物界 Animalia
門: 節足動物門 Arthropoda
綱: 昆虫綱 Insecta
亜綱: 有翅昆虫亜綱 Pterygota
目: カメムシ目(半翅目) Hemiptera
亜目: 頚吻亜目 Auchenorrhyncha
科: セミ上科 Cicadoidea
種類
本文参照
英名
Cicada

セミ(蝉・)は、カメムシ目(半翅目)・頸吻亜目・セミ上科(Cicadoidea)に分類される昆虫の総称。に鳴く昆虫として知られている。

目次

[編集] 概要

熱帯亜熱帯の森林地帯に分布の中心を持つが、一部は冷帯の森林や草原に分布するものもいる。約3000種が知られており、テイオウゼミのような翅端までが130mmくらいの巨大なものから、イワサキクサゼミのように20mm程度のものまでいる。

日本の場合、成虫が出現するのはおもに夏だが、ハルゼミのようにに出現するもの、チョウセンケナガニイニイのようにに出現するものもいる。数週間の成虫期間に太陽の下で精一杯生き、子孫を残し死んでいく姿は古来より感動と無常観を感じさせてやまない昆虫である。しかし幼虫として地下で生活する期間を含めると一生は3-17年(アブラゼミは4-5年)ほどと長く、短命どころか全体の寿命は昆虫類中上位である。

オス成虫の腹腔内には音を出す発音筋と発音膜、音を大きくする共鳴室、腹弁などの発音器官が発達し、鳴いてメスを呼ぶ。また、外敵に捕獲されたときにも鳴く。気管の拡大によって生じた共鳴室は腹部の大きな空間を占め、鳴き声の大きな中型種であるヒグラシヒメハルゼミなどでは腹部を透かして見るとほとんど空洞に見えるほどである。いっぽう、メス成虫の腹腔内は大きな卵巣で満たされ、尾部には硬い産卵管が発達する。

鳴き声は種類によって大きく違い、種類を判別する有効な手がかりとなる。鳴く時間も種類によって異なり、クマゼミは午前中、アブラゼミツクツクボウシは午後、ヒグラシは朝夕、ニイニイゼミは1日中などである。夏の昆虫とはいえ真昼の暑い時間帯に鳴くセミは少なく、朝か夕方のほうが居場所が分かりやすい。

[編集] 生活環

セミは飼育が難しいこともあって、その生態について十分に調べられているとは言えない。したがって、ここに書かれていることも含めて、検証が不十分なことがあることを認識しておくべきである。

交尾が終わったメスは枯れ木に産卵管をさし込んで産卵する。枯れ木の上を移動しながら次々と産卵するため、セミが産卵した枯れ木は表面が線状にささくれ立つ。

ニイニイゼミなど早めに出現するセミの卵はその年の秋に孵化するが、ふつうセミの卵が孵化するのは翌年の梅雨の頃である。孵化した幼虫は半透明の白色で、薄い皮をかぶっている。枯れ木の表面まで出た後に最初の脱皮をおこなった幼虫は土の間にもぐりこみ、長い地下生活に入る。

幼虫は太く状に発達した前脚で木の根に沿って穴を掘り、長い口吻を木の根にさしこみ、道管より樹液を吸って成長する。長い地下生活のうちに数回(アブラゼミは4回)の脱皮をおこなう。地下といえどもモグラケラゴミムシなどの天敵がおり、中には菌類(いわゆる「冬虫夏草」)に冒されて死ぬ幼虫もいる。

若い幼虫はからだが白く、目も退化しているが、終齢幼虫になるとからだが褐色になり、大きな白い目ができる。羽化を控えた幼虫の目は黒くなり、地表近くまで竪穴を掘って地上の様子を窺うようになる。

アブラゼミ羽化の過程(写真はそれぞれに別の固体)

