ブラック企業
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ブラック企業(ぶらっくきぎょう)とは働く者に劣悪な労働環境しか用意できないような企業(官公庁も含む)のこと。
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[編集] 概要
「ブラック企業」と呼ばれる企業は、基本的にコーポレートガバナンス(企業統治)、コンプライアンス(法令遵守)、CSR(Corporate Social Response 企業の社会的責任遂行)がきちんとできていない企業が当てはまる。一般的には企業としての成熟度が低い、中小企業などに多く見られるが、大企業といわれる組織においても、しばしば見受けられる社会的に望ましくない会社組織の態様である。 ブラック企業においては、顧客・元従業員・近隣住民といった被害者から常に訴訟やトラブルの危険性を内包しており、見識のある経営者は組織体質の変遷に常に注意を払わなければならない。 何故ならば、ブラック企業体質は、利益の減少・従業員のモティベーション低下・生産性の低下・従業員のモラルの低下、従業員の定着率の低下、ひいては業績悪化、さらには倒産に結びつきかねないからである。
「商売で儲けるためには、多少悪いことをしてもよい」という発想に感化された経営者や、「悪いことをしているは思うが、会社のためなら目をつぶる」というサラリーマンが、ブラック企業の精神的支柱である。
体質の具体例として次のような点が挙げられる。
[編集] 経営
- ワンマン経営(専制経営)
- 株主、顧客、従業員などに対する配慮を欠いた、社長など経営陣による会社の私物化
- 経営者はよくマスコミで取り上げられ有名であるが、会社としては元従業員などからの訴訟を多く抱えているもの
- 「船頭多くして船山に登る」組織
- このような組織では内部の意思統一が全く取れず、多くの場合、イジメやセクハラ、高離職率の温床になっているケースが多い
- 例として「俺は総務に一番長くいる、だから俺が総務の社長だ」等というワンマン的な妄想を抱く社員が社内にたくさんいる。
- 社内ワンマン社長気取りサラリーマンの乱立。
- お神輿経営
- 経営陣や上級幹部は具体的な経営プランを提示せず従業員任せにして、成果が出たら自身の指導が良かったのだとして成果を横取りし、失敗すれば従業員の働きが悪いとして責任を取らせる経営手法。従業員のモチベーションが下がる一因である。
- 社長の世襲など、経営的に無能な人物が経営陣や上級幹部に多い
- 親会社からの出向者が経営陣や上級幹部の多くを占め、子会社の実務を知らないためお神輿経営にならざるを得ない
- 人事
- 経営陣の意向に沿わない人物の解雇、左遷、あるいは上層部の腰巾着的人物の登用などの恣意的な人事が横行する
- 社内における行動、発言などに対して、人事部門によるゲシュタポ的な従業員監視が行われている
- 広義のいわゆるセクハラ面接(経歴や人物を侮辱することも含む)
- 筆記試験(SPIなど)を抜き打ちで強要する
- 引き抜きや中途採用により仕事のノウハウや客先を持っている人を採用するが、欲しい情報を得て用済みとなれば直ぐに解雇する
- 労働組合
- 労働組合は作らせない、あるいは会社側の意向に従う労働組合(いわゆる御用組合)を作って加入を強制する
- 経営側と労働組合幹部との癒着、昇進等での優遇
- 社会的評価が悪い
- 近隣住民の雇用や祭などの催し物への寄付など、地元への協力をしない
- 会社の姿勢や従業員に対して、事業所周辺での地域社会の評判が悪い
- 地域社会の意向を汲みいれず、簡単に事業所を閉鎖したり解雇したりする
[編集] 勤務
- 待遇・勤務条件が悪い
[編集] 社風
- 従業員の態度が悪い
- 愛するに足りる会社と感じられないことによる愛社精神の欠如
- 従業員の定着率が悪いため、あまりよくない人材を採用せざるを得ない
- 管理職員が指導と称して暴言を吐く。私物(公用でない個人所有の手帳や携帯電話)を無断で探る
- 人格を全否定して社員を侮辱し、自分たちに都合の良い価値観を植えつける。極めて稚拙な洗脳まがい行為
- 退職を申し出ると暴言を吐いて社員を侮辱する(幼稚な責任回避)
- 従業員の定着率が悪い
- 求人広告の頻度が多い(社員の定着率が悪い)
- 虚偽の求人を掲載する(求人の内容と実際の待遇が違う)例:広告では「残業なし」→実態はサービス残業強制
- 慢性的なイジメの体質がある(顕在的な場合と潜在的[陰険]な場合がある)
- 離職する社員を精神的な病に罹患した、などと吹聴する(責任を誤魔化すため)
- 社員研修と称し洗脳(強制的説得)を行う
- 徹底的に新入社員を全否定し、その会社にとって都合の良い価値観を強制的に植えつける
- 多くの場合、暴言を吐いて洗脳行為が行われるが、時として暴力行為が伴うこともある
- 陰険な体質を持つ企業や事務方などでは、小声で相手の人格を傷つけるような発言をし、人格否定行為が行われる
- その結果、洗脳された社員は社会的に望ましくない行為を実行する場合でも、何の躊躇も無く平然と実行できるようになる
- 上記は昭和時代に典型的に見られた手法であるが、現代においても後進的な企業で実施されている
- 仕事のやり方が不正である
- 業務関連の諸経費で自腹を切らせる
- 違法コピーソフト(不法DLも含む)などを社内で使いまわす
- 偽装請負がある
- 仕事を牛耳ることにより権勢を保とうとする者が多い=新人に仕事を引き継がない→高離職率
- 上層部からの情報を部下に展開せず重要情報を独占することにより、部下を牛耳ろうとする管理職が多い=業績低迷の一因
- 「仕事は自分で貰って来い」などと放言し、業務の引継ぎを一切しない。従業員が定着しない根本原因
- 社会から指弾されるような業種(→悪徳商法)
ブラック企業とは、あくまでもその企業内で働く社員にとってのことなので、中には業績が高くいわゆる大手企業と呼ばれる企業もブラックの定義に入っていることもある。
[編集] 体験者の情報発信
従来から、労働現場における劣悪な状況を暴露する書籍や論文等はあったが、インターネットコミュニティが発達する中で、劣悪な労働環境を体験した経験者が、自らの言葉で具体的な情報の発信をするようになっている。
[編集] 中華人民共和国税関総署のブラックリストの載った企業
中華人民共和国税関総署が公表したブラックリストに載った中華人民共和国の企業の俗称。すべての企業が密輸を行なっている。ブラック企業は、税関での検査・手続きが普通の企業よりも厳しくなる(参考:ジェトロ上海ニューズレター2004年5月号)。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ブラック企業
- 「声を上げれば大企業の違法正せる」/この一年 サービス残業是正へ大きな前進/労働者、家族が切り開いた成果
- しんぶん赤旗-是正勧告を受けた大手企業名が記載されている
- 是正勧告違反事例村岡社会保険労務士事務所
- 過労死110番全国ネットワーク