羽化したばかりのクマゼミ
羽化したばかりのクマゼミ

晴れた日の夕方、目の黒い終齢幼虫は羽化をおこなうべく地上にはい出てくる。木の幹や葉の上に爪を立てたあと、背が割れて白い成虫が顔を出す。成虫はまず上体部が殻から出て、足を全部抜き出し多くは腹で逆さ吊り状態にまでなる。その後、足が固まると、からだを起こして腹部を抜き出し、足でぶら下がって翅をのばす。羽化のときは無防備で、この時にスズメバチアリなどに襲われる個体もいる。翌朝には翅がのびて体色がついた成虫となるが、オスはすぐに鳴けるわけではなく、数日間は小さな音しか出すことができない。羽化後の成虫の成熟には雄雌共に日数を必要とする。ミンミンゼミの雌は、交尾直前になると、雄の鳴き声に合わせて腹部を伸縮させるようになるので、その時期を知ることができる。この行動はツクツクボウシの雌でもみられる。

成虫も幼虫と同じように木に口吻を刺して樹液を吸う。幼虫は道管液を吸うが、成虫が樹液を摂食した痕には分が多く含まれる液が出てきてアリなどが寄ってくることから、成虫の餌は師管液と考えられる。ほとんど動かず成長に必要なアミノ酸などを摂取すればよい幼虫と異なり、飛び回ったり生殖に伴う発声を行う成虫の生活にはエネルギー源として大量の糖分を含む師管液が適するのであろう。また逆に、土中の閉鎖環境で幼虫が師管液を主食とした場合、大量の分を含んだ甘露を排泄せざるを得なくなり、幼虫の居住場所の衛生が保てなくなるという問題もあり、幼虫が栄養価の乏しい道管液を栄養源とする性質にも合理性が指摘できる。

なお、成虫の敵はクモカマキリ鳥類などである。スズメバチの中でもモンスズメバチは幼虫を育てる獲物にセミの成虫を主要な獲物としていることで知られ、個体群の存続に地域のセミの多様性の高さを必要とする。

Exit tunnels of Cicada Exit tunnels of Cicada Exit tunnels of Cicada
雨上がり後のセミの竪穴。縁石の短辺寸法は10cm。

[編集] 分類

日本のセミ上科は以下のように分けられる。

  • セミ科 Cicadoidae
    • セミ亜科 Cicadoidae
      • アブラゼミ族 Polyneurini
      • ミンミンゼミ族 Oncotympanini
      • ニイニイゼミ族 Platypleurini
      • ツクツクボウシ族 Dundubiini
      • エゾゼミ族 Tibicenini
      • ホソヒグラシ族 Cicadini
    • チッチゼミ亜科 Tibicininae
      • チッチゼミ族 Cicadettini
      • クロイワゼミ族 Mudini
  • (テチガルクタ科 Tettigarctidae) - オーストラリアに2種が生息する。

抜け殻

[編集] おもな種類

[編集] 日本産

西日本東日本、低地と山地、都市部と森林では生息するセミがちがう。また、南西諸島小笠原諸島にはそれぞれ固有種が生息しており、日本本土のものと似ていても鳴き声などがちがう。

全部で30種あまりが知られているが、チッチゼミCicadetta radiatorエゾチッチゼミCicadetta yezoensisクロイワゼミBaeturia kuroiwaeの3種はチッチゼミ亜科Tibicininae、それ以外はセミ亜科Cicadoidaeに属する。

なお、鳴き声は文字で表現するのが難しく、同じ種類でも人によって聞きなしが異なることに注意。

ハルゼミ Terpnosia vacua

翅端まで3.5cmほどのセミで、マツ林にすむ。名のとおり成虫は4月中旬ころから入梅のころまでに発生する。ゆっくりと「ジーッ・ジーッ…」と鳴く。

ヒメハルゼミ Euterpnosia chibensis

翅端まで3.5cmほどのセミで、西日本の照葉樹林に分布する。オスは「ギーオ、ギーオ…」と鳴くが、集団で一斉に鳴く習性がある。

イワサキクサゼミ Mogannia minuta

翅端まで2cmほどしかなく、日本最小。沖縄本島から八重山諸島にかけて分布する。成虫はサトウキビ畑やススキの茂みに発生し、4月ころには「ジー」と鳴き始める。サトウキビの害虫である。
ニイニイゼミ
ニイニイゼミ

ニイニイゼミ Platypleura kaempferi

翅端まで3-4cmほどの小型のセミ。翅と体は褐色のまだらもようで、からだにうすく粉を吹く。他のセミより一足早く、6月下旬には成虫が発生する。サクラの木に多い。ぬけがらは他のものより小さくて丸っこく、全身に泥をかぶっているので他の種類と区別できる。

ヒグラシ Tanna japonensis

翅端まで4.5-5cmほどで、ツクツクボウシよりすこし大きく、からだは茶色っぽい。ニイニイゼミと同じく6月下旬には鳴き始める。ヒノキスギの林に生息し、朝夕の薄暗い時間帯に「カナカナカナ…」という高い美しい声で鳴く。なおこのセミの寄生虫としてセミヤドリガがあり、成虫の腹に綿くずに包まれたようなウジ虫型のガの幼虫が1匹~数匹くっついていることがある。
ツクツクボウシの雌
ツクツクボウシの雌

ツクツクボウシ Meimuna opalifera

翅端まで4.5cmほど。ヒグラシより小さく、からだは緑と黒のもようがある。ヒノキやクヌギカキアカメガシワなどいろいろな木に止まる。夏の終わりごろによく鳴くようになり、宿題に追われる子どもたちのBGMとなる。名前通りの「ツクツクボーシ!ツクツクボーシ!…」という鳴き声はよく知られているが、鳴いているオスのそばで別のオスが「ジイイイイ!」という声を挙げていることもある。

ミンミンゼミ Oncotympana maculaticollis

翅端まで6cmほどで、アブラゼミと同じくらいの大きさ。体は緑と黒のしま模様で翅は透明。東日本では平地の森林に生息するが、西日本ではやや標高が高い山地に生息している。「ミーンミンミンミンミー…」という鳴き声はよく知られている。
コエゾゼミ
コエゾゼミ

エゾゼミ Tibicen japonicus

翅端まで7cmほどあり、クマゼミと同じくらい大型のセミ。木の幹に逆さまにとまる。鳴き声は「ギー」と聞こえる。エゾゼミはマツ、スギなどの林に生息するが、似ているコエゾゼミ Tibicen bihamatusアカエゾゼミ Tibicen flammatusブナ林に生息している。
アブラゼミ
アブラゼミ

アブラゼミ Graptopsaltria nigrofuscata

翅端まで6cmほどある中型のセミ。ふつうセミの翅は透明だが、このセミは不透明な褐色である。特に集まる木はなくいろいろな木に止まり、都市公園などにもよく生息する。午後の日が傾きかけた時間帯によく鳴き、「ジジジジジ…」という鳴き声は夏の暑さを増幅するような響きがある。

クマゼミ Cryptotympana fucialis

翅端まで7cmほどもある大型のセミ。おもに西日本の平地に分布するが、近年は東日本でも分布を広げており、地球温暖化の影響ともいわれているが、むしろそれよりも人為的移入やヒートアイランド現象による影響も考えられ、早計に地球温暖化の影響と断じるのは非常に危険である。からだは黒く、頭部と胸部が幅広い。朝や雨上がりの日差しが強くなる時間帯に腹をふるわせながら「シャンシャンシャンシャン…」と大声で鳴く。

[編集] 外国産

ジュウシチネンゼミ
ジュウシチネンゼミ

テイオウゼミ Pomponia imperatoria

翅端まで13cmほどもあり、セミでは世界最大の種類。東南アジアに分布し、夜行性で夜に鳴き、鳴き声はウシガエルに似ている。

ジュウシチネンゼミ Magicicada sp.(英語版Magicicada

翅端まで3-4cmのセミ。特定の種類ではなくM.decimM.cassiniM.deculaの3種類をまとめて呼んでいる。北アメリカの中部と東部に分布し、うち北部に分布するものは17年に一度、南部に分布するものは13年に一度大発生を起こす(ジュウサンネンゼミ)。大発生時は採集しやすく、成虫を揚げて食べる人もいる。ジュウシチネンゼミ、ジュウサンネンゼミを合わせて周期ゼミ(periodical cicada)と総称することがある。2004年にアメリカ東部で大発生した。

[編集] 利用

  • セミの抜け殻は中国で古くから蝉蛻(せんたい。蝉退とも書く)という漢方薬として使われており、止痒、解熱作用などがあるとされる。
  • 中国東南アジアアメリカ合衆国沖縄などでセミを食べる習慣がある。(昆虫食参照。)中国河南省では主に土からでたばかりの、羽化前の成虫を捕まえて、素揚げにして塩を振って食べる。山東省では、河南省と同様の方法の他、羽化前の成虫を煮付けにしたり、蛹を揚げたり、炒めたりして食べる。雲南省のプーラン族は夕方に弱ったセミの成虫を拾い集め、ゆでて羽根を取り、蒸してからすりつぶして、セミ味噌を作って食用にする。このセミ味噌には腫れを抑える薬としての作用もあるという。
  • なお沖縄でのセミ食の習慣については、同県出身のお笑い芸人ダチョウ倶楽部のリーダー肥後克広が、子供の頃セミを焼いて食べたエピソードを紹介している(「子供の頃にセミを捕って食べるのは沖縄では普通。沖縄県人ならば、子供の頃には必ずやっているから!!」と言う)。彼によれば羽根と足を取ってから火で炙って食べる。特に腹腔の部分が一番美味であるという。

[編集] 文化

[編集] 文芸

[編集] 音楽

  • 『蝉の曲』(胡弓楽曲・箏曲) 名古屋、京都で活躍した盲人音楽家吉沢検校天保頃作曲。馬場守信作詞。胡弓の本曲として有名な曲。蝉の声に寄せて、夏の終わりに恋の終わりを予感する心情をうたっている曲。手事(てごと - 楽器だけの長い間奏部)では胡弓が蝉の声を描写する美しい部分がある。 吉沢検校は天才音楽家として評判が高く、そのため同僚の音楽家たちに妬まれた。尾張徳川家の雛の節句でのこの曲の演奏のおり、の伴奏を同僚たちに頼んだが誰も受けてくれない。仕方なく胡弓を独奏したが、それが大変に素晴らしく、並みいる人々みな感じ入ったという。
  • 『ひぐらし』(尺八、胡弓、箏三重奏曲) 大正9年宮城道雄作曲。秋近い夏の夕暮れ時、ヒグラシの声がひとしきり聴こえるうちに、夕闇が次第に迫ってくる感じを描写した曲。

[編集] その他

  • イソップ童話の有名な「アリとキリギリス」の話は、本来の南欧である地中海沿岸のギリシアで編纂された原話では「アリとセミ」の話であった。セミは元来、熱帯系の昆虫で、日本より緯度が高いヨーロッパ北アメリカではセミの種類も少なく、小型で迫力がないので、知名度が低い。そのため、より分かりやすいようにキリギリスに置き換えたもので、日本にはこの置き換え版が入ったと言うことである。
同様に、イギリスから北アメリカ移民した人々が、ジュウシチネンゼミ分布地に入植してこのセミの成虫の大量出現に遭遇したとき、驚いた移民達はいったいどういう昆虫なのか理解できず、聖書を紐解き、旧約聖書出エジプト記などに記された蝗害の記事にこの現象を当てはめ、本来の英語でセミを示す cicada ではなく、蝗を意味する locust の語を当てた。そのため、アメリカ英語ではセミを言い表すときに、 cicada と locust の両方の語を使う慣習が生じた。
  • 明治維新の時、日本にやってきたヨーロッパ人はイタリア南仏などの地中海沿岸地域出身者を除くとセミを知らないものが多く、「なぜ木が鳴くのか」と尋ねたものもいたという。現在でも、日本のドラマを欧米に出すとき、夏の場面ではセミの声を消して送るという。日本ではいかにも暑い盛りのBGMと感じられるが、あちらでは妙なノイズが乗っていると思われる場合が多いという。
  • セミの幼虫または、その抜け殻について全国共通の名称は存在しないが、多くの方言で成虫と区別する名称が存在する。一方「空蝉(うつせみ)」はセミの抜け殻の古語である。

[編集] 関連項目

Wikimedia Commons
ウィキメディア・コモンズに、セミ科に関連するカテゴリがあります。


[編集] 外部リンク

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